2020年3月27日金曜日

ヘレスのフェスティバル/各賞

外出禁止が続いているスペインです。とりあえず4月12日まで。
禁止とは言っても、スーパーや市場、薬局、タバコ屋、新聞スタンドは空いていて日用品の買い物はできます。犬の散歩もできます。
でも街中にはおまわりさんが多く、歩いている人もまばら。
それまで風邪引こうが絶対しなかったマスクしてる人や、ビニール手袋してる人がいる。
それほど深刻な状態なのであります。
バルが開いていないから、いつもの友達にも近所の人にも滅多に会わない。
パンを買いに行って偶然会うと、1メートル以上離れて、会えてよかった、元気でねと会話します。
普段はどっかアナーキーなスペイン人たちもほぼみんな、粛々として従っているのが、事態の重大さを語っています。

なんかヘレスのフェスティバルがつつがなくとりおこなわれ終了したのが夢のよう。
その後、急激に事情が変わり、3月26日現在、日本からスペイン人以外がスペインに来ることはできないし、スペインから日本に行くことすらできない状態であります。

さて、その遠い昔の夢のようなヘレスのフェスティバル。
各賞が続々と発表されました。

観客の投票による観客賞はアントニオ・エル・ピパ。
Festival de Jerez ©Javier Fergo


批評家/専門家による批評家賞はマヌエル・リニャン『ビバ!』
Festival de Jerez ©Javier Fergo

同じく、新人賞はパウラ・コミトレ。
Festival de Jerez ©Javier Fergo

同じく、ギター賞はラファエル・リケーニ。
Festival de Jerez ©Javier Fergo
ヘレスのペーニャが選ぶ、伴唱賞はアルフレド・テハーダ(ラ・ルピに歌ってた)

Festival de Jerez ©Javier Fergo

ペーニャ公演賞はヘレスのフェルナンド・ヒメネス
Festival de Jerez ©Javier Fergo

リケーニは文句なし!
あとは見ていないものものあるし、何も言えません。
好みもあるしな。


2020年3月13日金曜日

ヘレスのフェスティバル2020総括記者会見


ヘレスのフェスティバル2020の総括記者会見が11日ヘレスのビジャマルタ劇場で行われました。

コロナビールスの影響は、中国人やイタリア人のクラス受講キャンセルなど多少あったものの。16日間、45公演+ペーニャで10公演、述べ650人のアルティスタが出演。その9割の客席を述べ2万1千人の観客が埋め、19公演は満員札止め。
53のクラスには40カ国からの参加者が定員の9割を埋め、うち65%は以前、フェスティバルでのクルシージョを受けた人たち、2割は10回以上来ている人立ちだそうで、フェスティバル常連が多数いることもこのフェスティバルの強みだということがわかります。国別参加者では統計を取り始めて以来ずっと日本がトップ。2位以下はアメリカ、フランス、スペイン、ドイツ、ブラジルと続きます。週末だけのクラス創設で国内からの受講者が増えたそうです。
また、一般の観客には見えにくいですが、小・中学生などがラファエラ・カラスコや国立バレエのゲネを見学、高齢者センターでもフラメンコのアルティスタの顔で写真を撮る、というイベントを高齢者たちが体験し、その写真が劇場ロビーに飾られていました。

というわけで、まずは成功裏に終わったと言えるでしょう。

個人的にも、今年は例年よりも、より素晴らしい公演が続く充実した年だったように思います。。45公演中、私が観たのは27公演+1グアリダ公演。ちょうど半分です。
18時にカンテリサイタル、19時に舞踊公演という日や29日のように1日に6公演もある時はやはりどちらか選ぶようになってしまいます。
長丁場、風邪も引けないし、体を休めることも必要です。

今年、私の印象に残るのは、ラファエラ・カラスコラファエル・リケーニファルーベレン・マジャマルコ・フローレスエステベス&パーニョススペイン国立バレエ
それに趣味がいい作品を作り上げたアンドレス・ペーニャでしょうか。
どれも高い志で見事な作品を作っていたと思います。
イニエスタ・コルテスやメルセデス・デ・コルドバ、オルガ・ペリセもいい瞬間があったし、マヌエル・リニャンたちの『ビバ』もいろいろなことを考えさせてくれました。

さて、来年は2月19日から3月6日までだそうです。
どんな出会いが待ってるかな?楽しみです。



Resumen Festival de Jerez 2020 from Festival de Jerez Televisión on Vimeo.




2020年3月12日木曜日

フラメンコ3x4フェスティバル記者会見




Presentación de Festival Flamenco 3x4 en Cartuja Center que va a celebrar en septiembre de este año. cartel de lujo total.

今年9月の新しいフェスティバル、フラメンコ3x4の記者会見。
ちょっと奥さん、すごくいいメンツ。


ビエナルのオフじゃないとはいうけれどビエナルのプログラムが出るまで入場券購入しにくいよね。
好きなものがぶつかりませんように。

クラスもあるそう。来週には詳細わかるそうですよ。

2020年3月11日水曜日

ガスパチョ2020記者会見






Rueda de prensa Gazpacho de Moron que celebrara 4 de julio con Estrella Morente, María Terremoto, Capullo de Jerez, Gastor de Paco y Juan de Juan.

今年のガスパチョの記者会見。
7月4日モロン市役所前広場での公演、出演はエストレージャ・モレンテ、マリア・テレモート、カプージョカンテ、ギターソロはガストール•デ・パコ、踊りはフアン・デ・フアン。

2020年3月9日月曜日

へレスのフェスティバル最終日スペイン国立バレエ『インボカシオン・ボレーラ』『ハウレーニャ』『エテルナ・イベリア』『ロ・フラメンコ』

なんと美しく素晴らしい公演だったろう!
バレエ団メンバーの完璧なテクニックとルベン・オルモ新芸術監督のセンスの良さ!
これまで30年以上国立を観てきたが、最高の公演だった。
こんな素晴らしい公演が観られるなんて! 国立万歳!ヘレス万歳!

幕開けはエスクエラ・ボレーラの作品。振付はルベン。
伝統的な、スペイン古典舞踊を新しい発想でみせてくれた。


カスタネットの見事なこと。形の美しさ。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 

©️Festival de Jerez Javier Fergo 

©️Festival de Jerez Javier Fergo 
ルベンのソロは、ボレーラ同様このために作曲されたオーケストラ曲。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
グラナイーナをモチーフにして、完璧なテクニックで魅せた。
観よ、このポーズ。ちょっとバレエリュスのポスターみたいじゃない?
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
『エテルナ・イベリア』はアントニオ・ナハーロ前監督の振付作品。
1963年グラン・アントニオのために作曲されたオーケストラ曲で、マントや帽子、カスタネットと言った伝統的な要素を新しい形でみせる。ここでもかたちの美しさが鍵。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
第一舞踊手エドゥアルド・マルティネスが素晴らしい。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
この絵のようなポーズも見てください。照明も綺麗!
美しすぎて涙出てくるわ。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
休憩はさんでの第2部は『ロ・フラメンコ』。マリオ・マジャがアンダルシア舞踊団創立時にディエゴ・カラスコの曲に振り付けた作品。一部に手を加えた、マリオへのオマージュ。
当時のアンダルシア舞踊団からはベレン・マジャ、イスラエル・ガルバン、ラファエラ・カラスコ、マヌエル・ベタンソス、イサベル・バジョン、マルコ・バルガス、バレリアーノ・パーニョスら錚々たる面々がすだっている。すごいよね。

©️Festival de Jerez Javier Fergo 
原作ではイスラエル・ガルバンが踊っていたソロの代わりに、やはり当時マリオのもとにいたラファエラ・カラスコが振付。踊るのはホセ・マヌエル・ベニテス。
国立きってのフラメンコダンサーでマラガ出身。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
5人の闘牛士の振付はマノロ・マリン。色彩華やかで動いた時がより美しい衣装も魅力!
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
椅子に座っての踊りといえばマリオ。
フランシスコ・ベラスコを中心に男性舞踊手だけのめっちゃかっこいい場面。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
当然だけどマリオの振りが満載でゾクゾクする。
いやあかっこいいなあ。男前が三割がたはあがってみえるよ。
忘れてたよ、マリオの振りのかっこよさ。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
エステル・フラードが踊ったタラントもこの作品オリジナル。
原作ではベレンとラフィが日替わりで踊ってた場面。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
振付はイサベル・バジョンで彼女の仕草が透けて見える。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
ホセ・マヌエルとミリアムですね、これは。
©️Festival de Jerez Javier Fergo 
泣いたのは私だけじゃなかったよ。
ホセ・マヌエルもアリシアもロシオもフアナもみんな泣いていた。
ノスタルジーもあるだろう。マリオへの思いも。
でもこんなに豪華で完璧な作品への感動だと思うのであります。
美しいものを見ると涙が出てくる。っていう。

ルベンありがとう。素敵な贈り物!

スペイン全国から選ばれた精鋭たちが大人数で毎日稽古でき、スタッフも揃っているという国立ならではの環境があってこそできる作品。
自分でカンパニーもやっていただけに公立の有り難さがわかるのだろうな。
その環境を生かした国立ならではの作品を作ってくれました。
でも作品を選ぶセンスや意気込みはこの人ならではのもの。
なんかルベン監督にどんどん期待がふくらみます。


https://vimeo.com/396252588

ビデオで見ると、群舞揃ってないとこもあるな、とかちょっとしたあらも見えてくるけど、劇場で見ると本当、群舞が綺麗に揃っていて、感動したんですよ〜

2020年3月8日日曜日

へレスのフェスティバル最終日ハビエル・ラトーレ振付工房

へレスのフェスティバルでの6日間のクルシージョで、受講生に合わせて振付し、それを舞台に乗せてしまうというのがハビエル・ラトーレ振付工房。
もうこれで何回めだろう。
毎回楽しく拝見させていただいております。

今年はハビエルの録音のピアノでのファルーカに始まり、
 クルシージョの演目はシギリージャ。
振りだけでなく、自分の出るタイミングや立ち位置など全部きちんと覚えておこなかとならないわけで、舞踊団などでの群舞や舞台に慣れてない人には本当に大変なことだろうと思う。
 毎回、上手な人、そうでもない人、それぞれに見せ場を作っているのがいいね。
みんな主役。
もちろん、日本人もいるよ。土方憲人くん。今回は珍しく男の子二人いた。
 今回、小島章司公演にも出演してた ブラダはロシア系イスラエル人。
ハビエルの奥さん。


マドリード在住、のステイシーは台湾出身。
一昨年、フラメンコナウタに出てたし、

いやいや今年も楽しゅうございました。


Final del Taller de Coreografía Javier Latorre from Festival de Jerez Televisión on Vimeo.

2020年3月7日土曜日

ヘレスのフェスティバル15日目アンヘル・ムニョス『イベリアス』

今日はビジャマルタ劇場が国立バレエの仕込み中。
でサラ・パウルとサラ・コンパニアの公演のみで21時からの公演に。

リチャード・ギアに似た甘いマスクが人気でそのクルシージョには固定ファンがいるというアンヘル。コルドバ出身でハビエル・ラトーレ門下。94年にはコルドバのコンクールで優勝している。日本でも新宿エル・フラメンコに出演していたこともあるし、カニサーレスのグループでも来日しているのでおなじみでしょう。

カニサーレスの演奏するアルベニス作曲『イベリア』に想を得て、ピアノとサックス(イスラエル・ガルバン作品に出ているフアン・ヒメネスね)による『イベリア』とフラメンコギターによる『イベリア』とフラメンコが混在。

最初床に寝っ転がって始まる。
最近多いなあ、寝っ転がるの。流行り?
© Festival de Jerez/Javier Fergo
ここでは『イベリア』と書いたけど、アルベニスの『イベリア』の曲だけでなく、モンポウやグラナドスの曲も登場。クラシックとフラメンコが混在ってことですね。途中、雨だれのような電子音楽も加わります。
サックスとピアノがよかったなあ。時に現代音楽風で。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
 クラシコ風にカスタネット使ったり、長めのジャケットをちょっとスカート風に使って踊ったり、工夫をしています。
でももともと国立バレエなどでクラシコを鍛えられてきたわけじゃないから、今の若い子たちのような完璧なテクニックがあるわけではなく、昔ハビエルに習っただろう見慣れたパソが繰り返し出てきたりで、ちょっと辛い。

ジョランダ・オスーナがアルヘンティーナの録音に合わせて、彼女の振りで踊るのだけど、全体的にデリカデサ、繊細さが足りないような。
振りをなぞる時、センティードをもコピーしないとイメージが全く違うものになってしまう。コケティッシュな女性らしさからは遠い。
時代の雰囲気を出そうとして取り入れているのだろうからなおさらだ。


あと、ちょっと首が前に出てる? それ、アンヘルにも感じたんだけど。
首の位置って難しいけど、うーん、これだとせむしっぽくなってないか? いやさすがにそれは言い過ぎか。
写真で見るとそうでもないなあ。でもちょっと前傾?

© Festival de Jerez/Javier Fergo

© Festival de Jerez/Javier Fergo
 怪我で出演できなかったアンヘルの愛妻チャロに代わってゲスト出演のジョランダ・オスーナはアレグリアスを踊ったのですが、意味なく長くて飽きちゃう。チャロならもっとグラシアあったろうに、とか思ってしまう。

© Festival de Jerez/Javier Fergo

© Festival de Jerez/Javier Fergo

うーん、いろいろみんな模索して作品作っていくんだなあ。






2020年3月6日金曜日

ヘレスのフェスティバル14日目エステベス/パーニョス・イ・コンパニア『ソンブレロ』

ニームで観ていたのに、2回目なのに、いやだからかな、フェリクスの運命が心に迫ってきて涙涙。
すべての場面に理由があり、踊り手でありながらフラメンコが好きすぎて古いものを色々と調べる研究家でもあるラファの丹念で入念な研究に裏付けされた、すごい作品。
なんだけど、途中で帰ってしまう人もいたのは残念。

フェリクス・エル・ロコの話を知らないとわかりにくいのかも。
彼の存在を知ってさえいれば、実はとてもわかりやすい作品なのだけど。

フェリクス・エル・ロコは、本名フェリクス・フェルナンデス・ガルシア。
1896年セビージャ生まれの踊り手で、スペイン各地を回っていたディアギレフ、そのダンサー、レオニード・マシーンらと知り合い、バレエ団バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)がファリャ『三角帽子』の稽古のためロンドンに渡ったものの、主役を演じるとばかり思っていたのだが実はそうではなく、精神を病んでいき、エプソンの精神病院で1941年に亡くなりました。
バレエリュスの話はフォーキンやニジンスキー、バランシンなどで舞踊好きには広く知られていると思うのだけど、ディアギレフはファリャにバレエ音楽を依頼したことで1919年『三角帽子』が生まれ、また1921年にはマリア・アルバイシンなどスペインのアルティスタたちによる『クアドロ・フラメンコ』という作品もプロデュースしているのであります。
知れば知るほど興味深いフラメンコとバレエの世界だけど、そこは長くなるのでこれ以上は省略。でもいつか語りたいかも。

で『ソンブレロ』。
ラファエル・エステベス演じるディアギレフとバレリアーノ・パーニョス演じるレオニード・マシーンが、スペインにやってくるところからはじまります。
1916年、二人はグラナダでフェリクスと出会います。
当時のフラメンコの雰囲気が、丹念に再現されます。

© Festival de Jerez/Javier Fergo”
 フェリクスを演じるのはアルベルト・セジェス。
見事なフラメンコ! ディアギレフが目をつけるのも無理がありません。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”

そしてマドリードで再会し、バレエ団のダンサーたちにフラメンコのレッスンをします。
その様子も踊りで再現されます。

 翌年、ファリャと共にスペイン各地を回るディアギレフとマシーンにフェリクスも同行します。

ファリャが粉屋の『ファルーカ』のメロディーを思いつくシーンは、3人の男性ダンサーのサパテアードで、あのファルーカのメロディーが奏でられる、という素晴らしいもの!
いやあ、鳥肌ものです。
でもこれも元の曲を知らないとわからないですよね。


各地の民族舞踊を観て回るのを、民族舞踊のエッセンスやマカローナの踊り、セビジャーナスなどで描かれます。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”

© Festival de Jerez/Javier Fergo”

© Festival de Jerez/Javier Fergo”
 絶対的支配者たるディアギレフと、盟友マシーンとの三角関係を示唆し、
バレエ団での孤立から、リズムにこだわるようになり、徐々に精神の均衡が崩れていきます。

20世紀初めに、家族友人と離れた外国で、思っていたようなことができない時、
気がおかしくなるのは自然なのではないでしょうか。
彼へと心が寄り添います。どんだけ辛かったろう、どんだけ寂しかったろう。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”
 そしてついには精神を病み、入院に至ります。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”
その後も何度か、実際、ディアギレフも、マシーンも訪問したそうで、その様子も演じられます。惚けたようであってもマシーンのことだけはわかって抱きつく、というように。

 ファリャの『三角帽子』の粉屋のファルーカをバレリアーノが、バレエのテクニックも多用した、マシーン風に踊ります。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”

© Festival de Jerez/Javier Fergo”

知らないとわかりにくい、という欠点はあるものの、素晴らしい作品だと思います。
フラメンコ・オタクなラファの作品は、いろいろ裏付けがあってやっているものが多く、知っている人は面白いけど、的なことがあるのは事実。オタクによるオタクのための作品? いえいえ、そんなことはないと思うのですけれど、うん、始まる前に簡単な解説があってもいいかもしれないですね。
ちなみに作品解説踊り付き、というのもあって、ニームで観ましたが、これを見ると、踊りの背景とかもわかってもっと楽しくなります。