2026年6月7日日曜日

ホセ・バレンシア『ペルセクシオン』

 アンダルシア州主催のフラメンコ公演シリーズ『アンダルシア・フラメンコ』、セビージャ、セントラル劇場での最終日はホセ・バレンシア『ペルセクシオン』。

1976年に発表された、レブリハーノのアルバム『ペルセクシオン』は、詩人フェリクス・グランデと共にスペインにおけるヒターノのペルセクシオン、迫害の歴史を描いた渾身作。そレから50年ということで、レブリハーノの甥、アルバムのギタリストの一人、ペドロ・ペーニャの息子、ペドロ・マリア・ペーニャが企画、同じレブリーハのホセ・バレンシアを中心に、レラ・ソトも協力(初演では初演ではアナベル・バレンシア)、アルバム収録曲にバイレ(ナサレ・レジェス)も加えて舞台作品に。原盤ではフェリクスが担当していた語りはレブリハーノの妹でジャーナリストのテレ・ペーニャ。

全員揃っての「リブレス・コモ・エル・アイレ』、風のように自由に、輝く星のように自由に、と歌う始まりからグッとくる。この歌は、スペインのヒターノの民族歌に制定して欲しいくらい。フラメンコを愛する人ならきっと一緒に歌いたいはず。

続くブレリア、『サングレ、サングレ』もポピュラーな曲だからレラが歌うというのはちょっと意外だったけど、良かった。ティエント『ノ・レ・テンブラロン・ラス・マノ』はホセが。張りのある、よく通る声で歌い上げる。この作品を今の歌い手でするなら彼とペドロが思ったのも納得。後半のトナやシギリージャも圧巻。レブリハーノと違うのは歌い終わりが彼は上へと開けた感じで、レブリハーノは下へと閉まった感じということかもしれない。個人の感想ですが。

途中、入った踊りは正直なくても全然良かったけれど、ナサレは母フアナ・アマジャに顔も踊りも似ているのだけど、もう少し、トロンコ使えるともっといいのではと思ったり。

最後は観客も一緒に『リブレ・コモ・エル・アイレ』を合唱して終わり。



名作は、踊りのガデスやグラネーロの作品もそうだけど、若い世代に歌い、おどってもらって、どんどん引き継いでいって欲しいな、と思ったことでした。



2026年6月6日土曜日

クリスティーナ・ヘーレン財団『フラメンコ・エス・ビダ』

 クリスティーナ・ヘーレン財団フラメンコ芸術学校が今年で創立30周年を迎えるということで、クリスティーナがが学校創立前に企画構成し上演された作品『フラメンコ・エス・ビダ』を再演。といっても当時の出演者たちではなく、この30年間に学校で学びプロとなった歌い手、踊り手、ギタリストたちが出演し、構成はなぞるものの振り付けも新しくして、という趣向。


幕が開けるとフラグア、鍛冶屋のセットで、金床をハンマーで叩いてとるリズムで歌うマルティネーテを二人の歌い手が歌い、ダビ・バルガスも入って。

次の場面は居酒屋。カウンターの向こうにラウル・カンティサノ。ウエイトレスがいて、テーブルが二つ。ギターソロ、ランプのついたヘルメットを持ってやってきた男が歌うタランタ、タラントをウエイトレスがちょっと踊り、ソレア・ポル・ブレリアやセラーナなど。

舞台前面上手にでたラウルが立ってソロを弾き(その間に舞台転換)、下手に置かれた街灯の下のベンチで歌われたマラゲーニャがこの日一番良かったかも。ラウルの伴奏はもう少し音少ない方が好みだけど。マヌエル・デ・ヒネスだったそう。その後、ソレアの踊りがあって、最後は箱が詰まれた埠頭、港で、アレグリアスが始まる。そこで踊ったチョロが良かった。そこへ、南米からの船が着き、白づくめの衣装で葉巻を手にしたヘスス・コルバチョを見て思い出した。これ初演ではカリスト・サンチェスじゃなかったっけ?1994年のビエナルで、にやけた感じで登場したのを思い出す。ヘススの歌でルイサ・パリシオがバタ・デ・コーラにアバニコでグアヒーラ。バタ捌きの見事さ。体づかい。細部もいい。

チョロとルイサ。この二人と後の4人(カルメン・ヤング。ルシア・ラ・ブロンセ、アラセリ・ムニョス、ダビ・バルガス)の差は大きい。キャリアの差だけじゃない気がする。格の違い。この4人も、歌い手たちもみんななんでも歌えて踊り伴唱できるし、ギタリストもそう。プロである。でもプロの中でも、看板背負える人というか、名前が出る人というのは違うのでございます。財団からは多くのプロが巣立っていった。たくさんのアルティスタたちがスペインのタブラオなどで活躍している。その中には自分の名前で勝負できるアルティスタたちもいるけれど、そこまで上がっていくのはほんの一握りなのだな、と改めて感じたことでした。

作品の構成、小芝居あったり、とかはやっぱり30年前の作品だなあ、という感じ。みんな真面目に芝居してたのは偉い。歌は、初演のホセ・デ・ラ・トマサやカリスト・サンチェスだったら、違ったかな、もっと聴ける感じだったかな、とか思ってしまったのは、カンテソロ、マラゲーニャ以外はなんというか、ちゃんと歌っているんだけど、味がないというか、カンテソロで聴きたいほどの歌い手ではなかったというか。厳しい言い方だけど。リズム音程かたちが合っているからいい、ってもんじゃないでしょ、歌は。踊りもそう。オレな瞬間があるのはルイサとチョロだけ。フラメンコは難しいね。

アンコールで舞台に上がったクリスティーナが幸せそうだったのは本当に良かった。




2026年6月3日水曜日

第24回コルドバのコンクール優勝者たち/アンヘル・フローレス、クリスティーナ・ソレール

 昨年のコルドバのコンクールで優勝者の公演はセントラル劇場の小ホールで。

ギターのアンヘル・フローレス。1998年6月2日生まれというからちょうど誕生日で28歳。ギターは良く鳴っているし、テクニックあるし、オリジナルティのあるメロディとかも登場する。ただし、息ができないくらいに詰め込みすぎ。テクニックのための練習曲ですか?という感じ。アレグリアス、タランタ、ソレア、ファルーカ、ブレリアなど演奏。でも御ぜーんぶ詰め込みなので、結局、確かにそれぞれの曲のコンパス、調性で演奏しているんだけど、その曲らしい味わいとかが感じられず、全部同じに聞こえてしまう。こういう演奏聞くと、ダビ・デ・アラアルの、静寂すらも音楽に、フラメンコにしていく手腕がより高い評価をすべきものだということが改めて感じられたことでした。上手なギタリストだからコルドバ音楽院で学んだということで、パーカッションのハビエル・ラバダンが伴奏。コルドバのコンクールはソロだけでなく歌伴奏、舞踊伴奏も審査しているはずなんだけど、多分、舞踊伴奏をたくさんするともう少しこなれてくるんじゃないかな、と思ったり。でコンクールの審査員、ギタリストはクラシックのホセ・マリア・ガジャルドだったからっていうのもあるのかも。いや、他にも歌い手2人、踊り手2人もいたからその独断だったわけではないとは思うけど。

舞踊はクリスティーナ・ソレール。グラナダ生まれで現在30歳くらい。地元とマドリードの舞踊学院に学び、ファルキートやメルセデス・デ・コルドバ、ラファエラ・カラスコらの作品に出演。また各地のタブラオでも活躍している実力派。黒のバタ・デ・コーラ(キラキラついてない方がいいと思う)でのシギリージャ、タンゴ、そしてマントン技からのソレア。これも前半のギタリスト同様、忙しく詰め込むタイプで、間合いをとって曲のキャラクターらしい表現をするということは全くない。グラナダならタンゴとか、アイレたっぷりに踊りそうなものだけど、グラシアのグの字もない。味がない。あとスカートまくり過ぎで太ももが見えてしまうのもお下品。1回くらいたまたまとかならまだ理解できるけど、スカートもつたび、絶対太ももが出る。エナグア、アンダースカート履くとかするか、スカート持ち上げすぎないように気をつけるか、衣装のデザインでスカート持ち上がりにくくするか、とかしてほしい。誰もそいういうこと言わないのかなあ。お上手だけど、それ以外に伝わってくるものが何もないのもギタリストと同じ。若いうちはあれもこれも欲張ってしまうのもわかるけど、アルテを目指さないと、と思ったことでありました。唯一の救いは、フアン・カンパージョの伴奏ギターが素晴らしかったこと。あ、エセキエル・モントージャとジョナタン・レジェスの歌も良かったよ。




2026年5月31日日曜日

マルコ・フローレス『ベンゴ・ホンド』

 いやあ、楽しかった。

そうだよ、こういうフラメンコが見たかったんだよ。

1時間ちょっと、ずっと踊っていた印象。エンリケ・レマチェ、マヌエル・デ・ラ・ニナというヘレスの若手コンビが歌うトリージャ、アリエラという通常踊られない労働歌をシギリージャへ。

リズムを、歌を楽しむように踊るマルコ。フラメンコ愛がそのまま観ているこちらに伝わってくるようで、そしてその感覚は最後まで続いたのでありました。

小さなカスタネットみたいなものでリズムをとりつつ、スペイン舞踊基本の形をさらうようにしたかと思うと、ギターでのセビジャーナスで、椅子に座ったまま踊ったり、と、曲はセビジャーナスだけどお決まりの振り付けではなく自由に踊るのがかっこいい。ホセ・トマスが歌い出し、うまいのにびっくり。

帽子を使ったファルーカ、昔ながらのファルーカのパソも入れて再構築した感じ、カンティーニャも思わずオレが出てしまうようなディテールに溢れてた。最後は、詩人ロルカによるフラメンコ草創期の歌い手、フアン・ブレバやシルベリオ・フランコネティの描写をラップのように歌うのに合わせて踊り、閉幕。



舞台に飛び出してきた姪っ子ちゃんも舞台に上がってフィン・デ・フィエスタ。

14年ぶりという(!)マルコの舞台は、客席にいたマノロ・マリンやマヌエル・ベタンソス、アリシア・マルケス、ラモン・マルティネス、マルコ・バルガスらも、40年以上、舞踊の舞台を見続けている批評家の面々もみんな、ニコニコ、口角上がりっぱなしとなったのでありました。

あー、また観たい。ヘレスでもぜひやってください。


ロシオ・マルケス『イムノ・ベルティカル』


すごく久しぶりに観たロシオ・マルケス。観客席はいつものフラメンコファンじゃない感じの人が多く、ん?って感じ。カハソルでレラ・ソト公演があったからかも。結果、そっちに行けば良かった、と激しく後悔。

彼女の最新盤を舞台に上げたらしいのだけど、舞台装置使ったり、照明に凝ってみたり、ミュージカル調。プログラムにスタッフの名前載せていないけど、ネットで調べたら演出家とか関わっているみたい。CD聴いていないのだけど、作り声で囁くようにしたり叫んだり、と、全体的に芝居がかった表現で、フラメンコのメロディやリズムを使っていても、フラメンコには全く聴こえない。また舞台で女優のように動く訓練も足りない感じ。ギタリストともども、近しい人を亡くして、死を考え故人を悼むレクイエムとのことだけど、うーん、彼女の思いは私には伝わらない。伴奏のペドロ・ロハス・オガジャルはフラメンコも弾くけどフラメンコギタリストではない。エフェクターは彼が操作してたのかな?音響さん?

アンダルシア・フラメンコといっても、フラメンコ色薄いものが登場するのはあるあるなのだけど、うーん、個人的にはフラメンコへの敬意や愛がない感じがしていたたまれない気がして、途中で退席したいほどだったけど、満員でそれもできず、耳栓突っ込んでひたすら耐えたのでありました。でも好きな人は好きなようで、ほぼ全員スタンディングオーベーション。それを利用してさっさと帰ったのだけど、外国から来た私がいうのもなんだけどいわゆる「文化の盗用」感、感じてしまったのであります。気持ち悪い。でもそれが多くの人に支持されている、ということに混乱して、帰ってからも悶々としていたのですが、なぜかスペイン語で公演のことを書いているうちにだんだん落ち着いてきたのであります。

結局は単に好みの違いなのでしょう。

フラメンコを普通に歌うことに限界を感じ、色々挑戦しているのかもしれません。実際、それが功を奏し、フラメンコ以外の観客を獲得しているわけで。でも私が求めているフラメンコと彼女の方向性が合わないわけですね。フラメンコで物語や世界観などを語ろうとする作品は舞踊ではよくありますが、カンテが主役の作品はそれほど多くありません。パッと思い出すのはレブリハーノのヒターノの迫害を扱った『ペルセクシオン』や『ベン・イ・シゲメ』『ティエラ』でしょうか。彼はガルシア・マルケスの作品をモチーフにしたものもありますし、アンダルシアのアラブ支配時代ゆかりのアル・アンダルースとよばれる音楽との共演など、多彩な作品を残しています。また詩人の作品で言えばエンリケ・モレンテには『オメガ』などロルカの作品を歌ったCDがありますし、サン・フアン・デ・ラ・クルスを歌ったり、ピカソをテーマにしたアルバムがあったりします。詩人を歌うで言えばビセンテ・ソトのペッソアを歌ったアルバムや、マイテ・マルティンがマヌエル・アルカンタラを歌ったものなどもあります。でもどれも、歌としてちゃんとしている、というか、普通のカンテとして、たとえばリサイタルで一曲、伝統的な歌詞のものと混ぜて歌ったとしても違和感がないカンテ、なのだけど、彼女の語りのようだったり、の曲は多分、そうならないという感じ。なんか、純粋主義者みたいなこと言っているなと自分でも思うけれど、新しい試み、新しい歌詞、新しいメロディにトライすることがいやなのではなく、そこにフラメンコへの敬愛が感じられなかったのが嫌なんだと思う。フラメンコを普通に歌ってもカンシオンに聴こえてしまうのですよ。これってなんなんでしょうね。声質もあるのかなあ。

女性版ニーニョ・デ・エルチェ狙ったのかなあ、でも彼はちゃんとフラメンコに聞こえるんだよ。

プロモーションビデオがありました。やっぱ趣味じゃない。



2026年5月28日木曜日

ウーゴ・アギラールen トーレス・マカレーナ

いやあ、良かった。うん、とても良かった。

今年の2月、ヘレスのフェスティバルでスペイン国立バレエ団の兄ディエゴと素晴らしい公演を見せてくれたウーゴがソロで踊るというので、セントラル劇場ではコルドバのコンクール優勝者公演、カハソル劇場ではホセ・バレンシアが公演しているけれど、あえてやってきたペーニャ。客席にいつもの顔ぶれが少ないのは公演が重なっているせいかも。

最初はヘスス・ロドリゲスのギターソロ。グアヒーラというのは珍しい。


カンテ・ソロはリカルド・アンギータ。若いがすでにタブラオなどで活躍しているよう。マラゲーニャ一つ歌って後はアバンドラオ。流行りなのだろうけど、個人的にはマラゲーニャはマラゲーニャで聴きたい。



舞踊はソレア・ポル・ブレリア。


緩急の間合いがいい。開店の後の頭の処理とか、パトリシア・ゲレーロぽいかも。細かい足とかもあるのだけど足だけ追い込んでいくとかではなく、巧みな回転やマルカへなどとうまく組み合わせてる。エレガントで男性的。かっこいい。


休憩を挟んで二部のオープニングはヘスス・フローレスのアレグリアス/カンティーニャス。


そして踊りはタラント。楽屋から舞台へと歩いていく姿がすでにタラント。ドラマチックでさえある。インテルプレタール、演じる、という言葉があるが、すでに彼はタラントの中に入り込みドラマは、踊りは始まっている。芝居じみたことをする必要はないのだけど、曲の中に入り込み、曲の持つキャラクターを踊るというのは重要だと思うのですよ。それができてる。先週のノエリア・ルイスもそうだけど、こういうフラメンコを私は観たいのであります。



歌に足入れるの好きじゃないんだけどなあ、と思いつつ、でもこれならいい、って思うのはなぜでしょうね。それすら気にならないくらい、いいってことなんだろうな。細かいことが気になるってことはその踊りに魅了されてないってことでもあるわけで。



昔ながらの衣装も文句のつけようがなく、とにかく満喫させていただきました。


2003年バジャドリード生まれの23歳。アンダルシア舞踊団在籍。今後、どんな展開を見せていってくれるのか楽しみな若手であります。

フィン・デ・フィエスタにも若手たちが多数舞台に上がってます。フアン・トマス・デ・ラ・モリアもいるよ。うん、フラメンコ舞踊の未来は安泰。






2026年5月27日水曜日

ロシオ・ガリード『1405エコス・デル・ティエンポ』

暗闇の中で忙しくもがき続ける。それが彼女のフラメンコなのだろうか。自らの誕生日をタイトルにしたこの作品で見せたのが、詰め込むだけ詰め込んだ足中心の振りと恨みつらみのような怖いフラメンコだったのは悲しすぎる。

技術はあるし、2023年ラ・ウニオン優勝もだてじゃない。24年に。24年にラ・ウニオンで前年優勝者ガラみて、うまいなあ、足強いなあ、とびっくりしたのも嘘じゃない。あの時も踊っていたタラントとソレアを今回も。でもタラントは歌の部分がディエゴ・ビジェガスがハーモニカなどで歌うというのが新しいといえば新しい。またジャケットが赤から茶色に黒刺繍、きらきら付きになっていた。男装はいい。でもタラントにきらきらは必要ないって。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol



ダビ・カロギターソロのシギリージャ、と思いきや、ペペ・デ・プーラ登場でマルティネーテに。シギリージャ。黒い衣装で猛スピードで踊るシギリージャのどこにシギリージャの深み重みを感じろというのだ。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol



カンテソロのティエント/タンゴを挟み、最後はえんじ色のバタ・デ・コーラでのソレア。バタなのに、優雅さが全くない。手の動きに癖がある。なんというか、柔らかい円を描くような流れではなく、パッと手開いて場所を移動するようなデジタル感。よく見ると両手に指輪してるしブレスレットも。物語のあるもので指輪しているのを見たことがあるような気もするけど、普通のフラメンコ舞踊で指輪しているのに気がついたのは初めてかも。爪も付け爪なのか長いし。美しくない。


©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol

せっかくの一人舞台、それもセビージャでは多分初めてなのだから、もっと、色々な面を見せるべきだったのではないかと思うのでありますよ。暗い曲が得意なのだとしても、明るい曲も挟むことによってコントラストで暗さに深みが出て際立つということもあるのではないかとか考えてしまう。

ま、フラメンコ感は人それぞれだから彼女の暗く強く忙しく、ってフラメンコも好きな人はいるのかもですが、私はもっと多彩な魅力を見せるフラメンコが好きだなあ。


2026年5月25日月曜日

ラファエラ・カラスコ『ウモ』

ウモとは煙のこと。タバコ工場で働く女工たちを描いたラファエラの新作は今年、マドリードで初演されたばかり。

オペラやバレエで世界に知られる『カルメン』はセビージャのタバコ工場の女工だったという。男を破滅させる奔放な女賭して描かれたカルメン。実際の女工たちは、男尊女卑の時代に、治安警察に見張られながらも、待遇改善を求めてストをしたり、職場に託児所を作ったり、という女性労働者の草分け、先駆者。想像上の人物であるカルメンと、実際に工場で働いていた女たち。ビゼーの音楽を換骨奪胎し、元の音楽がわかるけれど微妙に違うメロディになっていたり、後半で闘牛のイメージを踊ったりなど『カルメン』的なものもあるのだけれど、胸が熱くなるのは、女たち、ラファエラと6人のダンサーたち、カンタオーラ、ヘマ・カバジェーロとクラシック歌手たちが一緒に手を動かしながら歌う場面。これはスペイン、カスティージャ地方に伝わる、手や机を叩いてリズムを取りながら歌われるパネデーラス、女パン職人たち、と呼ばれるものをアレンジしたもの(だと思う)や、


©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza

最後の最後、ヘレスのクリスマスソング『ロマンセ・デ・レレン、レレン』のメロディで全員で歌うところ。シスターフッドというか、女性たちの連帯が伝わってくる場面だと思う。

ラファエラの高い美意識と、長年彼女の作品の照明を担当するグロリア・モンテシノの腕前で、とにかく全ての場面が美しく、雰囲気がある。床の模様、天井の高い建物というのがわかる大きな格子窓、

©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza

女工たちが愛用したというマントン、

©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza



葉巻…

©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza

といったタバコ工場ゆかりのイメージはそこかしこにあるし、音楽でもビゼーの曲だけでなく、タバコの産地キューバゆかりのグアヒーラが歌われるなども。フラメンコ、クラシック、民謡、機会音のようなものなど音楽も入り組んでいれば、踊りもコンテンポラリー的な要素もあれば、純フラメンコ的なものもあるという複雑な構造で、いろんな要素があるので全部をちゃんと理解していたかというと自信がない。『カルメン』のような明確な物語があるわけではないというのもあるだろう。ラファエラが椅子の上に立って、女工たちに関する当時の新聞記事をメガフォンで読み上げるシーンとか、カルメンのイメージでの闘牛のところとか、わかりやすい部分もあるのだけれど。彼女の他の作品に比べてもそれぞれの場面の意味など考え出すとわからなくなる。いや考えずに踊りを楽しめばいいだけなのかもしれないけれど。


©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza


6月10日からarte.tvで観ることができるようなので観て確認するつもり。

あとタバコ女工を語る上では避けて通れなかったのかもしれないけれど、カルメンは音楽もその要素も全て無視でも良かったようにも思ったりしたことでした。

とにかく美しい作品なのでWEB公開されたらまたお知らせしますね。



2026年5月24日日曜日

アンダルシア・フラメンコ『バイランド・アル・カンテ』

 アンダルシア州のフラメンコ公演シリーズ。金曜にエバ・ジェルバブエナで開幕。そして土曜はピニョーナ、ペペ・トーレス、アデラ・カンパージョ、ラファエル・カンパージョと4人の踊り手が出演する、ガラ的な作品。ピニョーナ以外の3人は作品作りが得意とは言えないけ実力派。90年代以降、自分で作品を作らないとフェスティバルなどへの出演の機会がない、という傾向が顕著になっていて、踊りはすごいんだけど作品作りに意欲的ではない踊り手達が影に隠れがちになるという状況が続いている今、そんな踊り手たちを集めて一つの作品にまとめる、というのは意義があることだと思います。

幕が上がると後ろ姿の4人の踊り手と3人の歌い手がそれぞれに上からの照明があたり、歌に合わせて、踊り手が順番に前を向き向き、一人づつ踊り継いで行く、という、かっこいいオープニングと、最後、全員が半円に座ってフィエスタのように踊るブレリア以外は、それぞれのソロというガラ公演的な構成なのですが、トップバッターのアデラは下手、ラファエルは上手、ピニョーナは舞台全体を大きく使い、ぺぺは真ん中と、踊る位置、歌い手の位置も変わり、また、曲から曲へのつながりもスムーズで“作品”の形がちゃんとできているという感じ。また舞踊を支える歌い手3人、ペチュギータ、マヌエル・デ・ラ・ネナ、イスマエル・デ・ラ・ロサも若手ながら実力派。ギターはヘスス・ロドリゲスとホセリート・ペレス。

アデラのソレア・ポル・ブレリアはセビージャ的。マティルデ・コラルの女性らしい優雅さではなくホセ・ガルバン系というか、もっと雄々しいというか、仄暗く、どうだ!っていう強さがある。ラファエルのティエントは抜きが絶品。タンゴではトリアーナ感満杯のマノロ・マリン系。ピニョーナはタラントを舞台いっぱいに踊る。タブラオが主な舞台である3人よりも劇場公演が得意なのだろう。ぺぺはソレア。彼の踊りにも、ラファエル・エル・ネグロのようなセビージャのヒターノたちの舞踊の系譜が感じられる。それぞれ個性が違うから見飽きない。

最後のブレリアで、踊り始めたアデラにラファエルが加わり、ラファエル一人のところにぺぺが加わるというブレリアも良き。最初の二人のソロの繋ぎのところもそうだけど、この兄妹の絡み、すごくいい。またラファエルとぺぺ、二人で踊るのはグイトとマリオを彷彿とさせてこれもかっこいい。



終演後、劇場のバルでは誰がいいとか好きとか話も弾んだのでありました。

またヘレスのフェスティバルとかでやってくれないかな。でもギターはフアン・カンパージョがいいな。(この日は他の仕事だったらしい)


2026年5月23日土曜日

ノエリア・ルイスen トーレス・マカレーナ

 いやあ、良かった。行って良かった。5月のセビージャはフラメンコ公演が目白押しで、22日金曜はセントラル劇場でエバ・ジェルバブエナ公演があったのだけど、エバの同タイトルの作品はヘレスでも観たし、それよりセビージャでソロで踊るのを観る機会がない、ノエリアを観たいと思ったのでありました。

2021年劇場の客席も1席開けて座るようなコロナ禍の中、セビージャのマエストランサ劇場で初演された『エスタンパス・フラメンカス』の中のバタ・デ・コーラにマントンでのカラコーレスの中でソロを踊っていたダンサーが素晴らしく、でも誰かわからず、マリベル・ガジャルドに名前を聞きに行ったのが、彼女を知るきっかけでした。

1997年マラガ生まれ、地元のコンセルバトリオで学び、国立入団は2019年、ルベン・オルモ監督になってのオーディションで、というほぼ新人にも関わらず立派なソロを踊っているということにびっくり。かたちの美しさ、バタをはじめとした確かな技術、押し出しの良さ、とどれをとっても一流だったのです。

2021年4月のスペイン国立バレエ団公演でのノエリア

その後も、国立バレエ団公演で、プリンシパル、エステル・フラードが踊っていた役や、ゲストプリンシパルを務めたパトリシア・ゲレーロが主演した『ラ・ベジャ・オテロ』を踊るなど、フラメンコ作品に欠かせない存在として活躍しています。マドリードではタブラオにもよく出演しているようですが、セビージャでこれまで彼女のソロを観る機会は私が知る限りありませんでした。

公演は日本でもお馴染みパコ・イグレシアスのギターソロでのマラゲーニャに始まり


国立バレエの歌い手でもあるガブリエル・デ・ラ・トマサのカンテソロでソレア。これが良かった。トリアーナのそれあの難しいメロディラインを正確にしかも感情を込めて辿っていくのに引き込まれる。

これまで何度も、舞踊伴唱で、ソロで、と聴いているんだけど、一番良かった。

舞踊はタラント。シンプルな衣装(茶色系とかならより良かったかも?)で抑制されたタラントらしい表現を最初から最後まで筋を通す。芝居がかっているというわけじゃないのだけど、彼女自身がタラントという曲の中に入り込んで踊っているという感じ。

そう、これこそタラント!私が観たいのはこういうタラント。オーソドックスで形の美しさが天下一品。




休憩を挟んでの二部はカンテソロでファンダンゴから

一曲づつ歌い、フアン・ホセ・アマドール“ペッレ”がギタリストに調性を変えて歌った後、客席からガブリエルの父、ホセ・デ・ラ・トマサがひとふし。豪華な飛び入り出演。


そしてアレグリアスはバタ・デ・コーラで。



バタのコントロールも絶品。




ペーニャの楽屋は下手側にあって、そこから客席の通路を通って舞台に出ていくのだけど、その舞台に向かう足取りからもう舞踊になっているのが素晴らしい。おp取手によってはつかつかと普通に歩いてきて舞台に上がってから踊りが始まるのだけど、舞台へあがる足取りもタラントならタラント、アレグリアスならアレグリアスのアイレになっている踊り手は本物のアルティスタだと思うのであります。

この日はいつもより観にきている踊り手が少なかったのは本当に残念だったけど、フィン・デ・フィエスタには水曜日の主役マヌエルが舞台に上がりました。


あー、昨日のマヌエラといい、やっぱいいフラメンコ観ると元気になりますね。





2026年5月22日金曜日

マヌエラ・カラスコ『マヌエラ』

カハソル財団のフエベス・フラメンコス、今季のトップバッターはマヌエラ・カラスコ。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol



言わずともがなの女神マヌエラ様カラスコ様。マヌエラエラはムーチャ・マヌエラ。そこにいるだけでフラメンコ。我々下々の民はその足元にひれ伏すしかない。

何故かエンリケ・エストレメーニョが不在で、歌はマヌエル・タニェとフアン・フアネロだったんだけど、夫ホアキン・アマドールを亡くして以来、ペドロ・シエラのギターでの伴奏でも彼女は彼女であり続けるように、彼女の舞台に不可欠な存在であるエンリケがいなくとも、彼女のアルテには一点の曇りもない。

そりゃ、より年並み、往年よりは背筋が落ちてるかもとか、思う瞬間がないではないのだけど、それを補ってあまりあるエネルギー、パワー、存在感、カリスマ、アルテで、観ているこちらもパワーアップされるのだ。

オープニングはハレオ。マントンも衣装も豪華で(頭の花はもう少し控えめでもいいようにも思うけど)、ただそこにいるだけでも豪華な存在であるマヌエラがより際立つ。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol


セビージャの若手、ペテーテとミゲル・エル・ルビオが、かつてのイスラエルとラファエル・カンパージョ、マヌエル・ベタンソスとアンヘル・アティエンサのようにマヌエラに従者のように脇にひかえ、求めに応じリズムを支える。

タニェのマラゲーニャ(任に合わない気が)に続きペテーテのソレア・ポル・ブレリア。やる気満々。
©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol



フアンのティエントに続きルビオのアレグリアス.これがよかった。詰め込みすぎず、いい間合いをとってバシッと決める。緩急の呼吸はフラメンコに必須。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol


そして最後はこれ以外にはないよね、マヌエラのソレア。フレコが体を斜めに横切るようにつけられた真紅の衣装。凝った照明や装置も何もいらない。彼女自身がアルテそのもだからそれだけで極上の空間となり、最高のフラメンコ。





なんかもう偉大すぎて言葉もない。67歳。引退って話もありましたが、気が向いた時だけでいいので舞台お願いします。マヌエラのフラメンコ、ずっとみていたい。


2026年5月21日木曜日

マヌエル・モンテスen トーレス・マカレーナ

 今年、ヘレスでのエステベス/パーニョス公演に出演していたマヌエル・モンテスを観にペーニャへ。

1997年コルドバ生まれ。地元の教室やコルドバとマドリードのコンセルバトリオに学び、エステベス/パーニョスが監督を務めていたアンダルシア舞踊団などで活躍し、現在はセビージャのタブラオなどに出演している実力派。

真っ暗な中舞台に進み、舞台中央の椅子に座ってギターを弾き始めるフアン・アンギータと背中合わせで座り、ギタリストの肩越しにのぞいたマヌエルが満面の笑顔だったので、あ、アレグリアスだな、と。予想的中。

丈の短いジャケットに、腰高のズボンというアンダルシアの伝統的な衣装で踊り始める。細かいサパテアード、力強いゴルぺ。


ギターソロ
終わるとギタリストは引っ込み、歌い手二人、ペーニャのレギュラー?と思えるくらい最多出演のガジとラビ。トナー。そこへ黒い衣装に着替えたマヌエルが登場してマルティネーテ。

曲を普通に踊るというのはいつもタブラオでやっているから、一人だけの舞台ということでテアトロみたいにしたかったのかもしれません。

凝った?サパテアードとかうまい。若いパワーで、ぐいぐい行きます。

休憩を挟んだ二部はカンテソロに始まり、ソレア。


この日の3曲のうちでは一番踊り慣れているのか曲としてのまとまりもいい感じかな。若い人あるあるで、色々詰め込みすぎなところはあるけれど、あまり動かずに踊ることもできてくればもっとよくなるように思ったことでした。地力はあるから。

フィン・デ・フィエスタでは来週水曜日に踊るウーゴ・アギラールも踊っています。ヘレスでの兄弟公演も良かったから期待大!




2026年5月20日水曜日

ビエナル記者会見ロペ・デ・ベガ劇場公演出演者

 5月19日、ロペ・デ・ベガ劇場前のレストランにて、今秋のビエナルで、ロペ・デ・ベガ劇場で公演を行うアルティスタたちによる記者会見/談話会が行われました。



セビージャ市立のロペ・デ・ベガ劇場はマエストランサ劇場ができるまではバレエもクラシックもジャズも全部ここで行われていたたセビージャを代表する劇場。1929年セビージャで行われたイベロアメリカ博覧会のために作られ、長年、さまざまな公演が行われてきました。もちろんフラメンコ公演も多く行われ、ビエナルも1980年の第1回から主な会場の一つとしてあまたの感動を与えてくれましたが、2023年秋より改装工事のため閉館しており、24年のビエナルでは、会場として使われることがありませんでした。現在も工事は続いていますが進捗状況は良好とのことで、9月12日、ピアニスト、ドランテスの公演でこけら落としとなる予定だそう。他にもアルカンヘルやアントニオ・レジェス、マイテ・マルティン、アウロラ・バルガスとバルガスとフアナ・アマジャ、ラファエル・リケーニ、そしてマノロ・マリンとアナ・マリア・ブエノが出演するセビジャーナスの公演も行われます。

記者会見の模様をビデオにしたのでよければどうぞ。最後、アントニオがちょこっと歌っていますよ。司会を務めているのはビエナル監督ルイス・イバッラ。元々ジャーナリストということもあるのでしょうが、いつもあんちょこなしで見事な司会を見せてくれます。





パストーラ・ガルバン『6タクシ6』

 舞台の上には二脚の椅子。歌い手もギタリストもいない。タイトスカートにドラッグクイーンのようなあげぞこの派手なブーツで現れ、客席を見渡し、手でハートマークを作ってみせる。

華やかな衣装も、アクセサリーもない。プログラムには、ローマ、コパカバーナ、カサブランカ、トランシルバニア、ヌエバ・オルレアンズ(ニューオリンズ)、トリアーナと6つの都市の名とその地にちなんだ曲がプログラムには記されていて、タイトルもそういうことなのだろうけど、実際にその曲がかかってその曲の中で踊ったりもするのだけど、その曲と曲がないところで時に自分で歌ったり、後半登場するラモン・マルティネスのパルマで踊ったり。一つのテーマのまとまった作品というより、コント集のような感じ、といえば伝わるかな? 

タクシーと叫んでタクシーを止める仕草をする。椅子に座って安全ベルトを装着する仕草。軽やかなカルロタズギャロップの曲は映画『8 1/2』の曲だけど、ハチャトリアンの剣の舞にも似た感じで、確かに街を行くタクシー感がある。座ってイタリア語を話し始めるパストーラ。 という最初の場面は芝居がかってて、先日のロシオ・モリーナじゃないけど、演劇に行くのか?と思わせたけどそれは危惧で、音楽は音楽、でも彼女は自分でリズム作って踊る踊る。

靴をスニーカーやぺたんこの靴、パンプス、かかとの高いブーツと履き替えるだけで衣装替えも何もないんだけど、目が離せない。音楽がなくとも彼女の踊りはフラメンコ。

 ©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol

そう、フラメンコは一人でもできる。

でも後半、ラモン・マルティネスが登場することによって明らかに作品としてもフラメンコとしても厚みが増し、より良くなったのも確か。

タクシー運転手となって、ラジオのチューニングを口でやったり、テキエロ、愛してるを各国語で言ったり歌ったり、ユーモアたっぷりに相手役を務めた。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol


パストーラ・パボン、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスのセビジャーナスをカスタネット付きで、でも基本の振り付けとは全く違う感じで踊って幕。

いやいや、舞台見てて、色々思い出しましたよ。

タイトスカートは、マリア・パヘス舞踊団時代、『ラ・ティラーナ美術館の亡霊』で履いてたのを思い出したし、背番号を指さすような仕草は『フランセサ』という、フランスをテーマにした作品を思い出させる。最後のセビジャーナスは、大昔、イスラエルと踊った、イスラエルが全然動かないセビジャーナスやこれも昔、ルベン・オルモと共演してたことを思い出させたのでした。過去をめぐるタクシーだったわけでもないだろうけど。

結論。フラメンカは何をやろうとフラメンカ。ロシオしかり、パストーラしかり。

2026年5月17日日曜日

正木清香、三枝麻衣、瀬戸口琴葉en トーレス・マカレーナ

エミリオ・マジャ率いる日本人バイラオーラたちのグラナダ、ヘレス公演に先駆けて、同公演出演のため来西中の正木清香と三枝麻衣がセビージャ在住の瀬戸口琴葉とペーニャ、トーレス・マカレーナに出演。

金曜日ということもあってほぼ満席。

クーロ・バルガスのギターソロで幕を開け、正木はティエント。歌はガジとラビ。

真っ直ぐな、真面目なティエント。



タンゴでもっと変化つけてもいいかもしれない。トップバッターだったから緊張してたのかな。

続いて、スペインで踊るのは初めてという三枝麻衣。ソレア。

ソレアらしい重さの表現もちゃんとしているし、ムシコたちを引っ張っていく力もある。


休憩を挟んで二部はカンテソロでは珍しいロンデーニャから始まり




瀬戸口はソレア・ポル・ブレリア。髪をお団子に結ってくれているのが嬉しい。そうです。セビージャはお団子! いや、セビージャで踊るなら絶対おだんごってわけじゃないけど、セビージャにいるならセビージャらしいあつらえを、って思う私は昭和かも。
以前に見た時よりもずっと力が抜けて、歌をギターを満喫して自由に踊っている感じで、何より楽しそう。踊りがただ上手なだけでなく表情が出てきた、という感じ。さすがです。

フィン・デ・フィエスタでは会場に見にきていた遠藤郷子や中原潤、萩原淳子も参加。遠藤の歌は観客を驚かせていたし、中原も姿勢が良くなってるし、セビージャ留学の効果はテキメン。萩原はもう貫禄。日本のフラメンコもレベル高い。



今回ちょっと気になった衣装のことはまた改めて書きますね。


2026年5月15日金曜日

訃報/エル・カブレーロ

 歌い手、エル・カブレーロが5月13日、セビージャ郊外の病院で亡くなりました。81歳でした。

本名ホセ・ドミンゲス・ムニョスは1944年10月19日セビージャ県県アスナルコジャールの生まれ。カブレーロとは山羊飼いのことで、その名の通り、子供の頃から山羊飼いを職とし、ラジオでフラメンコを聴いて学んだと言われます。 70年代にセビージャの劇団、ラ・クアドラの作品でプロとしてのキャリアをはじめ、75年に初録音。80年にはコルドバのコンクール、ソレア部門、マラゲーニャ部門で優勝し、80年代、90年代は各地のフラメンコ・フェスティバルを主に活躍。得意のファンダンゴでは社会的政治的テーマを歌うことも多く、高い人気があった。

黒いシャツに黒いズボン、カーボーイハット(のようなツバの広い帽子)と首に巻いたチーフがトレードマーク。パワフルな声で歌う彼はフェスティバルでカマロンと並ぶほどの人気で、観客の熱狂を昨日のことのように思い出します。パセオ誌で活躍した写真家の高瀬さんはカブレーロのブレリアが好きだったなあ。

2020年に引退、その後脳梗塞を患ったそうです。



合掌。

彼についてのドキュメンタリーがYoutubeで無料で見られます。



これ観ていると、音程いいし、ファンダンゴだけでなく、ファルーカなんかも歌っているし、レパートリー広かったんだな、と。ただフェスティバルでは数曲しか歌わないから、ファンダンゴとブレリア主体になっていたんだろうな、と思うなど。スペイン語母語じゃないこともあってか、ファンダンゴ苦手だったんだよね、あの頃。

2026年5月14日木曜日

サロメ・ラミレスen トーレス・マカレーナ

 Impecable って言うスペイン語の言葉がある。辞書をひくと、「欠点のない、完璧な、」とある。文句のつけようのない、ってことですね。昨日のサロメがそうだった。

豪華なマントン、華やかなピンクのバタ・デ・コーラは花のようなフリルで裏打ちされ、下りお団子にまとめた髪に小さめのこれもピンクの花が綺麗につけられている。まさにまさにインペカブレ、非の打ちどころの無い、完璧なフラメンカ。バタもひっくり返ったまんまになったりすることなく、優雅に舞い、手に取る時もかがまず蹴って手に取り、小さな舞台でもしっかりコントロールして最前列の観客を煩わせることがない。マントンも余裕を持って扱い、きちんとしている。伝統的な構成で、全てがきちんとしている正統派フラメンコ。歌のミゲル・アンヘル・エレディアとの相性も抜群。ヘレスの時より何倍も良かった。


フラメンコ舞踊に何を求めるか、どこを評価するかというのは人それぞれだと思うけど、私の場合オレ!が出るのは、コンパスの掴み方放し方などの間合い、呼吸にしびれるというのはあるんだけど、見た目の美しさというのもすごく重要視していて、姿勢、動きやかたちの美しさはもちろん、衣装やアクセサリー、小物などのあしらいが美しいとそれだけでもオレ!なのであります。

公演はアルバロ・モーラのギターソロのタランタに始まり、ジョナタン・レジェスのカンテソロでグアヒーラ。カンテソロでのグアヒーラは珍しい。彼の声や歌い方はこの曲種のもつゆったりした感じとはあまり合っていないような?

そしてこのアレグリアスでありました。休憩を挟んだ後半はミゲルのソロでタンゴからのコプラ。


そしてソレア。黒い衣装。飾りと言えるのはジャケットの黒いスパンコール(?)での飾りと、髪につけた臙脂の花だけ。シリアスな曲にふさわしい装い。ソレアらしい重み。ブレリアでのミゲルとの絡みも同じヘレスで昔から知っている仲だからこそ、かも。


フィン・デ・フィエスタも、ダビ・ロメロ、マリア・カラスコ、チョロ、瀬戸口琴葉という豪華な顔ぶれでした。


明日、15日はその瀬戸口と日本からの正木清香、三枝麻衣という日本人組がガジとラビの歌、クーロ・バルガスのギターで共演。楽しみです。


2026年5月13日水曜日

フラメンコ・オン・ファイア2026


北スペイン最大のフラメンコ祭、フラメンコ・オン・ファイアが今年も開催されます。
今年で13回目。
牛追い祭りで知られる街、パンプローナで開催されるこのフェスティバル、
今年のフェスティバルは、パンプローナゆかりのヘミングウエイの写真がポスターに。
バルコニーでの無料リサイタルでも知られていますが、毎年、ギター公演も充実しています。


◇フラメンコ・オン・ファイア

8/21(金)19時45分

[出]〈g〉ホセ・ガルベス

[場]ビアナ 市役所バルコニー

8/21(金)21時

[出]〈c〉マイテ・マルティン

[場]ビアナ サン・ペドロ遺跡

8/22(土)19時45分

[出]〈g〉ダビ・デ・アラアル

8/22(土)21時

[出]〈c〉サンドラ・カラスコ、〈g〉ダビ・デ・アラアル、〈b〉アナ・モラーレス

[場]エステジャ/リサッラ エスパシオ・クルトゥラルラル・ロス・ジャノス

8/26(水)18時30分

[出]〈g〉フアン・ディエゴ・マテオス

[場]パンプローナ  Civivox コンデスタブレ

8/26(水)20時『トレス・オリージャス』

[出]〈g〉ラファエル・リケーニ、〈サックス〉ティム・ライズ、〈歌〉アナ・モウラ

[場]パンプローナ ガジャレ劇場

8/26(水)21時45分

[出]〈g〉フェリペ・マジャ

[場]パンプローナ ナバラ政府バルコニー

8/26(水)22時45分

[出]〈c〉ラ・ファビ

[場]パンプローナ オテル・トレス・レジェス

8/27(木)12時

[出]〈c〉ラ・ファビ、〈g〉クーロ・カラスコ

[場]パンプローナ 市役所バルコニー

8/27(木)12時45分

[出]〈c〉モレニート・デ・イジョラ、〈g〉ヘロニモ・マジャ

[場]パンプローナ ホテル・ペルラ・バルコニー

8/27(木)18時30分

[出]〈g〉フェリペ・マジャ、ヘロニモ・マジャ

[場]パンプローナ  Civivox コンデスタブレ 

8/27(木)19時45分

[出]セルバタナ

[場]パンプローナ サラ・セントラル

8/27(木)21時15分『カンタ・ア・マヌエル・アレハンドロ』

[出]〈c〉ホセ・メルセ

[場]パンプローナ アウディトリオ・バルアルテ

8/27(水)23時15分

[出]〈b〉アゲダ・サアベドラ

[場]パンプローナ オテル・トレス・レジェス

8/28(金)12時

[出]〈c〉ホセ・メルセ、〈g〉マヌエル・セルパ

[場]パンプローナ 市役所バルコニー 

8/28(木)12時45分

[出]〈c〉カルメン・カルモナ、〈g〉フアンホ・レオン

[場]パンプローナ ホテル・ペルラ・バルコニー

8/28(金)18時30分

[出]〈g〉ホセリート・アセド

[場]パンプローナ  Civivox コンデスタブレ

8/28(金)19時45分

[出]〈c〉ロサリオ・ラ・トレメンディータ

[場]パンプローナ サラ・セントラル 

8/28(金)21時15分『ムエルタ・デ・アモール』

[出]〈b〉マヌエル・リニャン

[場]パンプローナ アウディトリオ・バルアルテ

8/28(金)23時15分

[出]〈c〉エル・ペレ

[場]パンプローナ オテル・トレス・レジェス

8/29(土)12時

[出]〈c〉エル・ペレ、〈g〉ニーニョ・セベ

[場]パンプローナ 市役所バルコニー

8/29(土)12時45分

[出]〈c〉ミゲル・アンヘル・エレディア、〈g〉クリストバル・サンティアゴ

[場]パンプローナ ホテル・ペルラ・バルコニー

 8/29(金)18時30分

[出]〈g〉アレハンドロ・ウルタード

[場]パンプローナ  Civivox コンデスタブレ

8/29(土)21時15分『ソロ』

[出]〈g〉ジェライ・コルテス

[場]パンプローナ アウディトリオ・バルアルテ

8/29(土)22時45分

[出]〈b〉パロマ・ファントバ

[場]パンプローナ オテル・トレス・レジェス

[問] https://www.flamencoonfire.com/


 

2026年5月12日火曜日

ギリホンド祭

セビージャ郊外の街、パロマーレス・デル・リオでの、外国人フラメンコに焦点を当てた世界で唯一のフラメンコ祭、ギリホンドが今年も開催されます。
2024年は日本、25年はフランス、そして、26年はオランダが招待国ということで、オランダ人アフィシオナードや記者、プロデューサーが表彰され、またオランダ人ギタリストや踊り手の公演が行われるほか、セビージャ在住の中国人ギタリスト、ロラ・ヤンの公演では中国人カンタオールやお母さんが日本人のマレーナ・アルバも出演します。
最終日にはエル・ペレも出演するとか。


◇ギリホンド祭

6/3(水)

20時開会宣言、21時 マルリエ・ジャンセン講演

22時

[出]〈g〉ガスパール・デ・オランダ、ゲスト〈c〉ヘスス・メンデス

6/4(木)

20時ギタリスト、パコ・ペーニャへのインタビュー

21時『ギリス・コン・アヘ』[出]〈g〉ロラ・ヤン、〈c〉マヌエル・デ・ラ・チナ、〈b〉 マレーナ・アルバ

21時45分

[出]〈b〉マリア・ラ・セラーナ、〈c〉フアン・ホセ・アマドール、ぺぺ・デ・プーラ、〈g〉ルイス・アマドール

6/5(金)

20時オランダのビエナル監督エルネスティーナへのインタビュー

21時30分『ゴッホに捧げる』

[出]〈g〉ティノ・ヴァン・デル・スマン、〈b〉クリスティーナ・ホール、特別協力〈c〉ダビ・ラゴス

[場]セビージャ県パロマーレス・デル・リオ 市立カルロス・アルバレス・ノボア劇場

6/6(土)

20時 クリスティーナ・ヘーレン小授賞式

22時30分

[出]〈c〉エル・ペレ、エル・トゥリ、〈g〉ニーニョ・セベ、ホセ・フェルミン

[場]セビージャ県パロマーレス・デル・リオ バーニョス・アラベス

[問]https://www.guirijondo.com/