森田志保のソロライブ。巨匠エンリケ・エル・エストレメーニョ、その息子ニョニョのギター、三枝雄輔のパルマというシンプルな舞台。これが最高の最高!至高のひとときだったのだ。
森田はフラメンコ の神様をおろす巫女なのだ。それぞれの曲の、そして歌い手がライブで歌っているカンテのセンティード、意味そして方向性を正確に理解し受け取り、表現していくのだ。意味というのはスペイン語の歌詞を日本語で理解しているという意味ではなく、もっと本質的な、なぜそこにそのフラメンコなのか的なところ。それをまるで動物の本能のように感じて表現していくのだ。それがすごい。
もともと好きな踊り手ではあるのだけど、今夜は神がかっていた。ロマンセのゆったりしたコンパスに物語がみえる。ニョニョのギターソロが雰囲気をより一層盛り上げ、タラントはドラマチックに抑制された中に悲劇性をも感じさせ、タンゴではじける。王道の流れなのだが、そのタンゴでもう涙が止まらない。
フラメンコ を観て涙することは時々ある。音楽や形の美しさに心が震えて、ということもあれば、表現の中に自分と通じる感情や考えを感じて、ということもある。そしてなんだかわからないけど涙、ということもある。泣くということは個人的なことなのでこういう場に書くのもなんか違うのかもしれないけど、とにかく今夜の舞台を観て身体の奥底から湧き上がってくる感情が止められず、号泣。
エンリケのカンテソロはアバンドラオ。ロンデーニャ、ハベーラと曲種を言って歌う親切さ。そして全力の熱唱で聴いていて幸せになる。
最後はアレグリアス。これがもう舞台に上がる前の足取りからしてアレグリアスなのだ。そう、これがフラメンコ 。私が好きなフラメンコ だ。うたを聴いて感じたままに踊る。歌も踊りも自由で自然。そのなかに人生や真理が詰まってる。
エンリケの歌、パルマ(雄輔くん、スペイン人に引けを取らない。エンリケとの弾丸パルマ最高でした。最後のパタイータも凄み増してるし)、ギター(ちょいモダンなタラントのイントロ都会ツボ。もっとスペインでも聴きたい)、踊り、客席の空気、観客の期待と感嘆、ハレオ、全てが一体となって大きな渦ができてすべてを巻き込んでいく。エンリケの本気を引き出し相乗効果でどんどん高みに上がっていく。というのか、その渦にフラメンコ の神様が降臨されるというか。
生きててよかった、まじでそう思える瞬間がありました。終わって感動を本人に伝えようとしてる時にまた出てくる涙。なんなんだろう。とにかく心揺さぶられたのであります。
ありがとうございました。