2019年12月21日土曜日

ハビエル・バロン最高!

セビージャはトリアーナ。
プレサ通りにあるクリスティーナ・ヘーレン財団にあるトリアーナ・フラメンコ劇場。
うちから5分。
そこにハビエル・バロンが出ると聞いてはいかないわけにはいきません。

毎日公演があって、普段からラファエル・カンパージョやフェルナンド・ヒメネス、ルイサ・パリシオら、実力派が出演しているところですが、ハビエルはやっぱり特別。
日本やマドリードはともかく、セビージャのタブラオでは踊ったことないんじゃないかな。

共演はタマラ・ルシオ。
オープニングのタンゴからハビエル見せてくれます。
何、この足!凄すぎない?
余裕を持ってコンパスに入る、という感じ。
靴音のクリアで美しいこと!


いやハビエルと踊るの可哀想。といってもいいくらい。
どうしても音の違いやコンパスの揺れが目立っちゃう。
ビセンテ・ヘロのカンテソロのマラゲーニャを挟んで、
タマラのグアヒーラ。
グアヒーラは眉間にしわよせて踊ってはいけません。こわいお顔じゃダメ。
ゆったり緩やかに笑顔見せてほしいなあ。


サルバドール・グティエレスのギターソロに続き、ハビエルのソロはソレア・ポル・ブレリア。最高!
もう、空中に浮いているかと思うような、っていうと、フラメンコだと褒め言葉じゃないようだけど、そうじゃない。軽やかだけど、しっかり足は地についている。

彼の踊るのが楽しくてしょうがない、という気持ちが見ているこちらにも伝わってくる。
いやあ、プーロ!
こんなにも純粋にフラメンコが好きでフラメンコを踊っている人を見るのは久しぶりなような。


ブレリアに入ってからも最高で、ユーモア交えて、いやあ、上がる上がる。


明日21日までやってます。

もしまた機会があったら是非見逃さないで。
フラメンコ知らない人ももちろん楽しめます。

会場はここ、テアトロ・フラメンコ・デ・トリアーナ。
http://www.teatroflamencotriana.com

終演後は近くでタパでも〜。トリアーナ観光も兼ねて是非


芸術金メダル

今年の芸術金メダル、メダジャ・デ・オロ・デ・ベジャス・アルテスの受賞者が発表された。

映画女優やシェフ、建築家などに並んでフラメンコ関係者も。

沖仁も師としたうギタリスト、ビクトル・モンへ“セラニート”。
ベテラン、カンタオーラ、マリア・バルガス。
コルドバのカンタオール、エル・ペレ。
そしてグラナダのペーニャ、プラテリアと
アルメリアのペーニャ、エル・タラント。

おめでとうございます。


2019年12月7日土曜日

カルメリージャ・モントージャに捧げる

愛!
愛にあふれた空間、時間でありました。
みんなの思いが形になった、そんな感じ。
愛だけでできている公演。

12月5日、セビージャのFIBESで行われたカルメリージャへのオメナヘ。
オメナヘとはオマージュ。誰かに捧げられるもの 。

カルメリージャ・モントージャは1962年セビージャ生まれ。
母は歌い手カルメン・モントージャ。その兄は踊り手フアン・モントージャ、その妻ラ・ネグラらとファミリア・モントージャとして活躍。
小さい時から歌い踊ってきた、トリアーナのフラメンコを体現する人。
15歳でへレスのフラメンコ学会のプレミオ・ナショナルを受賞。
98年には新宿『エル・フラメンコ』にも出演していました。

1988年タブラオ、エル・アレナルで。



実はこれが2回目のオメナヘです。
2013年、病気になり、闘病のため収入がなくなった彼女のために同じ会場でオメナヘが行われたのです。その後、回復し、2017年からはクリスティーナ・ヘーレン財団で教授活動を行うなど活躍していたのですが、病気が再発してしまったのです。

8月に発表されたポスターにあった出演予定者の中には仕事の関係で来れなかった人もいたけれど、それは予想の範囲。オメナヘでは基本、全員ギャラなしなので、他に仕事が入ると出られなくなることはよくあるのです。
ポスターには名前が載っていなかった人も含め、多くのアルティスタたちが参加しました。

たくさんのアルティスタが出演するオメナヘで問題になるのは出演順や方法。
今回は、スペイン国立バレエの監督、ルベン・オルモがそのあたりを調整。

開幕に先立ち、カルメリージャと、ファミリア・モントージャのプロデューサーで、彼女を子供のころから知っているという、今年、アンダルシア州のフラメンコ機構のディレクターに就任したばかりのリカルド・パチョンが挨拶。その挨拶には手話通訳。というのは彼女の息子は耳が不自由だから。「耳が不自由な人にもわかってほしい」ということで。



ラファエル・リケーニとパコ・ハラーナ、マノロ・フランコによる『アマルグーラ』。セビージャの人なら誰でも口ずさめる聖週間の名曲をフラメンコギターにアレンジしたもので、数年前のビエナルで3人で演奏した時には拍手が鳴りやまなかった。
胸が熱くなる。
リケーニの演奏で(その最新盤に収録されている曲だそう)、ルベンがマントンを翻して踊る、その美しさ。

続いては男性歌手たちが勢ぞろい。
ペチュギータがトナではじ目、セグンド・ファルコン、エル・ペレ、ホセ・バレンシアとソレアを歌い継いでいく。ホセ・デ・ラ・トマサはシギリージャ。そしてパンセキートが再びソレアで締める。
女性歌手たちはフィエスタ風に。
カルメリージャの従姉妹ローレの娘、アルバ・モリーナ、ラ・スーシ、レメディオス・アマジャはブレリアを歌い継ぎ、マリア・テレモート、エンカルナ・アニージョ、ラ・トバラはタンゴ。締めはアウロラ・バルガスのブレリア。エスペランサ・フェルナンデスは熱があって声がおかしいということで、エンカルナの歌で踊って参加。



カルメリージャの幼馴染でもある、スペインを代表する?漫才師、ロス・モランコスの小話やコントの後は、踊り手たちが登場。
カルメリージャのファミリーだというノエリア、カルメン・ヤング、ラ・ピニョーナ、アナベル・リベロ、マノリ・リオスがブレリアを踊り継ぎ、ロサリオ・トレドはハレオ・エストレメーニョ、そしてタンゴで、イニエスタ・コルテス、アナ・モラーレス、メルセデス・デ・コルドバ、パストーラ・ガルバン。アデラとラファエル・カンパージョはソレア・ポル・ブレリア。
かつて『フェードラ』で共演したアマドール・ロハスは、白いマントの王子様姿?でバイオリン伴奏で。おそらく自身の作品の一部であろう曲を踊り、88年のビエナルで『アマンテ』で共演したアントニオ・カナーレスはシギリージャ。エバ・ジェルバブエナはホセ・バレンシアが歌うクプレをマントンで。『アマンテ』やまたその作品でも共演したファルーカはソレア、ヘーレン財団学校教授の先輩、ミラグロスはアレグリアス。歌をマルカールしていく、ムイ・フラメンカ。舞踊のバックを支えた歌はセグンドとペチュギータ、伴奏はミゲル・ペレス、パコ・ハラーナ、フアン・カンパージョら。パーカッションにパコ・ベガら。


皆、カルメリージャを愛しているからこそ、ここに集い、歌い、踊る。

キレッキレのアナ・モラーレスや、カナーレスの舞台掌握、さすがエバ!という重み、皆それぞれにそれぞれの愛を語っている。

彼女のこれまでを振り返るビデオには、テレビ番組『リト・イ・ヘオグラフィア・デル・カンテ』で歌う幼い頃の姿をはじめ、カマロンの歌で踊るところやビエナルやテレビ出演時や様々なシーンが。
思い出します。




休憩なし3時間余りの長丁場で、持ち時間をオーバーして?長く歌う人などもいたりして、正直、退屈な瞬間もないではなかったけれど、みんながカルメリージャを愛している、というのは伝わってきました。



どうか快方に向かって、再び彼女の、小股の切れ上がった、火花のような、熱い踊りをまたみせてくれますように。

ちなみに出演していないけど、カルメン・レデスマも観に来ていましたよ。
「出演しなくても協力しなくちゃね」って。
いいなあ。愛だなあ。








2019年11月29日金曜日

へレスのオフフェスティバル

へレスのフェスティバルの時に開催されるオフ・フェスティバル。

本家本元のフェスティバルとは提携などの関係はないのだけど、フェスティバルは舞踊のフェスティバルということで手薄になりがちの、地元の人気アルティスタが出演するカンテのリサイタルなどもあり、歌好きの気持ちを補ってくれる感もあります。

とは言っても今年のプログラムを見るととにかく踊り中心。
地元のフラメンコ舞踊学校の生徒から、かつて本家フェスティバルに出演したこともあるプロまで幅広いプログラム。

日本人ではここ数年毎年出演している?萩原淳子だけでなく、エミリオ・マジャのプロデュース公演?や、ながみねはるか、また、フアン・ポルビージョと川本のりこ、石川慶子、ヒノキナオコなど、多数出演予定です。

今年はフェルナンド・デ・ラ・モレーナに捧げられ、息子のギター公演もあります。





◇オフ・フェスティバル2020ラ・グアリダ・デル・アンヘル
2/21(金)
17時[出]〈b〉マリア・ホセ・フランコ舞踊学校
19時[出]〈b〉エミリオ・マジャ 日本のフラメンコ
21時[出]〈b〉ダニエル・トーレス
23時[出]〈g〉アントニオ・レイ
0時30分[出]〈b〉スサナ・カサス
2/22(土)
17時[出]〈b〉カルメン・エレーラ舞踊学校
19時[出]〈b〉マリア・バルガス舞踊学校
21時[出]〈b〉フェルナンド・ガラン
23時[出]〈b〉ジェシカ・ブレア舞踊学校
0時30分[出]〈c〉マロコ、〈〈perc〉〉アネ・カラスコ
2/23(日)
17時[出]〈b〉マカレーナ・デ・へレス舞踊学校
19時[出]〈b〉ロリ・モリーナ舞踊学校
21時[出]〈b〉ホセ・ガルバン
23時[出]〈b〉ヘマ・モネオ
2/24(月)
17時[出]〈b〉
19時[出]〈b〉Daily Fuget
21時[出]〈b〉ベロニカ・ナランホ
23時[出]〈b〉マカレーナ・ラミレス
2/25(火)
17時[出]〈b〉
19時[出]〈b〉ホセ・ルセーナ
21時[出]〈b〉キム・マセド
23時[出]〈b〉パウラ・シエラ
2/26(水)
17時[出]〈b〉アナ・パストラーナ
19時[出]〈b〉タティアナ・ルイス、チキ・デ・へレス
21時[出]〈b〉メリサ・ピコン
23時[出]〈c〉イスラエル・フェルナンデス、〈g〉ディエゴ・デル・モラオ
2/27(木)
17時[出]〈b〉バネサ・ビスコチョ
19時[出]〈b〉フアン・ポルビージョ舞踊学校
21時[出]〈c〉ウィロ・デル・プエルト
23時[出]〈c〉ビセンテ・ソト“ソルデーラ”
0時30分[出]〈b〉ヘマ・モネオ
2/28(金)
17時[出]〈b〉チキ・デ・へレス、タティアナ・ルイス舞踊学校
19時[出]〈b〉マルタ・デ・トロジャ
21時[出]〈b〉ハイメ・カラ、イレネ・オリバレス
23時[出]〈b〉ラファエル・カンパージョ
0時30分[出]〈c〉ホセ・ソト“ソルデリータ”
2/29(土)
17時[出]〈b〉マリア・バルガス舞踊学校
19時[出]〈b〉ラ・トゥルコ、クリスティアン
21時[出]〈b〉ヘスーリ・カリージョ
23時[出]『シン・スルフィトス』〈c〉アントニオ・アグヘータス・チーコ、〈b〉ベアトリス・モラーレス
0時30分[出]〈c〉モンセ・コルテス
3/1(日)
17時[出]〈b〉マリア・デル・マル・モレーノ舞踊学校
19時[出]〈b〉フェルナンド・ヒメネス
21時[出]〈b〉フアン・ロレート
23時[出]〈g〉フェルナンド・デ・ラ・モレーナズ・バンド
3/2(月)
17時[出]〈b〉
19時[出]〈b〉エウヘニア・ヒメネス&アンドレア・デ・トマサ
21時[出]〈b〉ネレア・ドミンゲス
23時[出]〈b〉ロシオ・ロメーロ、〈c〉アントニオ・マレーナ
3/3(火)
17時[出]〈b〉ラ・ジュンコ萩原淳子
19時[出]〈b〉クララ・グティエレス
21時[出]〈c〉エンリケ・アファナドール
23時[出]『シグロス・デ・グロリア』〈c〉アントニオ・ペーニャ・カルピオ“エル・トロ”
3/4(水)
17時[出]〈b〉
19時[出]〈b〉ながみねはるか
21時[出]フラメンコ・フュージョン“トリアンド”
23時[出]〈b〉アデラ・カンパージョ
3/5(木)
17時[出]〈b〉ラウラ・ピリ舞踊学校
19時[出]〈b〉マリエン・ルエバノ
21時[出]〈b〉ソフィア・デル・リオ
23時[出]〈b〉マリア・フンカル
3/6(金)
17時[出]〈b〉ロリ・モリーナ舞踊学校
19時[出]〈b〉アルムデナ・マリン舞踊学校
21時[出]〈b〉ビセンタ・ガルベス
23時[出]〈c〉ドローレス・アグヘータス
0時30分[出]〈c〉カプージョ・デ・へレス
3/7(土)
17時[出]〈b〉マリア・ホセ・ハエン舞踊学校
19時[出]〈b〉スサナ・チャコン舞踊学校
21時[出]〈b〉マリア・フェルナンデス
23時[出]〈b〉マカレーナ・デ・へレス
0時30分[出]ムーショ・ヒターノ
[場]へレス ラ・グアリダ・デ・ラ・アンヘル

[問]www.laguaridadelangel.es

2019年11月28日木曜日

アンダルシア舞踊団25周年記念公演

アンダルシア舞踊団25周年記念公演は11月26日、小雨模様のセビージャはマエストランサ劇場で。

アンダルシア舞踊団は1994年アンダルシア自治体政府により創立されました。

当初の名前はコンパニア・アンダルーサ・デ・ダンサ、初代監督はマリオ・マジャ。
以後、多くの才能を世に送り出してきたのであります。
ちなみに初代メンバーはゲストにアントニオ・アロンソとディエゴ・ジョリ、他にベレン・マジャ、イスラエル・ガルバン、イサベル・バジョン、ラファエラ・カラスコ、ベアトリス・マルティンがソリストで、群舞にはマヌエル・ベタンソやアンヘル・アティエンサ、マルコ・バルガス、ラモン・マルティネス、バレリアノ・パーニョら、まさに錚々たる顔ぶれだったのでありました。
マドリードのプエルタ・デル・ソルそばにあったアルベニス劇場での公演をはるばる観に行ったのを覚えてます。
その後、マリア・パヘス、ホセ・アントニオ、クリスティーナ・オヨス、ルベン・オルモ、ラファエラ・カラスコ、ラファエル・エステベスと、監督は代わり、現在はウルスラ・ロペスが芸術コーディネートという名の実質的な監督を務めています。

過去の作品の名場面などを集めての公演は、旗揚げ公演の第2部で上演された、マリオ・マジャ振付『レクイエム』に始まりました。
大掛かりなセットは映像に成っていましたが、ゲスト出演の、マリアノ・ベルナルとロサ・ベルモンテのパレハ(二人ともかつてメンバーだったことがあります。初演ではアントニオ・アロンソとベアトリス・マルティンだったかと思います)と、敵対するのはディエゴ・ジョリ。ディエゴは初演のそのままの役どころを踊ります。時の流れを感じさせません。
ラベルの『ボレロ』のようなリズムにヘマ・カバジェロが歌うアバンドラオ?の歌が乗ったり、男性たちによるバストンを使った振りの豪快さ。いやあ、やっぱマリオはすごかったなあ。
なお、この旗揚げ公演での第1部でのディエゴ・カラスコの曲を使ったフラメンコは、国立バレエで上演予定です。3月へレスでお披露目。こちらも楽しみです。

マリオの退団後、しばし監督は空席となりましたが、その時に初演されたのが、マノロ・マリンの振付での『イベリア組曲』と『アルトサーノのフラメンコ、ティエント タンゴ』。コルドバのグランテアトロでした。その時、注目されたのがラファエル・カンパージョ。その後、ホセ・アントニオ監督時代にも二人でのナンバー、『ゴルペ・ダ・ラ・ビダ』を踊るなど、舞踊団と縁の深いラファエル。マノロの振付にインスパイアされたというタンゴを踊りました。マエストランサの大きな舞台で一人きり。得意曲だけにしっかり踊ります。

1996年『アンダルシアの犬、ブルレリアス』を振り付けたマリア・パヘスが監督に就任します。この代表作のセントラル劇場での公演は衝撃的でした。キューバの歌謡やピアソラのアルゼンチンタンゴなどなど、フラメンコじゃない曲をフラメンコで踊っている! 振付賞も受賞したこの作品の再演は残念ながらされませんでした。見たかったなあ。

1997年、元スペイン国立バレエ団監督のホセ・アントニオが監督に就任します。
そこに呼ばれてハビエル・ラトーレがエンリケ・モレンテの『ファンタシア・デ・カンテ・ホンド』に振り付けた『コサス・デ・パジョ』。その第3楽章が上演されました。
20年以上前の作品なのに、全く古びていない、というのはマリオと同じ。
ホセ・アントニオは数多くの作品を世に送り出すとともに、ハビエルやマノレーテの作品を上演したり、アントニオ・ガデス『血の婚礼』を上演したり、また若手育成をしたりした、功労者ホセ・アントニオの振付作品の中からはカルメン・アマジャへのオマージュ作品『レジェンダ』(2002年)が上演されました。印象的な白い長いバタ・デ・コーラと黒いバタ・デ・コーラのシーンです。初演でも踊ったウルスラがみせてくれました。

2004年にクリスティーナ・オヨスが監督に就任し、Ballet Flamenco de Andalucía と名を変えます(日本語では変わりません)。彼女の振付作品からは、愛知万博時に名古屋で上演された『南への旅』(2005年)から。真っ赤な衣装での群舞で見せる『情熱』の場面。クリスティーナをロサ・ベルモンテが、フンコをマリアーノが踊ります。エネルギッシュで華やか!


2012年、初の公募制で選ばれたルベン・オルモが監督に就任し、翌年初演した『ジャント・ポル・イグナシオ・サンチェス・メヒアス』から、闘牛場へ向かうシーンを。ルベンが踊った闘牛士、イグナシオはクリスティアン・ロサーノが踊りました。ルベンの優美な、性を超越した雰囲気とは違い、男らしい闘牛士となりました。闘牛のケープをマントンか男性舞踊のマントのように使う美しい振付です。また黒い衣装の男女が牛をイメージさせる振付も力強くて素晴らしい!この部分はアルバロ・パーニョの振付です。


最後はラファエラ・カラスコ『カンテの記憶に』。2014年初演というからあれからもう5年も経つのですね。早いなあ。ラモン・モントージャのロンデーニャを6人の男女が弦のイメージで踊る美しいシーンと、この作品の最後に見せたラファエラがマカローナのイメージで踊るカンティーニャ。見事。

最後はウルスラの振付で締めてくれました。


終演後は地下でレセプションがあったのですが、そこに集う顔を見て、改めてこの舞踊団が、フラメンコに果たしてきた役割を思い知らされました。

すごいなあ。
真ん中にいるのはディエゴ・ジョリとボルハ・コルテス、歌い手のビセンテ・ヘロ。
左端にはマルコ・バルガスがいるし、ラモン・マルティネスやアナ・モラーレス、ダビ・コリア、フアン・パレデス、ウルスラ・ロペスやマヌエル・ベタンソの顔も見える。
彼ら、みんながこの舞踊団にいたんだよ。


25周年おめでとうございます。




記念公演ということで言えば、2014年に20周年記念でラファエラ監督のもとで行われたビエナル公演での方が、作品としてのまとまりがあってよかったけど、うん、これはこれで、過去を振り返った集大成ということで、ありですね。


2019年11月25日月曜日

サラ・バラス『ソンブラス』

スペクタクル!
サラ・バラス舞踊団の『ソンブラス』を一言でいうとそれに尽きます。
スペイン語でいうならespectáculo espectacular。
華やかな作品、と訳してしまうと、ニュアンスが伝わらない。
壮大華麗なフラメンコ・スペクタクル、とでもいいましょうか、

11月22日から3日間、セビージャのオペラハウス、マエストランサ劇場を満員にしたこの作品は今から2年前に、舞踊団結成20周年を記念して、パンプローナで初演されました。
私はその同じ年の11月にマラガで初見
その時より、より充実し、ダイナミックな作品に仕上がっています。
前日の記者会見で語っていたように、

構成は同じだし、大きく変わったところはないのだけれど、2年間世界各地で公演してきたことで見所がより強調されアクセントがはっきりし、リズムも良くなったという感じなのです。

ソンブラスとは影のこと。
オープニングもその名の通りにシルエットでの群舞で見せます。
ファルーカの歌とサパテアードの音が響き、それを6人が踊ります。

ギターが始まり、サラが登場。
ファルーカは彼女の代表曲のひとつ。最初の作品で男装で踊って話題を呼び、日本公演でも上演された『ボセス』でも踊っていたのを覚えている人もいるのではないでしょうか。

マラガで見た時とは違い、最初は赤いジャケットを着て登場します。
伝統的なファルーカのかたちをギター伴奏のみで体現していきます。


Teatro de la Maestranza

途中でジャケットを脱ぎ、 ベストにパンタロン、赤いスカーフという姿となり
Teatro de la Maestranza

『ボセス』の時のようなパーカッションとのセッションでは、彼女ならではの正確でクリアなサパテアードの音が音楽を紡ぎ出していきます。

Teatro de la Maestranza

間口の広い、大きな劇場の舞台を一人でいっぱいにしてしまう存在感、カリスマ。
Teatro de la Maestranza

全身全霊で踊ります。
Teatro de la Maestranza

今、ソロでも大活躍のイスラエル・フェルナンデスの歌がより厚みを与えます。
Teatro de la Maestranza

間の持たせ方もうまくなったなあ、という感じ。


続くロマンセはイスラエルとルビオ・デ・プルーナの歌で始まり、
バストンの男女の群舞が踊ります。

そしてセラーナ。彼女がこの曲を踊るのは初めてでは?
ストレッチの効いた青いドレス。

Teatro de la Maestranza

この円形に広がるスカートはサラの代名詞的存在。
Teatro de la Maestranza

ここでもルビオとイスラエル、二人の歌が光ります。
Teatro de la Maestranza

踊りとしてはセラーナらしさ、的なものはほとんどなく、ソレアもしくはソレア・ポル・ブレリアの延長線上。サラらしい、サパテアードと回転で見せてきます。

サンタナ・デ・イエペスのテキストを読むサラの声で群舞がアバニコを使って踊ります。

そして赤いドレスでのワルツ。レオナード・コーエンがロルカの詩『ペケニョ・ワルス・ビエネス』を歌った『テイク・ディス・ワルツ』を群舞の二人と踊ります。
ローリングストーンズとのツアーで知られるティムに代わって参加のディエゴ・ビジェガスのハーモニカがピリッと効いています。
エンリケ・モレンテも歌ったこの曲で、なんかちょっと涙が出てしまったのは、私がずっと見てきたサラのキャリアを、この道程を思い出したから。
1990年、新宿「エル・フラメンコ」に出演してた彼女と知り合ったのは30年も前の事。
フラメンコのアルティスタで、初めて、フラメンコじゃない話もいろいろできた友達、なのであります。


あまり踊られることがない曲、マリアナはバタ・デ・コーラとマントンの群舞4人で。

ミュージシャンたちによるソロ曲はタンゴ。ここでも歌の良さが光っています。
もちろん、パーカッションもギターもしっかりしていて、作品を支えているのだけど、この二人の歌の良さは特別。どんなフラメンコ・ファンも納得のはず。

人気バイオリニスト、アラ・マリキアン録音の曲で群舞が舞います。男性は黒いスカート。
女性はベージュ?のスカート。

そしてサラのアレグリアス。赤いマントンが舞い、機関銃のようなサパテアードが炸裂。
この作品は、オスカル・ゴメス・デ・ロス・レジェス(カナーレスの弟です)の照明デザインがとても綺麗でショーアップされてて、それも見所の一つだと思うのですが、この場面だけはサラにフォロースポットが欲しかったかも、サラの顔に影が出ちゃうのはもったいないと思います。ちなみにバックのカーテンに描かれた絵も効果的です。
そのままブレリアへとなだれ込み、アルトサックスとの絡みも楽しく、満喫。

全員総立ち、スタンディングオーベーション。

そこにマイクを持ったサラが現れ、「今日はクリスティーナが来てくれています。私たちは常に自分を見るための鏡を持っていなくちゃならないのです。ありがとう、マエストラ。道を開いてくれて。挨拶しきゃ」と、客席に走り出すと上の方からそれも駆け寄ってきたクリスティーナと会い、抱擁。

ああ、世界中の大舞台で、フラメンコを背負って踊り続けた二人の相互リスペクト。
二人にしかわからないこともたくさん、あるのだろうなあ。



そして偶然、そのすぐ隣に座っていた私にサラはベシートしてもらい、また涙。
んー、あのタブラオで踊っていた、とびきりの笑顔とあふれんばかりのポジティブエネルギーに満ち満ちていた女の子が本当に、大きく、ビッグになったんだなあ、と、親戚のおばさん的感慨。
本当にすごいよ、サラ。


公的機関の後ろ盾もなく、プライベートの舞踊団として、今もどこの誰よりも多い公演数をこなすサラ。1月24日からはマドリードで3ヶ月に渡るロングラン公演が始まります。
毎週、金土日と公演があります。
そして来年後半にはいよいよアジア/オーストラリアへのツアーもあるそう。

フラメンコって、本当、いろんな可能性があってすごいものなんだなあ、と改めて感じさせてくれたことでした。



昨年のコルドバ公演の時のファルーカのビデオを貼っておきます。












2019年11月22日金曜日

コルドバのコンクール優勝者決定

コルドバのコンクールの優勝者が決定しました。
バイレはチリ出身のフロレンシア・オス

カンテはバダホスのエル・ペレーテ。


ギターはグラナダ出身ホセ・フェルミン。


23日に表彰式を兼ねたガラ公演が行われます。

マルコ・バルガス&クロエ・ブルレ『ロス・クエルポス・セレステス』

20日21時からはセントラル劇場でマルコ・バルガス&クロエ・ブルーレの公演を。

フラメンコの可能性は無限大!

音楽はギターとカンテのフラメンコではありません。
基本は電子音楽。それにパーカッションが加わります。
パーカッションはミュージシャンが実際に叩く太鼓もあれば
踊り手たちのサパテアードだったり体を叩く音だったり。
フラメンコのリズムやテクニックを使っているけれど
これはフラメンコではない、という人もいるかもしれないな、という感じ。
でもきっとコンテンポラリーの人が見ればフラメンコだよ、っていうんじゃないかな。
そんな感じ。

多分本人たちもそういう分類はもうどうでもいいのだと思うのであります。

「銀河の星たちは同じように見えて実は一つ一つ違っている」
という語りで始まり、その星のように、一人一人違う踊り手達4人が、ミュージシャン(彼も踊る!)と創り出す世界にはいろんなメッセージが含まれているよう。
涙が出るような切ないシーン(女性二人のデュオ!)も、お祭りのような楽しいシーンもあるけれど。

結局、私は私。
生きて死ぬ。

そういうことかな。

フラメンコは、昔ながらの形を守るだけでなく、その歴史上でも色々と新しい挑戦をしてきたわけだし、私にとってはこれもフラメンコの一つの形。

っていうか、マルコの形がムイ・フラメンコで、ナイジェリア系ロンドン生まれのジンカの美しい形や、クロエの伝えようとする心で、なんか満たされたのでした。

照明も素晴らしいしシャボン玉や紙吹雪も効果的。


マルコは小松原舞踊団の招きで何度も来日しているので、日本でもおなじみでしょう。トリアーナの生まれでマリオ・マジャ舞踊団出身。映画『フラメンコ』でイスラエル・ガルバンとともにマリオの手を押さえているのが彼であります。
クロエはカナダはモントリオールの生まれ。バレエを学んでいたのですがフラメンコのためにセビージャにやってきてハビエル・ラトーレ『リンコネテ・イ・コルタディージョ』などに出演します。2004年から2005年にかけてはエル・フラメンコにダビ・ロメロのグループで出演。
スペインに帰るとマルコと組んで、作品を作り始めました。
それから15年。
集大成というべきこの作品では初めて他のダンサーも入ったのでありますが、それも全く違和感なく、ダンスであり、フラメンコであり、コンサートであり、パフォーマンスで。
スペインでは演劇祭などでも公演することが多いけど、一般にはどういう評価なのかな。

うん、一度是非見てください。





2019年11月21日木曜日

ニームのフェスティバル プログラム発表

フランスのニームのフラメンコ祭のプログラムの記者発表がセビージャで行われました。


左から芸術監督チェマ、アンダルシア・フラメンコ委員会の長となったリカルド・パチョン、ニームの劇場支配人フランソワーズと通訳の女性。

ビエナル、へレスのフェスティバルに次ぐ規模で、海外のフラメンコ祭としては最大規模のものの一つでは?
スペインの隣国ということもあり、第一線のアルティスタたちが顔を並べる。

今年も、イスラエル・ガルバン、ロシオ・モリーナをはじめ、パトリシア・ゲレーロ、エドゥアルド・ゲレーロなど新進気鋭の踊り手たちだけでなく、ギターソロ公演も、ビセンテ・アミーゴ、アントニア・ヒメネス、ホセリート・アセドと三つ。その上、リケーニがロシオと共演するっていう豪華さ。歌もダビ・ラゴス、ペラーテ、マイテ・マルティン、ヘマ・カバジェーロといい感じ。
下記の公演だけでなく、写真展や講演などもあります。イスラエルのマスタークラスもあるそうです。
10日間のフラメンコ合宿?お正月明けすぐですが、へレスやビエナルは長すぎる、という人にもオススメかも。
小さな町だし、アルティスタたちを身近に感じされますよん。ちなみに

◇第30回ニーム劇場フラメンコ・フェスティバル
1/9(木)~19(日)
1/9(木)20時
[出]〈c〉マリオラ・メンブリベス『ロルカ』、ダビ・ラゴス『オディエルノ』
[場]フランス ニーム パロマ
1/10(金)20時『エル・ソンブレロ』
[出]〈b〉エステベス/パーニョス舞踊団
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場
1/11(土)20時『トレス・ゴルペス』
[出]〈c〉トマス・ペラーテ、〈g〉アルフレド・ラゴス、ラウル・レフレ
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場
1/12(日)18時『ソンブラ・エフィメラII』
[出]〈b〉エドゥアルド・ゲレーロ
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場
1/13(月)20時
[出]〈c〉ヘマ・カバジェーロ、〈g〉ハビエル・パティーノ
[場]フランス ニーム ローマ博物館
1/14(火)20時『ディストピア』
[出]〈b〉パトリシア・ゲレーロ
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場
1/15(水)18時
[出]〈g〉アントニア・ヒメネス
[場]フランス ニーム オデオン
1/15(水)21時
[出]アミル・エルサファル
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場
1/16(木)18時
[出]〈g〉ホセリート・アセド
[場]フランス ニーム オデオン
1/16(木)21時
[出]〈g〉ビセンテ・アミーゴ
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場
1/17(金)18時
[出]〈b〉ロシオ・モリーナ、〈g〉ラファエル・リケーニ
[場]フランス ニーム オデオン
1/17(金)21時『メメント』
[出]〈c〉マイテ・マルティン
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場
1/18(土)18時
[出]〈b〉ロシオ・モリーナ、〈g〉ラファエル・リケーニ
[場]フランス ニーム オデオン
1/18(土)21時『恋は魔術師』19(日)18時
[出]〈b〉イスラエル・ガルバン
[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン劇場

[問]www.theatredenimes.com

ちなみに記者会見の最後にトマス・ペラーテがアルフレド・ラゴスのギターで歌ったのですが、これが最高でございました。

大地から湧き出るようなペターテの声とアルフレドの天空から吹いてくる風のようなギター。その二人の出会いで、一見まったく違うようなものが、実は同じもので、こんなに美しくなるか、という感じで。
これ見るためだけにニーム行こうかと思います。


今年のフェスティバルに出演のエステベス/パーニョスやホセリートも一緒に。

2019年11月18日月曜日

ホセ・バレンシア『コン・ヘラルキア』

11月15日セビージャのサラ・ホアキン・トゥリーナでのホセ・バレンシアのリサイタルリサイタル『コン・ヘラルキア』
今年の7月、レブリーハのフラメンコ祭、カラコラーで初演したもので、へレスのヒターノ詩人ラファエル・フェルナンデス“ネネ”の詩を、昔ながらのポピュラーなフラメンコのメロディにのせて歌うというもの。

新しい歌詞を歌う、という試みはよく行われているが、場合によっては、発音の仕方や、メロディの問題でよく聞き取れないこともままあるのであります。これってかなりフラストレーション。特に、記者会見やプログラムで、新しい詩の重要性とか話してたのに、って時は、割り切れない感ハンパない。
でも、ホセは発音がきれいで、いやあ、きちんとレトラが聞き取れるので、気持ちがいい。詩を無理にメロディに押し込めているわけではないので、語りかけられているかのように自然に耳に入ってくるのだ。

ロンデーニャ、ソレア、マラゲーニャ、ティエントス、タラント、カンティーニャス、シギリージャ、ロマンセ、マルティネーテ。

フアン・レケーナの目立ちすぎずきっちりサポートするギター伴奏で、何を歌っても、正確できちんと歌い上げる。生まれ持っての才能だけでなく、ちゃんと努力してきたんだなあ、フラメンコが本当に好きなんだなあ、と思わされる。
ダニ・ボニージャ、マヌエル・バレンシア、タローテのコンパスも気持ち良く、声量たっぷりに歌うホセは人気オペラ歌手のよう。友人がフラメンコのパバロッティってよんでるのもなるほどであります。

他にもコルドバのコンクールやセビージャの映画祭など文化イベントが重なったせいもあってか、お客さんが少なかったのは残念だけど、数年前のビエナルのリサイタルに勝るとも劣らない出来でありました。

シロコ公演に出演した日本から帰ってきたばかりで、またすぐに日本に鍛地陽子公演出演のために行くホセ。
恵比寿のラーメン屋で5皿食べた、という餃子のおかげかな? 疲れているはずなのにすごいエネルギー。


急に寒くなってきたセビージャだけど、コンサートの後は元気いっぱい。
こっちもエネルギーもらいました。
12月1日、日本でのリサイタルにも是非。

2019年11月15日金曜日

コルドバのコンクール決勝進出者

コルドバのコンクールの決勝進出者が決定しました!

かつては、歌や舞踊は曲種のグループの部門ごとに、ギターは伴奏とソロ部門で優勝者が決まるという形式でしたが、2010 年に変わり、歌、舞踊、ギターの各部門1名のみの優勝者が決まるという形になりました。
予選を勝ち抜いた各部門4名ずつが決勝に臨みます。

今年の決勝進出者は以下の通りです

アゲダ・サアベドラ。1995年マラガ県ネルハ生まれ。セビージャ在住。
今年、ガルロチに出演していましたね。


ウーゴ・ロペス。1989年コルドバ生まれ。昨年のウニオンの覇者。
小島章司公演にも出演していました。今はタブラオを中心に活躍。

フロレンシア・オス。1987年チリ、サンティアゴ・デ・チリ生まれ。
元アンダルシア舞踊団です。

イサベル・ロドリゲス。1987年バルセロナ生まれ、マドリード在住。

アグスティン・カルボネル“ボラ” 1967年マドリード生まれ。
90年にセビージャのビエナルでリサイタルも行ったベテラン! 審査員たちの先輩。
ウニオンでも優勝しています。

ホセ・フェルミン・フェルナンデス。1995年グラナダ生まれ。
グラナダはギター、強いですね。

アルベルト・ロペス。1990年グラナダ県バーサ生まれ。セビージャ県サンルーカル・ラ・マジョール在住。来日経験もあります。

アルバロ・マルティネーテ。1995年グラナダ生まれ。
ヘラルド・ヌニェスに見出され、ソロCDもリリース。最近はモネータ伴奏もしています。


エンリケ・アファナドール。1984年カディス県トレブヘーナ生まれ。最近、各地のコンクールで活躍している。

ロシオ・ベレン。1989年ウエルバ生まれ。アルモンテ在住。

フランシスコ“エル・ペレーテ” 1992年ラス・パルマス生まれ。バダホス在住。

アンへレス・トレダーノ。1995年ハエン生まれ。ビジャヌエバ・デ・ラ・レイナ在住。


今年の予選参加者は、歌54人、舞踊23人、ギター13人。
なお、応募はそれぞれ74、31、15人だったので、途中棄権が多かった模様。
以前は多かった外国人の応募も少なかったようだ。ちなみに国籍はアメリカ、チリ、フランス、日本、ギリシャの5つ。

ちなみにこのコンクールの審査員はアルティスタ。
今年は舞踊でアントニオ・ナハロ、インマクラーダ・アギラール、ラファエラ・カラスコ。ギターはフアン・マヌエル・カニサーレス、ニーニョ・デ・プーラ、フアン・カルロス・ロメーロ、歌はビセンテ・ソト、マイテ・マルティン、アルカンヘルであります。

2019年11月12日火曜日

ハビエル・ラトーレ 舞踊の50年

11月9日、コルドバのグランテアトロでの『ハビエル・ラトーレ 舞踊の50年』が上演されました。
1963年バレンシア生まれだが、30年以上コルドバに住む、ハビエル・ラトーレへのオマージュ公演であります。子供のときに歌って踊り、初舞台を踏み、グラン・アントニオが監督を務めていた国立バレエに入り、ソリスト、第一舞踊手と上り詰め、退団後はコルドバのコンクールでは3部門で優勝し、史上初のアントニオ大賞を受賞。自らの舞踊団を立ちあげ、作品『アルバ家の娘たち』『運命の力』を上演。健康上の問題で一時舞台から遠ざかっていたが、復帰後はウニオンのコンクールで優勝したのをきっかけに、再び、各地の舞台に、振り付けに、と活躍。代表作にはアンダルシア舞踊団『コサス・デ・パジョ』、自らの舞踊団での『リンコネテとコルタディージョ』、国立バレエ『エル・ロコ』、小島章司舞踊団『ラ・セレスティーナ』などがあり、現在も各地でクルシージョを行い、作品の振り付けも行うなど、活躍中のハビエル。
その彼のために、各地から多くのアルティスタたちが集まりました。

第一部はアンダルシア舞踊団の『コサス・デ・パジョ』の第3楽章で始まりました。

Concurso Nacional de Flamenco Córdoba Rafael Alcaide

今月26日、マエストランサ劇場でのアンダルシア舞踊団25周年記念公演のため、ちょうど振り写しをしているところだそうです。初演の時の感動とはまた違うけれど、ああ、アントニオ・ナハーロ前国立バレエ監督の振り付けにも通じるような、時代を先駆けた振り付けだったなあ、と再確認。ドラマチックな振り付けであります。


国立バレエのソリスト、ミリアム・メンドーサのソロ『チャコーナ』は、スペイン舞踊の名教授、ベティ先生ことビクトリア・エウヘニアが、かつてマリベル・ガジャルドのために振り付けした小品。とにかくひたすら美しく、涙が出そうでした。

     Concurso Nacional de Flamenco Córdoba Rafael Alcaide

ハビエルがこの作品を踊った訳ではないけれど、スペイン舞踊のテクニックはハビエルの振り付けに欠かせないものだし、その基礎があってこそ、彼の世界が生まれたんだなあ、と感じさせます。


小島舞踊団の作品にも夫婦二人揃って出演したクリスティアン・ロサーノとタマラ・ロペスもスペイン国立バレエの出身。ハビエル振り付けの『エル・ロコ』でも、主役を踊った二人は、クリスティアンが今年へレスで初演した作品『トレンカディス』の一場面を。

Concurso Nacional de Flamenco Córdoba Rafael Alcaide

モデルのようにハビエルの影響があるなあ、と思わされます。

スペイン国立バレエの第一舞踊手フランシスコ・ベラスコが踊る『サラサーテのサパテアード』は昨年の日本公演でも観客を魅了したグラン・アントニオの名作。男性舞踊の粋!アントニオに直接教えを受けたハビエル。彼の踊りの形にその足跡が見つけられます。

そして最後はエバ・ジェルバブエナ。彼女を自分の作品に起用して、フラメンコ界に知られるきっかけを作ったのがハビエル。
黒い衣装でソレアを踊ります。
Concurso Nacional de Flamenco Córdoba Rafael Alcaide
 ギターが聞こえなかったり、音が全部消えたり、という、残念な音響トラブルもあったのだけれど(後で聞いたところによると、舞台の上では何にも聞こえなかったそうな)、それでも、根性でなんとかしちゃうのがエバ!
Concurso Nacional de Flamenco Córdoba Rafael Alcaide
すごい、の一言。

休憩を挟んでの第二部の最初はハビエルによるファルーカ。
ハエン生まれでコルドバに長らく住んでいたピアニスト、アルフォンソ・アローカの曲の録音で。

Concurso Nacional de Flamenco Córdoba Rafael Alcaide
エレガント!
形の美しさ、動きの余韻。素晴らしい。キリッとしていて、でもやわらかでもあり。
いやあ、この夜の一番はやっぱこの瞬間でしょう。

続いて、小島のタラント。
チクエロのギターのイントロに導かれ、ロンドロの歌を舞う。その味わい。深み。

Concurso Nacional de Flamenco Córdoba Rafael Alcaide
そこからは門下生たちらによるクアドロ。
愛娘アナ・ラトーレによるタラントに始まり、エンカルナ・ロペス、マラ・マルティネス、モネータ、ペドロ・コルドバ、カレン・ルゴ、マルコ・フローレス、メルセデス・デ・コルドバ。
彼のクラスに子供の頃からあしげく通った人もいれば、幾つかのクルシージョを受けただけの人もいる。でもそれぞれがそれぞれに個性的で素晴らしい!
個人的にはサエタやトナーを踊ったマルコとアレグリアスのメルデセスが印象に残ります。マルコの繊細さ。メルセデスのドラマティックさ。すごいなあ。
ペドロの男性舞踊の王道を極めていく感じもいいし、カレンの独特な表現も魅力的。
モネータはブレリアで会場を沸かせ、マラは巧みで、地元で教室を開くエンカルナも生徒たちの応援で生き生きと。
歌ではロンドロ! 深みが出てきてて、もうダントツであります。

いやあ、考えてみればたくさんの素晴らしい才能がハビエルによって花開いているのですね。
この日いなかった人も皆、それぞれに個性的なのがハビエルらしいと言えるかもしれません。
縮小コピーを作るのではなく、フラメンコの魅力と可能性を教え、個性を伸ばす名教授なのです。