2018年2月28日水曜日

ヘレスのフェスティバル アナ・モラーレス

アルティスタに宿泊と稽古場を提供し、作品制作をサポートする、という試みが、ヘレスのフェスティバルで初めて、行われた。

ロンドンのフラメンコ・フェスティバルやバルセロナのフラメンコ祭でも行われているもの。

今回は、アナ・モラーレスの新作の一部が、馬車博物館で上演。

サンプラーでの踊りに始まり


© Festival de Jerez/Javier Fergo
ホセ・マヌエル・アルバレスとのデュオで、

© Festival de Jerez/Javier Fergo
そして、フアン・ホセ・アマドールの弾き語りでのセラーナ。
© Festival de Jerez/Javier Fergo


現代フラメンコを象徴する、フラメンコの曲をただ踊るのでなく、
他の音でもフラメンコのテクニックで踊り、フラメンコ・フラメンコもしっかり踊る、
というスタイル。
とにかく動きが美しく、それだけでも一見の価値あり。

2018年2月27日火曜日

ヘレスのフェスティバル ラ・ルピ「パウラ」

マラガの踊り手、ラ・ルピの「ラ・パウラ」
ビジャマルタ劇場初登場のラ・ルピは、1971年マラガ生まれというから今年47歳になるベテラン。地元で学び、
カディスのアレグリアスのコンクールで2位になった2007年にマラガのビエナルで初めて見た。
その後、ラファエル・アマルゴのカンパニーを経て、ミゲル・ポベーダのツアーに参加し、全国区に。新宿のガルロチにも出演した。

1978年に亡くなった、晩年を精神病院で過ごしたパウラと言う実在のマラガの踊り手を主人公とした物語。

フラメンコで物語を伝えるのは難しい。今回もそれは例外ではない。

ゲストのフアン・デ・フアンのソロや、ルピとのデュオ、

© Festival de Jerez/Javier Fergo
やはりゲストのマリア・テレモートのサエタ。熱唱。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 そして、告知されていなかったミゲル・ポベーダも特別ゲストで登場。もったいない。
© Festival de Jerez/Javier Fergo

精神病院で死んだ踊り手の物語、というのをわかっているから、最後衣装を脱ぐのは狂気の表現かな、と思えたけど、それでも自分で脱いで、その後恥ずかしがるとか、謎。
狂気だからなんでもあり?
客席から歌い手を登場させたり、一度幕を下ろしてその前でギターソロを聴かせたり、など、工夫してはいるのだけど、うーん、なんなんだろう。整理されていない感じ。



でも一番の問題は、彼女が私にとってフラメンカに見えないことなのだ。
フラメンコを踊っている。コンパスを外すわけでもない。
でも形がフラメンカぽくないのだ。
私にとっては、胸を開いた形がフラメンカなのだけど、彼女は正反対。
背が丸い。肩が内に入っている感じ。マリア・デル・マル・モレーノとちょっと似てる。

太っているからではない。太っていてもフラメンカな踊り手はたくさんいる。
コンチャ・バルガスやカルメン・レデスマ、マティルデ・コラル、故ファラオナ。
みんな太っているけど、胸をパーンと開いた美しい姿勢だ。
年を取ってきて背筋力が減り、背が丸くなるのと、ルピのはまた違う感じ。
もちろん、踊りのときは中へ入る瞬間もあるだろう。
そういう体だ、と言われれば、それまでだが、平面的な日本人体型でも、肩を後ろに少し引いて胸を開くように心がけるだけで、フラメンカな姿勢に見えるはずだ。

もう一つは、これも、これがマラガのフラメンコだ、と言われればそれまでなのだが、
スカートを高くあげたり、ちょっと下世話なニュアンス。
それがいい、という人もいるだろうが、私には下品で、くどく、わざとらしい。
長い長いレポンパのタンゴが特にそう。
セビージャの舞踊を見すぎて、セビージャの舞踊をフラメンコの規範としているせいかもしれない。






2018年2月26日月曜日

ヘレスのフェスティバル トレメンディータ

ロサリオ・ラ・トレメンディータ「デリリウム・トレメン」は19時からボデガで。

同名の新譜発表を兼ねたこのリサイタル、通常のカンテのコンサートを予想していった人はびっくり仰天したことだろう。
ロサリオはサンプラーを操り、ギターやエレキベースを弾き、歌うのだ。
フラメンカと言うよりロッカー!


© Festival de Jerez/Javier Fergo
でその伴奏もウッドとエレキのベースとドラムス/パーカッション。
パブロ・マルティン・カミネーロとパブロ・マルティン・ホネス。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
でもその中で歌われているのはフラメンコ。
カンテ・デ・レバンテだったり、ソレアだったり。
かと思うとポーリュシカポーレだったり。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
口の中で音がこもってしまうような歌い方もあって、歌詞がよく聞き取れないところがあるのは残念だけど、面白い。
何より、無理やり新しいことをしようとしたのではなく、
彼女の中での自然を追求した結果だという感じで、伝わってくるものがあるのだ。

だから最初はおそらく、抵抗もあっただろう観客も最後は盛んな拍手を送っていた。



2018年2月25日日曜日

ヘレスのフェスティバル マヌエル・リニャン「バイレ・デ・アウトール」

ヘレスのフェスティバル2日目はマヌエル・リニャン。
タイトルは作家の舞踊、とでも訳せばいいのかな。
前日の国立バレエと打って変わって、踊り手は彼一人。
歌にダビ・カルピオ、ギターにマヌエル・バレンシア。
少数精鋭の陣営で臨む。

© Festival de Jerez/Javier Fergo


舞台の仕込みの時のように下に降りた照明バトン、袖幕もない舞台をバックに時計の音のようなもので始まるのは、ちょっとコンテンポラリーダンスの舞台みたい?
でもそこで見せるサパテアードも歌も音楽も紛れもないフラメンコ。

全体としてはやはり数年前にヘレスで上演した『ソロス』の発展形と言えるだろう。
得意のバタ・デ・コーラも、アバニコ、マントン、バストンと小物を使って変化をつけ、最後は水を跳ねさせつつサパテアードを“見せる”という趣向。

© Festival de Jerez/Javier Fergo


国家舞踊賞受賞のダンサーらしい、しっかりした舞台だった。

24時からはボデガ・ゴンサレス・ビアスでビセンテ・ソト。
仕事の関係で最初の2曲ほどしか聞けなかったけど、今までで一番いい。
新譜買ってこよう。

© Festival de Jerez/Javier Fergo

なお、19時からはサラ・パウルでグラナダのギタリスト、ダビ・カルモナ。

© Festival de Jerez/Javier Fergo






2018年2月24日土曜日

ヘレスのフェスティバル スペイン国立バレエ

ついにヘレスのフェスティバルが開幕。
初日を飾ったのはスペイン国立バレエ団。

グラン・アントニオの振り付け2作と、ブランカ・デル・レイ振り付けの『マントンのソレア』、ラファエル・アギラールの『ボレロ』と、歴史的な作品を並べた第一部と、日本公演でも好評だった現芸術監督アントニオ・ナハロ「アレント」という2部構成。

『エリターニャ』はグラン・アントニオ振り付けのエスクエラ・ボレーラの名作。
バレエシューズで、カスタネットを使って、とボレーラの王道。
クラシックバレエ団もかくやというほどの、高い技術を持つカンパニーだけに、圧巻。
何十年も前の振り付けだが、古びることなく、伝統を今に伝える、素晴らしい作品。
跳躍、回転、フォーム。どれを取っても素晴らしく、美しい。
ダンサーたちもよくそろっており、バレエ団の名にふさわしい。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
続くは同じくグラン、アントニオ振り付けの「サラサーテのサパテアード』
昔から国立を見ている人なら、アントニオ・マルケス版を思い出すかも?
が、ヘレスで踊った、ソリスト、ホセ・マヌエル・ベニテスは細身で華奢で、
グラン・アントニオそっくり。素晴らしいテクニックで名作を蘇らせた。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
 続く『ソレア・デ・マントン』はブランカ・デル・レイの振り付け。
大判のマントンで変幻自在に見せる名作だ。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 そしてラファエル・アギラールの『ボレロ』
第一舞踊手セルヒオ・ベルナルが、しなやかで強靭な肉体で魅せる。
© Festival de Jerez/Javier Fergo

休憩を挟んでの『アレント』
ナハロ監督のモダンな意欲作。
新スペイン舞踊、とでも言いたくなるほどに、サパテアードやカスタネットを始めとするスペイン舞踊のテクニックを使いながら、ブロードウェイミュージカルのように、華やかにショーアップされているのが特徴。
この写真でもわかるように、とにかくダンサーがよくそろっており、目のご馳走。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 セルヒオとアローニャ・アロンソによるデュオでは、
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 第二子出産から復帰したばかりのアローニャの美しさ、優雅さが印象的。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 バタ・デ・コーラがマントンになる女性群舞。
ミュージカルの一場面のような男性群舞。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 でも私が最も好きだったのはインマクラーダ・サロモンによるソロ。
カスタネットとバタでの動きの美しさ。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 バタから解放されてからの自由なソロ。彼女も第一舞踊手に昇格し、昨年の「エレクトラ」主役を踊ってから、風格が出てきた。
© Festival de Jerez/Javier Fergo

カスタネットと椅子を使ってのフィナーレに、会場は喝采に包まれた。
© Festival de Jerez/Javier Fergo

深夜24時からはゴンサレス・ビアスのボデガ、酒蔵で、アントニオ・レイのリサイタル。
© Festival de Jerez/Javier Fergo

2018年2月23日金曜日

いよいよ


いよいよ今日からヘレスのフェスティバル!
昨日は、開幕を飾るスペイン国立バレエのアントニオ・ナハロ監督とその夜のボデガでの公演を行う、アントニオ・レイの記者会見が行われました。

毎日頑張って様子をお伝えしていきます!

2018年2月18日日曜日

マリア・マルケス逝く

へレス出身の歌って踊るフェステーラ、マリア・マルケスが、2月17日亡くなった。

ヘレスはサンティアゴ街の生まれ。
若くしてサッカー選手アントニオ・ベニテスと結婚し、セビージャに長年在住。
娘はフェルナンド・テレモートと結婚し、マリア・テレモートの祖母にあたる。
子供が大きくなってからは、一時トリアーナで小さいスタジオをやってブレリアを教えたり、小松原庸子スペイン舞踊団のマドリード、セビージャ公演に出演などもしていた。

いつも旦那様と二人、仲良く、トリアーナのバルで飲んでいた。
明るい、気前の良い人で、私からすると、マリア・テレモートには、父方の血だけでなく、母方の祖母の、フェステーラな感じも色濃く感じられる。

旦那様が亡くなってからはヘレスに戻り、
ここ数年は、ヘレスのサンボンバの舞台などでもその姿が見られた。

冥福を祈ります。





2018年2月9日金曜日

アルコベンダスのコンクール


マドリード郊外、アルコベンダス市が主宰するコンクール、アルコベンダス・フラメンカ・ヌエボス・タレントスの応募が今年も始まった。

2018年5月25日に14〜30歳であれば、国籍、プロアマ問わず応募できる。
審査はビデオでのみ行われるので、日本にいても応募可能。
詳細はhttp://alcobendasflamencanuevostalentos.org/bases

応募にはYouTube、Vimeoのリンクが必要。



2018年2月7日水曜日

ドゥケンデ フラメンコ・ビエネ・デル・スール

アンダルシア州のフラメンコ公演シリーズ、フラメンコ・ビエネ・デル・スール。
フラメンコは南から問うタイトルで、アンダルシア州率の三つの劇場、セビージャのセントラル、グラナダのアランブラ、マラガのカノバを主な舞台とし、行われるフラメンコ公演も今年で第21回。
その開幕を飾ったのは、ドゥケンデ。
最近、目立った活躍を見せているダニ・デ・モロンが伴奏する。

2016年のビエナルでも共演した二人、この夜は、カンテス・デ・レバンテ、ソレア、アレグリアス、ギターソロでのファルーカ、ソレアを挟んで、ライ・エレディアの名曲「ロ・ブエノ・イ・ロ・マロ」、シギリージャ、タンゴ、ブレリアという構成。

ドゥケンデは、一言も喋らず、歌い継いでいく。
その歌いっぷりの見事さ。
フラメンコ的に、ちょっとしゃがれた声の良さ。
音程、コンパスはもとより、声の速度、強弱、言葉と言葉のつなげ方、どれを取っても素晴らしい。

そしてそれを支えるギター。普段はかなりモダンな演奏も聞かせ、実際、ソロでは自由に、個性的な演奏も見せたのだが、ドゥケンデの伴奏では基本に忠実、というか、むしろ古風な演奏で、ドゥケンデものびのびと歌っているように思えた。

最初の曲で、パコ・デ・ルシアが歌った「カマロン」のカマロンをパコに変えて歌っていたのに涙がこぼれそうになった。そうだよね、パコの新旧のグループであなたは歌っていた。
日本に行く予定だったのに、パコから電話があって飛んで行った、あのヨーロッパツアーが昨日のことのようなのに、パコはいない。
でも、パコのグループで演奏したこともあるダニが、こうしてあなたの横で演奏している。
今もあなたたちの中にパコは生きている。







2018年2月6日 セビージャ セントラル劇場
ドゥケンデ・コン・ダニ・デ・モロン
[出]〈c〉ドゥケンデ、〈g〉ダニ・デ・モロン、〈palmas〉ロス・メジス

第6回タコン・フラメンコ記者会見

ウトレーラのフラメンコ舞踊中心のフェスティバル、タコン・フラメンコ。
今年で6回目になるこのフェスティバルの記者会見が、2月6日、アンダルシア舞踊団のスタジオで開かれた。
カルメン・レデスマ、マティルデ・コラル、ファミリア・ファルーコ、アンヘリータ・バルガス、クーロ・フェルナンデスと、フラメンコ舞踊の名手たちと関係するアルティスタに捧げられてきたこの催し、今年は、マノロ・マリンに捧げられる。


主なプログラムは下記の通り。なお、他にもホアキン・グリロによるマスタークラス、またそのマスタークラスと劇場の入場券、ホテル、食事がパックになったものもこちらで販売されている。

第6回タコン・フラメンコ
2/26(月)21時15分「インティモ・イ・フラメンコ」
[出]〈b〉マリア・マルーフォ、特別協力〈b〉オスカル・デ・ロス・レジェス
2/27(火)21時15分
[出]〈g〉ラファエル・ロドリゲス、〈b〉フェルナンド・ロメーロ、〈c〉モイ・デ・モロン
[料]3ユーロ
2/28(水)21時15分「マエストロとの対話」
[出]トーク:マノロ・マリン、アントニオ・オルテガ
3/1(木)21時15分「デ・ハポン・ベンゴ」
[出]〈b〉林結花、萩原淳子、〈c〉ダビ・エル・ガジ、モイ・デ・モロン、〈g〉ミゲル・ペレス
[料]3ユーロ
3/3(土)18時30分「オメナへ・ア・マノロ・マリン」
[出]〈b〉クリスティーナ・オヨス、ホアキン・グリロ、イサベル・バジョン、アナ・マリア・ブエノ、ピラール・オルテガ、ラファエラ・カラスコ、イニエスタ・コルテス、カルメン・レデスマ、アデラ・カンパージョ、ラファエル・カンパージョ、ホセ・セラーノ、クリージョ、イサベル・ロペス、アンヘリータ・ゴメス、ウルスラ・ロペス、ヘスース・オルテガ、ジョランダ・ロレンソ、パコ・オルテガ、フェルナンド・ロメーロ、カルメン・ロサーノ、ピラール・アストラ、アリシア・マルケス、フアン・ポルビージョ、アンへレス・ガバルドン、タマラ・タニェ、ハイロ・バルール、エル・レブリ、ダビ・ペレス、フアン・テヘーロ、チョニ、林結花、萩原淳子、〈g〉ミゲル・ペレス、モリート他
[料]13~18ユーロ
[場]セビージャ県ウトレーラ 市立エンリケ・デ・ラ・クアドラ劇場
[問]www.taconflamenco.com

2018年2月3日土曜日

エスペランサ・フェルナンデス「デ・ロ・ホンド・イ・ベルダデーロ」

エスペランサ・フェルナンデスの「デ・ロ・ホンド・イ・ベルダデーロ」は、
1月31日クリスティーナ・ヘーレン財団フラメンコ芸術学校内の劇場で。

スペイン各地のペーニャで、ゲストを迎えて公演してきたものを編集して新譜として発売するというこの企画、アルカンヘルの「タブラオ」にインスパイアされたものかもしれない。アルメリアでトマティート、バダローナでミゲル・ポベーダ、ベレスマラガでアルカンヘル、レペでロシオ・マルケス、とゲスト陣も豪華。そしてここ、彼女のルーツ、トリアーナで最終回。ゲストはホセ・バレンシアとアナ・モラーレス。

ここの学校で教えていたこともあるエスペランサ。

アナ・モラーレスが白いバタ・デ・コーラで完璧な形をつなげていって踊る開幕。ペテネーラ。
Silvia Calado Fundación Cristina Heeren
2014年のビエナル、アルカサルの舞台で見せた舞台を思い起こさせる。舞台はずっと小さいが、それすら感じさせないくらい、見事な舞い。また舞台と客席が近いだけに踊り手の、腕の筋肉の動きまでしっかり見える。二の腕の緊張感が素晴らしい。
その彼女を引き立てるように、舞台の後ろに立って歌うエスペランサ。

シギリージャ、トリアーナのソレアからカーニャ、アレグリアス、マリアーナ、ブレリア…幅広いレパートリーで歌い上げる、よく伸びる声。その音程の良さ、感覚の良さ。
現在、最も人気のあるカンタオーラの一人というのもうなづける。
Silvia Calado Fundación Cristina Heeren
それを支えるミゲル・アンヘル・コルテスのギターも素晴らしく、素敵なリサイタルとなった。ぐっと痩せて男前になったゲストのホセ・バレンシアも熱唱。
忘れがたい夜となった。
Silvia Calado Fundación Cristina Heeren

 写真協力/クリスティーナ・ヘーレン財団 http://www.flamencoheeren.com