愛!
愛にあふれた空間、時間でありました。
みんなの思いが形になった、そんな感じ。
愛だけでできている公演。
12月5日、セビージャのFIBESで行われたカルメリージャへのオメナヘ。
オメナヘとはオマージュ。誰かに捧げられるもの 。
カルメリージャ・モントージャは1962年セビージャ生まれ。
母は歌い手カルメン・モントージャ。その兄は踊り手フアン・モントージャ、その妻ラ・ネグラらとファミリア・モントージャとして活躍。
小さい時から歌い踊ってきた、トリアーナのフラメンコを体現する人。
15歳でへレスのフラメンコ学会のプレミオ・ナショナルを受賞。
98年には新宿『エル・フラメンコ』にも出演していました。
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1988年タブラオ、エル・アレナルで。 |
実はこれが2回目のオメナヘです。
2013年、病気になり、闘病のため収入がなくなった彼女のために同じ会場でオメナヘが行われたのです。その後、回復し、2017年からはクリスティーナ・ヘーレン財団で教授活動を行うなど活躍していたのですが、病気が再発してしまったのです。
8月に発表されたポスターにあった出演予定者の中には仕事の関係で来れなかった人もいたけれど、それは予想の範囲。オメナヘでは基本、全員ギャラなしなので、他に仕事が入ると出られなくなることはよくあるのです。
ポスターには名前が載っていなかった人も含め、多くのアルティスタたちが参加しました。
たくさんのアルティスタが出演するオメナヘで問題になるのは出演順や方法。
今回は、スペイン国立バレエの監督、ルベン・オルモがそのあたりを調整。
開幕に先立ち、カルメリージャと、ファミリア・モントージャのプロデューサーで、彼女を子供のころから知っているという、今年、アンダルシア州のフラメンコ機構のディレクターに就任したばかりのリカルド・パチョンが挨拶。その挨拶には手話通訳。というのは彼女の息子は耳が不自由だから。「耳が不自由な人にもわかってほしい」ということで。
ラファエル・リケーニとパコ・ハラーナ、マノロ・フランコによる『アマルグーラ』。セビージャの人なら誰でも口ずさめる聖週間の名曲をフラメンコギターにアレンジしたもので、数年前のビエナルで3人で演奏した時には拍手が鳴りやまなかった。
胸が熱くなる。
リケーニの演奏で(その最新盤に収録されている曲だそう)、ルベンがマントンを翻して踊る、その美しさ。
続いては男性歌手たちが勢ぞろい。
ペチュギータがトナではじ目、セグンド・ファルコン、エル・ペレ、ホセ・バレンシアとソレアを歌い継いでいく。ホセ・デ・ラ・トマサはシギリージャ。そしてパンセキートが再びソレアで締める。
女性歌手たちはフィエスタ風に。
カルメリージャの従姉妹ローレの娘、アルバ・モリーナ、ラ・スーシ、レメディオス・アマジャはブレリアを歌い継ぎ、マリア・テレモート、エンカルナ・アニージョ、ラ・トバラはタンゴ。締めはアウロラ・バルガスのブレリア。エスペランサ・フェルナンデスは熱があって声がおかしいということで、エンカルナの歌で踊って参加。
カルメリージャの幼馴染でもある、スペインを代表する?漫才師、ロス・モランコスの小話やコントの後は、踊り手たちが登場。
カルメリージャのファミリーだというノエリア、カルメン・ヤング、ラ・ピニョーナ、アナベル・リベロ、マノリ・リオスがブレリアを踊り継ぎ、ロサリオ・トレドはハレオ・エストレメーニョ、そしてタンゴで、イニエスタ・コルテス、アナ・モラーレス、メルセデス・デ・コルドバ、パストーラ・ガルバン。アデラとラファエル・カンパージョはソレア・ポル・ブレリア。
かつて『フェードラ』で共演したアマドール・ロハスは、白いマントの王子様姿?でバイオリン伴奏で。おそらく自身の作品の一部であろう曲を踊り、88年のビエナルで『アマンテ』で共演したアントニオ・カナーレスはシギリージャ。エバ・ジェルバブエナはホセ・バレンシアが歌うクプレをマントンで。『アマンテ』やまたその作品でも共演したファルーカはソレア、ヘーレン財団学校教授の先輩、ミラグロスはアレグリアス。歌をマルカールしていく、ムイ・フラメンカ。舞踊のバックを支えた歌はセグンドとペチュギータ、伴奏はミゲル・ペレス、パコ・ハラーナ、フアン・カンパージョら。パーカッションにパコ・ベガら。
皆、カルメリージャを愛しているからこそ、ここに集い、歌い、踊る。
キレッキレのアナ・モラーレスや、カナーレスの舞台掌握、さすがエバ!という重み、皆それぞれにそれぞれの愛を語っている。
彼女のこれまでを振り返るビデオには、テレビ番組『リト・イ・ヘオグラフィア・デル・カンテ』で歌う幼い頃の姿をはじめ、カマロンの歌で踊るところやビエナルやテレビ出演時や様々なシーンが。
思い出します。
休憩なし3時間余りの長丁場で、持ち時間をオーバーして?長く歌う人などもいたりして、正直、退屈な瞬間もないではなかったけれど、みんながカルメリージャを愛している、というのは伝わってきました。
どうか快方に向かって、再び彼女の、小股の切れ上がった、火花のような、熱い踊りをまたみせてくれますように。
ちなみに出演していないけど、カルメン・レデスマも観に来ていましたよ。
「出演しなくても協力しなくちゃね」って。
いいなあ。愛だなあ。