2018年6月24日日曜日

第1回全日本フラメンココンクール決勝

23日土曜日、第1回全日本フラメンココンクールの決勝でした。
5人のスペイン人とともに審査員を務めさせていただきました。
12人の決勝進出者の皆さん、誰もが素晴らしく、前回の予選で決勝進出者を決める時も大変でしたが、この中から入賞者を決めるのは非常に困難なミッションでした。
審査員の中で話し合いを重ねた結果は、当初の要項にあったものと違ったため、主宰者に確認の上、やはり要項通りに、ということで改めて話し合って、最終的な結果を出しました。審査員の意見は様々で、最初から全会一致ということではありませんでしたが、それぞれの意見、その根拠などを話した結果、最終的には全員の承認を得る結果となりました。

受賞者の皆さんおめでとうございます。
受賞されなかった皆さんもそのご健闘を心からお祝い申し上げます。
いうまでもなく、今回の結果は、この日のパフォーマンスに対する、この審査員たちによる、他の参加者との比較による結果でしかありません。参加者の方々のキャリアや実力を否定するものではありません。

それぞれの参加者の皆さんに対する私見を以下に記します。
あくまでも私の見方であることをお断り申し上げます。

1。宇根由佳さん ティエント
ティエントだが、後のタンゴの方に重きを置いている感。ティエントのもったりと引っ張る感じがあまりない。技術がしっかりしていて靴音がクリア。体の構えを斜めにしたり、傾けたり、変化をつける、肩を後ろに引くなどするとより綺麗かも。
2。市川幸子さん カンティーニャ
細部に素敵なフラメンコな瞬間がある。緊張していたのだろうか、固い表情で始まるが、次第にほどけてきた。カンティーニャ/アレグリアス系は口角あげた感じの方がいいかも。二の腕や首に緊張感が不足?でも予選の時よりずっとよかった。もっと色々見てみたい人の一人。
3。山中純子さん アレグリアス
ピンクの水玉のバタ・デ・コーラに白いマントン。装いも古風で、マントンでもペイネタに花つけて、よく絡めずにできましたが、バタ踏んでましたね。練習不足?でも丁寧に踊っている感じに好感が持てました。
4。青木ルミ子 ティエント 3位
ティエントらしいティエント。昔ながらのオーソドックスな感じの振り付け。スカートの持ち方などもちゃんとしているし、靴音も力強い。難しいことにチャレンジするのではなく、できることだけをきちんとやっているという感じ。それも一つの方法。ただ前回に引き続き胴体のコントロールがなく棒立ち状態、鎧装着状態なのは残念。
5。鈴木敬子さん アレグリアス
バタ・デ・コーラなのだが、ぺしゃんとしているのが残念、踊りにくそう。バタは技術が良くても衣装がそれに値するものでないと効果が半減。ポーズが綺麗で、ホセ・ガルバン風などフラメンカなディテールあり。両足ちゃんと使っているのもいい。
6。屋良有子さん シギリージャ 優勝
圧倒的な存在感。無伴奏でゆっくりと腕を上げていくオープニングからもう目が離せない、という感じ。スペインの潮流を踏まえているが、そのオリジナリティ、独創的な創作能力に脱帽。コンテンポラリー的だったり、太極拳のような動きがあったり、人形振り風があったり、思いがけない展開が続くだけでなく、ムイ・フラメンコな要素もあり、コラへ も感じさせる。日本人でこんな表現をする人がいるとは思わなかった。驚き。タブラオと言うよりも舞台のための曲と言う感じだけど、これだけの力がある人ならタブラオでも、タブラオにあった踊りを作り上げて踊れるのではないかと思う。おめでとうございます。黒い衣装の裏に少し赤いフリルを入れているのも効果的。とってつけたフラメンコではなく、フラメンコで自分を表現しようという心意気がオレ!。
7。松彩果さん ソレア 2位
黒地に白い花柄の衣装、赤フレコのシージョはソレアにしてはちょっと主張強すぎ?と思う私が古いのかな。予選でのアレグリアスのエプロンもそうだけど(タンゴならエプロンもありだけど、アレグリアスにはないと思う)、曲にあった衣装選びも踊りのうち。 
アナ・デ・ロス・レジェスの深い歌を体の中に取り込んでそれを出していくような深い表現が素晴らしい。痛みや怒りを感じさせ、ムイ・フラメンカ。彼女には目指すフラメンカな表現、こうなりたい、こう踊りたいというフラメンコのイメージがある感じがする。そこに自分を寄せていく感じ。
8。伊藤千紘さん シギリージャ 審査員特別賞
黒い衣装にシージョ、頭の真ん中に大きな花をつけるのは小柄な体のカモフラージュ?花はなくてもいいような。上手だが、もらった振り付けを踊っている感あり。振り付けをいかに自分のものとして踊るか、消化するか、が課題かも。残念ながらまだアルティスタ未満、生徒以上、かも。自分のモチベーションと動きのつながり。難しいですが、階段登れる人だと思いたいです。
9。知念響さん ファルーカ
男装。耳かくしの髪型もいい。難しい曲を好演。予選の時といい、すでに自分のスタイルが出来上がっている感じ。
10。関真知子さん グアヒーラ 
白にピンクの水玉の可愛い衣装。アバニコを使って。一生懸命さに好感が持てるが、まだレファレンス、標となるべき踊りをそれほどたくさんは見ていないのかも、という感じ。ビデオでもいいからとにかくいろんな人の踊りをたくさん見て、これはこんな感じで、というイメージを蓄積していくのが必要かも。上っ面なぞるだけのようにではなく、というときつくなるかもだけど(ごめんなさい)、一曲の中に起承転結や強弱みたいな、どこを特に伝えたいか、などのイメージもできるといいかもしれない。
11。出水宏輝さん ソレア 努力賞
決勝進出した唯一の男性。ラメの入ったスーツで、ファルーコファミリー大好きです、的な踊り。こういうのが大好きです、というのは伝わる。でもあなたはファルーじゃない。あなたはあなたの踊りを探さなければ、では? これはその第一歩でしかないと思う。胴体の緊張感も足りないし、右足中心の足も、両足で自在にできるようになってほしい。可能性は無限大、でも努力次第。いろんなもの見て、自分で体をコントロールできるようになっていって、この愛をキープできればすごいよ。
12。谷口祐子さん グアヒーラ
マントンにバタ・デ・コーラ、アバニコ。マントンもバタ・デ・コーラもきちんとしたテクニックが身についている感じ。マティルデ・コラル/ミラグロス・メンヒバルの路線。ただ彼女も自分の振りとして消化できているかは疑問。振りと振りとの間のつながりが切れることもあるし、歌を呼び込むとか、歌に反応するとかの上級へのチャレンジを是非。


フラメンコは難しい。いやフラメンコも、か。
これができたと思っても、さらにその上、そのまた上がある。
みてるこちらも、ここまでできるなら、じゃあ、これも是非、と欲が出てきます。

今回、プロとして自分の公演をしたり、教えたりして活躍されている方の存在感、実力はやはり、そうでない方とは違うことも身をもって感じました。
ある程度までレベルが上がると、お客さんのいる前の舞台で踊ることによりのみ、学ぶこともあると思います。そして上のレベルの人は勝負どころが初級者、中級者とは違ってきます。

コンパス、姿勢、サパテアード、ブラセオ、回転、体の近い方、小物の扱い、表情、歌とどう絡むか、歌にどう反応するか、目線、衣装や髪など見た目も含め、すべて大切だけど、それに加えて、
フラメンコで表現したい何かがその人の中にあるのか、どうか。それを表現できるか。
何か、というのは言葉にならない思いだったり、この曲は私はこう感じる、といった漠然としたものでいいです。フラメンコ、それぞれの曲の性格を理解して、それを演じる、のでもいい、私はソレアをこう思う、私のソレアはこうだ、でもいい。伝えるべき何かがあるか、伝えたい何かがあるか。今はうまくできなくても、こういうフラメンコを私がしたい、でもいい。そういう強い思いがあるか。
その人のフラメンコがあるのかどうか。
いくら上手に踊っても、でも、そこに自分がなければ、あなたの思いがなければ、空虚ではないかと思うのです。


道はとんでもなく険しいけれど、だからこそ、舞台の上の共演者や観客と繋がったときの感動も大きいはず。

頑張ろう。
私も踊るわけじゃないけど、成長していく日本のフラメンコについていけるよう頑張ります。





2018年6月17日日曜日

第1回全日本フラメンココンクール予選

6月16日、麹町のインスティトゥト・セルバンテスでの全日本フラメンココンクール予選。
先週のセビジャーナスフェスティバルに引き続き、審査員を務めさせていただきました。
20人の出場者の皆さんお疲れ様でした。

5分という制限時間の中で、皆さんそれぞれのフラメンコを見せてくれました。
5分は短い、とお思いかもしれませんか、それぞれのレベルを知るには十分な時間ではないでしょうか。コンパス、姿勢、回転、サパテアード、ブラセオ、体の使い方、表情、振付の構成、伴奏との付き合い方/対話、衣装や髪型、化粧など装い全般…いろんな要素で踊りは出来上がっています。舞台にただ立っただけでも見えてくるもののあります。

今回のコンクールでは年齢制限がなく、多くの生徒さんを持つベテランのプロから、若い方までたくさんの参加があったのは嬉しい限りです。
熱い思いで参加された参加者の中から決勝進出者を決定するのも簡単なことではありませんでしたが、審査員全員で話し合い、およそ半数の方を選出しました。
決勝進出者の方々、おめでとうございます。
来週も頑張ってください。
進出できなかった人の中にも、あと一歩だった方もいらっしゃいます。
個人的にまた見てみたい方もたくさんいらっしゃいます。
きっと1曲だけではわからない本当のその人の実力というのもあるでしょう。
あくまでも今回は今回のパフォーマンスに対する評価です。
また次回を目指して頑張ってください。


以下、それぞれの参加者への私見を記します。
あくまでも私の見方です。

1、青木ルミ子さん ソレア 決勝へ
トップバッターにもかかわらず健闘。衣装もいい。ブラソも力こもっているが、胴体が鎧でも着ているかのようで、硬いのが残念。
2、出水宏輝さん アレグリアス 決勝へ
パソ詰め込みすぎの感ありだが熱演。この人も胴体が鎧。
3、佐渡靖子さん アレグリアス
白いバタ・デ・コーラにマントン。セビージャっぽい。振りにセンティードがあるともっとよくなる。一つ一つの動きに心を込める、というか、最後までちゃんとやりきるといい。
4、知念響さん シギリージャ 決勝へ
バストンで始まる黒い衣装でのシギリージャ。花落とすのはアクシデントではあるのだけど、昔のセビージャのタブラオなら罰金もの。
5、藤川淳美さん ソロンゴ
バタ・デ・コーラにマントンだが、マントンもぐしゃっとなったりで残念。こういう踊りをしたい、という志、目標が見えない。振りをなぞっているという感じ。
6、小野木美奈さん アレグリアス
昔風の振り。構えなど胴体は最初の人たちよりも使えているが、全体的にどたどたしている感じ。
7、松彩果さん アレグリアス 決勝へ
力強いアレグリアス。アレグリアスは戦いではないし、もっと軽やかに踊って欲しい気がするが、回転にキレがあり、表情もいいし、細部もいい。実力十分。
8、谷口祐子さん アレグリアス 決勝へ
バタ・デ・コーラにマントン。マントンを床に投げ捨てるのではなくゆっくり置くなど、細部がいい。ちょっと機械的だけど上手。もう少しゆったりした感じでもいいかも。
9、清水登美さん カーニャ
最初の回転でバランス崩したせいか、調子が出なかった?歌と踊りがバラバラな感じ。
10、市川幸子さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
胴体はもちろん、首の位置など、体の使い方がちゃんとしている。欲をいえば、この曲で何を表現したいのか、例えば怒りとか、燃え上がる愛、とか、具体的なものではなく、ぼうっとしたイメージだけでいいので、それがもっと踊り手の中ではっきりするとより伝わってくる、より良くなるのではないかと思う。
11、不在
12、橋田佳奈さん バンベーラ
若い。装いは良いがまだ生徒さんの域を出ない。実力十分。なぜ他の曲ではなくバンベーラなのかを考えるべきというか、やはり何を表現したいかをイメージして欲しい。
13、屋良有子さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
体の使い方などテクニックも実力十分。だが、全体的に前かがみになっているのが残念。エバのような、コンテンポラリーぽい動きも入れているが、中途半端な感もある。
14、関真知子さん アレグリアス 決勝へ
アバニコにピンクのチュール生地の、軽そうなバタ・デ・コーラ。きちんとしているが動きにもう少しセンティードが欲しい。一つ一つの動きに思い入れを込める、というか。右から左へ、だけじゃない表現を考えるといいのでは。
15、伊藤千紘さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
暗色の衣装で頭の真ん中に赤い花なのは違和感あり。シージョあったら上下のつながりができてよかったかも。もしくは花を下につけるとか。足も出来るから、あとはトロンコ、胴体のコントロールや首なども気をつけるともっと良くなるだろう。
16、ドミンゴさん ソレア・ポル・ブレリア
フラメンコが好き、という気持ちは伝わる。基本をしっかりやれば面白くなるかも。
17、山中純子さん シギリージャ 決勝へ
男装でのシギリージャ。カスタネット、もみあげの髪をくるんとした古風なこしらえ。首の位置と胴体のコントロールなど、課題あり。男装でなくバタで踊ってもよかったかも。
18、宇根由佳さん アレグリアス 決勝へ
7の松さん同様、力で押していくアレグリアス。足が確実で、一つ一つの音がクリアなのがいい。胸をもっと開いてもいいかもしれない。
19、鈴木敬子さん ソレア 決勝へ
ポーズがとてもきれい。歌ともっと絡んでもいいのではないか。足、ちゃんと聞こえない時あったのは残念。
20、佐藤哲平 アレグリアス 
昔ながらのトラへコルトで姿がいい。あやふやさがありところどころ遅れたりもあるが、楽しそうなのがいい。また見てみたい。
21、森山みえさん シギリージャ
赤いバタ・デ・コーラにカスタネット。前かがみな感じ。肩を前に落とさず、胸を開くとずっときれいに見えると思う。カスタネットの音にもニュアンスつけると表現に幅が出るのでは?

というわけで、全体的に、胸を開き、首の位置を気をつけるなど、姿勢にもっと注意するるとより美しく、よりフラメンコに見えるのではないかと思いました。
特に胴体、見逃されがちですが、構えを斜めにしたり、時に反ったり、ねじったり、変化つけると踊りに奥行きが出る、というか、ダイナミックになると思います。顔の位置、首も、難しいですが、気をつけるだけの価値はあります。
また、歌との連携も大切です。歌がよくないと踊りも引きずられてしまう、というか、踊りが良くても歌がイマイチでコンクールでいい順位が出ないというのはスペインでもあることです。反対にいい歌、ギターは踊りを助けてくれると思います。
バタ・デ・コーラやマントン、多くの方が使っておられました。どちらも独自のテクニックが必要です。華やかに見えますが、きちんと扱えないと逆効果です。またマントンもバタもある程度重さがあった方が、技術的に、体力的に大変ですが、美しく見えると思います。
動きにセンティードを持たせる、というのは、A地点からB地点へただ移動させるのではなく、思いを込めるということ。技術的に言えば、速度を変えたり、角度を変えたり、で変化をつけるというのも有効でしょう。
あと、やっぱり、今はたとえできなかったとしても、こういうことがしたいのだ、これが好きなんだ、というイメージは必要なように思います。そして、この曲を通して私は何を伝えたいか、というイメージも。それは言葉にならないイメージでもいいのです。
アレグリアスならカディスの陽光でも、カディスの光る風でも、ペルラ・デ・カディスの笑顔でも、とにかく私はフラメンコが好きなの!でも、何でもいいと思います。
曲それぞれが持つキャラクターを理解して、それを表現しようというのでもいいのです。
ソレアにはソレアの、シギリージャにはシギリージャの、タンゴにはタンゴのキャラクターがあるのです。それを表現するのが一つ、そしてその先、その曲で「私が」表現したいこと、というのも出てくると、観客としてはもっと面白く見ることができます。
ただ振付をなぞるだけではなく、自分は何を伝えたいのか、というイメージを考えることは有効だと思います。
他の人からもらった振付でも、それで何を伝えたいのか、を考えて、どこが焦点なのか、どこに焦点を持っていくかなどを考えるといいのかもしれません。
そして何より大切なのは基礎。コンパスはもちろんのこと、姿勢も大切。サパテアードではリズムだけでなく音にも気をつけ、ニュアンスまで出せれば最高。ブラソ、表情、見せ方。舞台でのいかた。歩き方。細部に気をつけることでパフォーマンスの効果は何倍にもなると思います。


というのは私の見方。参加者の人も、観客としてみていた方も、私と違う見方をされていることと思います。これは違う、ということがあれば是非おっしゃってください。







2018年6月16日土曜日

傷口にウォッカを吹きかけろ

ハードボイルドなタイトルに戸惑いつつのムジカーサ。
代々木上原の坂の上のマイクなしで声が届き、オペラグラスなしで表情を見ることができる小さなライブスペース。
松彩果を初めて見たのもここだった。その身体のコントロールにびっくりした。
あれは何年前だろう。

不思議な公演だった。
軸が揺るがない松。
この人ならではのペソ、重みを持った動きで彼女のフラメンコを表現する森田志保、
明るさと圧倒的な存在感で聴かせるヘレスの太陽、アナ・デ・ロス・レジェス
スペインの若手たちと何ら変わらないセンスで聴かせる徳永兄弟、
独自の世界を持つNOBU、
シンガーソングライターの松谷冬太
繊細なパーカッションの朱雀はるな。
メンバーそれぞれの個性も様々だし、内容もフラメンコ・フラメンコな曲あり、フラメンコポップの名曲あり、日本語の歌あり、ユーモアあり、芝居仕立てなところあり、と様々。
それがごちゃ混ぜに観客の前に差し出される感じ。
ミックスパエジャというかごちゃ混ぜサングリアというか。
多分、松と森田とアナとギターだけでやれば、めっちゃフラメンコなコンサートになったと思う。
あえて異種格闘技的な存在を入れることで、
人生はフラメンコだけじゃないんだよ、って言ってるのかも?

マルティネーテからのバンベーラ。彼女は芯がしっかりしているフラメンカ。
こういうフラメンコが好きで、そこに近づきたい、私はフラメンカ!、という意思を感じる。
松谷のライ・エレディアの名曲lo bueno y lo maloはフラメンコでなく歌うとこうなるのか、という感じ。個人的に思い入れのある曲だけに、うーむ、ちょっと悲しい。でも名曲はこうやって広まっていくのかもだな。
そこに絡んで始まる黄色のシャツに赤いジャケット、スペインの国旗カラーの衣装のNOBU。アレグリアス。ジャケット、もう少し丈が長い方がいいんじゃないか、って思うんだけど、どうなんだろう。国旗意識してのあえてでの長さ?うーむ。
この人が好きなのはフラメンコのノリなんじゃないかと思う。コンパスで迷子になったり、コロカシオン姿勢も悪いし、よくこれで足打てるなー、と感心。バーン!と決めるのが気持ちよさそうで観客を引き込んでいく。
多分、コロカシオンとか基礎をきちんと学んで、その上にこの明るいノリ、ユーモアのセンスが出たらすごくいいのではないかと思うのだけど、どうなんだろう。フラメンコにとってもユーモアはすごく大切で、それを表現できるキャラクターは貴重だ。
森田はソレア。ゆっくりした動き。重みがある。松がフラメンコに近づこう、フラメンカになろう、という踊りだとすると森田は私はこう、私の好きなフラメンコはこう、私のフラメンコはこう、という感じの踊り。
どちらもフラメンカなのだけど、そんな気がする。
アナは表現の幅が広がった気がする。重みが出てきたというか、タンゴやブレリアの自由闊達さだけでなく、マルティネーテやソレアなどの痛みや重みも見事に表現していた。


ごちゃ混ぜ感はあって、もう少し整理する必要があるかもなんだけど、そのごちゃ混ぜ感も意外に悪くないってのが本音。
日本のフラメンコもいろいろだね。楽しいね、と思った1日でした。

ちなみにスペインのバルで出すサングリア、赤ワインに果物、炭酸系ソフトドリンクだけでなく、ウォッカやブランデーなど、そこらへんにあるお酒を適当に混ぜたりします。
なんで甘いからといって飲んでると悪酔いすることもありますよ。ご注意。

それにしても客席が豪華。日本のフラメンコシーンを引っ張っているアルティスタたちが揃ってた。
全員でなんかやったらすごいだろうなあ。











2018年6月10日日曜日

第1回全日本セビジャーナスフェスティバル

6月9日土曜は第1回全日本セビジャーナスフェスティバルで審査員を務めさせていただきました。
参加者の皆さん、受賞された方もそうでない方も皆さんおめでとうございます。
皆さんのフラメンコ愛、確かに伝わりました!

小さな子から若い人、年配の方まで、全員が努力して、踊って、楽しんでいることに感動。いやあ、日本のフラメンコが根っこをしっかり張っていると実感しました。女性が圧倒的多数ではありましたが、男性も頑張っているのは嬉しい限りです。

セビジャーナスはもともとセビージャのお祭りで踊られる、一般の人たちが楽しむ踊りで、基本、専門家が踊るものである、他のフラメンコ曲とは一線を画しまmす。
フラメンコ舞踊のレッスンで最初に取り上げられることが多いということもあり、日本でも多くの人が踊ることができる曲でしょう。
ということもあってか、22グループの参加者、プロから初級者まで、レベルも年齢も様々。発表会風あり、フェリア風あり、舞台作品風あり、とそれぞれに工夫を凝らして頑張っていました。
カスタネット、マントン、アバニコなどの小物使いの工夫。
フォーメーションの工夫。衣装の工夫。
出演者の方々も、他のグループの演技を見ることは勉強になったのではないでしょうか。

劇場の舞台で、コンクールとして競っている、ということもあるからか、緊張しているのでしょうけれど、笑顔がない人もいたのは残念。セビジャーナスは笑顔が基本です。
また、二人一組で踊る時に相手と視線を交わすのも基本中の基本ですが、こちらもやはり自分の踊りに一生懸命すぎて相手を見ることができなかった人もいたようです。
とは言いながら、昨日の参加者、誰でもセビージャのフェリアで、地元の人と一緒に踊れるはずです。
このフェスティバルが毎年続いて、このフェスティバルからセビージャのセビジャーナスコンクールにゲスト出演したり、フェリアで踊ったりする人がどんどん出てきますように。

なお、入賞者は、審査員の話し合いによって決定しました。
ほぼ全員が同じグループを良いと思い、意見の相違が全くなかったことは驚きです。
審査員の生徒さんも出演しておられましたが、その先生は自分の生徒たちのグループを推すことは禁じられていました。結果的には審査員の生徒さんのグループが入賞することになりましたが、それはその先生の他の審査員が支持したことによってだったことも特筆しておきましょう。
(スペインのコンクールや各賞決定の時、家族や関係者がその賞に対する投票の辞退をするということは、20年くらい前のビエナルの各賞の時にもありました)






受賞者を含め、全参加者の簡単な感想を簡単にまとめてみました。
なお、これはあくまでも志風個人の見解であり、審査員全体のものではありません。

1。小形衣里フラメンコスタジオ、ラス・フローレス
女性8人の華やかな色彩のバタ・デ・コーラでのグループ。二人で組んでも一人で踊っている感。バタの扱いも初級。前に行きがちな肩修正すれば良い。
2。RAPSODAS
女性二人。マントン、アバニコ、カスタネットで変化をつける。舞台を大きく使っているのはいいが、これも二人の目線が交差しない感じというか、ソロ二人ぽい。
3。Buena suerte con Sevillanas
男性一人、女性二人。男性も女性振りのような感じ。基本の振り付け。
4。大野環フラメンコアカデミア「EL ANILLO」
青い衣装の4人。カスタネット。首の位置、注意。ちょっといいものを感じさせる人あり。
5。CUATRO FLORES
赤字に黒のアニマル柄風のスカートの女性4人。アバニコ。楽しそうに踊っているのがいい。ちゃんと相手を見ているのもマル。フェリア風のセビジャーナス。
6。Studio Si セビージャ賞
10人。セビージャのフェリア風。楽しそう。今風のあみあみだけのシージョをマントン風に使ったり、パリージョを使ったり。そのままセビージャのフェリアやコンクールに出ることができそうな感じ。
7。アカデミア・マルガリータ
バタ6人。白いブラウス。フラメンカなセビジャーナス。フォーメーションの変化もいい。笑顔不足が残念。
8。湘南マダーム
女性4人。衣装がいい。ピンクの人の笑顔がいい。セビジャーナスにはやっぱり笑顔。
9。ワークショップ ZAMA 努力賞
女性7人、男性2人の9人。一昔前のフェリアの雰囲気の衣装。初心者風だが、いいお顔、というか楽しそうに踊っている。普通のおじさんが踊っているのは新鮮!というか、セビージャぽい。
10。Mr. Kと4人の美魔女達
美魔女というけど、そんな年じゃないでしょう。黄色さんのいい笑顔。
11。arco irisアルコイリス 最優秀賞
こどもたち。衣装も髪のまとめ方、花のつけ方などのしつらえも正統派のセビジャーナス。こどもだから、というのを差し引いても高評価。
12。Las Tornillerias グラシア賞
女の子4人。掛け声かけながら元気に踊る。元気すぎてbruta、ちょっと乱暴。アバニコも使う。スペインで絶対受けるタイプ。スペインの友達に見せたい。
13。Les Cordobesas de Akabane 振付賞
アンダルシア州の旗の色でもある緑の衣装。フェリアで久しぶりに会った友達に挨拶するというお芝居から始まり、ラップバトルならぬセビジャーナスバトルがあったり、の舞台作品仕立て。群舞も慣れている感じで、クオリティが高い。
14。森山みえフラメンコ舞踊団
映画「セビジャーナス」のマティルデ・コラルに歌っていたパレハ・オブレゴンの曲を使って、マティルデのイメージなのか、マントンを使って。ここも肩が前に出てしまいがちなのが残念。ゆっくりなセビジャーナスはやさしそうに見えて実は難しい。
15。スタジオ・エランヴィタール マエストロ賞
なんと、碇山奈奈さん直々のご出演。何十年ぶりかで見た奈奈さん、セビジャーナスも秀逸。余裕があって、生き生きしていて、粋で、華がある。ストレートなセビジャーナスなのだけど奈奈さんの存在で全てが変わる。すごい。
16。Las pipas de Girasol
カスタネット付き。赤い衣装にマントンシージョ、冠のようなペイネータ。
17。プリマベーラ
決して下手というわけではないのだが、無表情なのが残念。笑顔が欲しい。
18。Pytagoras(ピタゴラス)
白い衣装。マントン。舞台に出るときは歩き方から舞台にいるという意識が必要では?
19。Contigo vino y baile
発表会風だがきちんとしている。カスタネット。好感が持てるのは相手の顔をちゃんと見ているからかも。
20。Diego y pitimini
男女デュオ。闘牛士とカルメン(?)風の芝居仕立てなようなのだがはっきり物語が伝わらないのが残念。構成の問題? それとも物語があるわけではなく、単なる衣装? マントンをつかっての女性は正統派フラメンコで素晴らしい。
21。ラティドスJr.
10人の小学生のグループ。よくできている。この中からいい踊り手が育ってくる予感。
22。ともだち列車たからもの家族号 特別賞
3組の親子?振付、フォーメーションがよく工夫されている。










2018年6月1日金曜日

マドリード共同体スーマ・フラメンカ

マドリード共同体のフラメンコ祭、スーマ・フラメンカも今年で第13回。
舞台はマドリードにあるカナル劇場が主ですが、共同体の中の他の町でも幾つかの公演が行われます。



◇第13回スーマ・フラメンカ
6/5(火)20時「バイレ・デ・アウトール」
[出]〈b〉マヌエル・リニャン
6/7(木)20時「ドス・パルテス・デ・ミ」
[出]〈g〉アントニオ・レイ
6/8(金)20時「ニ・リエンダ、、ニ・ヒエッロ・エンシマ」
[出]〈c〉エル・カブレーロ
6/9(土)20時「ナセール・パラ・モリール」
[出]〈b〉アデラ・カンパージョ
6/10(日)19時「チャノ・ドミンゲス・クアルテト・フラメンコ」
[出]〈piano〉チャノ・ドミンゲス
6/12(火)20時
[出]〈c〉ペドロ・エル・グラナイーノ
6/13(水)20時「ティエンポ・デ・ルス」
[出]〈c〉カルメン・リナーレス、アルカンヘル、マリナ・エレディア
6/15(金)20時「ジェレム」
[出]〈b〉エル・チョロ
6/16(土)20時「ディレクト」
[出]〈c〉ホセ・バレンシア
[場]マドリード カナル劇場サラ・ベルデ

6/6(水)20時30分「バイラ」
[出]〈b〉ファルキート、ホセ・マジャ
6/7(木)20時30分「ロンボポルバンビノ」
[出]〈c〉マヌエル・ロンボ
6/8(金)20時30分「アルカンタルアマヌエル」
[出]〈c〉マイテ・マルティン
6/9(土)20時30分「ソナンタ・デ・トカオール」
[出]〈g〉ホセ・ガルベス、〈c〉ルイス・エル・サンボ、ミゲル・ラビ、ゲスト〈b〉ホアキン・グリロ
6/10(日)19時30分「ミンブレス・デ・カンテ」
[出]〈c〉サムエル・セラーノ、イスラエル・フェルナンデス、アウロラ・バルガス
6/13(水)20時30分「シンコ・エスパダス」
[出]〈piano〉ディエゴ・アマドール
6/14(木)20時30分「ソイ・フラメンコ」
[出]〈g〉トマティート
[場]マドリード カナル劇場サラ・ロハ

6/9(土)21時「アスタ・エル・トゥエタノ」
[出]〈b〉ラ・モネータ
[場]マドリード圏ラ・カブレーラ セントロ・コマルカル・デ・ウマニダデス・シエラ・ノルテ・カルデナル・ゴンサガ

6/10(日)19時「デ・ロ・ホンド・イ・ベルダデロ」
[出]〈c〉エスペランサ・フェルナンデス、ゲスト〈c〉ロシオ・マルケス、ゲスト〈b〉ルシア・ラ・ピニョーナ
[場]マドリード圏ポスエロ・デ・アラルコン

6/16(土)20時「ロ・トライゴ・アンダオ」
[出]〈c〉ヘマ・カバジェーロ
[場]マドリード圏エル・エスコリアル レアル・コリセオ・カルロス・テルセロ

6/21(木)22時30分「フラメンコ・ジャズ・カンパニー」
[出]〈piano〉ペドロ・オヘスト他
6/22(金)22時30分
[出]〈チェロ〉バティオ
6/23(土)21時30分「コモ・ソイ」
[出]〈g〉ヘロニモ・マジャ
6/24(日)20時
[出]〈g〉フアン・カルモナ、ホセミ・カルモナ、パケーテ
[場]マドリード カナル劇場サラ・ネグラ

6/23(土)21時30分「デ・プラタ・エス・ラ・エラドゥラ」
[出]〈c〉グアディアナ
[場]マドリード ラサロ・グアルディアノ美術館

6/23(土)22時「ミ・エレンシア・カンタオーラ」
[出]〈c〉レラ・ソト
[場]マドリード 学生寮庭園

6/24(日)22時
[出]〈c〉ラファエル・デ・ウトレーラ
[場]マドリード 服飾博物館

[問]http://www.madrid.org/sumaflamenca/2018