2020年3月5日木曜日

ヘレスのフェスティバル13日目マルコ・フローレス『ラジュエラ』

ラジュエラとはけんぱのこと。
そう、けんけんぱ、けんぱ、けんぱ、けんけんぱ、と地面に書いた印を片足などで飛んだりするあの子供の遊びのことであります。
遠く離れたスペインでも同じような遊びがあるのですね。
それをタイトルにしたマルコの新作、このヘレス公演が初演とはいうものの、昨年夏から制作開始し、プレ公演もカディスで行っているという、念の入った作品作りもあって、非常に完成度の高い、いやもう、完璧!と言いたくなる、素晴らしい作品でありました。

出演者は3人のみ。
マルコと歌のダビ・ラゴス、ギターのアルフレド・ラゴス。
舞台装置もなく、椅子が2脚のみ。
シンプルこの上もない舞台です。
だけど、これがすごかった。
美しい照明が装置以上の効果を出しています。
そして演者それぞれのレベルが高いので、ビジャマルタの間口の広い舞台を3人だけで、3人のアルテで十分に満たしてくれるのです。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
マルコはヘレスにもほど近い山間の町、アルコス・デ・ラ・フロンテーラ出身。
フェスティバルの最初の頃はクルシージョを受けていたと言います。
それがマドリードに出て、サラ・バラスやラファエラ・カラスコの舞踊団、タブラオなどを経て、2003年にはマヌエル・リニャンやオルガ・ペリセ、ダニエル・ドーニャらと組んでの活動も始めます。2007年にはコルドバのコンクールで3部門優勝し、ハビエル・ラトーレ以来のアントニオ賞を受賞します。この同じ年、オルガやコンチャ・ハレーニョ、アルフォンソ・ロサも優勝していたのですが、いつの間にか、この世代がフラメンコ舞踊界を引っ張っていってますね。
2010年には舞踊団を立ち上げます。ヘレスのフェスティバルにも、リニャンと一緒にサラ・コンパニアで踊っていたし、また自身の舞踊団でも、何度も出演しています。
フェスティバルとともに成長してきたアルティスタの一人なのです。


© Festival de Jerez/Javier Fergo
 3人だけの舞台というとイスラエル・ガルバンの『エダ・デ・オロ黄金時代』を思い出す人も多いでしょう。共演者も同じラゴス兄弟ですし。
確かに似ているところもあります。例えば最初の、民謡からファンダンゴ系の様々な曲種が繋がっていく感じやシギリージャ系の曲が繋がっていくところなどがそうですね。でも、この作品では歌やギターがより重要な役目を果たしているように思います。
歌が主役に成ったり、ギターが主役になったり。踊りが主役になったり。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
 マルコは、コンテンポラリーのテクニックなども勉強してきたのでしょうか、舞踊の言葉が、語彙が豊富になっている感じです。フラメンコのテクニックも、最後のサパテアードとか本当に凄いけど、以前より体のコントロールがより完璧になっているように思います。
そしてフラメンコ性も十分で、見ていて気持ちがいい踊りです。
マルカールが女性ぽい感じだったのも消えて、かといって男性的すぎず、まさにマルコらしい、感じ。
詰め込みすぎず、いい感じに間をあけていくのが、間合いがよく、自然に笑顔になってきます。


© Festival de Jerez/Javier Fergo
 ダビ・ラゴスは、とにかくもう、ありとあらゆる歌を歌いこなし、民謡やホタも歌っちゃうし、その全てが音程抜群、声量たっぷり、味わい深く、心込めて歌われるのですから、もう本当に、素晴らしすぎる。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
アルフレドも最初の一音からして豊かな音で、ずっと聴いていたい感じ。
こちらもクラシックまで弾きこなし、 いや、ほんと、もう一度聞きたい。
ぜひこれでCD作って欲しい、と思うほど。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
 三角帽子のファルーカがフラメンコのファルーカになったり、ホタからアレグリアスに成ったり、音楽的にも舞踊的にもいろんな仕掛けがあるので、それも楽しい。
是非是非また観たい、と思う作品でありました。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
最後のルンバでのはじけ方もいいなあ。
スカーフ1枚で、スカートのように使ったり秀逸。

終演後、みんな笑顔が止まらない。
いいものを見るとみんな笑顔になるものなんですね。
あー幸せ!


https://vimeo.com/156346462

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