2023年12月28日木曜日

アントニオ・アグヘータス逝く

 12月27日、歌い手アントニオ・アグヘータが亡くなりました。57歳。

本名アントニオ・デ・ロス・サントス・ベルムデスは1966年ヘレス生まれ。父は2015年に亡くなった歌い手マヌエル・アグヘータス、何度か来日もしている歌い手ドローレス・アグヘータスの6歳下の弟。

子供の頃から歌い、ヘレスやマドリードでも舞台に上がっていたといい、1979年には“エル・ニーニョ・デ・アグヘータス”という名でレコードも出しました。が、その後、ドラッグや盗みなどで刑務所で14年を過ごすこととなります。

91年服役中にアントニオ・アグヘータスの名前でアルバムをリリース。93年に受刑者を対象にしたカンテコンクールで優勝し、98年にも同じコンクールの覇者であるホセ・セラーノと二人によるアルバム『ドス・グリトス・デ・リベルタ』を発表。21世紀になって、再びカンテの道を歩み始め、ペーニャやビエナルやヘレスのフェスティバルなどにも出演。CDも2001年『アシ・ロ・シエント』、2003年『ヘススクリスト・セグン・アグヘータス』、2017年『ポル・ヌエストロ・ビエン』を発表するなどしました。


ご冥福を祈ります。




2023年12月27日水曜日

タコン・フラメンコ祭

 ウトレーラで開催のタコン・フラメンコも来年で10回目。

今回はセビージャのベテラン、カルメン・レデスマへのオマージュ。

劇場公演のほか、カルメン本人によるクラスも開催されます。ヘレスのフェスティバルと重なって私は一度も行くことができていないのですが、こちらも舞踊主体のフェスティバルです。



◇第10回タコン・フラメンコ・フラメンコ祭

222(木)21

[出]〈c〉マヌエラ・モジャ、〈b〉ミゲル・エレディア、イサ・ティラド、〈piano〉ぺぺ・フェルナンデスほか

223(金)21

[出]〈b〉レマチェ・デ・マラガ、〈c〉ペリーコ・パニェロ、コラル・デ・ロス・レジェス

224(土)18時『カルメン・レデスマとのお話し会』

[出]〈b〉カルメン・レデスマ

225(日)『舞踊学校の集い』

226(月)21

[出]〈b〉フェルナンド・ヒメネス、〈c〉マヌエル・モネオ・カラスコ。エンリケ・レマチェ、〈g〉フェルナンド・デル・モラオ

2/27(火)

[出]〈b〉ホセ・マジャ

228(水)21時『オメナヘ・ア・カルメン・レデスマ』

[出]未定

[場]セビージャ県ウトレーラ エンリケ・デ・ラ・クアドラ劇場

[問]https://taconflamenco.com

2023年12月21日木曜日

ペドロ・ペーニャ逝く

12月20日、ギタリスト、ペドロ・ペーニャが亡くなった。84歳。




今年の3月、トマティートやぺぺ・アビチュエラらとともに座談会に出席した時は車椅子ではあるが、その話し振りは力強く、カンテヒターノについて語っていた。

伴奏の名手だが、歌も上手で、晩年はその歌を聴く機会もあったのは幸運だった。ご冥福を祈ります。



2017年ニームで















 

2023年12月10日日曜日

ニームのフラメンコ祭

 毎年恒例、フランスはニームのフラメンコ祭。来年も開催します。

オルガ・ペリセやピニョーナ、パトリシア・ゲレーロ、ダビ・コリア、パウラ・コミトレと、舞踊公演が特に充実。カンテも人気のイスラエル・フェルナンデスやヘスス・メンデス、ギターはヘラルド・ヌニェスが出演します。



◇ニーム・フラメンコ祭

1/10(水)20時『ラ・マテリア』

[出]〈b〉オルガ・ペリセ

111(木)20

[出]〈c〉イスラエル・フェルナンデス、〈g〉ディエゴ・デル・モラオ

11220時『O../O../.O/O./O.

[出]〈b〉マリア・モレノ

114(日)18時『インサシアブレ』

[出]〈b〉ラ・ピニョーナ

116(火)21時『ロス・バイレス・ロバードス』

[出]〈b〉ダビ・コリア

118(木)21

[出]〈c〉ヘスス・メンデス、〈g〉ぺぺ・デル・モラオ

119(金)21時『デリランサ』

[出]〈b〉パトリシア・ゲレーロ

1/20(土)21

[出]〈g〉ヘラルド・ヌニェス

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

113(土)20時『テルセル・シエロ』

[出]〈c〉ロシオ・マルケス、〈シンセサイザーなど〉ブロンキオ

[場]フランス ニーム パロマ

 

119(金)18時『フラメンコ・ディレクトvol.2

[出]〈c〉イスマエル・デ・ラ・ロサ、〈g〉ジェライ・コルテス

[場]フランス ニーム ローマ博物館オーディトリウム

 

116(火)18時『アプレ・ヴ、マダム

[出]〈b〉パウラ・コミトレ

117(水)20時『アレゴリアス』

[出]〈b〉パウラ・コミトレ

118(木)18

[出]〈b〉ステファニー・フスター

1/20(土)18時『フランカチェラ』

[出]〈b〉チョロ・モリナ、ヘスス・コルバチョ

[場]フランス ニーム オデオン

[問]www.theatredenimes.com


2023年12月2日土曜日

ロシオ・モリーナen ガルロチ

信じられないようなことが起きるんですよね、日本では。

ロシオが日本に行く、ガルロチに行くと聞いた時もちょっと信じられなかったけれど、12月1日、前日来日したばかりのロシオが仲間たちと見せてくれた舞台も、信じられないほどすごいものだった。 

伝統的な、というか、オーソドックスなフラメンコしか見ていない人はびっくりしてしまうかもしれない。え、これもフラメンコなの?と思うかもしれない。私にとってはあらゆる意味でムイ・フラメンコだったけど、そう感じない人もいるかもしれない。でもそれでいいんだと思う。感じ方も考え方も人それぞれ。

アンダルシア風のジャケットに黒いスカートという、アマソナと呼ばれる女性の乗馬服風衣装で登場。クリアで完璧な靴音を聴かせる。手が体とは別の、意識を持った他の生き物のように動く。シギリージャやファンダンゴなどフラメンコの森を彷徨ったかと思うと、伝統的なスタンダードなフラメンコを解体して再構築したような、フラメンコの決まりの中にある音/拍を飲み込んでしまったような、不思議なフラメンコを作り上げる。  その中に飛びこむオルーコのストレートなフラメンコ。いい感じに年をとり、重厚さと深みが加わっていて素晴らしい。そして雫が落ちる、ぽたんぽたんという感じに聞こえるギターの音から始まったロシオのソレア。歌はない。でも歌が聴こえる。体の?心の?奥底に溜まったものを掻き回して引きずり出してくるような、そんな感じ。涙が溢れるのは何故だろう。ロシオの中に息づいているたくさんの先人たちや感情に導かれているような。

お辞儀をしておしまい、と思いきや、始まったフィン・デ・フィエスタではぺぺが熱唱し、ジェライが踊り、ロシオがオルーコを引っ張り出す。




偉大な人ほど普通。と言ったのは誰だったろう。偉大な人はコンプレックスもないから自分を大きく見せたりする必要がないので、威張らない。偉ぶらないので普段は普通の人っぽい。昨日の公演後、楽屋に走って行って感動と感謝を伝えたのだが、彼女も他の女友達と同じように、ナチュラルで可愛い笑顔で答えてくれた。舞台に上がった彼女は宇宙人のようだけど、楽屋に向かう道で地球人に戻るのかもしれない。


翌日の公演はまた全く違ったものだったらしい。だろうなあ。彼女の懐はとてつもなく深くてメリーポピンズのカバンか、ドラえもんのポケットみたいに底なしで、いろんなものが出てくるはず。一度見てください。見たらまた行きたくなるはず。行ける人はぜひどうぞ。

2023年12月1日金曜日

第12回 CAFフラメンコ・コンクール


11月30日、東京、北千住のシアター1010においてスペイン舞踊振興MARWA財団が主催する、第12回CAFフラメンコ・コンクール本選が行われました。14日の二時予選、そして30日の本選と、審査員を務めさせていただきました。マルワのコンクールの審査をするのは初めてでしたが、改めて、日本のフラメンコの力を実感する経験でした。

入賞者の方々、おめでとうございます。
でも入賞しなかった方も、それはその日、その時のパフォーマンスをその時の審査員がどう評価したか、という結果でしかなくて、最終審判が下されたわけではありません。受賞者が賞を励みとして一層の学びを重ね、より素晴らしい踊り手になっていくのか、残念ながら今回は賞を逃してしまった人でも、これを機に発奮して学びを重ね、受賞者を超える踊り手になるのか、未来は誰にもわかりません。でも、受賞者も、受賞しなかった人も、一次予選を通過できなかった人も、コンクールという目標に向かって、練習に励み、いろいろ考えたりしたことは、絶対プラスになっているはずです。コンクールの一番の意義はそこにあると、私は思います。受賞したという一文を自分の経歴に書くことで実力を保証される、ということもあるかもしれません。でも実際問題、コンクールに優勝しただけで一夜にしてスターになれる、というものではありません。それはスペインでも同じで、有名なラ・ウニオンやコルドバのコンクールで優勝したからといっても直ちに仕事が殺到するというわけではありません。コンクールの経験をその後のキャリアに、人生にどう活かすかは本人次第です。

今回のコンクールは非常にレベルが高く、誰が受賞してもおかしくないものだったと思います。フラメンコへの知識、技術、表現力など、どれをとっても一人突出した人がいるというわけではなく、皆、一定のレベルをクリアしていらっしゃる。なので、入賞するかどうかの命運を分けたのは、小さな要素の積み重ねだと思います。例えば衣装や小物、アクセサリーの選び方、髪型、曲に踊りに合わせた衣装/小物選びができているかどうか、サポートしてくれるミュージシャンたちをどう選ぶか。また、舞台への出入り(舞台の上を歩くのは街中を歩くのとは違います。また舞台袖から見切れないようにする、袖に入って客席から見えなくなるまでは気を抜かない、なども重要)、姿勢、表情、目線をどこに持っていくかなど、小さなことですが、どれも重要だと思います。
審査員が評価するのは踊りですが、その踊りは、サポートするミュージシャンによってより良くなる可能性も、反対に足を引っ張られてしまう可能性もあるというのも事実です。また、どの曲を二次予選で踊りどの曲を本選で踊るのか、というのもありますね。二次予選の方が本選よりずっと良かった人もいらっしゃったりすると、もし選曲が逆だったら、と思ってしまうこともあると思います。

兎にも角にも、大きな舞台で踊り、たくさんの人に見てもらう機会、いろんな意見を聞ける機会、そして入賞すれば留学をサポートしてもらえるというのは大変幸運なことだと思います。そういった機会を若い世代に与えてくれる、スペイン舞踊振興MARWA財団には感謝しかありません。参加者の皆さんは、与えられた機会を生かし、将来は素晴らしい舞台を作って皆を楽しませてくださいますように。




 

2023年11月27日月曜日

田村陽子『ラ・セルピエンテ 蛇になった女』配信

 芸術の秋、パンデミックによる公演休止などを経て、フラメンコ公演も戻ってきました。

スペインからの舞踊団公演こそ、まだ昨年のアントニオ・ガデス舞踊団のみだけれど、日本人アーティストの公演で久々に来日するスペイン人アーティストは増えているようです。先日の小林亮の新譜発表記念リサイタルでもヘレスの名手たちが来日したし、小島章司/北原志穂公演ではチクエロ、エル・ロンドロ、ダビ・ラゴス、ペリーコ・ナバッロと小島の舞台作品を長年にわたって支えている仲間たちがやってきた。そして、小島と同日に公演だった、田村陽子の公演『ラ・セルピエンテ 蛇なった女』でも、田村の長年の共演者、舞踊家ヘスース・オルテガ、ギタリスト、ラモン・アマドールをはじめ、舞踊家クリスティアン・ペレス、歌い手ロサリオ・アマドールが来日しました。




残念ながら私は公演会場に出向くことはできなかったのですが、出かけて行った人たちが皆、口を揃えて絶賛していたので興味津々。公演録画を配信えするとのことで、配信にさきがけて拝見しました。配信はこちらでチケット購入できるそうです。4200円とのこと。https://t.livepocket.jp/e/t8s3a

なるほど、と納得したのは、これ、舞台作品としてのクオリティが非常に高いのです。

ストーリーのある作品ですが、物語はチラシに書いてある9行を読んでおけば十分理解できるほどシンプル。不実な男に恋した女が情念のあまり蛇と化し…舞踊作品は、舞台を観るだけでわかるのが基本。よくわからないけどよかった、すごかったと思うならいいのだけれど、よくわかんなかった、だけが残るのはうーん、問題ありかもしれません。

チラシに、原案:安珍と清姫とありますが、安珍と清姫の物語から借りてきたのは、情念が蛇になって相手を滅ぼすというコンセプトのみで、女に恋される男は僧ではないし、鐘の中に隠れるわけでもありません。出会いもその後の展開もオリジナルです。男は妻帯者で、というのは、主役の女にとってはライバルがいるわけでより恨みは強くなりそうですよね。

妻帯者である男と妻の場面はアントニオ・ガデス『血の婚礼』を、ラブシーンは『メデア』を思い出させますが、それをコピーしているというわけでは無論なく、フラメンコ舞踊史に残る名作(どちらの作品も前知識なくとも大まかな物語は理解できる作品です)への、リスペクトのある目配せ、といったところかと思います。

舞台作品のクオリティの高さは、全てに手を抜かずに作り上げていることによるのでしょう。物語のそれぞれの場面を表現するためのフラメンコの曲の選択もなるほど、と思わせるものだし、違う曲種へのつなぎ方も自然。舞台の使い方がとにかく上手いのです。大きな舞台での人物の配置、そして舞台空間を生かした動き。特に群舞、全員が登場する場面 が素晴らしいのです。ダイナミックな振り付けを踊る群舞メンバーたちのレベルの高さ。ようやく日本でもこのレベルの群舞を見ることができるようになったんだな、と感動。普段、ソロで活躍している彼らにとっても今回の舞台はいい経験になったと思います。場面場面の雰囲気づくりもうまいですね。最初の宴(祭り?)の場面でも、人物をベターっと一直線に置くのではなく座らせるなど立体的に配置し、全員で同じ振りを踊る時もフォーメーションに変化をつけたりするので発表会風にはなりません。

主役の田村は表現力、演技力が豊かで引き込まれます。一つ一つの動きのセンティードを理解した上で踊っている、というか、いまどういう気持ちを踊っているのかが明確に伝わってくるのです。ストーリー性のある作品では特に大切なところです。スペイン人の二人の踊り手と共演しながらも、主役としての存在感で引けをとらなかったのも素晴らしいですね。

共演のヘスス・オルテガの重厚さ、群舞をリードして炎を踊ったクリスティアン・ペレスもキャラクターダンサーとしての才能を発揮して見せ場を作っていたし、照明や舞台効果、衣装、メイクに至るまで本当によく考えて作っていたと思います。

舞台は総合芸術。一朝一夕にはいかないけれど、たくさんの舞台を見て何度も悩みながら作品を作っていくことでしか、演者にも観客にも納得のいく作品というのはできないのではないでしょうか。これからの展開にも期待しています。

『La Serpiente ~蛇になった女』 原案:安珍と清姫 日時 2023年11月3日金曜日 文化の日 17:30 開場 18:00 開演  場所 セシオン杉並ホール https://www.sesion-suginami.jp/ 助成 スペイン舞踊振興MARUWA財団 令和2年度 助成事業 後援 スペイン大使館 一般社団法人 日本フラメンコ協会 一般社団法人 現代舞踊協会

Cast Baile 踊り 女/蛇:田村陽子 男:Jesús Ortega 炎:Cristian Pérez 妻:浅見純子 正木清香 ヴォダルツ・クララ 久保田晴菜 脇川愛 松田知也(小島章司舞踊団所属) 中原潤 Cante 唄 : Rosario Amador/Paco El Plateao Guitarra ギター:Ramón Amador Violín バイオリン:平松加奈 Percusión パーカッション:海沼正利 Staff 構成・演出・振付・題字:田村陽子 振付:ヘスス・オルテガ/クリスティアン・ペレス 舞台監督:葛西伸一 音響:三上修次(東京音研) 照明:石島奈津子(東京舞台照明) 題字指導:柏木白光 へメイク:渡部圭依子 写真撮影:武重到 衣装デザイン:甲賀真理子(Mariko Kohga) チラシ制作:今井悦子 主催・運営:エストゥディオ・ラ・フエンテ

2023年11月26日日曜日

平富恵スペイン舞踊団『フラメンコ アレグリアス 〜生きる喜び〜』

11月25日、急に寒くなった東京ですが、夜は平富恵スペイン舞踊団公演を観に大手町の日経ホールへ。フラメンコだけでなくスペイン舞踊をも教える、日本では数少ない存在である、平が、スペインから元スペイン国立バレエ団の第一舞踊手、ルイス・オルテガらをゲストに迎えての公演。作品といってもストーリー性があるものではなく、フラメンコやスペイン舞踊のナンバーを繋いでいくコンサート形式というか、ガラ公演風というか、のスタイルです。



開演前に本編にも出演しているフラメンコ歌手、石塚隆充がビーチバレー選手と一緒に登場し、幕前でフラメンコとは、スペイン舞踊とは、と解説をするのは、フラメンコを初めて見るような人にも親しみを持ってもらおうとする試みだろうと思うのですが、内容がぼやっとしすぎていて、研究家としては複雑な気分。もやもやしました。簡単に、わかりやすく、と思ってのことでしょうが、スペイン舞踊の四種(エスクエラ・ボレーラ、エスティリサーダ、民族舞踊、フラメンコ)のうち、民族舞踊をホタだけにしてしまったりは流石にまずいかと重ます(ホタは各地に伝わる民族舞踊の中の一つでしかありません)。大雑把でも、もっと端的に説明できると思うので次回はぜひそのあたり修正していただけると幸いです。フラメンコやスペイン舞踊を知ってもらおうとする試みはとてもいいと思うのですが、せっかくなら正しい知識を持って帰っていただきたいです。

さて本編。オープニング、エスパーニャ・カニ。スペイン舞踊の名手、ヘスス・ペロナが、今回スペイン舞踊に初挑戦?な出水宏輝と舞踊団員、すなわち平の門下生たちを従えて登場します。そこに平やルイスも加わりパソドブレで華やかに。次はリカルド・モロのソロでサラサーテのサパテアードを。スペイン国立のバージョンとは違うと思いますが、きっちり踊ります。続く『デリリオス・イベリコス』は舞踊団員たちとヘスス、出水らによるスペイン舞踊のナンバー。振り付けがいい。ここまでがスペイン舞踊で、続くルイスのソロによるハレオからフラメンコ開始。ルイスはとにかくブラソやマノ、腕や手の動きが繊細で美しく魅了されます。こんなにも美しく、表現力豊かなブラソやマノ、久しぶりに見たような。フラメンコは野生的だと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、優美なフラメンコもいいものだし、酔わせてくれます。

続くクアドロは舞踊団員3人の帽子をかぶってのガロティンからの小松美保の歌ソロも入るタンギージョへ。全体のバランス、それぞれの見せ所、フォーメーションの変化、これも振り付けがいい。ヘススのソロはタラント。伝統的なフラメンコに敬意を表しつつも独特な回転などで現代的でもあり、見応えがありました。平はバタ・デ・コーラにカスタネットのカラコーレス。バタのカラコーレスはよくあるが、カスタネットは珍しい。素早い動きでもきちんとバタをコントロールしているのはさすが。個人的にはゆっくりした動きでアルテを感じさせるような動きが好きなのだけれど、切れ味のいいバタさばきは小気味がよく、アスリートぽくてかっこいい。出水と舞踊団員とのファンダンゴで一部終了。

二部の前にもまた幕前の前説。そこで話していた石塚が引っ込んだかと思うと歌い出したファルーカは平とルイス、ヘスス、リカルドの4人で踊ります。フォーメーション替えとかはあるもののほぼ全編、同じ振りを踊る感じ。歴史的に男性の曲として踊られてきて、女性が踊る場合も男装や乗馬服で踊ることが多かったこの曲を平はジャンプスーツ(?パンタロンスーツ?)で。だったらもっと、彼女が目立つというか主役であることをアピールするような振り/構成にしても良かったかもですが、スペインの第一線で活躍する男性ダンサーたちと肩を並べて同じように踊ることができるのは本当にすごい!。

舞踊団の宮北華子と出水のパレハでのソロンゴ。若い才能の活躍を見ることができたのは収穫。でも、どちらもパレハはあまり踊り慣れていないのかな、などと思うようなところもあり、でもそれは伸びしろでもあるので今後に期待していきたいと思います。

平とルイスのカスタネットでのシギリージャがこの日の白眉。会話のように鳴らされるカスタネット。両袖から登場し、またそれぞれ反対側に去っていく構成も、出会っても交わらない人生のようにも思われ、心に染みます。最後はタイトルにもあるアレグリアス。休憩の幕前トークで、練習したフレーズを客席とともに歌う、なんていう試みもあり、明るく楽しく華やかに歓喜の宴で幕を閉じました。

アンコールでルイスにハグする平のちょっとした仕草が、彼女の師である小松原庸子氏を思い起こさせます。平も、平と同じくスペイン舞踊を大切にして後進にも指導しこの夏全国ツアーを行った石井智子も、文化の日にスペイン人を招いた劇場公演を行った田村陽子も、皆、小松原門下。スペイン人を招いた大掛かりな公演を長年行ってきた小松原スペイン舞踊団だから、出身者は舞台の、作品作りの魅力を知っているのでしょう。こうして、日本でも、フラメンコの伝統が受け継がれていくのでしょうね。

フラメンコの力強さ、勢いに押されがちなスペイン舞踊だけど、バレエの要素があったりとその習得は難しいけれど、姿勢をはじめ、シンプルなフラメンコを踊る時にも必ず役立ちます。この公演でも舞踊団員の方たち、姿勢がいいのできれいです。美人度アップしてると思います。
姿勢ってとても大切です。いくら複雑な足ができても、姿勢が悪ければ台無し。凄さが観客にも伝わりません。
フラメンコ同様、スペイン舞踊もよろしくお願いします。


平富恵スペイン舞踊研究所創立25周年 / 平富恵スペイン舞踊団結成15周年記念公演 「FLAMENCO ALEGRÍAS~生きる喜び~」

11月25日(土)13時、18時
日経ホール

出 演 / 
【舞踊家】
平富恵、ルイス・オルテガ、ヘスス・ペローナ、リカルド・モロ、出水宏輝

[平富恵スペイン舞踊団]
宮北華子、菊池和緒子、濵野紗帆
松下弘実、秋山千草、小黒瑞紀、井上亜紀、安藤麻紀子、田中英恵、井上洋子、平クリオ
須藤 絵里子、平野 聖美、杉島直美、後藤 雅枝、石谷 優枝、蓮池 良美、大貫 智子、星野 知恵、小山 真理子、鈴木 由香、海貝 佐和、松村 彩、村田 愛、飯森 詩織、照沼 かおり

【音楽家】
ミゲル・デ・バダホス[歌手]、石塚 隆充[歌手]、小松 美保[歌手]、徳永 健太郎[ギター]、福嶋 隆児[ギター]、橋本 容昌[パーカッション]

【プレトークショー】
スペシャルナビゲーター:石塚隆充
ゲストアスリート:ビーチバレー庄司憲右

2023年11月13日月曜日

flamenco en Japón 井田真紀、川恵子、タマラ

 二週連続で青山トロへ。今週は中堅バイラオーラたち。オープニングはセビジャーナスで華やかに。



最初のソロは井田のアレグリアス。マノがきれい。続くタマラはティエント。メリハリつけて鮮やかに。締めは川のバストンのシギリージャ。出だしのコンパス感がすごくいい。目力で魅了する。

休憩をはさんで、川のキリッとしたソレア・ポル・ブレリア、タマラの見事なアバニコ使いのグアヒーラ、最後は井田のしっかりしたタラントと明るい曲や二拍子系を取り入れるなどバランスのとれたプログラムだったと思う。ある程度のキャリアを積んできて、レパートリーも広がり、曲種や小物でバラエティにとんだプログラムを実現できるのは強み。フィン・デ・フィエスタのブレリアもそつなくこなして閉幕。


2週続いてライブ見て思ったことがいくつか。

自分はコレ!という得意曲、スペシャリティを持つのも大切。ですがタブラオでいろんな人と共演するには、これしか、ではなく、これもあれもできるということも大切だと思います。

あとこういうタブラオなど小規模な会場だと劇場公演以上に表情が見られています。曲によっては目線をどこに持っていくかなども考えるといいかもしれません。シリアスな曲調のものが多いと険しい表情も多くなり、結果的に、「フラメンコは怖い顔で踊る」と、初めて見た人が思ってしまうのも無理ないかもしれません。そうならないためにも、フラメンコは楽しいものと思ってもらうためにも、バラエティの富んだプログラムは必要でなのだと思います。また衣装も髪飾りなどアクセサリーなどもよく見えますね。劇場での衣装選びは照明とのかねあいなども考えなくてはですがタブラオでは材質まで見えてしまうということも覚えておくといいかもしれません。今回の三人は衣装のセンスもよく、髪は三つ編みを後ろに垂らすというスタイルで統一していました。それも一つのやり方でしょう。

なおこの店ではイヤフォンガイドで解説を聞くこともできるのですが面白い試みだと思います。とくに踊りの今何してるんだろう、が解消されるのではないかと思います。先入観も知識もなしにみて感じてもらいたい、というのはありますが、数回見て心惹かれるけどわからないことがいっぱいという人にはとくにおすすめのシステムだと思います。

追記

ここ十数年の日本のフラメンコの進歩は驚くほどです。そんな中まだもっとよくなる余地があると思うのは舞踊では姿勢、体づかい。とくに首の位置。またサパテアードやマノが上手にできても二の腕や胴体に意識がいってない場合もあるように思います。あと日本人が苦手なスペイン語の発音、LとR,RRの発音は意識しすぎるくらいでちょうどいいかもです。とくに巻き舌ちゃんとできないとスペイン語がカタカナに聞こえてしまうように思います。ちょっと厳しいようですが、細部に気をつけていくことでよりよきフラメンコが楽しめるようになると思います。








2023年11月12日日曜日

アンへリータ・バルガス逝く

セビージャの踊り手アンへリータ・バルガスが、11月11日朝、脳血栓の為、セビージャ郊外ボルムホスのサン・フアン・デ・ディオス病院で亡くなった。

1946年セビージャはトリアーナの生まれ。子供の時から歌い踊り、セビージャのタブラオ、ロス・ガジョスにも最初は歌って踊るフェステーラとして出演していて当時録音されたアルバムのジャケットでも歌い踊る彼女を中心に、後ろに若き日のマヌエラ・カラスコやローレ・モントージャらも写っている。

兄イシドロも、タブラオ、パティオ・セビジャーノで長らく活躍した踊り手で、1992年のセビージャ万博アンダルシア館のタブラオで、それぞれの子供たちとともに共演した。


伝統的な、昔ながらのフラメンコで、レパートリーは多くないが、奥深い味わいを持つソレアはとくに絶品。何度泣かされたことだろう。ラモン・アマドールのギター、ボケロンの歌とともに、これぞフラメンコという舞台を堪能させてくれた。

これはエル・モンテ時代のフエベス・フラメンコの記者会見兼茶話会での写真。チョコラーテも、同公演シリーズ監督のマヌエル・エレーラも今はない。

2011年6月脳梗塞で倒れ、現役引退を余儀なくされたが、リハビリのかいもあってか、近頃はまた座ってででもクラスを行なうなどしていた姿をFacebookで目にしていただけに、言葉もない。

11日は彼女が長年暮らしていたセビージャ郊外サン・フアン・デ・アスナルファラチェの劇場に遺骸が安置され多くの人が弔問に訪れたようだ。

日本にも多くの生徒やファンを持ち、またアンへリータも、「日本には私みたいに踊る子がいる」と、日本を愛してくれていた。
飾らない人柄も、あの魔力を持った舞台とともに忘れられない。
安らかに。






2023年11月6日月曜日

Flamenco en Japón 出水宏輝、中原潤、鈴木時丹 en 青山トロ

 怒涛のフラメンコ公演ラッシュの日々が続く東京。日曜日は青山トロのフラメンコライブへ。こちらも満員御礼。若手バイラオールたち、出水宏輝、中原潤、鈴木時丹の競演。これがよかった。

オープニング、プレセンタシオンはタンゴで。次々と繰り出されるサパテアードの迫力。3人で合わせるところも息が合っていて見ていて気持ちがいい。

鈴木の爽快なソレアポルブレリアにはじまり、出水のメリハリの効いたアレグリアス、中原の風格のあるタラントという第一部。休憩を挟んで中原のエレガントなソレア、出水の重みのあるタラント、鈴木の黒い味わいのあるシギリージャ。三人三様。マノもブラソも美しい中原、表情がいい出水、細部にどこかヒターノっぽさも感じさせる鈴木。

そしてその三人を支える逸見豪の巧みで美しく厚みのあるギター、踊り歌をよく勉強していて豊富なレトラでだれでもきっと踊りたくなるだろう歌を歌う遠藤郷子。特に2部は三人とも抜きのない重厚な曲だったので力仕事で大変だったと思う。おつかれさまでした。

そして前日も思ったけど、客席から勘所にハレオかけてくるのも、日本のアフィシオンが育っている証拠だと思えてそれも嬉しい。

エルスール財団新人賞受賞の三人、受賞順でいえば中原、出水、鈴木なわけだが、年功序列などまったく関係なく、出順もパルマも、フラットな仲間という感じで見せてくれるのもいい。日本では女性舞踊家が圧倒的に多く、ともすると、え?男性も踊るの?と言われてしまうこともあるけれど、踊ります。迫力満点でかっこいいフラメンコ舞踊家がどんどん育ってきています。この三人に土方憲人が加わった四人の舞台『Los 4 flamencos Luz y Sombra』が3月8日銀座王子ホールで開催されるそう。大きな舞台でどんな風に踊るのか、4人がどんな化学反応を見せるのか、ぜひ見て見たいけど私はスペイン(配信切に希望します)。日本にいらっしゃる皆様ぜひお運びくださいませ。チケット発売開始したそうですよ。



正直言うとスペイン人たちも出演するライブを観たあとだから物足りなく思うかなとか思ってたのだけど、ぜんぜんそんなことなかった。熱い男たちのフラメンコ。アルテとコンパスに満ちた良き宵でした。出水のユーモアをまじえたMCも上手で、うん、このトリオでの公演、月一くらいで見たいかも。

お料理も美味しかったし、小さな店だからこその一体感もいい。お得感ありな一夜でありました。




2023年11月5日日曜日

Flamenco en Japón 小林亮 Río de la Frontera



小林亮がヘレスで録音したアルバムの発表記念コンサート。録音に参加した、歌い手ヘスス・メンデス、踊り手アンドレス・ペーニャ、パーカッション奏者アネ・カラスコという超豪華なゲストを招いて、福岡、大阪、東京とつづいたツアーの千秋楽は11月4日新宿、ガルロチで。

愛にあふれた夜でした。

ギターをいつくしむように奏でる小林。フラメンコが、フラメンコギターを弾くのが本当に好きなんだろうなあ、と感じさせる。そのフラメンコ愛が彼の周りの人々、アーティストたちにも伝わり、アーティストたちが、より大きな愛をもって応えている。舞台の上だけではない。会場を埋めた多くのプロを含む日本人アフィシオナードたちからのフラメンコへの愛も、スペインからやってきた彼らはしっかり受け止めて、かえしてくれていた。もちろん、客席からもあたたかな愛はこの日の主役へもおくられていた。人徳もあるのだろうな。

円熟期を迎えたアンドレスの、自然な呼吸で聴かせるコンパスの妙、粋としか言いようのない間合いの良さと仕草。アルバム録音を小林に勧めたヘススのまっすぐな声(シギリージャとブレリアが圧巻!)、ところどころに遊び心も見え隠れ絶妙な空気感をもつアネのコンパス。そしてそんな一流のアーティストに囲まれていても気負いすぎることなく飄々と、そこにいる小林。長年の関係で培ってきた信頼こそが財産なのだろう。怖気付きそうなシチュエーションでもみずからのスタイルを崩さずそこにいることができるというのはすごい才能だとおもう。いや本当に。

歌伴奏でも王道にならい、モライートのファルセータなども含め、いろいろきいて勉強してきたことを活かしていたと思う。&

愛と敬意があると扉は開く。自分勝手ではなく相手への敬意をともなった愛には愛で応えてくれることもある。これからも自分の愛するものを大切に信じて愛し続けていこうと思ったアフィシオナードたちもたくさんいたに違いない。

なおこの夢のような公演を見事な手腕で実現させた島村香の大きな愛こそがすべての原動力だったに違いない。おとこたちだけの舞台なのによくある閉鎖された男だけの世界にならず、開かれた感じがしたのは彼女の存在ゆえに違いない。

日本のフラメンコ全体にとっても大切な公演だった、そんな風に思う。



2023年10月28日土曜日

Flamenco en Japón 森田志保


 森田志保のソロライブ。巨匠エンリケ・エル・エストレメーニョ、その息子ニョニョのギター、三枝雄輔のパルマというシンプルな舞台。これが最高の最高!至高のひとときだったのだ。

森田はフラメンコ の神様をおろす巫女なのだ。それぞれの曲の、そして歌い手がライブで歌っているカンテのセンティード、意味そして方向性を正確に理解し受け取り、表現していくのだ。意味というのはスペイン語の歌詞を日本語で理解しているという意味ではなく、もっと本質的な、なぜそこにそのフラメンコなのか的なところ。それをまるで動物の本能のように感じて表現していくのだ。それがすごい。

もともと好きな踊り手ではあるのだけど、今夜は神がかっていた。ロマンセのゆったりしたコンパスに物語がみえる。ニョニョのギターソロが雰囲気をより一層盛り上げ、タラントはドラマチックに抑制された中に悲劇性をも感じさせ、タンゴではじける。王道の流れなのだが、そのタンゴでもう涙が止まらない。

フラメンコ を観て涙することは時々ある。音楽や形の美しさに心が震えて、ということもあれば、表現の中に自分と通じる感情や考えを感じて、ということもある。そしてなんだかわからないけど涙、ということもある。泣くということは個人的なことなのでこういう場に書くのもなんか違うのかもしれないけど、とにかく今夜の舞台を観て身体の奥底から湧き上がってくる感情が止められず、号泣。

エンリケのカンテソロはアバンドラオ。ロンデーニャ、ハベーラと曲種を言って歌う親切さ。そして全力の熱唱で聴いていて幸せになる。 

 最後はアレグリアス。これがもう舞台に上がる前の足取りからしてアレグリアスなのだ。そう、これがフラメンコ 。私が好きなフラメンコ だ。うたを聴いて感じたままに踊る。歌も踊りも自由で自然。そのなかに人生や真理が詰まってる。

エンリケの歌、パルマ(雄輔くん、スペイン人に引けを取らない。エンリケとの弾丸パルマ最高でした。最後のパタイータも凄み増してるし)、ギター(ちょいモダンなタラントのイントロ都会ツボ。もっとスペインでも聴きたい)、踊り、客席の空気、観客の期待と感嘆、ハレオ、全てが一体となって大きな渦ができてすべてを巻き込んでいく。エンリケの本気を引き出し相乗効果でどんどん高みに上がっていく。というのか、その渦にフラメンコ の神様が降臨されるというか。

生きててよかった、まじでそう思える瞬間がありました。終わって感動を本人に伝えようとしてる時にまた出てくる涙。なんなんだろう。とにかく心揺さぶられたのであります。

ありがとうございました。






flamenco en Japón 変態会

 初めての浅草橋バリーカ。フラメンコ 公演は地下の会場。客席と段差がほとんどないけど大きめの舞台。上手上部にモニターがあるから後ろの席でも足が見たい人にも親切な配慮。

影山奈緒子、小林泰子、小谷野宏司、川島桂子、徳永健太郎。この5人での公演が変態会と言って続いているのだという。興味津々。変態というからにはひょっとするとあんなことやこんなことも?と考えた私がバカでした。実態は純粋正統本格フラメンコ を、変態的に愛し慈しむ人たちがボディアンドソウル、身も心もフラメンコ に捧げ委ねる様子を観客が愉しむという、変態は実は観ている私?的なものでした。

プレゼンテーションのタンゴで期待を煽り、影山がなぜかシリアスな表情のまま踊るアレグリアス、ちょっとした仕草がムイフラメンコな小谷野のソレア、表情がフォトジェニックな小林のドラマチックなタラント。休憩を挟んで小林のロマンセというかレブリーハ風のブレリアというかコリードというかにはじまり、小谷野のグラシアが生きるカンティーニャ、影山の重厚なソレア。それらを支えるスペインの空気をそのまま感じさせる徳永のギターと痒い所に手が届く川島の歌。どれをとってもフラメンコ 愛にあふれてた、と思う。彼らの愛が観客につたわり日本でのフラメンコ 愛がより一層膨らんで変態で溢れますように




 

2023年10月16日月曜日

セビージャ ギター祭

 セビージャ、ギター祭が開催中です。

スペインだと有名なのは毎年7月上旬に開催されるコルドバのギター祭。クラシック、フラメンコ、ジャズ、ロックと多彩なプログラム、そして第一線で活躍するアーティストたちによるマスタークラスで人気です。ほかにもアンダルシアではグラナダやロンダでも開催されていますし、マドリーでも今年、第5回のギター祭が開催されたそうです。

セビージャは今年で第14回。もともとクラシック専門だったのですが今はフラメンコ公演も毎年複数行われています。

3日、開幕を飾ったのは、2021年からセビージャに留学している横村福音(ねね)さんのリサイタル。16世紀の館で行われました。こちらは観にいくことができなかったのですが、メイン会場となるセビージャ市立の、エスパシオトゥリナのシルビオホールでの初日には、カニサレス小倉真理子夫妻のお誘いで出掛けていきました。演目はスペイン人作曲家ダビ・デル・プエルトがロルカの「ポエマ・デル・カンテ・ホンド」の詩に想を得て作曲した、ギター四重奏とソプラノのための曲「クエルダス・デル・ビエント」でこれが初演。これに先だって作曲家自身によるトークがあり、そこで解説を聞いたこともあってか、クラシックギター素人な私も楽しめました。またソプラノは予定されていた人の代役を急遽務めた方がシシリア在住の日本人の伊藤佐智馨さんでした。あとでお聞きしたら実質1日半しかなくて練習もままならなかったようで、緊張しました、ということでしたが、それを全く感じさせない、落ち着いた演唱で、素晴らしかったということもあるかもしれません。さまざまに色合いを変える声の力。4台のギターによる演奏も興味深く、詩から始まった作品だけに詩的というか、繊細さが際立って聞こえたのは、普段耳にしているフラメンコギターとの違いなのかもしれません。

翌日はクラシックとフラメンコのカップリング。前半はマルコ・タマジョというキューバ出身の方の『エテルナメンテ・バロッコ』。演奏し、曲間に曲名も言っているのだけど、このフェスティバルの特徴の一つでもあるマイクなし、なこともあって、全然聞こえない。プログラムもないし、全くわからない。それでも、超絶テクニックの素晴らしいギタリストだということはわかりました。ただ一人で1時間以上弾き続け、この後フラメンコなのに、とちょっとあせったのも事実。で後半、パコ・フェルナンデスの演奏、そしてケタマ調の弾き語りは、前半と対照的で、朴訥に、自分の言葉で語る感じ。あまりにも二人が違うので、うーん、このプログラムはこれで良かったのだろうか、とちょっと疑問に。休憩なしの2時間超でお尻痛いし。休憩入れると、途中で帰る人もいるだろうし、ってのもわかるし、クラシックファンにもフラメンコを聞いてもらいたいし、フラメンコファンにもクラシックを聴いてもらいたいということなのだろうけど。

翌日は行くことができなかったのですが、やはりクラシックとフラメンコで、フラメンコのギターはアレハンドロ・ウルタードという、フラメンコ・ギタリストの中ではクラシックぽい人なので、違和感なかったんじゃないかな、と思ったり。

14日は来日経験もあるペドロ・マリア・ペーニャが、歌い手ルイス・エル・サンボをゲストに。最初にギターソロで、ミネーラからのソレア、シギリージャ、ブレリアと演奏し、歌い手を招く。歌もソレア、シギリージャ、ブレリア、というのは偶然? 狙った? それでも久しぶりに聴くルイスは、味わい深く、心にすとんと落ちてくる。このところ聞いたアルヘンティーナやレジェス・カラスコのような、歌謡のようには聞こえない、フラメンコ。自然に出てくるメロディも歌詞も聴き慣れた伝統的なもので安心して聴くことができる。そして呼吸するかのような自然さ。ブレリアで同じようなメロディが繰り返されても文句はない。

いやあ、現代的なものが嫌いなわけじゃないですよ。最初よくわからなかったエンリケ・モレンテ、今や大好物です。エンリケが映画『フラメンコ』で歌っているシギリージャ、あれとか、もうゾクゾクするくらい大好きです。でも、なんだろう、ここんとこ聞かされたカンテソロがあんまりだったもんで、改めて自分がフラメンコに求めているものは何かということを考えるきっかけになっているようにも思います。ヒターノだからいい、年配だからいい、ってわけじゃなくて、たとえば、サンドラ・カラスコとかも良かったし。うん、いいものはやっぱりいいなあ、ってことなんじゃないかと。そ、好みの問題、なのかもしれません。





2023年10月12日木曜日

ヘレスのフラメンコ学会のプレミオ・ナショナル

ヘレスのフラメンコ学会がおくるプレミオ・ナショナルの受賞者が以下の通り、発表されました。



カンテ;ビセンテ・ソト

バイレ;エバ・ジェルバブエナ

ギター;ラファエル・リケーニ

マエストリア;カルメン・リナーレス

普及;シルクロ・フラメンコ・デ・マドリード

研究;ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボ

名誉賞;ロメリート・デ・ヘレス

コパ・ヘレス(ヘレスのアーティストが対象の賞)

カンテ;ルイス・エル・サンボ

ギター;アルフレド・ラゴス

バイレ;ヘマ・モネオ


授賞式は11月4日とのことです。



 

2023年10月9日月曜日

ドランテス& ルノー・ガルシア・フォンス『パセオ・ア・ドス』


 ドランテスと5弦コントラバスのルノー・ガルシア・フォンス。2014年のビエナルで初共演。翌年アルバムをリリース。世界各地で共演を重ねてきた。
当時ブログにこう書いた。

 ドランテスのピアノと
ルノー・ガルシア・フォンスのコントラバス。
ただそれだけ。
二人だけの舞台なのだが今までのどのコンサートよりも濃密な
音楽空間がつくりだされていた。

ティエントやブレリアなどフラメンコが顔をだしたかと思うと
自由に地平をかけめぐり大空の彼方にきえていく。
そんな感じ。
フラメンコの規則にしばられるでなく自由な展開をみせていくのだ 。
ジャズのインプロのような感じでもあるし
映画音楽のようなメロディアスな感じもある。

スペイン系フランス人ルノーは
コントラバスをアラブのウードのようにきかせるかとおもえば
ギターのようにかきならし、打楽器のようにうちならし
さまざまな顔をみせながら心地のよい音楽で劇場をいっぱいにする。

美しく質の高い音楽にすっかり魅了された夜でありました。
20年後も基本は変わりません。フラメンコベースにしながらもフラメンコにとらわれすぎることなく自由に羽ばたいていく。世界はもっと広いよ、と示すかのように。

ロンデーニャ、と言ってはいたけど、どっちかというとパコ・デ・ルシアの『シルヤブ』みたいな感じの曲に始まり、ブレリア、ソレア、などと合間に曲種を言うのだけど、よく聞き知ったメロディやはっきりしたリズムが来たかと思うと、そこからどんどん飛び出していく。いつものフラメンコからは離れるけれど音楽としての美しさ、心地よさで、違和感はない。

イスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナの舞台にもちょっと似ている。フラメンコをベースに、でもそれにとらわれず、より自由に、自らの方法で表現していく。

日本だと、フラメンコを表現することが目的になりがちなところもあるように思うのだけど、フラメンコを自分のものにしているアーティストたちはフラメンコを言葉というか、道具のように使って、フラメンコで表現する。フラメンコが彼らと一体化してるから、かな。そしてフラメンコの枠のそのずっと先をも見せてくれるというか。

フラメンコ自体、すごく自由なアートではあるけれど、曲種ごとのリズムやメロディなど決まりもたくさんある。見えない決まりもある。その枠をとってもフラメンコなスピリットというかエッセンスみたいなものは生きている、ってこともあって、それがまた帰ってきてフラメンコを豊かにしていく、なんてことを考えさせてくれました。
ああ、楽しかった。

2023年10月8日日曜日

シルクロ・フラメンコ・デ・マドリード23/24

 マドリードのフラメンコ愛好会、シルクロ・フラメンコ・デ・マドリードの今年度のプログラムが発表されました。以下に公演のデータのみアップしましたが、他にも講演や本の出版記念会、アーティストとのお話など開催予定です。いつもながらに通好み、充実のプログラムですね。



◇シルクロ・フラメンコ・マドリード

1026(土)2230

[出]〈c〉イスラエル・フェルナンデス、〈g〉ディエゴ・デル・モラオ

1123(土)2230

[出]〈c〉ルイス・エル・サンボ、〈g〉ドミンゴ・ルビチ

1221(土)2230

[出]〈g〉ニーニョ・ホセーレ

118(土)2230

[出]〈c〉パコ・デル・ポソ、〈g〉マノロ・フランコ

2/15(土)2230

[出]〈c〉バルージョ、〈g〉マヌエル・パリージャ

229(土)2230

[出]〈g〉ラファエル・ロドリゲス、ゲスト〈c〉カンカニージャ

314(土)2230

[出]〈c〉カプージョ・デ・ヘレス、〈g〉ラモン・トルヒージョ

44(土)2230

[出]〈c〉フェリペ・スカパチニ、〈g〉ノノ・レジェス

418(土)2230

[出]〈g〉ミゲル・バルガス、〈c〉ラ・カイタ

516(土)2230

[出]〈b〉パストーラ・ガルバン、〈c〉ミゲル・ラビ、ダビ・エル・ガジ、〈g〉フアン・レケーナ

620(土)2230

[出]〈c〉アウロラ・バルガス、〈g〉ミゲル・サラド

[場]マドリード マドリード・フラメンコ劇場

[問]https://www.circuloflamencodemadrid.com

入場券 https://cfm.teatroflamencomadrid.com

2023年10月6日金曜日

アゲダ・サアベドラ『ベネロ』


 2022年ヘレスのフェスティバルで、アンダルシア舞踊団とメルセデス・デ・コルドバの群舞でありながら新人賞を受賞したアゲダ・サアベドラの初めてのソロ作品。今年のヘレスで初演したが未見だったのでセントラル劇場へ。

よくまとまった作品だと思う。照明も、フアン・カンパージョのギターも美しい。メルセデス・デ・コルドバの演出ということもあり、ジェルバブエナ系というか、メルセデスぽさが、構成にも振り付けにも色濃く出ている。

ベネロとは泉の意ということで、ポトン、ポトンという水音の中、舞台中央奥に置かれたフライトケースの後ろからゆっくり手を出していくオープニングはコンテンポラリー風だけど、ギターの音に彩られ、カンテが注がれ、フラメンコ色に染まっていく。アレグリアス、ブレリア…リズム遊び。

黒いバタ・デ・コーラでの、カスタネットのシギリージャが一番の見どころだったのではないかと思うし、バタを歌い手にふまれ身動きできず終わって倒れた彼女が脱いだバタがかけられ手を出すところで終わってもよかったように思うのだけど、その後も続き、ソレアで盛り上げ、また水音に戻って終わるという構成。

アゲダ、舞踊団作品じゃないところで踊っているのをみたのは多分初めてだったのだけど、イタリア風美女(ソフィア・ローレンとかモニカ・ベルッチとか系)なんだけど、首を前に突き出し顎を引いて踊るせいで、顔が大きく見えてしまうのが勿体無い。正面から見て首が見えない。コロカシオンフェチな私は、そこが気になって気になって。

あと、ミュージシャンたちも含めメルセデス色が強すぎて、アゲダという人が見えてこない。まあこれは最初の一歩だから、次作に期待、でしょうか。まあ、誰もがクリエーターというわけではないし、色々難しいですね。


2023年10月4日水曜日

フエベス・フラメンコス2023

 銀行の財団が主催するフラメンコ公演シリーズ、フエベス・フラメンコス。

かつてはエンカルナシオン広場に近い劇場が会場でしたが、その劇場が市役所のものとなり、今はセビージャの市役所のすぐ近くにあるカハソル劇場で行われています。

入場券も12ユーロからと手軽。また複数の公演を割安で見ることができる定期券もあります。発売は明日10月4日から。



11月23日の公演は踊り手が歌うのだそう。面白そうですね。 四人のバイラオール全員がカディス圏出身というのも興味深いです。


◇フエベス・フラメンコス

1019(木)2030分『8ブラソス・パラ・ロルカ』

[出]〈g〉フアン・アビチュエラ・ニエト

11/9(木)2030分『クエルポ・ノンブラド』

[出]〈b〉パウラ・コミトレ

1123(木)2030分『ダンド・エル・カンテ』

[出]〈b,c〉エル・フンコ、ミゲル・アンヘル・エレディア、アルベルト・セジェス、トマス・デ・ラ・モリア

1130(木)2030

[出]〈c〉ペドロ・エル・グラナイーノ

127(木)2030分『デスデ・ミ・コラソン』

[出]〈c〉アウロラ・バルガス

[場]セビージャ カハソル劇場

[問]https://www.bacantix.com/Entradas/WebForms/Forms/Evento.aspx?id=Cajasol&Recinto=000012&Sala=034&Espectaculo=2023/2024JFO&TituloEspectaculo=ABONO%20JUEVES%20FLAMENCOS%20OTOÑO%202023&ActivePage=0