2023年10月9日月曜日

ドランテス& ルノー・ガルシア・フォンス『パセオ・ア・ドス』


 ドランテスと5弦コントラバスのルノー・ガルシア・フォンス。2014年のビエナルで初共演。翌年アルバムをリリース。世界各地で共演を重ねてきた。
当時ブログにこう書いた。

 ドランテスのピアノと
ルノー・ガルシア・フォンスのコントラバス。
ただそれだけ。
二人だけの舞台なのだが今までのどのコンサートよりも濃密な
音楽空間がつくりだされていた。

ティエントやブレリアなどフラメンコが顔をだしたかと思うと
自由に地平をかけめぐり大空の彼方にきえていく。
そんな感じ。
フラメンコの規則にしばられるでなく自由な展開をみせていくのだ 。
ジャズのインプロのような感じでもあるし
映画音楽のようなメロディアスな感じもある。

スペイン系フランス人ルノーは
コントラバスをアラブのウードのようにきかせるかとおもえば
ギターのようにかきならし、打楽器のようにうちならし
さまざまな顔をみせながら心地のよい音楽で劇場をいっぱいにする。

美しく質の高い音楽にすっかり魅了された夜でありました。
20年後も基本は変わりません。フラメンコベースにしながらもフラメンコにとらわれすぎることなく自由に羽ばたいていく。世界はもっと広いよ、と示すかのように。

ロンデーニャ、と言ってはいたけど、どっちかというとパコ・デ・ルシアの『シルヤブ』みたいな感じの曲に始まり、ブレリア、ソレア、などと合間に曲種を言うのだけど、よく聞き知ったメロディやはっきりしたリズムが来たかと思うと、そこからどんどん飛び出していく。いつものフラメンコからは離れるけれど音楽としての美しさ、心地よさで、違和感はない。

イスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナの舞台にもちょっと似ている。フラメンコをベースに、でもそれにとらわれず、より自由に、自らの方法で表現していく。

日本だと、フラメンコを表現することが目的になりがちなところもあるように思うのだけど、フラメンコを自分のものにしているアーティストたちはフラメンコを言葉というか、道具のように使って、フラメンコで表現する。フラメンコが彼らと一体化してるから、かな。そしてフラメンコの枠のそのずっと先をも見せてくれるというか。

フラメンコ自体、すごく自由なアートではあるけれど、曲種ごとのリズムやメロディなど決まりもたくさんある。見えない決まりもある。その枠をとってもフラメンコなスピリットというかエッセンスみたいなものは生きている、ってこともあって、それがまた帰ってきてフラメンコを豊かにしていく、なんてことを考えさせてくれました。
ああ、楽しかった。

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