2026年10月21日水曜日

ティノ・バン・デル・スマン セビージャ ギター祭

オランダ出身、1999年からセビージャ在住というフラメンコ・ギタリスト、ティノ・バン・デル・スマンがセビージャ、ギター祭、美術館での公演に登場。



当初、ヘレスの若手、マルコ・デ・シルビアの出演が予定されていたのですが、アルティスタ側の都合で出演できなくなり、急遽、声がかかったよう。それにも関わらず、マイクなし、共演者なし、ギター一本でのリサイタル、見事にやり遂げました。

セビージャ美術館の2階、近代絵画、19世紀末から20世紀初めの風俗などを描いたゴンサロ・ビルバオの美しい絵が並ぶ部屋に椅子が並んでコンサート会場となっていました。



1曲目はグアヒーラ。南方のけだるい感じとグラシアがよく表現されている、グアヒーラらしいグアヒーラ。2曲目のタランタは舞踊作品のためのような、様々な顔を見せて思いがけない展開をしていきまたタランタに戻ってくるというかんじ。面白い。どちらも独創的で、他の誰とも違うのがいい。




ブレリア、そしてラファエル・リケーニのガロティンが大好きだといいそのリケーニに捧げたガロティン。多分、彼が言っているリケーニのガロティンはたぶんこれのことで私も大好きなんだけど、全く似た感じはない。個性を出そうとするあまりガロティンのもともとのキャラクターとは違うところに行ってしまっているようなところもあるように思われました。タンゴで、フアニート・バルデラマのヒット曲『イミグランテス』をアレンジしたのはいい感じ。本人が「未来のブレリア」という、ブレリアには使わないコードを使ったというのだけど、うーん、昔人な私にはちょっと難しかったかも。グラナイーナ、そしてグラナドスのマラゲーニャをアレンジしたりしながらいくマラゲーニャ。アレグリアス、そして最後はゴッホを扱った作品のために作曲したというブレリア。ここではヘレスやセビージャ、モロン伝統のモチーフを組み合わせたストレートな感じで聞かせ盛り上がって幕。

曲間のトークも上手だし、さすがソロアルバムも複数リリースしている実力派だけあります。

普段はタブラオなどで舞踊伴奏を多くしているイメージですが、ソロでこれだけ聴かせるのはすごい。また機会があったら出かけて行きたいと思います。




2026年10月18日日曜日

『ファウノ』公演 雨で中止

 セビージャのアルカサルで10月16日に初演された『ファウノ』、17日の公演は開演間も無く降り出した雨のため中止となりました。



これはマヌエル・マルビソンというセビージャ出身の作曲家が作曲、脚本を書いた作品で、マラガ交響楽団、セルヒオ・ベルナル舞踊団による、クラシック音楽、オペラとフラメンコ、スペイン舞踊による大作。16日の初演は無事開催されたものの私が出かけた2日目は午後から雨が降ったり止んだりの空模様で、開演前に雨がぱらついたものの、予報では夕立、ということで30分遅れで開演のはずが、オーケストラと合唱団が舞台に座って、いよいよという瞬間に強い雨が。慌てて舞台を後にして、マイクなしで催行しようとしたものの、舞台の上に水たまりができている状態で、結局中止に。残念だけど、挨拶に出たセルヒオが言うように、踊り手たちが怪我をして将来を台無しにしかねない、と言うことで中止に。





オーケストラ、舞踊団、合唱団などのスケジュールを調整するのが難しいと言うことで、次回の公演がいつになるかはわからないとのこと。残念。

ちなみにファウノを踊るセルヒオのほか、スペイン国立バレエ団第一舞踊手のホセ・マヌエル・ベニテス、ソリストのミリアム・メンドーサらも出演して、オペラ歌手とともに四人の主要な役を踊ると言う構成でした。



なお、この公演、ラファエル・エレディア、モイくんも和太鼓奏者として出演していたので余計に残念。

2026年10月17日土曜日

ビエナル ヒラルディージョ賞


ビエナルの総括記者会見が行われました。72公演中44公演が満員札止め。全体で92%という集客を達成。入場券収入も新記録だったそう。

なおそれに先駆け、専門家ら審査員の選定によるヒラルディージョ賞も発表されました。

 受賞者は以下の通り

カンテ;サンドラ・カラスコ

バイレ;オルガ・ペリセ

トーケ;ホセ・フェルミン・フェルナンデスとアレハンドロ・ウルタード

インストルメンタル;カニートとラウル・ロドリゲス

最優秀作品;ダビ・コリア『バベル、トーレ・ビバ』

新人賞;ルシア・ラ・ブロンセ

魔法の瞬間;エスペランサ・フェルナンデス、ホセ・バレンシア、ドゥケンデ、『ア・カネラ・イ・クラボ』のシギリージャ

審査員特別賞カンテ;カルメン・リナーレス

審査員特別賞バイレ;イサベル・バジョン

審査員特別賞ギター;カニサーレス





 







2026年10月16日金曜日

ヘスス・カルモナ『レペルトリオ・フラメンコ』

 カハソルソルのフエベス・フラメンコが夏休みを経て再開。トップバッターはヘスス・カルモナ。

薄明かりの中無伴奏で一人で踊り始める。演出だとわかるけど観客としてはちゃんと観たい。靴音でなんとなくわかるっていうんじゃなく、表情や体全体の動きがもう少しちゃんと掴めるくらいの明るさにしてよ、ってちょっとイラつく。そこから三人の歌い手とギタリストが登場してタラント。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol

無伴奏でのカンテソロ3曲をへて、カンティーニャ。赤い短いジャケットはどこかマイケル・ジャクソンのスリラーを思い出させる。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol

フアン・カンパージョのギターソロ、ロンデーニャの後はソレア。マントン柄のジャンパー、これ、だいぶ前に他の作品でも着てたよね。

スーパーテクニックの、とにかくうまい踊り手だし、だからといって技術を見せようとしているわけでなく、歌をちゃんと聴いてるし、彼の自然な表現にその技術が使われているという感じで、嫌味はない。凄みさえ感じさせる回転などその最たるものかも。また曲によって、足らんとの抑制、カンティーニャの上昇感、ソレアのしっとりした感じ。きちんと曲のキャラクターを踊り分けているのもさすが。これはほんと、みんな見習ってほしい。

文句の付け所がない、と言いたいところなんだけど、実は衣装がイマイチ。パンタロンはもう少し細めの方がいいし、カンティーニャやソレアのジャケットの長さが中途半端。最初のタラントでは横をつまんでシャツを外に出してしまっているのに前だけパンタロンの中だったのが変だったし、ジャケットの後ろの飾りのようなベルトも意味わからない。なくていい。普通にシャツとパンタロンで踊ってくれた方が私には良かったかも。まあ、個人的趣味レベルの問題と言われればそれまでなんだけど、後私の大好物である、コンパスの微妙な間合いを遊ぶというのもなかったような。友達はみんな大満足だったんだけど、なんかちょっと私は欲求不満。

今日の私のオレ!は完璧に踊りと歌をサポートして輝いていたいたフアン・カンパージョや、ヘスス・コルバチョ(カンティーニャにセビジャーナス入れてきたりかなり遊んでるかと思うと横で歌うマヌエル・デ・ニナのソレアの微妙な節回しなどに素直にオレしてただけ得なく、ソロで歌ったミロンガの細やかな節回しの凄さ)により傾いていたかも。マヌエル・デ・ニナもいい歌い手になってきましたね。ちゃんと勉強してるのがわかる。ジョナタン・レジェスも時にハッとさせるフラメンコ性があって、やっぱミュージシャンがいいと見応えがあるなあ、と思ったことでした。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol




2026年10月15日木曜日

第3回第3回カハソル財団フラメンコ賞受賞式

©︎ Fundación Cajasol

カハソル財団がフラメンコの功労者に送るフラメンコ賞の授賞式。今年はギターがラファエル・リケーニ、舞踊がマヌエラ・カラスコ、歌がカルメン・リナーレス、と誰もが納得の面々が受賞。出席者は女性はロングドレス、男性はタキシード着用というフォーマルなもので式後に夕食会もあるというもの。

その授賞式の前に、若手の公演がありました。

幕開きはダビ・デ・アラアル。リケーニやマノロ・サンルーカルの影響も感じられるけど他の若手とは全く違う個性で観客を魅了。演奏後、最前列に座っていたリケーニが立ち上がって拍手していたのが印象的です。 


ラ・ピニョーナはダビ・カロの伴奏でファルーカ。これまた素晴らしく、ファルーカの典型的な振りやポーズはほぼ使わず、でもファルーカ以外のなにものでもないという踊り。品格があり、重みがあり、全ての動きに意味がある。

©︎ Fundación Cajasol

歌は帽子がトレードマークのぺレテ。ビエナルの開幕ガラに出演するなど最近人気?の彼。ぺぺ・マルチェーナ風?の裏声のような高い音も出す。上手いのは上手いんだけどなんか表面的というか、技術が目立って彼自身が伝えたいことが(あるのかな)見えてこない感。もうちょっとちゃんときくと違うのかな。

       

最後にはへーレン財団からルイサ・パリシオがグアヒーラをバタ・デ・コーラで。伴奏に、マルコ・デ・シルビア、カルキ。歌い手は👩三人。バタ扱いはさすがなんだけど、ゴジェスカ風?な衣装がグアヒーラという曲には合わないような。
©︎ Fundación Cajasol
©︎ Fundación Cajasol

そしてようやく受賞式。受賞者の皆様おめでとうございます。

夕食会はたくさんのアルティスタたちが参加しており、久しぶりな人とも会話が弾み楽しい夜となりました。





 

2026年10月13日火曜日

ラ・プエブラ・デ・カサージャとラ・ピニョーナ

  フラメンコの故郷アンダルシア。フラメンコの歴史をたどっているとカディス、ヘレス、セビージャといった大きな町だけでなく、カディス県やセビージャ県にあるより小さな町の名前も登場します。カディスならプエルト・デ・サンタ・マリアやサンルーカル・デ・バラメーダ、セビージャならレブリーハ、ウトレーラ、モロン・デ・ラ・フロンテーラ、マルチェーナ、マイレーナ・デル・アルコールといった具合。そんな町の一つがラ・プエブラ・デ・カサージャ。



セビージャから東へ62キロ。マラガ/グラナダへ向かう街道沿いにある、人口1万1千人の町。フラメンコ好きなら、盲目の歌手、ニーニャ・デ・ラ・プエブラ(1909−1999)やホセ・メネセ(1942−2016)の名前を聞いたことがあるはず。メネセに多くの歌詞を提供した画家で詩人のフランシスコ・モレーノ・ガルバンが、メネセや地元のアフィシオナードたちと共に始めたフラメンコ祭、レウニオン・デ・カンテ・ホンドも知られているのではないでしょうか。小さな町にもかかわらずこの町には現代美術館があり、



フランシスコ・モレーノ・ガルバンの兄で美術評論家のホセ・マリア・モレーノ・ガルバンの名前を冠したもので、フランシスコによるフェスティバルのポスターの原画などが常設展示されています。



その美術館の1階で7月からこの10月18日までアロンソ・ヒルという現代美術家の、フラメンコも一つの要素となった展覧会『ラ・フエルガ』が開催。。そのフィナーレを飾るように、10日には、作家とこの展覧会のキューレーター、エステル・レゲラによる解説とルシア・ラ・ピニョーナのパフォーマンスがあるということで、セビージャから貸切バスも出るということで出かけてまいりました。

作者本人の解説が聞けるなんていうのは現代美術ならでは。

ピニョーナは、彼の作品のひとつである、波打ったレコードをプレーヤーにかけてのタラント。歌が急にゆっくりになったり、止まったり、音飛びしたりするのに合わせて踊るという、本当の”歌を踊る”、をユーモアたっぷりにみせていただきました。

その後は作品に描かれた形をなぞったりしつつ踊り、最後はアロンソが生まれ故郷のエストレマドゥーラの一度は閉まった鉱山をまた開ける開けないという話になり再開反対の意も込めてのポスターや歌詞を当地のアーティストたちに歌ったものを録音したりしたものなどの総合的な作品類で、その中の歌詞をマティアス・ロペス”エル・マティ”が歌い、ピニョーナが踊ったのでありますが、その真摯さ!マティがはっきり発音してくれるので歌詞がしっかり頭に入ってくる。さっき、展示で読んだ詞が歌になることで立体感を持って迫ってくるような面白さもあり、ピニョーナの嘘のない、まっすぐな踊りとともに心に刺さりまくったのでありました。


その後はペーニャとして使われている?近くのサロンで、ビールとおつまみにパエジャ、最後にはご当地アーティスト、ラ・ジジャのミニ・リサイタルと盛りだくさんの午後となったのでありました。

いやいや、来年こそ、フェスティバル、見に行ってみたいものでございます。



2026年10月12日月曜日

セビージャのタブラオ カサ・インキエタ

 世界的な観光ブームもあって、フラメンコを見せる店、タブラオの数はスペイン、どこの街でも増えるばかり。フラメンコの本場セビージャも同様で、長年、セビージャのタブラオといえば、ロス・ガジョス、エル・アレナル、パティオ・セビジャーノの3店だったけど、そこに1995年、エル・パラシオ・アンダルースが加わり、1999年開店のカサ・デ・ラ・メモリアなど、基本踊り手が2名でショーも短くより手軽にフラメンコを楽しめる店が少しずつ増え、2006年開館したフラメンコ舞踊ミュージアムでもショーが行われるようになり、コロナ禍の苦境も乗り越え、その後に開店したところや、バーなどでもショーも行う店が増え、現在は30店以上でフラメンコのショーを楽しむことができるとか。

昨年秋に開店したカサ・インキエタもその一つ。サラゴサ通りにある19世紀のお屋敷を改装して、以前はホテル、レストランとして営業していたものが、オーナーが代わり、タブラオも加わったという形。入り口を入ったところはレストラン、そこをどんどん奥に進んでいくと受付があってその奥に広いサロンがあらわれます。

タイル画をバックにした舞台も比較的広く、これならバタ・デ・コーラも余裕で使えるかと。

座席の間も広く余裕があります。


料金は1列目は飲み物と生ハムのタパついて53ユーロ、2列目は飲み物付きで45ユーロ、3列目から5列目は飲み物付きで35ユーロ、後方、壁際の席は高い椅子/テーブルで飲み物なしで28ユーロだそう。とにかく本場のフラメンコを近くで観たい!という人にはいい方法ですね。後方席はかなり舞台から遠いので、おすすめしにくいかも。

出演者は現在、WEBで公開されていないので気になる人は直接電話で確認。私が行った日は、踊りがラファエル・カンパージョとラウラ・サンタマリア、歌にメルセデス・コルテスとフアン・ビジャール・イホ、ギターがジョルディ・フローレスという実力派メンバー。他にもスサナ・カサスらベテランから若手まで様々なアーティストたちが登場しているそう。

セビジャーナスで始まり、

ギターソロを挟んで
ラファのソロはアレグリアス
カンテソロはフアンがタンゴを歌い
最後はソレア・ポル・ブレリアをラウラが。
そしてフィン・デ・フィエスタという構成で満足満足。

なお、写真はフラッシュ使わなければ自由に撮影できるので、写真撮りたい人にもおすすめかも。
ショーは19時と20時45分の2回が基本。
予約は公式WEBから. インスタもあるよ

なお、ビエナル期間中にはサンルーカルの酒蔵バルバディージョのシェリー酒の試飲とフラメンコを組み合わせたイベント『De Mirabrás a Solear. Flamenco en femenino entre versos y vinos』も行われたそう。