2018年8月12日日曜日

ラ・ウニオンのコンクール 受賞者発表

ムルシア州ラ・ウニオンで行われる、カンテ・デ・ラス・ミーナスのコンクール。毎年のように行っていましたが、今年は諸般の事情で残念ながら断念。
昨日の決勝で今年の優勝者が決定しました。



カンテの大賞、ラ・ランパラ・ミネーラはマリア・ホセ・カラスコ。(写真は
準決勝三日目)
1974年セビージャ郊外ロス・パラシオスの生まれ。
1998年にはペパ・モンテスの伴唱でビエナルにも出演。2002年から2006年にかけて各地のコンクールで入賞しており、ウニオンのコンクールでも2004年から3年連続で決勝に進出しているが、久しぶりの挑戦で見事優勝と相成った。
ビデオで見ると、音程の揺らぎはあるもののほぼ正確に歌っているけれど、ミネーラの持つ叙情性の表現と言う意味では昨年のアルフレド・テハーダら、歴代の優勝者には全くかなわないという感じがする。

ギターはエル・ボラ。この写真も準決勝の時のもの。
1967年マドリード生まれで、その昔、グイトの伴奏で来日したこともあるベテラン。ソロアルバムもリリースしている実力派は一昨年は準決勝にいたのに決勝に進まず、私個人もひどく不満に思ったものだが、今回の受賞で見事リベンジしたことになった。


2位はコルドバ出身のルイス・メディナだった。

舞踊は今年から男女それぞれに優勝があるという制度になり、
女性はスペイン国立バレエ出身のモニカ・イグレシアス。
1988年マドリード生まれで王立舞踊学院に学び、2011年アンダルシア舞踊団に。その後アントニオ・ガデス舞踊団を経て、2013年国立バレエ団に。退団後、パトリシア・ゲレーロの舞踊団などで活躍。昨年の小松原庸子スペイン舞踊団公演でも主役を踊った実力派。


男性は1989年コルドバ生まれ、アンダルシア舞踊団で活躍したウーゴ・ロペス。
コルドバの舞踊学院で舞踊を学び始め、後、ハビエル・ラトーレに師事。『フェードラ』『ドゥエンデ・イ・レロッホ』などハビエル・ラトーレの振付作品に出演。小島章司『セレスティーナ』『ファトゥム』にも出演している。


女性2位はクララ・グティエレスが制限時間オーバーのため決勝進出者がなく該当者なし、男性2位はマラガ出身のアドリアン・サンタナ。

楽器部門は優勝がピアノのアンドレス・バリオス。セビージャはウトレーラの出身で現在バダホスの高等音楽院在学中だが、マヌエル・ロンボとも共演するなど活躍中。

2位も矢張りピアノで、コルドバ出身フアン・アントニオ・サンチェス・デ・ラ・トーレ。

またカンテ部門各賞は以下の通り
ミネーラ/マリア・ホセ・カラスコ
カルタヘネーラ/マヌエル・クエバス
タランタ/エル・ペレーテ(バダホス)
ムルシアーナス他/エバリスト・クエバス
マラゲーニャ/エル・ペトロ(カディス)
シギリージャ他/ロレート・デ・ディエゴ(ブルゴス)シギリージャを歌っての受賞
ソレア他/アルバロ・ロドリゲス(グラナダ)
ブレリア他/ペレーテ(バダホス)ファンダンゴ・エストレメーニョ
青少年賞/アラセリ・カンピージョス、マリア・デル・カルメン・ゴンサレス

今年の審査員は委員長がブランカ・デル・レイ、以下ペドロ・オヘスト(ピアニスト)、フランシスコ・セベロ、ホセ・クロス(ウニオンのアフィシオナード)、アントニオ・パッラ(批評家)

なお、コンクールの模様はYouTubeで生中継されたがその録画がフェスティバルのチャンネルで見ることができる。

2018年7月27日金曜日

ビエナル初演作品「エル・サロン・デ・バイレ」記者会見

ビエナルまであと1ヶ月あまり。
そこで初演される作品も稽古真っ只中、というわけで、
稽古公開➕記者会見。
ラファエラ・カラスコの「エル・サロン・デ・バイレ」

サロン・デ・バイレとはフラメンコの草創期に、フラメンコを見せた場所。
カフェ・カンタンテよりも前?の時期で、アカデミア・デ・バイレとか、サロン・デ・バイレとかいう名前のところで、フラメンコ/スペイン舞踊を、入場料を取って見せた。
いわばタブラオの祖先。
そのイメージからスペイン舞踊とフラメンコの草創期をイメージした作品。



なので、サパティージャ、バレエシューズで踊る、エスクエラ・ボレーラの名手も参加。
タマラ・ロペスとルベン・オルモ。二人ともスペイン国立バレエで活躍した実力派。

他にもハビエル・バロン、ダビ・コリアと国立出身者。
スペイン舞踊とフラメンコ、全部できる人ばかり。



うーん、楽しみ。

2018年7月22日日曜日

第5回パコ・デ・ルシア国際ギターの集い

パコがなくなった年から始まった、パコ・デ・ルシア国際ギターの集い、というフェスティバルが今年もパコの生まれ故郷アルヘシラスで開催された。
7月17日初日を飾った地元出身ホセ・カルロス・ゴメスを観ることは叶わなかったが、19日外国でのパコという座談会に呼ばれたおかげで20日のフラメンコの夜というコンサートを観ることができたのだ。ありがたい。
ちなみに19日はパコ・モンタルボというバイオリン奏者だったのだが、バイオリンのリチャード・クレイダーマンという感じで、二筋の川とか演奏しようが、ヒット曲を演奏しているというだけであまり意味がない感じ。エル・ビートとか、みんなが知ってる曲を演奏するから一般のお客さんにはそれなりに受けてたみたいだけどね。
さて20日。まずは20時からの講演に。フラメンコとテクノロジーという面白いテーマ。
録音技術が生まれ、蝋菅レコードやSPレコードからLPへ、映画からビデオへそしてインターネットへ。テクノロジーの進展とともにフラメンコも変化していく。当たり前のことなんだけどね。外国人に教えるフアン・タレガの録音が面白かった。

続いて、フェルナンド・カネラが3曲歌った。まっすぐなカンテ。
伴奏の若手、ルベン・ララがいい。


そして夜。マリア・クリスティーナ公園でギター、カンテ、バイレのそろい踏み。
まずはアントニオ・レイのソロ。超テクニックで見せる。






続いてはカンテ。アントニオ・レジェス。伴奏はディエゴ・デル・モラオ。

アントニオはマノロ・カラコールとカマロンとアントニオ・マイレーナを足して割って、スピードを半分にした感じ。声もいいし、音程もいいし、でも速度落としすぎ、倍に伸ばしてる感じなのはちょっとなああ。



 伴奏のディエゴがすごく繊細で、間合いがよく、優しく、心がこもっている。
ギターだけずっと聴いていたい。


最後はバイレ。ファルキート!
カンテを最大限にリスペクトして、レトラの時には足を入れない。








そしてギターのホセ・ガルベス!
この人はもともと歌い手なのだが、ギターがまた素晴らしい。
昔風の深い響き。



三つのギターそれぞれに魅力的で、パコもきっと楽しんだことだろう。

2018年7月13日金曜日

フラメンケリア/工藤朋子と田村陽子

セビージャはトリアーナ、カスティージャ通りにあるフラメンケリア。
昼間はフラメンコスタジオだが、グアダルキビル川に面した大きなスタジオは夜タブラオに変身。
タブラオと言っても毎日決まったメンバーでライブがあるわけではなく基本週末のみだが
時にアントニオ・カナーレスなどとんでもない大物のライブがあったりするところ。
そこで現在セビージャ留学中の二人、工藤朋子と田村陽子がライブを行った。
鍵田真由美門下の工藤と小松原庸子門下の田村。
日本ではほとんど接点がなかったろう二人がこうしてセビージャで一緒に踊るというのが面白い。

オープニングは二人でマントンを使っての華やかなアレグリアス。
二人とも舞踊団での活動が長いせいもあるのか、非常にきちんとしている。二人で踊るのは初めてだろうと思うのだが、ごく自然な感じ。破綻がない。
マントンも、ある程度重みのあるもので、やはり、マントンはちゃんと刺繍が多めに入ったこういうタイプでこそ、美しく見える、というのも確認。いや、もちろん、二人の技術がしっかりしているというのもある。重みのあるマントンを自在に操るのは体力的にも大変なはずだ。が、いくら技術があっても例えば無地のものだと、軽すぎてひるがえってしまいシーツを干しているように見えてしまうこともある。上級者には上級者なりの衣装、小物が必要なのである。
田村の、胴体の使い方が秀逸。コンクールの時に多かった、鎧のように胴体が動かない人に見せたいほど。体をひねるというのか、ねじるというのか、柔らかく使っているのが良い。日本人の体はスペイン人に比べると平面的なのだが、体の使い方で立体的に見て、棚ミックに見える。工藤のマントンを床に置くときの丁寧さが、小さなことだが、セビージャらしい感じで、留学の成果の一つかも?
ギターソロを挟んで、工藤のソロはタラント。
ちゃんと曲の性格を理解して踊っているのを感じる、男前なタラントだったがちょっと長いし、同じように見えるところがあるのでもう少し振りを整理すればもっとずっと良くなるのではないかと思うが、技術はもちろん、曲への入り込み方など、文句のつけようがない。後半タンゴに成ると歌より先にいく感じもあるが、歌を待って、ためて入るともっとフラメンコな感じになるようにも思う。
田村のソロはシックなバタ・デ・コーラにカスタネットでのシギリージャ。
ここでもやはり体の使い方がうまい。が、ところどころ歌やギターのペースと踊りがうまくかみ合わず混乱するような感じがあったのは残念。また、シージョの背中のところがずれてしまったのも残念。
工藤もシージョのフレコが櫛?に絡まっていたが、こう行ったことはアクシデントで誰にでも起こりうることなのだが、絡みにくいアクセサリーにする、フレコに柔軟剤をスプレーして静電気を避けるなど、また田村なら安全ピンで留めるなど、何らかの工夫でリスクを避けることが可能なアクシデントはなるべく避けるべきだろう。踊りよりそっちに気がいってしまうから踊り手にとっても損だと思う。
踊りのレベルが高いからこそ、細かいところにも気をつけるべきだ。
青い衣装で揃えた最後のブレリアも劇場的で、日本のフラメンコのレベルの高さを改めて感じさせられた一夜でございました。


2018年6月24日日曜日

第1回全日本フラメンココンクール決勝

23日土曜日、第1回全日本フラメンココンクールの決勝でした。
5人のスペイン人とともに審査員を務めさせていただきました。
12人の決勝進出者の皆さん、誰もが素晴らしく、前回の予選で決勝進出者を決める時も大変でしたが、この中から入賞者を決めるのは非常に困難なミッションでした。
審査員の中で話し合いを重ねた結果は、当初の要項にあったものと違ったため、主宰者に確認の上、やはり要項通りに、ということで改めて話し合って、最終的な結果を出しました。審査員の意見は様々で、最初から全会一致ということではありませんでしたが、それぞれの意見、その根拠などを話した結果、最終的には全員の承認を得る結果となりました。

受賞者の皆さんおめでとうございます。
受賞されなかった皆さんもそのご健闘を心からお祝い申し上げます。
いうまでもなく、今回の結果は、この日のパフォーマンスに対する、この審査員たちによる、他の参加者との比較による結果でしかありません。参加者の方々のキャリアや実力を否定するものではありません。

それぞれの参加者の皆さんに対する私見を以下に記します。
あくまでも私の見方であることをお断り申し上げます。

1。宇根由佳さん ティエント
ティエントだが、後のタンゴの方に重きを置いている感。ティエントのもったりと引っ張る感じがあまりない。技術がしっかりしていて靴音がクリア。体の構えを斜めにしたり、傾けたり、変化をつける、肩を後ろに引くなどするとより綺麗かも。
2。市川幸子さん カンティーニャ
細部に素敵なフラメンコな瞬間がある。緊張していたのだろうか、固い表情で始まるが、次第にほどけてきた。カンティーニャ/アレグリアス系は口角あげた感じの方がいいかも。二の腕や首に緊張感が不足?でも予選の時よりずっとよかった。もっと色々見てみたい人の一人。
3。山中純子さん アレグリアス
ピンクの水玉のバタ・デ・コーラに白いマントン。装いも古風で、マントンでもペイネタに花つけて、よく絡めずにできましたが、バタ踏んでましたね。練習不足?でも丁寧に踊っている感じに好感が持てました。
4。青木ルミ子 ティエント 3位
ティエントらしいティエント。昔ながらのオーソドックスな感じの振り付け。スカートの持ち方などもちゃんとしているし、靴音も力強い。難しいことにチャレンジするのではなく、できることだけをきちんとやっているという感じ。それも一つの方法。ただ前回に引き続き胴体のコントロールがなく棒立ち状態、鎧装着状態なのは残念。
5。鈴木敬子さん アレグリアス
バタ・デ・コーラなのだが、ぺしゃんとしているのが残念、踊りにくそう。バタは技術が良くても衣装がそれに値するものでないと効果が半減。ポーズが綺麗で、ホセ・ガルバン風などフラメンカなディテールあり。両足ちゃんと使っているのもいい。
6。屋良有子さん シギリージャ 優勝
圧倒的な存在感。無伴奏でゆっくりと腕を上げていくオープニングからもう目が離せない、という感じ。スペインの潮流を踏まえているが、そのオリジナリティ、独創的な創作能力に脱帽。コンテンポラリー的だったり、太極拳のような動きがあったり、人形振り風があったり、思いがけない展開が続くだけでなく、ムイ・フラメンコな要素もあり、コラへ も感じさせる。日本人でこんな表現をする人がいるとは思わなかった。驚き。タブラオと言うよりも舞台のための曲と言う感じだけど、これだけの力がある人ならタブラオでも、タブラオにあった踊りを作り上げて踊れるのではないかと思う。おめでとうございます。黒い衣装の裏に少し赤いフリルを入れているのも効果的。とってつけたフラメンコではなく、フラメンコで自分を表現しようという心意気がオレ!。
7。松彩果さん ソレア 2位
黒地に白い花柄の衣装、赤フレコのシージョはソレアにしてはちょっと主張強すぎ?と思う私が古いのかな。予選でのアレグリアスのエプロンもそうだけど(タンゴならエプロンもありだけど、アレグリアスにはないと思う)、曲にあった衣装選びも踊りのうち。 
アナ・デ・ロス・レジェスの深い歌を体の中に取り込んでそれを出していくような深い表現が素晴らしい。痛みや怒りを感じさせ、ムイ・フラメンカ。彼女には目指すフラメンカな表現、こうなりたい、こう踊りたいというフラメンコのイメージがある感じがする。そこに自分を寄せていく感じ。
8。伊藤千紘さん シギリージャ 審査員特別賞
黒い衣装にシージョ、頭の真ん中に大きな花をつけるのは小柄な体のカモフラージュ?花はなくてもいいような。上手だが、もらった振り付けを踊っている感あり。振り付けをいかに自分のものとして踊るか、消化するか、が課題かも。残念ながらまだアルティスタ未満、生徒以上、かも。自分のモチベーションと動きのつながり。難しいですが、階段登れる人だと思いたいです。
9。知念響さん ファルーカ
男装。耳かくしの髪型もいい。難しい曲を好演。予選の時といい、すでに自分のスタイルが出来上がっている感じ。
10。関真知子さん グアヒーラ 
白にピンクの水玉の可愛い衣装。アバニコを使って。一生懸命さに好感が持てるが、まだレファレンス、標となるべき踊りをそれほどたくさんは見ていないのかも、という感じ。ビデオでもいいからとにかくいろんな人の踊りをたくさん見て、これはこんな感じで、というイメージを蓄積していくのが必要かも。上っ面なぞるだけのようにではなく、というときつくなるかもだけど(ごめんなさい)、一曲の中に起承転結や強弱みたいな、どこを特に伝えたいか、などのイメージもできるといいかもしれない。
11。出水宏輝さん ソレア 努力賞
決勝進出した唯一の男性。ラメの入ったスーツで、ファルーコファミリー大好きです、的な踊り。こういうのが大好きです、というのは伝わる。でもあなたはファルーじゃない。あなたはあなたの踊りを探さなければ、では? これはその第一歩でしかないと思う。胴体の緊張感も足りないし、右足中心の足も、両足で自在にできるようになってほしい。可能性は無限大、でも努力次第。いろんなもの見て、自分で体をコントロールできるようになっていって、この愛をキープできればすごいよ。
12。谷口祐子さん グアヒーラ
マントンにバタ・デ・コーラ、アバニコ。マントンもバタ・デ・コーラもきちんとしたテクニックが身についている感じ。マティルデ・コラル/ミラグロス・メンヒバルの路線。ただ彼女も自分の振りとして消化できているかは疑問。振りと振りとの間のつながりが切れることもあるし、歌を呼び込むとか、歌に反応するとかの上級へのチャレンジを是非。


フラメンコは難しい。いやフラメンコも、か。
これができたと思っても、さらにその上、そのまた上がある。
みてるこちらも、ここまでできるなら、じゃあ、これも是非、と欲が出てきます。

今回、プロとして自分の公演をしたり、教えたりして活躍されている方の存在感、実力はやはり、そうでない方とは違うことも身をもって感じました。
ある程度までレベルが上がると、お客さんのいる前の舞台で踊ることによりのみ、学ぶこともあると思います。そして上のレベルの人は勝負どころが初級者、中級者とは違ってきます。

コンパス、姿勢、サパテアード、ブラセオ、回転、体の近い方、小物の扱い、表情、歌とどう絡むか、歌にどう反応するか、目線、衣装や髪など見た目も含め、すべて大切だけど、それに加えて、
フラメンコで表現したい何かがその人の中にあるのか、どうか。それを表現できるか。
何か、というのは言葉にならない思いだったり、この曲は私はこう感じる、といった漠然としたものでいいです。フラメンコ、それぞれの曲の性格を理解して、それを演じる、のでもいい、私はソレアをこう思う、私のソレアはこうだ、でもいい。伝えるべき何かがあるか、伝えたい何かがあるか。今はうまくできなくても、こういうフラメンコを私がしたい、でもいい。そういう強い思いがあるか。
その人のフラメンコがあるのかどうか。
いくら上手に踊っても、でも、そこに自分がなければ、あなたの思いがなければ、空虚ではないかと思うのです。


道はとんでもなく険しいけれど、だからこそ、舞台の上の共演者や観客と繋がったときの感動も大きいはず。

頑張ろう。
私も踊るわけじゃないけど、成長していく日本のフラメンコについていけるよう頑張ります。





2018年6月17日日曜日

第1回全日本フラメンココンクール予選

6月16日、麹町のインスティトゥト・セルバンテスでの全日本フラメンココンクール予選。
先週のセビジャーナスフェスティバルに引き続き、審査員を務めさせていただきました。
20人の出場者の皆さんお疲れ様でした。

5分という制限時間の中で、皆さんそれぞれのフラメンコを見せてくれました。
5分は短い、とお思いかもしれませんか、それぞれのレベルを知るには十分な時間ではないでしょうか。コンパス、姿勢、回転、サパテアード、ブラセオ、体の使い方、表情、振付の構成、伴奏との付き合い方/対話、衣装や髪型、化粧など装い全般…いろんな要素で踊りは出来上がっています。舞台にただ立っただけでも見えてくるもののあります。

今回のコンクールでは年齢制限がなく、多くの生徒さんを持つベテランのプロから、若い方までたくさんの参加があったのは嬉しい限りです。
熱い思いで参加された参加者の中から決勝進出者を決定するのも簡単なことではありませんでしたが、審査員全員で話し合い、およそ半数の方を選出しました。
決勝進出者の方々、おめでとうございます。
来週も頑張ってください。
進出できなかった人の中にも、あと一歩だった方もいらっしゃいます。
個人的にまた見てみたい方もたくさんいらっしゃいます。
きっと1曲だけではわからない本当のその人の実力というのもあるでしょう。
あくまでも今回は今回のパフォーマンスに対する評価です。
また次回を目指して頑張ってください。


以下、それぞれの参加者への私見を記します。
あくまでも私の見方です。

1、青木ルミ子さん ソレア 決勝へ
トップバッターにもかかわらず健闘。衣装もいい。ブラソも力こもっているが、胴体が鎧でも着ているかのようで、硬いのが残念。
2、出水宏輝さん アレグリアス 決勝へ
パソ詰め込みすぎの感ありだが熱演。この人も胴体が鎧。
3、佐渡靖子さん アレグリアス
白いバタ・デ・コーラにマントン。セビージャっぽい。振りにセンティードがあるともっとよくなる。一つ一つの動きに心を込める、というか、最後までちゃんとやりきるといい。
4、知念響さん シギリージャ 決勝へ
バストンで始まる黒い衣装でのシギリージャ。花落とすのはアクシデントではあるのだけど、昔のセビージャのタブラオなら罰金もの。
5、藤川淳美さん ソロンゴ
バタ・デ・コーラにマントンだが、マントンもぐしゃっとなったりで残念。こういう踊りをしたい、という志、目標が見えない。振りをなぞっているという感じ。
6、小野木美奈さん アレグリアス
昔風の振り。構えなど胴体は最初の人たちよりも使えているが、全体的にどたどたしている感じ。
7、松彩果さん アレグリアス 決勝へ
力強いアレグリアス。アレグリアスは戦いではないし、もっと軽やかに踊って欲しい気がするが、回転にキレがあり、表情もいいし、細部もいい。実力十分。
8、谷口祐子さん アレグリアス 決勝へ
バタ・デ・コーラにマントン。マントンを床に投げ捨てるのではなくゆっくり置くなど、細部がいい。ちょっと機械的だけど上手。もう少しゆったりした感じでもいいかも。
9、清水登美さん カーニャ
最初の回転でバランス崩したせいか、調子が出なかった?歌と踊りがバラバラな感じ。
10、市川幸子さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
胴体はもちろん、首の位置など、体の使い方がちゃんとしている。欲をいえば、この曲で何を表現したいのか、例えば怒りとか、燃え上がる愛、とか、具体的なものではなく、ぼうっとしたイメージだけでいいので、それがもっと踊り手の中ではっきりするとより伝わってくる、より良くなるのではないかと思う。
11、不在
12、橋田佳奈さん バンベーラ
若い。装いは良いがまだ生徒さんの域を出ない。実力十分。なぜ他の曲ではなくバンベーラなのかを考えるべきというか、やはり何を表現したいかをイメージして欲しい。
13、屋良有子さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
体の使い方などテクニックも実力十分。だが、全体的に前かがみになっているのが残念。エバのような、コンテンポラリーぽい動きも入れているが、中途半端な感もある。
14、関真知子さん アレグリアス 決勝へ
アバニコにピンクのチュール生地の、軽そうなバタ・デ・コーラ。きちんとしているが動きにもう少しセンティードが欲しい。一つ一つの動きに思い入れを込める、というか。右から左へ、だけじゃない表現を考えるといいのでは。
15、伊藤千紘さん ソレア・ポル・ブレリア 決勝へ
暗色の衣装で頭の真ん中に赤い花なのは違和感あり。シージョあったら上下のつながりができてよかったかも。もしくは花を下につけるとか。足も出来るから、あとはトロンコ、胴体のコントロールや首なども気をつけるともっと良くなるだろう。
16、ドミンゴさん ソレア・ポル・ブレリア
フラメンコが好き、という気持ちは伝わる。基本をしっかりやれば面白くなるかも。
17、山中純子さん シギリージャ 決勝へ
男装でのシギリージャ。カスタネット、もみあげの髪をくるんとした古風なこしらえ。首の位置と胴体のコントロールなど、課題あり。男装でなくバタで踊ってもよかったかも。
18、宇根由佳さん アレグリアス 決勝へ
7の松さん同様、力で押していくアレグリアス。足が確実で、一つ一つの音がクリアなのがいい。胸をもっと開いてもいいかもしれない。
19、鈴木敬子さん ソレア 決勝へ
ポーズがとてもきれい。歌ともっと絡んでもいいのではないか。足、ちゃんと聞こえない時あったのは残念。
20、佐藤哲平 アレグリアス 
昔ながらのトラへコルトで姿がいい。あやふやさがありところどころ遅れたりもあるが、楽しそうなのがいい。また見てみたい。
21、森山みえさん シギリージャ
赤いバタ・デ・コーラにカスタネット。前かがみな感じ。肩を前に落とさず、胸を開くとずっときれいに見えると思う。カスタネットの音にもニュアンスつけると表現に幅が出るのでは?

というわけで、全体的に、胸を開き、首の位置を気をつけるなど、姿勢にもっと注意するるとより美しく、よりフラメンコに見えるのではないかと思いました。
特に胴体、見逃されがちですが、構えを斜めにしたり、時に反ったり、ねじったり、変化つけると踊りに奥行きが出る、というか、ダイナミックになると思います。顔の位置、首も、難しいですが、気をつけるだけの価値はあります。
また、歌との連携も大切です。歌がよくないと踊りも引きずられてしまう、というか、踊りが良くても歌がイマイチでコンクールでいい順位が出ないというのはスペインでもあることです。反対にいい歌、ギターは踊りを助けてくれると思います。
バタ・デ・コーラやマントン、多くの方が使っておられました。どちらも独自のテクニックが必要です。華やかに見えますが、きちんと扱えないと逆効果です。またマントンもバタもある程度重さがあった方が、技術的に、体力的に大変ですが、美しく見えると思います。
動きにセンティードを持たせる、というのは、A地点からB地点へただ移動させるのではなく、思いを込めるということ。技術的に言えば、速度を変えたり、角度を変えたり、で変化をつけるというのも有効でしょう。
あと、やっぱり、今はたとえできなかったとしても、こういうことがしたいのだ、これが好きなんだ、というイメージは必要なように思います。そして、この曲を通して私は何を伝えたいか、というイメージも。それは言葉にならないイメージでもいいのです。
アレグリアスならカディスの陽光でも、カディスの光る風でも、ペルラ・デ・カディスの笑顔でも、とにかく私はフラメンコが好きなの!でも、何でもいいと思います。
曲それぞれが持つキャラクターを理解して、それを表現しようというのでもいいのです。
ソレアにはソレアの、シギリージャにはシギリージャの、タンゴにはタンゴのキャラクターがあるのです。それを表現するのが一つ、そしてその先、その曲で「私が」表現したいこと、というのも出てくると、観客としてはもっと面白く見ることができます。
ただ振付をなぞるだけではなく、自分は何を伝えたいのか、というイメージを考えることは有効だと思います。
他の人からもらった振付でも、それで何を伝えたいのか、を考えて、どこが焦点なのか、どこに焦点を持っていくかなどを考えるといいのかもしれません。
そして何より大切なのは基礎。コンパスはもちろんのこと、姿勢も大切。サパテアードではリズムだけでなく音にも気をつけ、ニュアンスまで出せれば最高。ブラソ、表情、見せ方。舞台でのいかた。歩き方。細部に気をつけることでパフォーマンスの効果は何倍にもなると思います。


というのは私の見方。参加者の人も、観客としてみていた方も、私と違う見方をされていることと思います。これは違う、ということがあれば是非おっしゃってください。







2018年6月16日土曜日

傷口にウォッカを吹きかけろ

ハードボイルドなタイトルに戸惑いつつのムジカーサ。
代々木上原の坂の上のマイクなしで声が届き、オペラグラスなしで表情を見ることができる小さなライブスペース。
松彩果を初めて見たのもここだった。その身体のコントロールにびっくりした。
あれは何年前だろう。

不思議な公演だった。
軸が揺るがない松。
この人ならではのペソ、重みを持った動きで彼女のフラメンコを表現する森田志保、
明るさと圧倒的な存在感で聴かせるヘレスの太陽、アナ・デ・ロス・レジェス
スペインの若手たちと何ら変わらないセンスで聴かせる徳永兄弟、
独自の世界を持つNOBU、
シンガーソングライターの松谷冬太
繊細なパーカッションの朱雀はるな。
メンバーそれぞれの個性も様々だし、内容もフラメンコ・フラメンコな曲あり、フラメンコポップの名曲あり、日本語の歌あり、ユーモアあり、芝居仕立てなところあり、と様々。
それがごちゃ混ぜに観客の前に差し出される感じ。
ミックスパエジャというかごちゃ混ぜサングリアというか。
多分、松と森田とアナとギターだけでやれば、めっちゃフラメンコなコンサートになったと思う。
あえて異種格闘技的な存在を入れることで、
人生はフラメンコだけじゃないんだよ、って言ってるのかも?

マルティネーテからのバンベーラ。彼女は芯がしっかりしているフラメンカ。
こういうフラメンコが好きで、そこに近づきたい、私はフラメンカ!、という意思を感じる。
松谷のライ・エレディアの名曲lo bueno y lo maloはフラメンコでなく歌うとこうなるのか、という感じ。個人的に思い入れのある曲だけに、うーむ、ちょっと悲しい。でも名曲はこうやって広まっていくのかもだな。
そこに絡んで始まる黄色のシャツに赤いジャケット、スペインの国旗カラーの衣装のNOBU。アレグリアス。ジャケット、もう少し丈が長い方がいいんじゃないか、って思うんだけど、どうなんだろう。国旗意識してのあえてでの長さ?うーむ。
この人が好きなのはフラメンコのノリなんじゃないかと思う。コンパスで迷子になったり、コロカシオン姿勢も悪いし、よくこれで足打てるなー、と感心。バーン!と決めるのが気持ちよさそうで観客を引き込んでいく。
多分、コロカシオンとか基礎をきちんと学んで、その上にこの明るいノリ、ユーモアのセンスが出たらすごくいいのではないかと思うのだけど、どうなんだろう。フラメンコにとってもユーモアはすごく大切で、それを表現できるキャラクターは貴重だ。
森田はソレア。ゆっくりした動き。重みがある。松がフラメンコに近づこう、フラメンカになろう、という踊りだとすると森田は私はこう、私の好きなフラメンコはこう、私のフラメンコはこう、という感じの踊り。
どちらもフラメンカなのだけど、そんな気がする。
アナは表現の幅が広がった気がする。重みが出てきたというか、タンゴやブレリアの自由闊達さだけでなく、マルティネーテやソレアなどの痛みや重みも見事に表現していた。


ごちゃ混ぜ感はあって、もう少し整理する必要があるかもなんだけど、そのごちゃ混ぜ感も意外に悪くないってのが本音。
日本のフラメンコもいろいろだね。楽しいね、と思った1日でした。

ちなみにスペインのバルで出すサングリア、赤ワインに果物、炭酸系ソフトドリンクだけでなく、ウォッカやブランデーなど、そこらへんにあるお酒を適当に混ぜたりします。
なんで甘いからといって飲んでると悪酔いすることもありますよ。ご注意。

それにしても客席が豪華。日本のフラメンコシーンを引っ張っているアルティスタたちが揃ってた。
全員でなんかやったらすごいだろうなあ。