志風恭子のフラメンコ 最前線
スペイン、セビージャ在住フラメンコ研究家による最新のフラメンコ情報
2026年3月4日水曜日
ヘレスのフェスティバル11日目サロメ・ラミレス『パロ・コルタード』
2026年3月3日火曜日
ヘレスのフェスティバル11日目ダビ・コリア『バベル(ワーク・イン・プログレス)
現代スペイン舞踊なのかスペイン現代舞踊なのか。フラメンコや旧来のスペイン舞踊の言葉だけでなく自由に身体の言葉を使い組み立てた作品。初演は7月フランスで、とのことなので、これからもまだ変わっていくのだろうが(ダビは以前、ワーク・イン・プログレスで公演したものと出来上がった作品がかなり違うということがあったし)、現時点での作品が持つメッセージは伝わってきた。私的結論はみんな同じでみんな違ってみんないい。
今回は人が店に届かんとする高い塔を作ったことで神が怒り塔を壊し、罰として人々は違う言語を話すようになってしまった。という旧約聖書のバベルの塔の話をモチーフにして、ロシア、日本(瀬戸口琴葉)、アルゼンチン、イスラエル、アメリカ、そしてスペイン出身のダンサーを起用。ダビを含めた総勢8人。
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
高みを目指して、肩に乗ってでも登って行こうとする人たち。それが叶わなくて、地に倒れても起き上がり、共に歩み、共に前に進む。個々の叫び。みんなで一つになって作る形。
コンテンポラリーの作品?て思うような動きも多いけれど、サパテアードなどフラメンコの技術を、パーカッションとしても効果的に使い、ダビ・ラゴスの歌声が沁みる。
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
ダビ・コリアのソロもあるけれど各ダンサーもちょっとした見せどころがあったえ、ダビが圧倒的な主役で、あとは群として扱われているわけではなく、コリアも群の一人ともなる。
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
グッと凝縮された時間空間。これがどんな形で完成するのか楽しみでたまらない。
記者会見でダビが言っていた「話す言葉や文化は違ってもフラメンコが接着剤。フラメンコへの愛が僕たちを結ぶ」を強くかんじた夜でした。
2026年3月2日月曜日
ヘレスのフェスティバル10日目夜ベレン・ロペス『ラティード』
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
ファルーカも全部同じ色。色彩の濃淡がない。フラメンコにはいろんな曲種があってその性格を演じ分けられるはずなのだけどなあ、と爆音での頭痛に耐えつつ思ったことでした。スピードとバイオレンスではないものは彼らにとってのフラメンコじゃないのでしょうか。
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
ヘレスのフェスティバル10日目午後サンドラ・カラスコほか『ロス・マグニフィコス』
サラ・コンパニアは去年マドリードのビエナルで初演したという『ロス・マグニフィコス』素晴らしい人たち、ってな意味で一流のアーティストを集めた、っていう感じでつけたのだろう思う。
歌、ギター、ピアノ、踊り、4人のジャンルの違うアーティストの名前が並ぶプログラムからも、これは誰か一人が主役という作品じゃないことはわかる。
アンドレス・バリオスのピアノで、サンドラが客席を歩きながらマラゲーニャを歌って舞台に上がるオープニングからしてちょっと違和感。サンドラは音程完璧で素晴らしい歌い手であることには変わりないのだけど、ピアノがフラメンコぽくないのであります。歌伴奏をするというより自己主張が激しい、というか。よく指が動く人だとは思うけれど、音楽性、フラメンコ性はうーん、今ひとつというか、その後のソロ演奏でも思ったけど、タララを観客に歌わせてから演奏、観客は置き去りにして色々バリエーションを見せつつ自身も歌うというのも含め、生理的に合わない。昔、ビエナルで見に行った時もフラメンコじゃないじゃん、って思ったのは、数字的にはリズムが合ってても、フラメンコのアクセントとか曲ごとのキャラクターに繋がるような表現とかがない感じがするからかも。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
踊りはエル・ジジョというバルセロナ出身で各地のタブラオなどで踊っている人だったんだけど、うーん、体幹が弱い? 開店の時に軸がブレる。首や肩の位置も気になる。ホアキン・コルテスのうわべだけを真似してるような感じ。ホアキンのような体幹もないし訓練もされてないから踊りになっていない気が。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
コンセルバトリオでバリバリ鍛えられた踊り手たちを見る機会が多いせいか、頼りなく見えてしまう。でもファルーやオルーコなど小さい時からフラメンコだけやっているようなアーティストでも姿勢や重心、体幹がきちんとしている人はしているしね。
サンドラの歌とダビ・デ・アラアルのギターはフラメンコだし、良いのだけど、この舞台では生きてこない。ダビのソロはマノロ・サンルーカルやリケーニの抒情性を受け継いでいる感じもあって良かった。でも二人だけの公演の時のようにはいかないのはやはり流れが途切れるからかも。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
ビデオはこちら、最初のところだけですが
ヘレスのフェスティバル10日目昼ホセ・マルドナードのパフォーマンス
フェスティバル公式で現在2つの展覧会が行われているのですが、その会場、 コワーキング・クルトゥラ・イ・エンプレサ・カマラ・デ・コメルシオで、その展覧会の一つの作品を制作した、バイラオール、ホセ・マルドナード『モンストゥルオス・デル・フラメンコ』会場で、3月1日12時からホセによるパフォーマンスが行われました。
| ©︎ Kyoko Shikaze 展覧会開会日に取材を受けるホセ |
複数のアーティストのパーツを組み合わせてコラージュした作品が中心ですが、その肖像は写真を見て描いたもので写真そのものを加工したものではありません。会場奥には 、これは他のアーティストと組み合わせることなく描かれたパケーラ・デ・ヘレスの大作も。
| ©︎ Kyoko Shikaze |
パフォーマンスはその肖像の前で行われました。
フラメンコ曲の録音を流しながら、肖像の前に白いボードを吊り、パケーラのブレリアで怒涛のサパテアードを聴かせ、その後、別の曲をかけ即興で描いていく。強い目力を持った目が徐々に現れてくる。その合間にも踊り…
最後はサパテアードをしていた板を立てかけるとそこに口が現れ、パケーラも他のアーティストとのコラージュとして完成されるという粋さ。
2026年3月1日日曜日
ヘレスのフェスティバル9日目メルセデス・ルイス、レオノール・レアル、サロメ・ラミレス『ヘレス、コン・ノンブレ・デ・ムヘール』
ヘレスのフェスティバルの30周年を祝う、ヘレスのアーティストたちによる、ヘレスの女性アーティストたちにスポットライトを当てた作品。
3人の少女たちがヘレスの歌い手たちのブレリアの録音で達者に踊るオープニング。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
ローラ・フローレスのスペイン歌謡の録音で白いバタ・デ・コーラで少女(メルセデスとサンティアゴの娘パストーラ)が踊り
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
レオノールのファルーカ。確か彼女はバレエを習っていてフェスティバルがきっかけでフラメンコ始めたんじゃなかったかな。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
メルセデスのガロティンは、ガロティンという曲の持つアイレがあまり感じられなかったのが残念。彼女は第1回のマスタークラスにアンダルシア舞踊団の面々と一緒に出席していた。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
サロメのマントンでのマラゲーニャ。去年のラ・ウニオンの覇者。丁寧に踊っている。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
その後もサロメのソレア、レオノールのシギリージャ
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
メルセデスの白いバタ・デ・コーラのペテネーラ。前半のブラソ、綺麗だった。後半はカスタネットも叩きつつと進むんでいく。
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
そしてフェスティバルのTシャツを着た、クルシージョ生みたいな格好のアンヘリータが優雅で愛嬌もあって最高。 |
| © Festival de Jerez/Esteban Abión |
ヘレスのフェスティバル8日目深夜レラ・ソト『エル・フエゴ・ケ・ジェボ・デントロ』
2019年のヘレスのフェスティバルでのコンサートが素晴らしかったことが印象的なレラ。先日のセビージャでのペーニャ公演はイマイチだったものの、その前のマエストランサ劇場でのシギリージャは絶品だったし、と観に行ってみたレラ・ソト。お父さんの歌い手ビセンテ・ソト、踊り手のお母さんルイサ・エレディア(一緒にエル・フラメンコに来ていたこともある)をはじめ、クーロ・カラスコ、ディエゴ・デル・モラオ、アントニオ・マレーナ・イホと多数のゲストを迎えてのリサイタル。電子楽器による伴奏でのマルティネテに始まり、マラゲーニャ、クーロの伴奏でソレア・ポル・ブレリア、ティエント、タンゴ、
ディエゴ伴奏のソレア(繊細なディエゴの伴奏が素晴らしかった!)
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
通常、伴奏をしているというルベン・マルティネスのギターソロでブレリア(繰り返しばかりでアクセントもなく、なぜ彼がソロを弾くのかがわからない)
アントニオ伴奏のブレリア、
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
ミロンガ
ビセンテと一緒に歌うタンゴ、
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
そして最後はブレリアで母が踊るという盛り沢山のプログラム。
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
最後はまた全員登場してブレリア。
| © Festival de Jerez/Rina Srabonian |
舞台の上で靴脱いで踊ったお母さんがいい味わいで全部さらっていった感あり。
ビデオはこちら
なんか盛りだくさんすぎて、前回のような感動はなかったけど、若手のホープの一人であることは間違いないし、パルマに若い世代の女性を起用しているのも好感が持てるし、今後に期待したいところです。