2020年9月25日金曜日

アンドレス・バリオ『ウニベルソ・ロルカ』

 フラメンコというよりジャズ。

フラメンコもロルカもモチーフに過ぎず、ジャズのテクニックで能弁に自分語りをする。そんな感じのピアノでした。

かつてのカニサーレスを思い出させる超早弾き。音の多さ、永遠におわらないかと思うほど長い曲。原曲のモチーフを様々な形に変化させ、展開させていくという形もジャズじゃない?

コンパス刻んだり、もするんだけど、それは従属的存在。世界の中心は俺。

歌のアンヘレス・トレダーノの正確な音程は彼が必要としていたものなのでしょう。彼女が6曲目エル・ビトの途中でソレアを歌っても、その伴奏ではなく、違うことをして着地だけ一緒、という形。

リズムが跳ねてる。言葉がとめどなく溢れ出る。巧みなんだろうけど飽きてくる。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

ウトレーラ生まれのまだ22歳だとか。スペイン各地のジャズ祭にも出演しているようだけど、これから世界に展開するつもりなら、フラメンコは強みになるに違いない。



Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

普通にストレートなフラメンコ曲とかも弾いているのかな。ちょっと探してみようかな。ジャズファンの意見も聴きたいな。でも私はとりあえずお腹いっぱい。



ディエゴ・ビジェーガス『シンコ』

 ロペ・デ ・ベガ劇場から徒歩15分くらいかな。アルカサルでのコンサートは、ディエゴ・ビジェーガス。サンルーカル生まれの33歳。最近はサラ・バラス公演にも出演しているミュージシャン。フルート、サックス、ハーモニカ、クラリネットを操り、いろんな人の公演にも参加してます。ビエナルでもすでにホセ・バレンシアとアナベル・ベローソの公演に出演しています。

この公演、本当は8月にサン・ヘロニモ修道院庭園での公演の幕開けを飾るはずでした。が、舞台設営の遅れから、この日に延期されたのでありました。でも結果的には、より大きい会場で、それも満員で、たくさんの記者も観に来ていて、良かったように思います。

いやあ、楽しかった。面白かった。

歌心があるんですね、彼には。フラメンコの細かいところがよくわかっている。

今回のタイトル『シンコ』は5つの楽器を操り、5つの文化の影響を受けている、という意味でまだ出ていないアルバムのタイトルでもあるそうです。

最初はフルートで。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

 

フラメンコギター(ケコ・バルドメロ)、パーカッション(パハロ)というフラメンコでお馴染みの楽器だけでなく、エレキギター、ベース、ドラムスに3人の女性コーラスという、ラ・エレクトロ・アコースティック・バンドというグループを率いての登場。ロックほどじゃないけど、ボリュームもでかいし、ムービングライトで光が会場を走る、という、通常のフラメンココンサートとは一味違います。音的にはジャズフュージョン調かな、と思ったのですが、本人MCによると、オリエンタルとのこと。スペイン、というかヨーロッパ人のいうオリエンタルは極東までこず、アラブ的なものをいうことも多いので、それかな。あれ、と思うとティエント/タンゴでございました。フルートはやっぱ、先駆者ホルヘ・パルドのスタイルに似ているかな。フアン・パリージャよりもホルヘな感じ。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

2曲めはソプラノサックスでアレグリアス。自分が基礎を学んだクラシック音楽の影響ということらしいけど、いや、めっちゃフラメンコ。ひねりがあるし、バイオリンとのやりとりも楽しい。二人でアンビエンテ作っていく。フラメンコの感覚が体の一部になっているから自然。コンパスってメトロノームが刻むのとは違って、時にのびたり縮んだりもするんだけど、そういうのとか、呼吸の感覚。こうきたら落ちる、とかの決まり手。音が止まっても回っていくコンパス。そういうのが全部入っていて、気持ちが良いのであります。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

3曲めはエンリケ・モレンテに捧げるタンゴ。ハーモニカで演奏。南米の影響、と本人。歌と同じような強弱つけたり、いやあ達者。歌のメロディをなぞるだけじゃないのが、当たり前だけどいいのであります。曲と曲の間にもよく喋るけど、曲の演奏中にもメンバー紹介したり。八面六臂。続くクラリネットでのセラーナには同じサンルーカル出身のカリダ・ベガの歌も少し入ります。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

5曲はジャズ、レゲエ、シャンソンなど、世界中の音楽がちょっとずつ入ったような曲。次のソレアはなんと『シャクハチ』というタイトルで、尺八のイメージでフルートをふいての曲。最後、中国風の音階だったようにも思うんだけど、ま、いいか。お次はハーモニカでアルゼンチンタンゴ風?グアヒーラ。ここでもカリダの歌が入る。

ここでゲストのマリア・テレモート登場。歌ったのは『at last』。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


声から発声から変わってビヨンセになる。すごいわー。カラオケ番組でも優勝しそう。やっぱ音程いいしセンスあるのね。喝采の嵐。で続いてブレリア熱唱。パケーラの歌い出しで、同じこの場所でパケーラが歌ったこと思い出した。あれはいつのビエナル? マリアは妊娠中の大きなお腹で、踊ると歌聞こえないとわかると、手持ちのマイクを胸の谷間に挟んで歌い踊るとか、こういうとこ好きだわー。最後は二人で踊って引っ込むのもいい。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

アンコールのルンバもノリノリで、みんな満足して家路に着いたのでありました。

最後、みんなで赤いスカーフ引っ掛けて、照明も真っ赤にし他のは、スペインのアーティストや音響や照明など文化関係の人たちのデモに引っ掛けたもの。

まあ、喋りすぎるとか、色々取り込みすぎでカオス、とかのご意見もございましょうが、体全体で演奏する(よく動く)、コミュニケーション上手な彼とその音楽に楽しませてもらった人が99%では?

クラシックのミュージシャンのフラメンコ演奏で溜まっててフラストレーション吹っとびました。







2020年9月24日木曜日

トリオ・アルボス&ラファエル・デ ・ウトレーラ

 フラメンコと他の音楽のミュージシャンの共演はよくあるけれど、その全部が全部成功するわけじゃないというのも真実。音楽に国境はないし、ジャンルの垣根に意味がないとも言われるんだけれど、うーん、垣根は見えなくても思ったより高いこともあるのかもしれない。

2013年にスペイン文化省の音楽賞を受賞したというトリオ・アルボスはクラシックのトリオ。バイオリン、チェロとピアノ。現代音楽を中心に演奏しているそうで、それがなぜフラメンコに興味を持ったのかは謎だけど(後でインタビューでも探してみよう)、ゲストに、歌のラファエル・デ ・ウトレーラ、パーカッションのパキート、ゴンサレス、踊りのモネータを招きました、という感じ。

うーん、結論から言うと、フラメンコって楽譜に起こしてそれを演奏すると味わいが半減しちゃうのかも、っていう感じ。

オープニングのシギリージャはアクセントが跳ねてる感じで、シギリージャの深みや深刻さなどがまーったく感じられない。こどもっぽいというか、うーん、なんなんでしょう、これ。形は一応シギリージャの形なんだけど。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

ラファエルが歌ったソレア・アポラー。うーん、カラオケじゃないけど、歌を聴いて伴奏をつけるのではなく、形ができてるところに歌入れてる感じ。ピアノだけとかならまた違うのかもだけど、3人の合わせもあるからしょうがないのかな。フラメンコの醍醐味の一つは、演者同士のカンバセーション。会話。それがないとうーん、フラストレーション。

3曲目はパコ・デ ・ルシアの『愛のうた』をトリオで。いやあ、なんだろう。曲のセンティードがめちゃくちゃ。なんでこうなっちゃうんだろう。不思議。バイオリンのメロディの音程も微妙。

再びラファエルが登場して歌うファンダンゴも最初のソレアと同じく、わざとらしい。ギターの真似とかもしてるんだけど、表面的。

現代音楽の作曲家がフラメンコに想を得たという曲、マラゲーニャ・アウセンテはモネータが(途中で袖から舞台に投げ込まれる)マントンを使って踊る。うーん。微妙。



Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro



歌が入ってマラゲーニャからアバンドラオ。トリオのグアヒーラ。歌が入ったアレグリアス。

モライートのブレリアはトリオが演奏してモネータが踊るのだけど、うーん、モライートもびっくりするだろうな、という感じ。

ここで私は次の会場に行くため劇場を後にしたのでありました。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

クラシックの人がフラメンコに近づこうというのはうれしくもあるのだけど、改めて」フラメンコって難しい、って感じたことでした。うーん、もっと違うアプローチができるのじゃないかなあ。フラメンコ研究家だけどもともとクラシック畑でチェロを弾いていたファウスティーノ・ヌニェスとかの助けを借りるとか? 両方のことをよく知っている人の助言が必要な気がする。












2020年9月23日水曜日

ダビ・コリア&ダビ・ラゴス『ファンダンゴス!』その2

昨夜はともかくすごいものを見た、という興奮で書き上げてしまいましたが、一夜明け、ビエナルのオフィシャル写真を見ながらちょっと振り返ってみようと思います。

いや、思い出してみても、やっぱりすごくて、それは作品の構成や舞台の使い方もそうなんだけど、そういう面で言えば、マリア・パヘスがシディ・ラルビ・シェルカウイとやった『ドゥーナス』なんかも素晴らしかった。スペクタクル!な感じというのでびっくりしたのには、馬鹿でかい壁が動き出すスペイン国立の『ポエタ』や、大きな人形が登場するエバの『フェデリコ・セグン・ロルカ』もあるよね。
でも、この作品は、特に大掛かりな装置があるわけじゃないのだけど、ミニマムなものを効果的に使っているのがすごいと思う。そして照明の力も大きい。
でも何よりも、すごいのは出演アルティスタたち。それぞれの力。一人一人がソリストとして活躍する実力の持ち主だから、スターと群舞、踊り手とバックミュージシャンではなく、
一人一人が主役のように思えるのだ。

開演ベルの後、エレクトリックミュージックで奏でられる伝統舞曲のファンダンゴ。ループのように続くかと思うと、ちょっと立ち止まったり。
幕はまだしまったままだ。これがちょっと長いな、と思ったのだけど、本来は5分前のベルが鳴った後にかかるそうなのだけど、それがコロナ対策のアナウンスの後になったので長く感じたみたい。なるほど、それなら理解。

幕が開くと、真ん中に赤い円。その真ん中にダビ・コリアがすくっと立っている。3人の男女が縁の縁を回る。腕を斜めに上げ、スペイン国歌を歌い出す、踊り手たち。スペイン国歌に歌詞はないからハミングだけど。

上手から登場したダビ・ラゴスが「鐘がなる…リエゴのために」と歌うと、共和国時代の国歌であるリエゴ讃歌のメロディーをサックスが奏でる。ダンサーたちは拳を握って掲げる。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


 頭にかぶる白いハンカチは教会の象徴だろう。カトリックの国。

スペインの赤い大地は血の海だったのでもあるのかもしれない。内戦で流れた夥しい血の。そして闘牛の血が流されたアレーナでもある。

激しいサパテアードは銃の響きか、カオスそのもの。

ダビ・ラゴスがプレゴンで「恐怖を売っている/恐怖を買う/聞くのを恐れる/一度しか死なないのに」と歌う。これってまさに今現在の状況じゃ? この曲今年の1月ニームで観たダビの『オディエルノ』でも歌っていた。そういえば、共演のエレクトロニックミュージックのアルトマティコとサックスのフアンも同じだ。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

ペラーテ、ピニョーナに続き出演のアルフレド・ラゴスの太く、深く、厚みのある音が響く。

ダビ・コリアの見事なテクニックで見せるソロ。この人の身体能力はすごい。特に回転が素晴らしい。アクセントの付け方が粋!

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

なんだろう。フラメンコの枠を超えたすごい作品じゃないか、という気持ちになってくる。

ソレア。舞曲ファンダンゴのリズムに載せて歌われるマラゲーニャ。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

血の海に倒れる人々を覆い尽くす黒い布。

すると舞台奥にもう一つの世界が現れ、そこに上から砂が落ちてくる。上手に。下手に真ん中に。さらさらと、砂時計のように。

砂浜が現れる。そこを『牧神の午後』を演奏しながら歩くサックスのフアン。

カスタネットを使った民族舞踊をのどかにおどる。太鼓のリズム。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

砂を放って描く線の美しさ。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

シギリージャ。

女性を我が物顔に扱い、狼藉三昧。

ある意味演劇的。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

白いバタ・デ ・コーラの女性は、バタのはしに足があり、まるでケンタウロスのよう。

裸足で髪を振り乱しているのは、女性たちのコラへの現れ?


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

裸足のアレグリアス。8月にアルトマティコと魅せた、パウラ・コミトレがここでも本当に素晴らしい。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

振り乱した髪もバタ・デ ・コーラのように、毛先までコントロールしている。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


マリアーナ。

そして最後はタンゴ/ルンバ。狂宴のスペイン。


そう何があっても徹底的に楽しむ。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

最後は二人のダビがゆっくり舞台奥へ、砂浜へと消えていく。


サルバドール・タボラやマリオ・マジャらの、社会派のフラメンコ作品の流れも受け、でも舞台作りや複数での踊り、人物の舞台上での動きなどにはコンテンポラリー的な文法も使いながら、でも、その真ん中にあるフラメンコが揺るぎないしっかりとしたものだから、すごい作品にと仕上がっているのだろう。

内戦と血とマチズモの影。祝祭とカオスなスペインは才能あふれる天才たちの国でもあり。前を向いてゆっくりと進んでいく国なのだ。

あー、早くもう一度観てみたい。


あ、ダンサーのうち、マイセ・マルケスはコロナの疑いで(結果は陰性だったけど)抜けたダンサーの代役で5日間で覚えて舞台に出たそうだ。これもすごすぎる。

 

ダビ・コリア&ダビ・ラゴス『ファンダンゴス!』

 いやあ、すごいものを観てしまった。

私がこれまでの30数年に観てきたフラメンコ作品の中でも最もすごいものの一つ。

ないがすごいって、作品としてのすごさ。

音楽、踊り、照明、音響、動き、効果。個々のパフォーマンスも、どれをとってもすごすぎて、圧倒された1時間半。それが短く感じられる。

なんというか、これはレベルが違う。これまでに観てきたフラメンコ作品とは違うレベル。例えば、パリ、オペラ座のクリスタル・パイトの作品作りに匹敵するすごさ。と言ったらわかってもらえるだろうか。

どんな舞踊祭でも、どんなに格の高い劇場でも、この作品なら大丈夫。そんな、めちゃくちゃ質の高い作品。

エレクトリックミュージック、民族音楽、クラシック、そしてフラメンコ。全てが一緒に、一つの世界を構築している。それは地方ごとの文化をもち、内戦で血を流した歴史のあるスペインそのもの。

舞台の上の赤い丸は、スペインの赤土であり、これまでに流してきた血の海。そして闘牛場のアリーナでもある。光と影のスペイン。民衆を虐げてきた歴史。男性優位主義。そんな暗い影も、祝祭のスペインの、明るく楽しい、光に満ちた一面も余すことなく描き出す。

純粋なフラメンコも、コンテンポラリーも、全てを抱擁するスペイン。

ファンダンゴはフラメンコの曲種名というだけではなく、伝統舞曲であり、また騒ぎという意味もある。

カオスの国、スペイン…


伝統舞曲ファンダンゴのリズムで始まり、スペイン国歌が、昔のスペイン国歌であるリエゴ讃歌に繋がり、スペインの現代史が炙り出される。

プレゴンで、「恐怖を売る」と歌うのは、今現在の状況とリンクする。

ソレア、マラゲーニャ、シギリージャ、ファンダンゴ、マリアーナ。

フラメンコ曲に彩られ、フラメンコのテクニックで表現しているのだが、コンテンポラリーの文法や演劇的手法もあり、“みせる”のだ。

手前の赤い円と、舞台後方の白い砂浜のような舞台(実はお米だそう)。二つの世界の対比、そして二つの世界の繋がり。


ああ、もうこれは何度でも観たい。日本のダンスフェスティバルでもぜひ上演して欲しい作品だ。

フラメンコの進化が目に見える形でここにある。






2020年9月22日火曜日

ペドロ・エル・グラナイーノ『マエストロス』

 グラナダ生まれ。18歳でセビージャに移り住んだけど、歌い手として注目を浴びたのは2007年、ファルーコ一家の伴唱をするようになってから。2011年ヘレスのフェスティバルでファルーカの『オメナヘ・ア・ロス・グランデス』で認められ、翌年同フェスティバルでソロリサタイルを開き、その勢いでビエナルにも出演。以後、ビセンテ・アミーゴのアルバムに参加するなど、順調にキャリアを積んでいます。

その彼の、前回ビエナルに続いての、ロペ・デ ・ベガ劇場でのリサイタル。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

幕開きはシギリージャ。エンリケ・モレンテが映画『フラメンコ』でカニサーレスの伴奏で歌っていた、あの独特のメロディのシギリージャです。もともとはビエナルの『ア・オスクーラス』と言う公演で歌ったもので、当時は、「え、これがシギリージャ? あ、本当だ、シギリージャだ」と思ったもので、感動して必死で説明しても某歌い手に鼻で笑われた覚えが。超モダンなシギリージャだったのが、ペドロが歌うと、スタンダードなシギリージャに聞こえてしまうのが面白い。時代が変わった?いや歌い手の声のせい? でもなんか伴奏がイマイチだなあ。

アレグリアス、ソレア・アポラ、マラゲーニャと聴いているうちに、思った。歌がいいと思っても、ギターがダメだと魅力半減。楽しめない。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


ペテネラ、タランタ、ソレア、そしてシギリージャ。今回はモレンテ、フォスフォリート、チョコラーテと言う3人の先達を歌う試みで、よく勉強しているのはわかります。だけど、なのであります。ペテネラとタランタはフォスフォリートかな。ソレアとシギリージャはチョコラテ?

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

結局ずっと、そればっか思ってた。もし昨日のアルフレド・ラゴスだったら。ディエゴ・デル・モラオだったら。マノロ・フランコだったら。ミゲル・アンヘル・コルテスだったら。ミゲル・オチャンドだったら。などなど。

なんて言うか、すごく後ろに下がっているギターで、歌に参加してこない。ツボを押してこない感じ。でも最後の挨拶の時、拍手してる人いっぱいいたから単に好みの問題なのかもだけど。

娘が加わったタンゴは再び、モレンテ節。ハレオ風に歌うモレンテのブレリア。音程いいし、うまいんだけどね。この伴奏だとなあ。娘さんも音程いいけど甲高い感じでちょい苦手。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

最後、ミュージシャンが挨拶の後、2階のバルコニーから歌いかけたサエタがよかった。ギターないから、か? 

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

他のギタリストで聴いてみたい歌い手ナンバーワンであります。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

でも本人が心地よいギターを弾いているのかもしれず、それなら余計なお世話なんだろうけど。

2020年9月21日月曜日

ラ・ピニョーナ『アブリル』

ラ・ピニョーナの新作『アブリル』初演はセントラル劇場で。

会場にはいつになく、踊り手たちが多い。イニェスタ・コルテス、アナ・モラーレス、パトリシア・ゲレーロ、ロサリオ・トレド、フェルナンド・ヒメネス、アンヘル・ファリーニャ、パウラ・コミトレ、ボルハ・コルテス…それだけ注目されていて人望もあるということかな。

本名ルシア・アルバレス。生まれたのはカディス県ヒメナ・デ ・ラ・フロンテーラ。17歳でセビージャに来て、へーレン財団学校で学び、タブラオでデビュー。2011年にはウニオンのコンクールで優勝し、翌年、ヘレスのフェスティバルでも自分の作品を公演しています。2016年マヌエル・リニャンの『レベルシブレ』で注目されました。今回の作品は詩人、故フアン・マヌエル・フローレスへのオマージュ。ローレ・イ・マヌエルが歌ったことでも知られる彼の詩はセビージャの人にとって特別なもの。それを、イスラエル・ガルバンのブレーンとしても知られる美術家ペドロGロメロが昨日のペラーテに続き、芸術監督をつとめています。


真っ暗になった中、幕が上がると舞台の上には観葉植物や花の鉢が並べられ、上からも葉や花がつられている。植物園の雰囲気、いや温室?

シンセサイザー?で奏でられる不安を煽るような音楽の中、ゆっくりと舞台に出てくるルシアは黒いバタ・デ ・コーラ。ギターがつまびかれる。フラメンコ曲ではなく、ブルースかロックのような感じ。

長い腕をすっと伸ばすだけで雰囲気があるなあ。見栄えのする体型なのかも。上体を後ろにぐっとそらすカンブレを多用しています。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro説明を追加

それがソレアへと繋がっていく。この音楽がいい。音楽監督はアルフレド・ラゴス。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

3人の女性によるクラシック音楽的合唱隊が美しいハーモニーを作って歌い、そこへフラメンコの声(ぺぺ・デ ・プーラ)が重なる。
Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

舞台下手でバタを脱ぎ、白いワンピースになります。

伴奏なしで歌われるソレアを踊ります。歌がない、静寂の中で踊るのもいいなあ。

サパテアードをドラムとパルマが伴奏。そこからナナへ。子守唄なのだけど、力強く歌うので寝た子も起きそう。

合唱隊が歌いながらかかとを上げたり下げたりして舞台の上をいき、それと同じ動きをするルシアが加わり、静寂の中で踊ります。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


歌い手のマイクに詩を語り、歌い手が赤い衣装を着せます。

オルガンの響きでローレ・イ・マヌエルが歌って、アントニオ・ガデスの『カルメン』でも使われた『トゥ・ミラー/セ・メ・クラバ・エン・ロス・オホス・コモ・エスパダ』を合唱隊が歌い、ブレリアへ。ぺぺがマヌエル調で熱唱。

ブーツには着替え、アレグリアス。

スカート持つことなどもあるので、赤いドレスは前あきにした方が良かったかもね。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


白地に黒の水玉、スカート部分にフレコがついた衣装で、タラント/シギリージャ/タランタっという不思議な曲に。

アンダルシアロックの父、SMASHのタラントへ。

ドラムスとシンセのサイコデリックな雰囲気、ギターの爪弾き。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

 最後は上に飾られた花たちが降りてくる中踊って終わる。


不思議な作品ではあるけれど、歌い手も発声発音がはっきりしていて歌詞がよく聞き取れたのはよかったな。会場に来ていた詩人の息子フアンミによるとほとんどがフアン・マヌエルの作品で、中に一つ彼の詩もあったそうな。ところどころ間違っているところもあったけど、といいます。

ピニョーナはマヌエラ・バルガスを彷彿とさせる姿の良さで魅せるけど、回転がちょっと弱いかな。いや下手と言うわけではないのだけど、タイミングや回った後の体の処理、もうちょっとよくなるように思う。3回くらいほろっとする瞬間あったし、うん、もう1回観たいかな。個人的には音楽がつぼでした。アルフレド、天才的!

ロックやサイコはフアン・マヌエルの生きたヒッピー時代の表現なんだろうけど、それとフラメンコの組み合わせも絶妙だし、クラシック風の合唱隊もいきてました。

美術も、照明も良かったし、この劇場は音がいいから嬉しい。

久しぶりに終演後も劇場バルで、いろんな人にあって話したり、で、ちょっとうれしい日曜日でありました。