2026年9月12日土曜日

サラ・バラス『インフィニータ』

スペインで最も人気のあるフラメンコ舞踊家、サラ・バラスの新作初演。満員御礼。

アンダルシア8県をテーマにしたプログラムで、舞踊団群舞のマントンを使ったブレリアからファンダンゴ・デ・ウエルバに始まり、黒い衣装のサラのタラント/タンゴはアルメリア、ギターソロでのマラゲーニャに続くお祭り風のベルディアーレスはマラガ、コルドバはパンタロンに乗馬用の足あて、サホネスをつけたセラーナで、サラのソロに群舞が加わり表現、ハエンはホセ・メルセが歌ったトリージャでと言った具合。ここで聞かせたソロ・デ・ピエのクリアさは健在。さすが。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

踊り自体は90年代ぽい感じというか、今風の身体表現や超絶技は登場しません。グラナダはギターソロのグラナイーナとカンテのアバンドラオ。セビージャはソレアで始まりそれがシームレスにセビジャーナスへ。最後は彼女の生まれ故郷のカディスで、アバニコとコルドベスを手にした群舞のタンギージョからサラのアレグリアス。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

オスカル・デ・ロス・レジェスの照明は綺麗だし効果的。靴音が明確に聞こえてくる音響もよく、華やかな仕上がりはさすが。一方、踊りそのものは、現在のフラメンコ舞踊のような、体幹の強さを感じさせるような、超テクニックは登場しないし、群舞も基本全員同じ振りという感じで特にこれと言って見るべきところはないような。彼女が頭角を表した90年代ぽい感じの踊りというか、今となってはちょっと時代を感じさせる。ただ、それはきっと、あの時代から今までずっと舞踊をその移り変わりも含めて見ているからそう思うのであって、サラの名前に惹かれて見にきた観客は、美しい舞台に満足して家路を辿ったことでしょう。

なお19時からはサラ・トゥリーナでアントニオ・レイ、22時半からはセントラル劇場でトレメンディータ公演がありました。
Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León




2026年9月11日金曜日

ビエナル2026開幕ガラ『エル・ムンド・ポル・モンテーラ』

 2年に1度の世界最大のフラメンコの祭典、ビエナルが開幕いたしました。

会場はマエストランサ闘牛場。闘牛場のアレーナに座席が並べられ、闘牛場の座席も4分の1くらいでしょうか、使っていたのでお客さんも結構入っていたと思います。

およそ100年前、スペイン各地の闘牛場などを舞台に“オペラ・フラメンカ”と題された公演が繰り広げられていました。オペラと題したのは、オペラが他の公演よりも税金が安かったからということですが、またオペラと名乗ることで、フラメンコを酒場の音楽ではなく文化であることを主張していたのだともいいます。

その時代。1920年代へのオマージュとしてのこのガラ公演。ビエナル監督ルイス・イバラとアンドレス・マリンが構成演出。通常なら各自でリサイタルを行うだろう(実際今回のビエナルでソロ公演を行う人もいる)、ホセ・メルセ、ホセ・デ・ラ・トマサ、アルカンヘル、トレメンディータ、スペイン歌謡系のマルティリオ、パトリシア・ゲレーロ率いるアンダルシア舞踊団、若手のマヌエル・デ・ラ・トマサ、ペレーテ、アンヘレス・トレダーノをマノロ・フランコ、アルフレド・ラゴス、ダビ・デ・アラアルと名手たちの伴奏で、というもの。全体の統一感や流れなど、一つの作品としてのまとまりは感じられなかったけど、ガラ公演だし、元々のオペラ・フラメンカもそういうものだったのかも。2時間。私は闘牛場の石の座席だったのでお尻が痛くなりました。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León


サックス演奏によるファンダンゴなどに始まり、若手3人によるカーニャ、3人それぞれのソロ、そしてバタ・デ・コーラのエドゥアルド・レアルとアンダルシア舞踊団による群舞へとt付きます。これがバックが黒、衣装も黒、照明は暗く、舞台は遥か彼方でよく見えません。うーん、こういう大きな会場ではラ・ウニオンのフェスティバルように大画面を設置して遠くからでも舞台の様子がわかるようにして欲しかったですね。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

同舞踊団監督パトリシア・ゲレーロは白い衣装でサックスによるグラナイーナを踊り、これは良かった。とにかく舞台が遠いから表情までは見えないわけですが、それでもサックスが奏でる歌をしっかり聴いての表現、間合いの良さなどの感覚は伝わってくるわけです。



舞踊団によるコロンビアーナとタンゴ。舞踊団の振り付けは、群舞らしくなく、というか、個人で踊る振りを全員で同時に踊っているというのが大部分で、フォーメーションも含め、もっと工夫があっても良いかと思ったことでありました。

エレキベースの弾き語りでトレメンディータがティエントを歌い、アルカンヘルはビダリータとグアヒーラを。マルティリオはサエタとカンシオン・ポル・ブレリア。ホセ・デ・ラ・トマサのソレア、そしてホセ・メルセのシギリージャ。いずれも伴奏はダビ・デ・アラアル。

最後は当時の人気曲だったファンダンゴ大会で幕。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

うん、志は伝わるけど、闘牛場という会場をいかしてもいないし、むしろその欠点が目立つ公演だったように思います。せっかくの機会だったんだけど、っていう感じ。これなら劇場公演で十分だったのでは?それぞれの演者も一流だけど、各自のベストなパフォーマンスだったかというと疑問も残るし。いや、一つの公演を成功させるって難しいですね。

2026年8月31日月曜日

エンリケ・ソト!追悼

 

8月27日にエンリケ・ソトが亡くなったのを知ったのも、起き抜けにのぞいたフェイスブックでだった。

ショックだった。病気してたけど、打ち勝ったんじゃなかったの?ヘレスで会った時は元気だったよね。

知り合ったのは80年代末だと思う。初めてのフェリアで迷い込んだ、パケーラやソルデーラ、カニェータなど、ものすごいメンバーでフラメンコやってたカセータで歌っていた一人がエンリケだった。

マリア・ソレアの後ろにエンリケ。ギターはピリピ。


その後、ペーニャ・エル・ボージョやチリンギートなどで顔を合わせ、仲良くなったのだと思う。

カンデラリアのフィエスタで。向かいにレメディオス・アマジャ。

ビセンテ・アミーゴのグループで歌っていたのは91年だったかな。あとジェルバブエナの舞踊団でも長らく活躍していた。

舞踊伴唱が多く、どちらかという地味な存在だったかもしれないけれど、知る人ぞ知る実力派。このソロアルバムの共演者見てみてください。




この録音してたマドリードのスタジオに連れて行ってくれたのは誰だったか。



追悼ポストに、日本のアフィシオナードたちも追悼のコメントを多く寄せていて、その飾らない人柄が偲ばれる。安らかに。

2026年8月21日金曜日

リカルド・パチョン逝く

 8月18日、プロデューサー,リカルド・パチョンが亡くなりました。89歳でした。

セビージャ出身、弁護士としてオリベッティで働いていた彼が、アンダルシア・ロックの草分け,スマッシュを皮切りにスマッシュと録音したマヌエル・モリーナとその妻(当時)ローレのローレ・イ・マヌエルやパタ・ネグラなど次々と、旧来のものとは一味違う新時代のフラメンコを次々と手がけた.だがその代表作といえば誰もがカマロンの『レジェンダ•デル・ティエンポ』をあげることだろう。

エレキギターにドラム、フルート,ベースにシタール… それまで誰もが考えなかった正統派の歌い手とロック系,ジャズ系ミュージシャンとの共演でフラメンコファンの度肝を抜いた。


私が知り合ったのはカマロンの『ソイ・ヒターノ』録音中のこと.その後,ディエゴ・カラスコのある録音に参加させてもらったり、カマロン没後のアルバム発表記念の夕食会に招待してもらったり(ファルーコ,ファルキートと一緒のテーブル!)、などもした。

フラメンコの好みや意見は一致しないことも多々あったけど、食べ物と飲み物をふんだんに用意して気分良くなってもらってのフィエスタを撮影したシリーズ『エル・アンヘル』の話とか,こぼれ話が面白かった。

素敵な奥さん、ドラマーだった息子さんを亡くし,踊り手で教授活動を行っている娘さんの手伝いで自分のアーカイブを整理,デジタル化したり、と晩年も活動していた。

安らかに。


カマロンのソイ・ヒターノ録音のスタジオへ向かう車で。手前はカルラス・ベナベン



2026年8月10日月曜日

ラ・ウニオン2026/決勝 結果

 今年のラ・ユニオンのコンクールの優勝者は以下の通りです。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


カンテ大賞(ミネーラのほか、カンテ・デ・ラス・ミーナスとそのほかのカンテをよくわかっている人)ランパラ・ミネーラ;ラファ・デル・カジ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


ミネーラ、カンティーニャで低アンダルシアのカンテ2賞、マラゲーニャの三つの部門で受賞です。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ギター部門;パブロ・バリオヌエボ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 



ムルシア出身か在住者に送られるムルシア州賞も同時受賞。なお、ラ・ウニオン出身者の同賞受賞はオフィシャルギタリストおアントニオ・ムニョス以来37年ぶりだそう。

2位はピノ・ロサーダ、若手に贈られるマリアノ・コンデ賞はパブロ・カンポに。


舞踊部門;ルシア”ラ・ブロンセ”。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas
決勝の1曲目はロマンセ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas
2曲目はタラント
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

2位はスサナ・サンチェス。


楽器部門;カルロス・ナオ、

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

この賞が制定した時の市長で今は国会議員のパコ・ベルナベから授与されました。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas
オスタリンダ・スアレスは惜しくも昨年に引き続き2位。



そのほか、セバスティアン・クルスにカルタヘネーラ、ソレアで低アンダルシアのカンテ1賞、レバンティカを歌ったイサベル・リコにその他カンテ・デ・ラス・ミーナス賞、ベルナルド・ミランダにはタランタの賞が送られました。また伴奏者を対象とした審査員特別賞はオスタリンダやダニエル・サルタレスらを伴唱したマヌ・ソトになりました。

おめでとうございます。

ビデオはこちらから



2026年8月8日土曜日

ラ・ウニオン2026/コンクール準決勝三日目

 三日目も最初は楽器部門。エストレマドゥーラ地方のサフラ出身、オスタリンダ・スアレス。

タランタとアレグリアなどの食い合わせを演奏

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

続いて続いてのロベル・エル・モレーノはマドリード出身でグラナダ在住。タラント

©︎ Paco Manzano


コルドバのベルナルド・ミランダはミネーラ、タランタ、シギリージャ、グアヒーラ

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ギター部門、ピノ・ロサーダはタランタとアレグリアス。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


再びロベルでシギリージャ。

ラケル・サラスはグラナイーナとタランタ。


©︎ Paco Manzano




エル・ペリートはカディス県パテルナ・デ・リベラ出身。ミネーラ、レバンティカ、ペテネーラとポロ。

©︎ Paco Manzano

セビージャのルシア”ラ・ブロンセ”のタラント、バタ・デ・コーラにマントンはめずらしい

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

セバスティアン・クルスはウエルバ出身。マラゲーニャ、ソレア、ミネーラ、カルタヘネーラ


再びルシアでシギリージャで準決勝三日目終了。

2026年8月7日金曜日

ラ・ウニオン2026/コンクール準決勝二日目

 準決勝二日目も楽器部門から。

ピアノのフアン・コルテス。タランタとブレリア。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

フルートのカルロス・ナオはバレンシアからの参加。レバンティカとブレリア/シギリージャ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

舞踊のダニエル・サルタレスはカディス出身。タラント
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ハエンのイスコ・エレディアはタランタ、マラゲーニャ、ミネーラ、ティエント/タンゴ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ギター部門、グラナダのルベン・カンポスはタランタとソレア。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


再びダニエルでブレリア・ポル・ソレア。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


ウエルバのアナ・ロレンソはミネーラとレバンティカ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

地元、ラ・ウニオン出身のパブロ・バリオヌエボはタランタとファルーカ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 

ブラジル出身でマドリードのタブラオで活躍中のリシ・エスファイはタラント

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


コルドバのラファ・エル・カジはマラゲーニャ、タランタ、カンティーニャとミネーラ
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

最後はリシのアレグリアス、バタ・デ・コーラとマントン。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


ビデオはこちら

今日は最終日、全員のパフォーマンスが終わった後、翌日の決勝進出者が公式webで発表されます。だいたい終演が1時過ぎなので発表は2時くらいかな?日本時間では朝9時くらいではないかと思います。