サラ・トゥリーナへセビージャ・ギター祭の公演を観に。
前半は古楽を得意とするパブロ・サピコ。『最初のスパニッシュギター』と題して、バロックギターで17世紀の曲、民謡に想を得たガスパール・サンスの曲などを中心に。ラスゲアードを、ギターホールより上でするのが面白い。リズム的にもフラメンコと共通するところもあったりで、楽しく聴けました。
スペイン、セビージャ在住フラメンコ研究家による最新のフラメンコ情報
サラ・トゥリーナへセビージャ・ギター祭の公演を観に。
前半は古楽を得意とするパブロ・サピコ。『最初のスパニッシュギター』と題して、バロックギターで17世紀の曲、民謡に想を得たガスパール・サンスの曲などを中心に。ラスゲアードを、ギターホールより上でするのが面白い。リズム的にもフラメンコと共通するところもあったりで、楽しく聴けました。
カディスから帰ってきて(電車で1時間半だから日本なら通勤圏内ですな)夜はペーニャへ。9月に公演は再開されていたのだけど、私はビエナルにかかりっきりだったので全く行けず、で久しぶりのペーニャ。
この日はセビージャ県のフラメンコのペーニャ公演元々トレメンディータの出演が予定されていたのだけど、諸事情により変更。ヘレスのフェリパ・デル・モレーノに。1980年ヘレス生まれというから46歳。舞踊公演などで聴いたことは会ったけど彼女のソロ公演を観るのはこれが初めて。
始まりはトナー。うまい。
芸術の秋でございます。セビージャもビエナルが終わってもギター祭が始まり、カハソル劇場のフラメンコ公演シリーズも再開、ペーニャも通常公演が始まるなど、フラメンコ好きは休む暇もありません。
23日金曜日もギター祭ではヘロニモ・マジャ、カハソル劇場ではマラ・レイ、ペーニャ・トーレス・マカレーナではピラール・オルテガと公演が目白押し。だったのですが、私は電車に乗ってカディスへ。
お目当ては今年初めて開催されるカディス・ギター祭でのジョニ・ヒメネス。セビージャのギター祭でも11月5日に公演するのですが、その日私はセビージャにいない、でも聴きたい、ということで、カディスへ遠征することにしたのでしたのであります。
ジョニ・ヒメネスは1990年マドリード生まれ。歌い手ラファエル・ファリーナは大叔父、父もギタリストで、5歳からギターをはじめ、マドリードのタブラオや各地のフェスティバルで、歌伴奏、舞踊伴奏で活躍。2024年ラ・ウニオンのコンクールで優勝し、その後はソロでの仕事も増えたよう。
彼の名前は知っていたけど初めて生でソロを聴いたのはラ・ウニオンの準決勝だったのだけど、その繊細なトーケに、深い感銘を受けたのでありました。
この日はアルハンブラ宮殿風というか、アラブ風の装飾の美しいカシノ・ガディターノでの無料公演、それもアントニオ・レジェスとフアン・パリージャがゲスト出演ということでもちろん会場は満員。
最初はロンデーニャ。パコ・デ・ルシアのロンデーニャのように始まるのだけどその後の展開は彼のオリジナル、パコにインスパイアされて自分の世界を広げていく、という感じ。
続いてソレア。美しく心に染み込んでいくようなメロディ。
タンギージョではフアン・パリージャも参加。新曲のようですが、フアンの演奏もかつてのホアキン・コルテス時代から進化していて、フラメンコかつ現代的でかっこいい。
アントニオ・レジェスはマラゲーニャを。歌をたてつつ、キラリと光るようなジョニの伴奏も素晴らしかったけど、アントニオのマラゲーニャも凄かった。
アントニオはカマロンの歌詞を歌うことが多いのだけど、カマロンだけでなくアントニオ・マイレーナやマノロ・カラコールの影響も受けていると思うのだけど、こんなふうにストレートに伝統的なフラメンコを丁寧に歌っていくと、改めて素晴らしいと思うのであります。
ソロでのタランタに続くアレグリアスは三人で。これがまた良かった。後で聞いたところによるとジョニとフアンで曲は出来ているのだけどアントニオはぶっつけ本番だったそうだけど、そこは経験豊富なだけあって、うまく繋がり、まるで練習してきたかのよう。
最後のブレリアもかっこいい。
ジョニが椅子に足かけているの、なんか昔風で懐かしい。
ジョニ、アントニオ、フアン。
皆、一人でもフラメンコだけど1+1+1は3でなく100にも200にもなるね。
いいフラメンコ聴くと元気になります
長年に渡る小島章司との共演で日本でもおなじみのチクエロがセビージャ、ギター祭に初登場。会場はカサ・ファビオラ。14世紀に建てられたものを長年にわたって改築してきた館で、クリスティーナ・へーレン財団フラメンコ学校創立時の校舎として使われたもの。現在は19世紀末のフラメンコ草創期の風俗などを描いた作品なども多い、マリアノ・ベルベルのコレクションを展示する美術館となっているのですが、そのパティオで行われました。マイクなし、共演者なし、ギター一本で聴衆に対峙するのはこのフェスティバルの特徴ですが、このパティオは音の抜けも良く、まっすぐな音を楽しむことができました。
インスタグラムでよく広告が出てきてクリックしたらフォーク/民謡系とあり、入場料10ユーロと安いのにお客さんがまばらだったので思わず購入。ネットですら一度も聴いた事もないなーんにも知らないグループの公演に行こうと決めたのはビエナル終わりで外出癖がついていたこともあるかも。
で、行ってみたら、昔からの友人には会うわ、ビエナルでもプエブラでも会った友人には会うわ、と、年齢層は高いけど、七割は入っていました。地元セビージャのグループで、友人もメンバーの知り合いだったし、友達がきてたのかな。10ユーロという手頃な価格で来やすいしね。
folkは伝統音楽や民謡にインスパイアされた今の音楽で、このグループもセビージャやウエルバやカディスなどアンダルシア、果ては北スペイン、ガリシアの民謡や子供の遊び歌などをモチーフに、ギター(アコースティック、エレキ、ウクレレ)、ドラムス、パーカッション、サックス(アルト、ソプラノ、フルート)などの楽器で演奏し、ジャズやポップなどの感じで歌い継いでいきます。歌うのは民謡由来のものだけではなく南北アメリカの曲もあれば、ビセンテ・アミーゴ『ポエタ』の下になった詩の作者、アルベルティの詩に彼らが曲をつけたものなども。フラメンコと関係のある曲も、例えば、アスナルカサルのブランコの歌はバンベーラとルーツは同じだし、後半、エレキギターえソレアを演奏したりも。またサックスでウエルバ、アロスノのファンダンゴ・パラオ(今年の本番のビデオ、を演奏したけど、これ、昔、イスラエル・ガルバンが『フラコメン』で使っていたんですよね。後半サックス奏者が吹いたカディス県ガストールのガイタもイスラエル『アレナ』で使ってました。
グループはボーカルとギター、サックス、ドラムスの四人ですが、サポートメンバーでベース奏者やブラジルやアフリカ人のパーカッション奏者も加わり、音に厚みも。
いやいや想像以上に楽しかったです。が、同時に、もっとオリジナルの民謡をも聴いてみたいという気に。
フラメンコを知って、知識経験を深めていくとそのそばにあるものにもどんどん興味が広がって世界が広がっていくのも楽しい事であります。
オランダ出身、1999年からセビージャ在住というフラメンコ・ギタリスト、ティノ・バン・デル・スマンがセビージャ、ギター祭、美術館での公演に登場。
当初、ヘレスの若手、マルコ・デ・シルビアの出演が予定されていたのですが、アルティスタ側の都合で出演できなくなり、急遽、声がかかったよう。それにも関わらず、マイクなし、共演者なし、ギター一本でのリサイタル、見事にやり遂げました。
セビージャ美術館の2階、近代絵画、19世紀末から20世紀初めの風俗などを描いたゴンサロ・ビルバオの美しい絵が並ぶ部屋に椅子が並んでコンサート会場となっていました。
1曲目はグアヒーラ。南方のけだるい感じとグラシアがよく表現されている、グアヒーラらしいグアヒーラ。2曲目のタランタは舞踊作品のためのような、様々な顔を見せて思いがけない展開をしていきまたタランタに戻ってくるというかんじ。面白い。どちらも独創的で、他の誰とも違うのがいい。
ブレリア、そしてラファエル・リケーニのガロティンが大好きだといいそのリケーニに捧げたガロティン。多分、彼が言っているリケーニのガロティンはたぶんこれのことで私も大好きなんだけど、全く似た感じはない。個性を出そうとするあまりガロティンのもともとのキャラクターとは違うところに行ってしまっているようなところもあるように思われました。タンゴで、フアニート・バルデラマのヒット曲『イミグランテス』をアレンジしたのはいい感じ。本人が「未来のブレリア」という、ブレリアには使わないコードを使ったというのだけど、うーん、昔人な私にはちょっと難しかったかも。グラナイーナ、そしてグラナドスのマラゲーニャをアレンジしたりしながらいくマラゲーニャ。アレグリアス、そして最後はゴッホを扱った作品のために作曲したというブレリア。ここではヘレスやセビージャ、モロン伝統のモチーフを組み合わせたストレートな感じで聞かせ盛り上がって幕。
曲間のトークも上手だし、さすがソロアルバムも複数リリースしている実力派だけあります。
普段はタブラオなどで舞踊伴奏を多くしているイメージですが、ソロでこれだけ聴かせるのはすごい。また機会があったら出かけて行きたいと思います。
セビージャのアルカサルで10月16日に初演された『ファウノ』、17日の公演は開演間も無く降り出した雨のため中止となりました。
これはマヌエル・マルビソンというセビージャ出身の作曲家が作曲、脚本を書いた作品で、マラガ交響楽団、セルヒオ・ベルナル舞踊団による、クラシック音楽、オペラとフラメンコ、スペイン舞踊による大作。16日の初演は無事開催されたものの私が出かけた2日目は午後から雨が降ったり止んだりの空模様で、開演前に雨がぱらついたものの、予報では夕立、ということで30分遅れで開演のはずが、オーケストラと合唱団が舞台に座って、いよいよという瞬間に強い雨が。慌てて舞台を後にして、マイクなしで催行しようとしたものの、舞台の上に水たまりができている状態で、結局中止に。残念だけど、挨拶に出たセルヒオが言うように、踊り手たちが怪我をして将来を台無しにしかねない、と言うことで中止に。
オーケストラ、舞踊団、合唱団などのスケジュールを調整するのが難しいと言うことで、次回の公演がいつになるかはわからないとのこと。残念。
ちなみにファウノを踊るセルヒオのほか、スペイン国立バレエ団第一舞踊手のホセ・マヌエル・ベニテス、ソリストのミリアム・メンドーサらも出演して、オペラ歌手とともに四人の主要な役を踊ると言う構成でした。