2026年10月23日金曜日

セビージャ・ギター祭/チクエロ

 長年に渡る小島章司との共演で日本でもおなじみのチクエロがセビージャ、ギター祭に初登場。会場はカサ・ファビオラ。14世紀に建てられたものを長年にわたって改築してきた館で、クリスティーナ・へーレン財団フラメンコ学校創立時の校舎として使われたもの。現在は19世紀末のフラメンコ草創期の風俗などを描いた作品なども多い、マリアノ・ベルベルのコレクションを展示する美術館となっているのですが、そのパティオで行われました。マイクなし、共演者なし、ギター一本で聴衆に対峙するのはこのフェスティバルの特徴ですが、このパティオは音の抜けも良く、まっすぐな音を楽しむことができました。


グラナイーナに始まり、雄弁なソレア、舞踊でのシレンシオに想を得てゆっくりと始まるアレグリアスは視覚的な感じ。ブレリアにはヘレスのモチーフが見え隠れし、落ち着いたタランタ、軽快なタンギージョ、そして独創的なコロンビアーナと7曲で1時間のリサイタル。それぞれの曲を深く理解した上でそのコンパスの中で創成されていく彼独自の世界。
どこか懐かしいようなメロディが、と思うのは彼の舞踊伴奏歌伴奏を多く聴いていることもあるかもしれません。終演後のおしゃべりで、タンギージョはマイテ・マルティンの録音で使っているとか、と教えてくれました。また、マイクなしで共演者なし1時間のリサイタルというのは生まれて初めてだったそうで、会場に合わせて用意したプログラムも多少変更したのだとか。

耳に残るメロディをたくさん作り続け、今もどんどん新曲が生まれているのはさすがです。細かな音を繋いで華やかに繰り広げていくその才能、舞踊や歌の後ろでだけでなく、ソロでももっともっと聴きたいですね。





2026年10月22日木曜日

コントラダンサ『トルナビアへ』

 インスタグラムでよく広告が出てきてクリックしたらフォーク/民謡系とあり、入場料10ユーロと安いのにお客さんがまばらだったので思わず購入。ネットですら一度も聴いた事もないなーんにも知らないグループの公演に行こうと決めたのはビエナル終わりで外出癖がついていたこともあるかも。

で、行ってみたら、昔からの友人には会うわ、ビエナルでもプエブラでも会った友人には会うわ、と、年齢層は高いけど、七割は入っていました。地元セビージャのグループで、友人もメンバーの知り合いだったし、友達がきてたのかな。10ユーロという手頃な価格で来やすいしね。

folkは伝統音楽や民謡にインスパイアされた今の音楽で、このグループもセビージャやウエルバやカディスなどアンダルシア、果ては北スペイン、ガリシアの民謡や子供の遊び歌などをモチーフに、ギター(アコースティック、エレキ、ウクレレ)、ドラムス、パーカッション、サックス(アルト、ソプラノ、フルート)などの楽器で演奏し、ジャズやポップなどの感じで歌い継いでいきます。歌うのは民謡由来のものだけではなく南北アメリカの曲もあれば、ビセンテ・アミーゴ『ポエタ』の下になった詩の作者、アルベルティの詩に彼らが曲をつけたものなども。フラメンコと関係のある曲も、例えば、アスナルカサルのブランコの歌はバンベーラとルーツは同じだし、後半、エレキギターえソレアを演奏したりも。またサックスでウエルバ、アロスノのファンダンゴ・パラオ(今年の本番のビデオ、を演奏したけど、これ、昔、イスラエル・ガルバンが『フラコメン』で使っていたんですよね。後半サックス奏者が吹いたカディス県ガストールのガイタもイスラエル『アレナ』で使ってました。

グループはボーカルとギター、サックス、ドラムスの四人ですが、サポートメンバーでベース奏者やブラジルやアフリカ人のパーカッション奏者も加わり、音に厚みも。



いやいや想像以上に楽しかったです。が、同時に、もっとオリジナルの民謡をも聴いてみたいという気に。

フラメンコを知って、知識経験を深めていくとそのそばにあるものにもどんどん興味が広がって世界が広がっていくのも楽しい事であります。


2026年10月21日水曜日

セビージャ・ギター祭/ティノ・バン・デル・スマン 

オランダ出身、1999年からセビージャ在住というフラメンコ・ギタリスト、ティノ・バン・デル・スマンがセビージャ、ギター祭、美術館での公演に登場。



当初、ヘレスの若手、マルコ・デ・シルビアの出演が予定されていたのですが、アルティスタ側の都合で出演できなくなり、急遽、声がかかったよう。それにも関わらず、マイクなし、共演者なし、ギター一本でのリサイタル、見事にやり遂げました。

セビージャ美術館の2階、近代絵画、19世紀末から20世紀初めの風俗などを描いたゴンサロ・ビルバオの美しい絵が並ぶ部屋に椅子が並んでコンサート会場となっていました。



1曲目はグアヒーラ。南方のけだるい感じとグラシアがよく表現されている、グアヒーラらしいグアヒーラ。2曲目のタランタは舞踊作品のためのような、様々な顔を見せて思いがけない展開をしていきまたタランタに戻ってくるというかんじ。面白い。どちらも独創的で、他の誰とも違うのがいい。




ブレリア、そしてラファエル・リケーニのガロティンが大好きだといいそのリケーニに捧げたガロティン。多分、彼が言っているリケーニのガロティンはたぶんこれのことで私も大好きなんだけど、全く似た感じはない。個性を出そうとするあまりガロティンのもともとのキャラクターとは違うところに行ってしまっているようなところもあるように思われました。タンゴで、フアニート・バルデラマのヒット曲『イミグランテス』をアレンジしたのはいい感じ。本人が「未来のブレリア」という、ブレリアには使わないコードを使ったというのだけど、うーん、昔人な私にはちょっと難しかったかも。グラナイーナ、そしてグラナドスのマラゲーニャをアレンジしたりしながらいくマラゲーニャ。アレグリアス、そして最後はゴッホを扱った作品のために作曲したというブレリア。ここではヘレスやセビージャ、モロン伝統のモチーフを組み合わせたストレートな感じで聞かせ盛り上がって幕。

曲間のトークも上手だし、さすがソロアルバムも複数リリースしている実力派だけあります。

普段はタブラオなどで舞踊伴奏を多くしているイメージですが、ソロでこれだけ聴かせるのはすごい。また機会があったら出かけて行きたいと思います。




2026年10月18日日曜日

『ファウノ』公演 雨で中止

 セビージャのアルカサルで10月16日に初演された『ファウノ』、17日の公演は開演間も無く降り出した雨のため中止となりました。



これはマヌエル・マルビソンというセビージャ出身の作曲家が作曲、脚本を書いた作品で、マラガ交響楽団、セルヒオ・ベルナル舞踊団による、クラシック音楽、オペラとフラメンコ、スペイン舞踊による大作。16日の初演は無事開催されたものの私が出かけた2日目は午後から雨が降ったり止んだりの空模様で、開演前に雨がぱらついたものの、予報では夕立、ということで30分遅れで開演のはずが、オーケストラと合唱団が舞台に座って、いよいよという瞬間に強い雨が。慌てて舞台を後にして、マイクなしで催行しようとしたものの、舞台の上に水たまりができている状態で、結局中止に。残念だけど、挨拶に出たセルヒオが言うように、踊り手たちが怪我をして将来を台無しにしかねない、と言うことで中止に。





オーケストラ、舞踊団、合唱団などのスケジュールを調整するのが難しいと言うことで、次回の公演がいつになるかはわからないとのこと。残念。

ちなみにファウノを踊るセルヒオのほか、スペイン国立バレエ団第一舞踊手のホセ・マヌエル・ベニテス、ソリストのミリアム・メンドーサらも出演して、オペラ歌手とともに四人の主要な役を踊ると言う構成でした。



なお、この公演、ラファエル・エレディア、モイくんも和太鼓奏者として出演していたので余計に残念。

2026年10月17日土曜日

ビエナル ヒラルディージョ賞


ビエナルの総括記者会見が行われました。72公演中44公演が満員札止め。全体で92%という集客を達成。入場券収入も新記録だったそう。

なおそれに先駆け、専門家ら審査員の選定によるヒラルディージョ賞も発表されました。

 受賞者は以下の通り

カンテ;サンドラ・カラスコ

バイレ;オルガ・ペリセ

トーケ;ホセ・フェルミン・フェルナンデスとアレハンドロ・ウルタード

インストルメンタル;カニートとラウル・ロドリゲス

最優秀作品;ダビ・コリア『バベル、トーレ・ビバ』

新人賞;ルシア・ラ・ブロンセ

魔法の瞬間;エスペランサ・フェルナンデス、ホセ・バレンシア、ドゥケンデ、『ア・カネラ・イ・クラボ』のシギリージャ

審査員特別賞カンテ;カルメン・リナーレス

審査員特別賞バイレ;イサベル・バジョン

審査員特別賞ギター;カニサーレス





 







2026年10月16日金曜日

ヘスス・カルモナ『レペルトリオ・フラメンコ』

 カハソルソルのフエベス・フラメンコが夏休みを経て再開。トップバッターはヘスス・カルモナ。

薄明かりの中無伴奏で一人で踊り始める。演出だとわかるけど観客としてはちゃんと観たい。靴音でなんとなくわかるっていうんじゃなく、表情や体全体の動きがもう少しちゃんと掴めるくらいの明るさにしてよ、ってちょっとイラつく。そこから三人の歌い手とギタリストが登場してタラント。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol

無伴奏でのカンテソロ3曲をへて、カンティーニャ。赤い短いジャケットはどこかマイケル・ジャクソンのスリラーを思い出させる。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol

フアン・カンパージョのギターソロ、ロンデーニャの後はソレア。マントン柄のジャンパー、これ、だいぶ前に他の作品でも着てたよね。

スーパーテクニックの、とにかくうまい踊り手だし、だからといって技術を見せようとしているわけでなく、歌をちゃんと聴いてるし、彼の自然な表現にその技術が使われているという感じで、嫌味はない。凄みさえ感じさせる回転などその最たるものかも。また曲によって、足らんとの抑制、カンティーニャの上昇感、ソレアのしっとりした感じ。きちんと曲のキャラクターを踊り分けているのもさすが。これはほんと、みんな見習ってほしい。

文句の付け所がない、と言いたいところなんだけど、実は衣装がイマイチ。パンタロンはもう少し細めの方がいいし、カンティーニャやソレアのジャケットの長さが中途半端。最初のタラントでは横をつまんでシャツを外に出してしまっているのに前だけパンタロンの中だったのが変だったし、ジャケットの後ろの飾りのようなベルトも意味わからない。なくていい。普通にシャツとパンタロンで踊ってくれた方が私には良かったかも。まあ、個人的趣味レベルの問題と言われればそれまでなんだけど、後私の大好物である、コンパスの微妙な間合いを遊ぶというのもなかったような。友達はみんな大満足だったんだけど、なんかちょっと私は欲求不満。

今日の私のオレ!は完璧に踊りと歌をサポートして輝いていたいたフアン・カンパージョや、ヘスス・コルバチョ(カンティーニャにセビジャーナス入れてきたりかなり遊んでるかと思うと横で歌うマヌエル・デ・ニナのソレアの微妙な節回しなどに素直にオレしてただけ得なく、ソロで歌ったミロンガの細やかな節回しの凄さ)により傾いていたかも。マヌエル・デ・ニナもいい歌い手になってきましたね。ちゃんと勉強してるのがわかる。ジョナタン・レジェスも時にハッとさせるフラメンコ性があって、やっぱミュージシャンがいいと見応えがあるなあ、と思ったことでした。

©︎ Remedios Malavárez/Fundación Cajasol




2026年10月15日木曜日

第3回第3回カハソル財団フラメンコ賞受賞式

©︎ Fundación Cajasol

カハソル財団がフラメンコの功労者に送るフラメンコ賞の授賞式。今年はギターがラファエル・リケーニ、舞踊がマヌエラ・カラスコ、歌がカルメン・リナーレス、と誰もが納得の面々が受賞。出席者は女性はロングドレス、男性はタキシード着用というフォーマルなもので式後に夕食会もあるというもの。

その授賞式の前に、若手の公演がありました。

幕開きはダビ・デ・アラアル。リケーニやマノロ・サンルーカルの影響も感じられるけど他の若手とは全く違う個性で観客を魅了。演奏後、最前列に座っていたリケーニが立ち上がって拍手していたのが印象的です。 


ラ・ピニョーナはダビ・カロの伴奏でファルーカ。これまた素晴らしく、ファルーカの典型的な振りやポーズはほぼ使わず、でもファルーカ以外のなにものでもないという踊り。品格があり、重みがあり、全ての動きに意味がある。

©︎ Fundación Cajasol

歌は帽子がトレードマークのぺレテ。ビエナルの開幕ガラに出演するなど最近人気?の彼。ぺぺ・マルチェーナ風?の裏声のような高い音も出す。上手いのは上手いんだけどなんか表面的というか、技術が目立って彼自身が伝えたいことが(あるのかな)見えてこない感。もうちょっとちゃんときくと違うのかな。

       

最後にはへーレン財団からルイサ・パリシオがグアヒーラをバタ・デ・コーラで。伴奏に、マルコ・デ・シルビア、カルキ。歌い手は👩三人。バタ扱いはさすがなんだけど、ゴジェスカ風?な衣装がグアヒーラという曲には合わないような。
©︎ Fundación Cajasol
©︎ Fundación Cajasol

そしてようやく受賞式。受賞者の皆様おめでとうございます。

夕食会はたくさんのアルティスタたちが参加しており、久しぶりな人とも会話が弾み楽しい夜となりました。