2021年5月31日月曜日

ラ・ウニオン、カンテ・デ・ラス・ミーナス祭プログラム

昨年はオンラインで、かつてのコンクールの様子などを配信するのみとなった、ムルシアはラ・ウニオンのカンテ・デ・ラス・ミーナス祭。
今年は開催されます。


 ただし、感染を考慮して、会場はいつもの旧公設市場、カンテの殿堂ではなく、そのすぐ裏にある、ラ・マキニスタ・デ・レバンテという、昔の鉱山会社跡、つまり野外の特設舞台での開催となります。

また60周年ということで、歴代のランパラ・ミネーラ受賞者のリサイタルも、公設市場に続く散歩道で開催されるとのこと。

なお、コンクールは予選が各地で開催されますが、準決勝、決勝の模様は配信されるので、興味のある方はWEBに注目。また、上記の過去受賞者リサイタルも中継される可能性が高いようなので、こちらも間際にチェックしてみるといいかもしれません。

ラ・ウニオンはセビージャからだとバスで9時間(グラナダでの休憩なども込みですが)かかるし、ひたすら遠いのだけど(マドリーからだと電車で4時間あまり)、配信のおかげで観ることができるのはうれしいことですね。


◇第60回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

7/29(木)22時 開会宣言/2019年優勝者ガラ

[出]〈c〉マティアス・ロペス、〈b〉オルガ・ジョレン、〈g〉ホセ・フェルミン・フェルナンデス、〈perc〉アレハンドロ・ソラーノ

7/30(金)23時『アレント』

[出]〈b〉アントニオ・ナハーロ舞踊団

7/31(土)23時

[出]歌手/ビクトル・マヌエル

8/1(日)23時

[出]〈violin〉パコ・モンタルボ

8/2(月)23時

[出]〈c〉ミゲル・ポベーダ

8/3(火)23時『イデンティダ』

[出]〈piano〉ドランテス、協力〈c〉ペドロ・エル・グラナイーノ

8/4(水)~6(金)22時

コンクール準決勝

8/7(土)

コンクール決勝、受賞式

[場]ムルシア ラ・ウニオン ラ・マキニスタ・デ・レバンテ


7/29(木)

[出]〈c〉マリア・ホセ・カラスコ、レジェス・カラスコ

7/30(金)

[出]〈c〉マヌエル・クエバス

7/31(土)

[出]〈c〉フアン・ピニージャ

8/1(日)

[出]〈c〉アントニア・コントレーラス

8/2(月)

[出]〈c〉セリア・ロメーロ

8/5(木)

[出]〈c〉マリア・ホセ・ペレス

8/6(金)

[出]〈c〉ミゲル・デ・テナ

[場]

[問]https://festivalcantedelasminas.org

カディス・フラメンコ

カディスの夏の木曜日のフラメンコが復活。

書きには公演のみ記しましたが、その前にパネルディスカッションや講演があります。

夜中まであるから宿を取って、フラメンコ満喫して翌日は海?




◇カディス・フラメンコ

7/15(木)

[出]22時10分〈c〉レラ・ソト、〈g〉アントニオ・デ・ラ・マレーナ、23時20分〈c〉カルメン・ハラ、〈g〉アントニオ・カリオン、01時30分〈c〉マリア・テレモート、〈g〉ノノ・ヘロ

7/29(木)

[出]22時10分〈c〉クリスティアン・デ・モレ、23時20分〈〈c〉〉ロメロマルティン、0時30分ロス・ボルブレ、〈g〉ラウル・カンティサノ、〈b〉アウロラ・ゴンサレス

8/5(木)

[出]22時10分〈c〉エンカルナ・アニージョ、〈g〉ピトゥケテ、23時20分〈c〉ホセ・バレンシア、〈g〉フアン・レケーナ、0時30分〈c〉イスラエル・フェルナンデス、〈g〉ルベン・ララ

8/12(木)

[出]22時10分〈c〉ランカピーノ、〈g〉パコ・レオン、23時20分〈c〉フアナ・ラ・デル・ピパ、〈g〉マヌエル・バレンシア、0時30分〈c〉フアン・ビジャール、〈g〉マヌエル・ヘロ

[場]カディス バルアルテ・デ・カンデラリア

[問]https://cadizflamenco.com

2021年5月29日土曜日

第7回パコ・デ・ルシア ギターの出会い



パコ・デ・ルシアの生まれ故郷である港町、アルヘシラスでのフェスティバルは7回目。

フラメンコあり、スペイン歌謡あり、クラシックあり、イージーリスニング?あり、なプログラム。パコゆかりと言えるの公演が少なくなりました。パコのグループにいたタナとかつて日本でマノロ・サンルーカルとともに三羽烏と言われた(古い!)セラニートくらい? まあ、同じメンバーで毎年ってわけにもいかないし、仕方ないんだろうけど。

ピアニストとバイオリンはアルヘシラス出身の人らしい。

◇第7回パコ・デ・ルシア、ギターの出会い

7/1(木)22時15分

[出]〈piano〉ディエゴ・バルディビア

7/2(金)22時15分

[出]〈c〉レメディオス・アマジャ、ラ・タナ、エル・プリリ、〈g〉エル・ペルラ、ドミンゴ・ルビチ

7/3(土)22時15分

[出]歌手/パシオン・ベガ

7/4(日)22時15分

[出]〈g〉セラニート、〈b〉ダビ・モラーレス

7/5(月)22時15分

[出]〈c〉ホセ・メルセ、〈violin〉レヒナ・ラサ

7/6(火)22時15分

[出]クラシック7弦ギター/ヤマンドゥ・コスタ

[場]カディス県アルヘシラス

[問]前売り https://www.tickentradas.com/fest/vii-encuentro-internacional-paco-de-lucia



2021年5月28日金曜日

セビージャ県パラーダスのフラメンコ週間



セビージャ県パラーダスの町のフラメンコ週間、今年は歌い手アントニオ・レジェスに捧げられます。

そのアントニオは最終日にディエゴ・デ・モラオの伴奏で出演しますが、その他にもカプージョにマリア・テレモート、イスラエル・フェルナンデスなど、ビエナルも真っ青な?充実のプログラムです。


◇第30回パラーダス・フラメンコ文化週間

6/7(月)

[出]〈c〉カプージョ・デ・ヘレス、伴奏〈g〉ニーニョ・ヘロ

6/8(火)

[出]〈c〉アナベル・バレンシア、伴奏〈g〉クーロ・バルガス、〈c〉マリア・テレモート、伴奏〈g〉ノノ・ヘロ

6/9(水)

[出]〈c〉ホセ・デ・ラ・トマサ、マヌエル・デ・ラ・トマサ、伴奏〈g〉アントニオ・カリオン

6/10(木)

[出]〈c〉イスラエル・フェルナンデス、伴奏〈g〉ルベン・ララ、〈c〉エル・ボレーコ、伴奏〈g〉アントニオ・ガルシア

6/11(金)

[出]〈b〉カルペータ

6/12(土)

[出]〈c〉トマス・デ・ペラーテ、伴奏〈g〉パコ・デ・アンパーロ、〈c〉レメディオス・レジェス、伴奏〈g〉ノノ・レジェス、〈c〉アントニオ・レジェス、伴奏〈g〉ディエゴ・デル・モラオ

[場]セビージャ県パラーダス 

[問]http://www.paradas.es



 

2021年5月25日火曜日

ヘレスのフェスティバル2021総括

とても特別な年でした。

25周年。本当なら大々的にお祝いしたはずです。

クルシージョ数も参加者も例年より大幅に少なく、公演数も減少していても、そのクオリティは例年に劣らず、素晴らしいものでした。

特に強い印象に残った舞踊作品は、

シンプルでよく整理された舞台でヘレスのアルティスタだけで最高のフラメンコを見せてくれたアンドレス・ペーニャ『ラス・カンパナス・デ・サンティアゴ』。シンプルに見せるための裏の努力が計り知れない。素晴らしい公演でした。

©︎Javier Fergo Festival de Jerez

パリ初演、ビエナルで作品賞を受賞した、どこのオペラハウスでも上演できるようなクオリティの高い作品ダビ・コリア&ダビ・ラゴス『ファンダンゴ!』。ラゴス兄弟のフラメンコ性、音楽性とコリアをはじめとする高い技術のダンサーたちの表現力が見事に融合。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez

ビエナルで初演、でもヘレスでの公演の方がより素晴らしかったロシオ・モリーナ『アル・フォンド・リエラ』。伴奏はギターだけで歌はなく、でも最高にフラメンコな作品。ロシオの中にあるフラメンコ舞踊の情報量の多さがわかるというもの。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez

12月セビージャで初演後、改訂し、わかりやすく見やすくなったヘスース・カルモナ『エル・サルト』はとにかく、へスースをはじめ男性ダンサーたちの超絶技と美しい形で、メッセージを伝えてくれる。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez

と、4枚の写真を見てもわかるように、全体的に黒。暗いイメージのものが多かったように思います。時勢柄、なのかもしれません。外出禁止期間はもとより、公演もクラスも思うようにできない中、アルティスタたちの気持ちが沈んだこととも無関係ではないでしょう。自己の奥底と対峙した人もいれば、そうするうちに自分の希望を発見した人もいるでしょう。

また、通常よりも録音を使った作品も多かったように思います。これも、思うように集まれなかった時勢の反映のように思います。また反対にマドリード、セビージャ、

舞踊の表現はより自由になり、伝統的なフラメンコにはなかったような表現がどんどん出ています。イスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナの活躍が、若手を刺激していることは確実です。枠にとらわれない表現が増えています。

音楽面ではノイズも含めたコンピューター音楽がかなり市民権を得てきているという感じです。以前は珍しかったものも、カホンのように当たり前の楽器の一つになっていくのかもしれません。またビデオを効果的に使っているものもありました。

25年。クルシージョの教授陣もだいぶ変わりました。マティルデ・コラル、ビクトリア・エウヘニア、ホセ・グラネーロ、メルチェ・エスメラルダらから、初期のフェスティバルのクラスに参加していたロシオ・モリーナやマルコ・フローレスらへ。初期から続いているのはハビエル・ラトーレ、今年は中止になったけどアンヘリータ・ゴメスぐらいかな?

フェスティバルの舞台に立つ顔ぶれもだいぶ変わってきました。マノレーテ、グイト、メルチェらは舞台からは引退。マリア・パヘスやカナーレス、サラ・バラス、ジェルバブエナらはいつの間にかベテランとなり、また地元のホアキン・グリロ、アントニオ・エル・ピパ(今年は昨年度の賞の授賞式で踊った)、マリア・デル・マル・モレーノ、アンドレス・ペーニャ、メルセデス・ルイス(1年目はプロ対象クラスに出席、今年は妊娠で公演中止)らも頑張っています。エステベス&パーニョス、マヌエル・リニャン、マルコ・フローレス、モネータ、アナ・モラーレス、エドゥアルド・ゲレロ、パトリシア・ゲレーロなど、小劇場からビジャマルタへ、舞踊団メンバーから単独公演へ、と皆それぞれ成長してきました。

また今回で言えばホセ・マルドナード、ホセ・マヌエル・アルバレス、フロレンシア・オスら、他にも昨年の新人賞パウラ・コミトレなど、意欲的な新人たちがチャンスをものにしています。

見続けているとアーティストたちの成長だけでなく、フラメンコ/スペイン舞踊の移り変わりも見えてきます。パフォーマンスだけでなく、作品としての仕上がりもアーティストの評価につながるようになり、個人としてのパフォーマンスはよくとも作品作りが苦手なアーティストの出演機会は減少しているように思います。フェスティバル主導のガラ公演などでそういうアーティストも出演できるようにしてほしいと切に願います。


去年、フェスティバルの頃から感染の話が始まっていました。中国からの参加者はキャンセルしたとか、後半のイタリアからの参加者もキャンセルしたとか。スタジオに消毒液があったり。どうにか無事フェスティバルは終了。そのすぐ1週間後だったでしょうか、厳しい外出規制が始まったのは。それもどうにか峠を越え、7月ごろから各地での公演も再開され始め、セビージャのビエナルも無事開催できたのですが、秋にまた波がくるなどもあって、通常2月のヘレスのフェスティバルも12月に、5月への延期が発表されました。すでに8月に発表されていたクルシージョの予定も組みなおし、この時点ですでにいくつかのクラスがなくなりました。

欧州内でも国境を越えての移動が禁止されるなどの事態もあり、開催が危ぶまれるのでは、と思われる時期もありましたが、ワクチン接種が進むにつれ事態は徐々に落ち着き、国境越えるためにPCR検査が必要などの条件はあるものの欧州からの参加は可能になりました。

とはいえ、大多数の参加者が海外からというフェスティバル。逆境下での開催にはさまざまな困難があったことは確実でしょう。それでも開催に漕ぎつけたのは、フェスティバル監督のイサマイ・ベナベンテをはじめ多くのスタッフの苦労の賜物でしょう。心から感謝です。


なお、24日、ヘレスの新聞ディアリオ・デ・ヘレス(ヘレス日報、ですな)の読者が選ぶ観客賞にアントニオ・マルケス舞踊団『メデア』公演が選出されたとの発表がありましたが、これもまた素晴らしい舞台でした。この時代、個人で作品制作、舞踊団を維持することがどれだけ大変なことか、なんてことを抜きにしても、フラメンコ/スペイン舞踊史に残る名作を再び観させてくれたことに感謝、感謝です。

©︎Javier Fergo Festival de Jerez

そう、フラメンコだけでなく、スペイン舞踊もヘレスのフェスティバルの重要な要素。昨年のスペイン国立バレエのようなスペイン舞踊の大作だけでなく、フラメンコとスペイン舞踊の要素、両方がある今年の『エル・サルト』のような作品にも拍手を送りたい。


ありがとうヘレスのフェスティバル!

来年はまた通常通り2月末から3月第一週にかけてです。来年こそ、日本のみんなも来ることができますように。






2021年5月24日月曜日

ヘレスのフェスティバル最終日その3アルカンヘル『タブラオ』


大トリを務めたのはアルカンヘル。
今年のフェスティバルでは夜の公演はこれひとつだけ。
ビジャマルタ劇場で予定されていたメルセデス・ルイス公演が彼女の妊娠で中止になったので、18時半の公演終了後、ゆっくりタパする時間もありました。
公演あったら20時半のみで22時で移動に歩いて20分くらいかかるから、タパかき込んでになっていたなあ。

会場のアタラジャ博物館は世界でも屈指の時計のコレクションの博物館なのですが、その他にも庭園、ホールや会議場/宴会場でもあり、そのホールが会場となっているのです。
これまでここで行われた公園の時よりぐっと舞台の高さを下げて、マイクなし(舞台の角に補強するような形で置かれてはいたけれど)の生音でフラメンコを楽しんでもらおうという趣向。

暗くなった客席後方からファンダンゴ・デ・ウエルバを歌いながら登場するオープニングは意表をついていてよかった。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez

アルカンヘルに続き、ウエルバの歌い手エル・ぺカス(初めましての歌い手さんでした)、パルメーロとしてあちこちの公演で活躍中の双子メジもそれぞれ歌い上げて、舞台に上がっていく。舞台の上でも歌い続ける。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez
お決まりのコーラス部分は客席でも口ずさんでいる人も。

ダニ・デ・モロンの伴奏で、ブレリア、タンゴと歌い続け、

©︎Javier Fergo Festival de Jerez

カーニャでは1990年セビージャ生まれというマカレーナ・ロペスが踊る。なんかね、昔のベレン・マジャを思い出させる、なんかちょっと古い感じのモデルナというか。あの時代のベレンは新しかったけど、これは今では古いんじゃ?という感じ。カーニャらしさもあまりないなあ。ダニのギターはいい。

©︎Javier Fergo Festival de Jerez

タランタ、ハレオ、セビジャーナスはマカレーナが踊り、ペカも踊り、アルカンヘルも弾き語り。最後はアレグリアス。再びマカレーな。

ファンダンゴ・デ・ウエルバやセビジャーナスのような、カンテのリサイタルではあまり取り上げられない曲などでも聴かせるのはさすが。

でもなんか、後半はマカレーナのプロモーションのようにも思えちゃうなあ。技術はあるけど、ヘレスでソロ踊るにはまだまだ、のような気がするんだけどね。

まあ、とにかくこうして、イレギュラーだらけのヘレスのフェスティバルは幕を閉じたのでありました。

ビデオはこちら

 

ヘレスのフェスティバル最終日その2モニカ・イグレシアス『タラモ』

元国立バレエ団、モニカ・イグレシアス『タラモ』は18時30分コンパニアで。

もともと、2月に予定されていたヘレスのフェスティバルでの初演を目指して作った作品ですが、開催時期の変更により、すでに5月3日、グラナダでも上演されています。

タイツ姿でギターを抱え動くオープニングはギターも主役ということを表現してるのかな。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez
すぐに舞台中央でルイス・マリアーノの演奏が始まります。
一度下手に引っ込んですぐにギタリストの後に登場。
ギターを弾く動き。
アラブ風のメロディ。サンブラ? タンゴ?


バイオリンとデュオがあったり。ギターで踊ったり。


タイツ姿で赤いバタ・デ・コーラを抱えて登場し、その下に潜り込むように倒れ、
やがて手がゆっくり出てくるところなど、コンテンポラリー風なんだけど面白い。
コーラを前にもったり、裸足で踊っているのだけど、形も面白いし、センスがいい。

©︎Javier Fergo Festival de Jerez

プレゴンやギターを挟んで、今度は伝統的なフラメンコ衣装で現れ、いきなりジャマーダで始まるソレア。その力強さに驚かされた。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez

いつもバタなどで優雅な女性的なイメージがあったのだけど、案外男っぱい。
細かいところが割と大雑把であれ、っていう感じもあったんだけど、それでもなんか違う面を見た感じで面白かった。

©︎Javier Fergo Festival de Jerez

©︎Javier Fergo Festival de Jerez

最後はクラシコっぽく終わる。

 大切に、丁寧に作り上げた作品。この作品を作り上げる過程にもたくさんの学びがあったことでしょう。

2021年5月23日日曜日

ヘレスのフェスティバル最終日その1ラトーレ振付工房

毎年恒例となったハビエル・ラトーレ振付工房。
今年は生徒も少なく、その分、先生も一緒に踊ってくれていたし、ナナメのラインとか綺麗に見えたよ。
生徒も先生もその分、大変だったことでしょう。

最初の挨拶でハビエルが言ってた通り、生徒は振付を覚えるだけでなく、舞台での位置や出入り、仲間との間隔などをも覚えなくちゃいけないし、また舞台出演の前の緊張や苦しい気持ちなども体験する、という実践的なクラスなのであります。

最後はフィン・デ・フィエスタもあったよ。

来年はもっとたくさんの人が来れるといいね。















 

2021年5月22日土曜日

ヘレスのフェスティバル16日目その2ヘスス・カルモナ『エル・サルト』

 またまた気分が上がる、素晴らしい公演を観ることができました。

ヘスス・カルモナの『サルト』はビエナルで公演予定がメンバーの一人の陽性が発覚し(結局偽陽性で感染ではなかったとのこと)昨年12月にセビージャで初演された作品。

それがより整理され、洗練されて登場。30分以上短縮され見やすく、わかりやすくなっていました。

上半身裸でスカートの男たちがスーフィー舞踊のように踊るオープニング。やがてスカートを取りマントンのように回したり。

そこへ現れたヘスースが、ホセ・バレンシアによる、ビセンテ・エスクデーロのバイレ十戒の語りで踊り始める。ファルーカ、ソレア。男性らしい舞踊とは、男性らしさとは…

©Javier Fergo Festival de Jerez

スーツにサングラスで決めた男たちが、いわゆる“男らしい”、“マッチョな”仕草をベースに見せる。
ボクシング用のミットでリズムを取りながら、ヘルメットを着けて踊ったり、群舞で、男性らしさというプレッシャーを表現しているのだと思う。

©Javier Fergo Festival de Jerez


パーカッションやギターとの掛け合い。

©Javier Fergo Festival de Jerez

男性らしさにこだわることでのいろんな不自由さ。

©Javier Fergo Festival de Jerez



コート姿の男性らしさ警察に追われ、追い詰められる。


©Javier Fergo Festival de Jerez


 

©Javier Fergo Festival de Jerez

舞踊をサッカーのラジオ中継のように実況するう語りに男たちが一喜一憂する、ユーモアいっぱいの場面に続いてホセがナナを歌い、自由になっていく感じ。

そしてアレグリアス。

©Javier Fergo Festival de Jerez

ストレートなフラメンコも、すごい回転で見せまくる。

©Javier Fergo Festival de Jerez
©Javier Fergo Festival de Jerez

最後は大音量のダンスミュージックの中、みんなが服を脱いでいく、裸の自分に戻る、というメッセージだろう。
©Javier Fergo Festival de Jerez

ヘスースは自分の知っている様々な技術を使って語りかけてくる。
写真に群舞が少ないのが残念なのだけど、群舞もすごかった!
回転しながら跳躍って、フィギュアスケートかよ、ってくらい。

とにかくヘスースや群舞の若手たちの動きが美しく、リズムの取り方も素晴らしく、もうそれだけで十分なくらい。

あー楽しかった! いや作品としてはシリアスではあるのだけどね、ある意味去年のマヌエル・リニャン「ビバ!」にも通じるものがあるよね。自分と向き合う。そこから作品は生まれるのかも。

ビデオはこちら

ヘレスのフェスティバル16日目その1ヘスース・メンデス&ディエゴ・デ・モラオ『ロス・パシートス・ケ・ドイ』

 良きリサイタルでした。

マルティネーテに始まり、アレグリアス、マラゲーニャ、ソレア、ティエント、ファンダンゴ、シギリージャ、そしてブレリアと、ヘレスのスタンダードなレパートリーを1時間あまり。たっぷり聴かせてくれました。

©Javier Fergo Festival de Jerez
すごく真面目で真摯、しっかり勉強している、ストレートなフラメンコ。まっすぐ心に飛び込んできます。

アレグリアスやタンゴではもう少し、抜きがあってもいいかなとも思うけど、テーブル叩いてのコンパスでのソレアとか最高。

©Javier Fergo Festival de Jerez
ディエゴのギターもますます天才ぶりに磨きがかかって、伝統と独創性のバランスがとてもよくて、素晴らしかったし。
©Javier Fergo Festival de Jerez

©Javier Fergo Festival de Jerez

ヘレスのフェスティバルが、うちは舞踊のフェスティバルだけどヘレスのフラメンコらしさとはこういうもんだよ、とくれたプレゼントしてくれた、そんな気がします。

2021年5月21日金曜日

へレスのフェスティバル15日目マリア・パヘス『パライソ・デ・ロス・ネグロス』

いよいよフェスティバルもラストスパート。

ビジャマルタ公演は、最終日のメルセデス・ルイスが妊娠発覚で公演中止になったので、マリア・パヘスとヘスス・カルモナでおしまい。

日本でもおなじみのマリア・パヘスといえば、美しい照明や群舞など、劇場公演のためにきちんと作られた作品のイメージがあると思うのですが、今回、踊りは彼女一人だけ。シディ・ラルビ・シェルカウイとの名作『ドゥーナ』以来じゃないかな、群舞がいないのは。

昨年秋に初演した作品です。

舞台の前には定間隔で鎖が下がり、

不協和音的な音楽でマントン技を見せるオープニングから

©Javier Fergo Festival de Jerez


タラント
©Javier Fergo Festival de Jerez


チェロとのナンバー
©Javier Fergo Festival de Jerez

手だけ浮かび上がらせてのカスタネット、ベンチに座ってのモノローグ(詩の朗唱?)。
モネータよりも話すのが上手。
©Javier Fergo Festival de Jerez

ミュージシャンに囲まれて踊るブレリア。
©Javier Fergo Festival de Jerez

©Javier Fergo Festival de Jerez

©Javier Fergo Festival de Jerez
最後は鎖がざっと落ちて終わる。

多分、ブラックライブズマターとかに影響されたんだろうな。

舞踊自体は彼女らしいスタイル。長い腕を巻き付けるように動かすのは独特だよね。前髪の白髪も雰囲気があっていいと思います。

でもね、暗いんですよ、全体的に。黒バック、薄めの照明ってことしの作品の特徴。写真家さんに聞いたら経済危機の2008年もそういうのが多かったって、うんアーティストの心、気分の反映なんでしょうね。重い、ドヨーンとした感じ。でも、もうほんと勘弁、って感じ。
メルチョーラ・オルテガが言うように「暗いことはそこらへんにいっぱいある。だから色と喜びを伝えたい」っていうのに改めて共感。
私は美しいもの、華やかなもの、夢が見たい。エネルギーをチャージしてくれるような作品に会いたい。
ま、アーティスト側にはアーティスト側の事情があるだろうし、観客のわがままかもだけど、大変な時だからこそ元気付けてくれるような作品、欲しいなあ。


あとね、カンタオーラ二人の歌う、独自の歌詞が聞き取りにくいのも、通常のフラメンコの歌詞ではなく、独自に詩などを歌っている作品としてはまずいんじゃないでしょうか。