2021年5月9日日曜日

へレスのフェスティバル3日目ホアキン・グリロ『アルマ』

フラメンコは難しい。作品作りも難しい。

構成、共演者、舞台上の動き、音響、照明、衣装、装置。 いろんな要素が関わってくるので、そのアルティスタがどんなに良いアルティスタでもそのあたりを間違えると観客に届かない。反対に、いい要素をうまく組み合わせることでその力を何倍にもして見せることができるのだ。

プラネタ・ホンドというウエルバのフラメンコフュージンのグループと、ディエゴ・デ・モラオ、ルイス・エル・サンボというへレスのフラメンコの極みの二人。日本でもおなじみのロンドロにマヌエル・タニェ、弟カルロスやディエゴ・モントージャ、マヌエル・カンタローテのコンパスという取り合わせ。プラネタ・ホンド以外はへレスで揃えているのは前日のアンドレス・ペーニャと同じ、ではあるのだけど。

©JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ
とにかく舞台が暗い。バックが黒で、黒っぽい衣装に薄めの光じゃ見たくても見えないよ。どういうわけか、舞台の一部が明るくなっていても、踊るのは暗い場所。ミュージシャンの方がよく見える、ってうーん、困る。ミュージシャンは音が命、でも踊り手は形も細かいとこまで見たいのに。

カパ、マントに手を通す穴を開けたような、長いゆったりしたベストドレスのような不思議な衣装でのオープニング。シルエットはドレスというのは面白いとも言えるけど。ミュージシャンも幼稚園児の園服、スモックみたいな、ミニドレスみたいなそろいのシャツというのは、新興宗教のようでもある。オウムのような?


©JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ

ティエント、カーニャ、ファルーカ、ブレリア、ブレリア、ブレリア。どの曲を踊っても同じような振りが出てくるわ、頭がぐらぐらしているのもきになるわ、で。人形振りもしくは酔っ払いみたいなブレリアも長く続くとちょっと辟易。

©JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ

で音響も良くなくて、プラネタ・ホンドのギタリストの音はエアレコなのかな?って感じだし、ディエゴの音も遠い感じ。せっかくのコラボが生きてこない。なんかゲストの魅力を生かそうという気持ちも感じられない。会話がないといういう感じ。

それはルイスの歌に対しても同じ。


©JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ

©JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ

©JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ

©JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ

アイデア、演出、振り付け、装置のアイデア、衣装デザイン、すべてグリロ本人(と奥さん)。一人で全部やっているからなのかな。以前、演出家に依頼した時もあまりよくなかったりしたから、全部自分でやることにしたのかな。でもそれが彼を引き立てることにつながっていないような気がするのであります。

私が大好きだった男らしい、靴音の様々な音色で聞かせるグリロにもう一度会いたいんだけど、それはこちらの勝手な思い込みなのかも。

アルティスタは常に観客が求めるものをやらなければならないわけではないし実際、昨日の作品が好きな人もいるわけだし。好みの問題、でもある。だけど照明や衣装などの要素はやっぱ大切だと思うんだよなあ。

ビデオはこちら


それにしても。前日のアンドレスの素晴らしさを改めて感じさせる結果。シンプルだけど、シンプルに見せるためによく考えてつくられたアンドレスの作品。昨日の終演後、バルでちょっと喋ることができたのはうれしかった。アルティスタが心を込めて作った作品で感動した時はやっぱりその人に、何らかの形で伝えたいものね。皆さん、all flamencoで配信が17日からあるようですよ、アンドレス、絶対見てね。

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