ニームで観ていたのに、2回目なのに、いやだからかな、フェリクスの運命が心に迫ってきて涙涙。
すべての場面に理由があり、踊り手でありながらフラメンコが好きすぎて古いものを色々と調べる研究家でもあるラファの丹念で入念な研究に裏付けされた、すごい作品。
なんだけど、途中で帰ってしまう人もいたのは残念。
フェリクス・エル・ロコの話を知らないとわかりにくいのかも。
彼の存在を知ってさえいれば、実はとてもわかりやすい作品なのだけど。
フェリクス・エル・ロコは、本名フェリクス・フェルナンデス・ガルシア。
1896年セビージャ生まれの踊り手で、スペイン各地を回っていたディアギレフ、そのダンサー、レオニード・マシーンらと知り合い、バレエ団バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)がファリャ『三角帽子』の稽古のためロンドンに渡ったものの、主役を演じるとばかり思っていたのだが実はそうではなく、精神を病んでいき、エプソンの精神病院で1941年に亡くなりました。
バレエリュスの話はフォーキンやニジンスキー、バランシンなどで舞踊好きには広く知られていると思うのだけど、ディアギレフはファリャにバレエ音楽を依頼したことで1919年『三角帽子』が生まれ、また1921年にはマリア・アルバイシンなどスペインのアルティスタたちによる『クアドロ・フラメンコ』という作品もプロデュースしているのであります。
知れば知るほど興味深いフラメンコとバレエの世界だけど、そこは長くなるのでこれ以上は省略。でもいつか語りたいかも。
で『ソンブレロ』。
ラファエル・エステベス演じるディアギレフとバレリアーノ・パーニョス演じるレオニード・マシーンが、スペインにやってくるところからはじまります。
1916年、二人はグラナダでフェリクスと出会います。
当時のフラメンコの雰囲気が、丹念に再現されます。
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© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
フェリクスを演じるのはアルベルト・セジェス。
見事なフラメンコ! ディアギレフが目をつけるのも無理がありません。
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© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
そしてマドリードで再会し、バレエ団のダンサーたちにフラメンコのレッスンをします。
その様子も踊りで再現されます。
翌年、ファリャと共にスペイン各地を回るディアギレフとマシーンにフェリクスも同行します。
ファリャが粉屋の『ファルーカ』のメロディーを思いつくシーンは、3人の男性ダンサーのサパテアードで、あのファルーカのメロディーが奏でられる、という素晴らしいもの!
いやあ、鳥肌ものです。
でもこれも元の曲を知らないとわからないですよね。
各地の民族舞踊を観て回るのを、民族舞踊のエッセンスやマカローナの踊り、セビジャーナスなどで描かれます。
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© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
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絶対的支配者たるディアギレフと、盟友マシーンとの三角関係を示唆し、
バレエ団での孤立から、リズムにこだわるようになり、徐々に精神の均衡が崩れていきます。
20世紀初めに、家族友人と離れた外国で、思っていたようなことができない時、
気がおかしくなるのは自然なのではないでしょうか。
彼へと心が寄り添います。どんだけ辛かったろう、どんだけ寂しかったろう。
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© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
そしてついには精神を病み、入院に至ります。
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© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
その後も何度か、実際、ディアギレフも、マシーンも訪問したそうで、その様子も演じられます。惚けたようであってもマシーンのことだけはわかって抱きつく、というように。
ファリャの『三角帽子』の粉屋のファルーカをバレリアーノが、バレエのテクニックも多用した、マシーン風に踊ります。
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© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
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© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
知らないとわかりにくい、という欠点はあるものの、素晴らしい作品だと思います。
フラメンコ・オタクなラファの作品は、いろいろ裏付けがあってやっているものが多く、知っている人は面白いけど、的なことがあるのは事実。オタクによるオタクのための作品? いえいえ、そんなことはないと思うのですけれど、うん、始まる前に簡単な解説があってもいいかもしれないですね。
ちなみに作品解説踊り付き、というのもあって、ニームで観ましたが、これを見ると、踊りの背景とかもわかってもっと楽しくなります。