今をときめく歌い手ホセ・バレンシアとギタリスト、フアン・レケーナ。
エバ・ジェルバブエナやホアキン・グリロ、アンドレス・マリンへの伴唱で知られるホセ。
グリロやファルキートなどへの伴奏でおなじみのフアン。
どちらもソロアルバムを発表している実力派。
その二人が揃って来日して出演したのが松彩果リサイタル。
彼らに加え、セビージャの踊り手オルーコとその妻カロリナ“ラ・ネグラ”(パルメーラでの出演だったが最後ちょっと踊ったブレリアはムイ・フラメンカ)、日本でもおなじみのフェステーロ、ルイス・ペーニャ、とスペイン人アルティスタたちとともに松がつくりあげた舞台はシンプル。
椅子に座った松にホセが歌いかけるマルティネーテに始まり、ギターソロ、ルイスのソロ、バタ・デ・コーラでのアレグリアス。オルーコの爆弾サパテアードが炸裂するソレア・ポル・ブレリア.ルイスが歌い踊るブレリア。オルーコとリレーで踊るタラント、そしてソレア。物語もなければ装置といえるのはミュージシャンたちの座る椅子とその後ろに飾られたマントン、ルイスの最初のソロでコンパスを刻む大きく古いワイン樽、鏡台だけ。
その樽を叩いてコンパスを刻んでいたルイスが暗転できえると再びうかびあがったときはホセとオルーコがコンパスを叩いていたり、タラントが終わった松が鏡台にむかってスカーフを外し、靴を脱ぐ、など、ちょっと“作品”ぽいデテールはあるのだけど、それはそこにぽんと放り出されて、つながってはいかない。それもまた今後の彼女を占う予告編のようでもあり、面白い。
彼女が好きなものがちりばめられた舞台。彼女がみている方向がみえる。
それはすごく遠い道のようにも、近くのようにも思える。
タラント。衣裳についた金色の飾りは、ちゃらんちゃらんと音をたて、ソブリオ、地味で真面目なこの曲にはそぐわない気がするが、タンゴなどでは、インド風?ベリーダンス風?それとも東欧ヒターノ風? という感じもするので使い方によっては面白いかもしれない。踊り自体は、その昔、初めて彼女をみたときのうれしい驚きを思い出させる、ちょっとした動きなどもあった。
マラゲーニャからはじまるソレア。ホセの完璧な歌声をただ聞き入るかのように、少ない動きではじまる踊り。
自分一人、いやもちろん仲間や家族、生徒さんたちの助けはあったろうけれど、企画からなにから自分一人でやり遂げ、感極まったのだろう、アンコールで涙があふれた彼女をつつむあたたかい拍手。
自分が好きなフラメンコはこれなんです。フラメンコを心から愛しています。彼女の思いが
会場をつつむ。これはゴールではない。彼女のあらたな出発点なのだろう。
だいじょうぶ。愛があれば扉は開く。
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