2023年3月26日日曜日

ヘレスのフェスティバル各賞/ぺーニャ協会による賞(3/30追加)

 ヘレスのフェスティバルの各賞は以下の通り。おめでとうございます。

批評家やジャーナリストたちによる投票で選出される各賞

批評家賞

ラファエラ・カラスコ『ノクトゥルノ』

© Festival de Jerez/Tamara Pastora

新人賞

イバン・オレジャーナ、

© Festival de Jerez/Tamara Pastora


ラファエル・ラミレス


© Festival de Jerez/Esteban Abión



ギター賞

ピノ・ロサーダ

© Festival de Jerez/Tamara Pastora



作曲賞

マヌエル・バレンシア

© Festival de Jerez/Esteban Abión



観客の投票による賞

観客賞

マリア・ホセ・フランコ『バイラール・パラ・セール』

© Festival de Jerez/Esteban Abión
3/30追加

ヘレスのペーニャ協会による賞が発表されました。
伴唱賞はヘスス・コルバチョ、写真はラファエル・ラミレス公演より。

© Festival de Jerez/Esteban Abión





新人賞はベルナルド・ルビチ。2月25日ペーニャ、ブレリアでの公演での歌唱、特にシギリージャが評価されての受賞とのこと。歌い手トマス・ルビチの息子さん、トマスは日本でもお馴染みのギタリスト、ドミンゴ・ルビチのいとこ。フラメンコの血筋は未来へ続いていきます。

2023年3月25日土曜日

永遠のガデス、『炎』セビージャ公演

ガデス以上にガデス。

ガデスが、そのスタイルが、エッセンスが、信じられないくらいの生命力を感じさせるほど、確かに息づいているのだ。
生前、スペインでは公演されなかった『炎』は、ガデスだけでなく、その遺志をつぐガデス財団、その芸術監督、ステラ・アラウソの手によって、ガデス以上にガデスのスタイル、エッセンスを受け継ぎ、感じさせる作品になったのだと思う。
それは振り付けだけでない。舞台上の構成、配置、闇を上手に使い立体的に見せる照明にもガデスらしさが溢れているし、踊り手だけでなくギタリストや歌い手も踊り、踊り手も歌い、体型や年齢も様々というのはガデスの信条によるものにほかならない。


 ガデスが踊った役カルメロを踊るアルバロ・マドリードはガデスじゃない。でも彼のスタイルを確かに受け継いでいる。ガデスの真似ではなく、そのスタイルを継承しているのだ。大きく広げた腕。すっと引いた足。決してそりかえることなく常にまっすぐな姿勢。
主役カンデーラを踊るエスメラルダ・マンサーナは若く美人で華やかだけど、その形やブラソの動かし方には確かにクリスティーナ・オヨスやステラ・アラウソのそれと重なっていく。ただの綺麗なお人形さんでは決してなく、多少の弱さがあったとしても強い意志を持った女性がそこにいる。
亡霊のフアン・ペドロ・デルガードの存在感。いや、亡霊に存在感というのもどうかと思うけど、説得力がある。美しい動き。形。カンデーラが惹かれてしまうのも無理ない。

オリジナルだと他の美女をあてがって亡霊は去って行くのだけど(ガデスとオヨスによるサウラ監督の映画版でもそうでした)、ここでは全員の団結で亡霊は消え、二人の結婚式になるというアレンジ。これもフエンテオベフーナを思い出させますな。

タンゴ、ブレリア、セビジャーナス、ビジャンシーコ、アルボレア…クリスマスや巡礼、フェリアに結婚式といった行事/イベントを織り込んだフラメンコの故郷、アンダルシアへのオマージュ的な作品。オーケストラも初演のマドリードのものとは比べ物にならないほど上手で、ちゃんとリズムをキープして行くから踊りとも合う。

そしてステラがエチセーラ、魔術師を踊っているのだが、これはガデスのオリジナル版では歌い手ラ・ブロンセの役だった。踊り手の彼女が演じることで美しいブラソで魔法を感じさせる存在に。


いやあ、よかったです。スペイン国立バレエがその作品を上演したマリオ・マジャもそうだけど、自分のスタイルを作った人は、亡くなった後でも、そのアルテはさまざまな形で生き続けるのだなあ、と。

これまで以上に、ガデスの宇宙を感じさせてくれた公演でありました。




フラメンコ・シグロXXI

 アソシアシオン・クルトゥラル・フラメンコ・パトリモニオ・デ・ウマニダ・シグロXXI、すなわち、人類遺産フラメンコ21世紀文化協会がセビージャ大学の文化機関CICUSの協力を得て、3月21日から三日間、開催された、第1回フラメンコ21世紀セミナー。

協会はヒターノのアルティスタ中心に2021年に設立され、フラメンコの歴史、記憶、知識の保持と普及が目的だそう。

フラメンコについての講演や第一線で活躍するホセ・バレンシアやパストーラ・ガルバン、ホセミ・カルモナらなどによるマスタークラス等が開催されたのですが、その最終日、23日の午後に参戦。



セビージャ大学で文化人類学の博士号をとったという人の講演に引き続き、アーティストたちによるお話。


まずは世界で一番フラメンコのことを知っているホセ・マヌエル・ガンボアによるイントロ。3人の伝説的存在のギタリストを紹介します。この3人は協会の名誉会員でもあります。

ペドロ・ペーニャ
ぺぺ・アビチュエラ
トマティート
場を仕切るのはペドロ・ペーニャの姉妹、テレ・ペーニャ。そしてホセ・バレンシアやパストーラ・ガルバンも。


ペドロやぺぺのデビュー時のこぼれ話なども面白かったのですが、個人的に一番印象に残っているのは、フラメンコは一つじゃない、カンテ・ヒターノとそれ以外がある、というペドロ・ペーニャの主張に、トマティートが、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスがいてアントニオ・チャコンがいる、パコ・デ・ルシアがいて僕がいる、と、やんわりと、ヒターノだけじゃないよ、といったことでありました。ヒターノなしではフラメンコは成り立たないのは本当だけど、それだけじゃない、というのも本当のこと。なので深く頷く。

その後、ホセ・バレンシアのリサイタル、伴奏はペドロ・マリア・ペーニャ。ペドロ・ペーニャの息子、すなわちピアニスト、ドランテスの兄で、協会会長でもあります。




イントロに続き、

ソレア

そしてカンティーニャ

最後にシギリージャ。この前奏がすごかった。

フィン・デ・フィエスタはパストーラやアントニオ・モジャらも舞台に上がり、
ホセの歌で踊るパストーラの最高にフラメンコな踊り。

歌に反応してどんどん行くから歌うホセも熱くなる。




最後はアントニオ・モジャ、マリ・ペーニャ夫妻の愛娘がウナ・パタイータ。
21世紀のフラメンコは彼女たちが背負っていくのだろうな、と期待させて閉幕したのでありました。

2023年3月23日木曜日

パンプローナのフラメンコ・オン・ファイア プログラム発表

 パンプローナのフラメンコ祭も今年で10回目。

歴史は浅いながらも、ビエナルやラ・ウニオン、またはフランス、モンドマルサン、ニームなどに肩を並べるフェスティバルに成長しました。

今年も豪華なプログラム。

特に気になるのはここオリジナルの企画である、8月23日の、ダビ・ラゴスが監督を務める、カラコールへのオマージュと、リカルド・モレーノが監督の若手ギタリストを集めた企画。

楽しみです。


◇フラメンコ・オン・ファイア

818(金)21

[出]〈c〉ダビ・ラゴスメルチョーラ・オルテガ〈g〉アルフレド・ラゴス、〈perc〉ペリーコ・ナバロ、〈b〉レオノール・レアル

[場]トゥデラ ルイナス・デ・サン・ペドロ

819(土)2130分『バハニ』

[出]〈b〉ファルキート、フアン・エル・モレーノ

[場]パンプローナ ガスタンビデ劇場

823(水)2130分『ウナ・イストリア・デル・カンタオール・フラメンコ』

[出]〈c〉ビセンテ・ソト“ソルデーラ”、アントニオ・レジェス、ロサリオ・ラ・トレメンディータ、ナバラ交響楽団

824(木)2130分『ビビレ』

[出]〈g〉トマティート、〈c〉グアディアーナ、ドゥケンデ

825(金)2130分『レフラクシオン』

[出]〈b〉エバ・ジェルバブエナ

826(土)2130分『アルサプア』

[出]〈g〉ダビ・デ・アラアル、ビクトル・フランコ、アレハンドロ・ウルタード、ホセ・デル・トマテ、ゲスト〈c〉サンドラ・カラスコ、フェルナンダ・ペーニャ、〈b〉ヘマ・モネオ

827(日)2130分『デスデ・ラ・クーナ』

[出]〈c〉エストレージャ・モレンテ、〈g〉モントジータ

[場]パンプローナ バルアルテ

[問]https://www.flamencoonfire.org/


ちなみにフェスティバルの名前はこの街出身のギタリスト、サビーカスのアルバム名から。




2023年3月21日火曜日

川島桂子『PARA MORIR II 』配信 


 アフィシオンってすごい。アフィシオンは辞書には愛好、熱中などとある。

フラメンコで最も大切なのはアフィシオン。フラメンコを心から愛すること。心から愛すればもちろん敬意を払うわけで。プロだろうとアマチュアだろうと芸歴半世紀以上のベテラン・アーティストもぽっと出のただのファンもアフィシオンがあれば会話は弾むし、互いに敬意を払い、仲間意識も芽生える、ってなもんです。

その、熱いアフィシオンを感じる公演配信でありました。

川島桂子といえば泣く子も黙る、日本を代表する歌い手の一人。若い踊り手たちが姉か母かのように慕い、頼りにしている存在。誰よりも多くの舞踊伴唱をこなしてきていてその経験が生きている。仕事を流れ作業にせず、好きなものを追い求め、たくさん聴いてたくさん歌ってきた。その半生がぎゅっと詰まった2時間弱でありました。

生で見ることができた人たちが羨ましい。

3月5日。東京『ガルロチ』で行われた還暦記念リサイタル。バイオリンのソロに始まり、トナーからのシギリージャでは三枝雄輔が踊り、ミラブラスからのカンティーニャ経由アレグリアスも締めは踊り。

厳しい表情で歌っていたかと思うと、トークではとろんとした優しさ、人の良さダダ漏れで、そのギャップも楽しい。現代的な演奏の徳永健太郎のギターでも、古き良きフラメンコの香がぷんぷんしているエンリケ坂井のギターでも、きちんとギターを聴いて、独りよがりにならずに、真摯に一つ一つの歌詞を大切に、歌っていく。そしてまたサポートミュージシャンたちが心からの敬意を持って彼女に寄り添っているのであります。

去年のコンクールの時にも思ったのだけど、この人ほどに、歌の性格や内容、方向性を深く理解して歌っている人は、日本にほとんどいない。グラナイーナで「アルバイシン」と歌う時には彼女の脳裏にはあの街並みが浮かんでいるのだろうし、こちらにもあの風景が蘇ってくるようだ。

タンゴでの生き生きとした表情、にこやかでうれしそうな感じがこっちにも伝わって一緒にフィエスタにいる気分。楽しんでいるよね。

maldigo tus ojos verdes  というパケーラのヒット曲やスペイン歌謡の名曲で私もカラオケに あったら絶対歌いたいと思うだろう、un clavel を昭和歌謡風と言うの確かに〜。(昔、スペインのレコード会社の偉いさんが日本に来て歌謡曲聴いてスペイン歌謡は売れないか、と聞かれたことあるよ。悲しい酒歌ったスペイン人歌手もいたよね)

エンリケさん伴奏の2部はソロでじっくり聴かせよう、という趣向だったのだろうけど、ティエント、セラーナ、ファンダンゴ、そして、極めつきのソレア。赤いちゃんちゃんこならぬ真紅のフラメンコドレスもよく似合う。歌心を誘うギターに溶けていく感じ。でも最後はやっぱ踊りへと繋がっていくんだよね。


あー、よかった。

ここまでくるのにどんだけ苦労があったろうか。

でもね、正しいアフィシオンは実を結ぶのであります。正義は勝つ!

こうして日本のフラメンコは前に進むのだ。



配信お申し込みはこちらから

2500円だそうです。

ちなみにタイトル、PARA MORIRは死ぬために、と言う意味になるけれど、カマロンの歌詞で

Viviré mientras que el alma me suene  魂が響く限り生きよう

 Aquí estoy para morir       死ぬためにここにいる

cuando me llegue         その時が来たなら

ってのがあって、私は真っ先にそれを思い出したんだけど、その歌の最後が

vivir y soñar                                            生きる、夢見る

solo estoy buscando la libertad   自由を探しているだけ

ってなるんだけど、そう言うことなんだと思う。ひとりよがりかな?





2023年3月20日月曜日

『はかなき人生』

 セビージャのオペラハウスであるマエストランサ劇場で、マヌエル・デ・ファリャの『はかなき人生』。

フラメンコというか、スペイン舞踊のレパートリーとして取り上げられることも多いし、ギターやピアノの演奏でもおなじみ。パコ・デ・ルシアやカニサーレスも演奏してましたよね。

元々は二幕の歌劇ですが実際に全部が上演されることはそんなに多くないのかな、昔の録音は聴いたことがありますが、私は初見でした。

お話はグラナダのヒターナ娘サルーが、彼女を裏切って結婚してしまう男の目の前で亡くなってしまう、というもので、サルーを歌った/演じたのはスペインの人気ソプラノ歌手アイノア・アルテタ。



演出は伝説のオペラ歌手マリオ・デル・モナコの息子、ジャンカルロ・デル・モナコ。バレンシアの劇場の制作です。

動く大きな赤い壁で場面を作る、っていうのは、よくある現代的な舞台って感じなんだけど、問題はフラメンコの扱い。第二幕の、婚礼の宴で、「ソレアを歌うよ」とフラメンコ歌手が歌う場面があって(でも本当のソレアを歌うわけじゃない)、これは本職のフラメンコ歌手がやることが多いらしいんだけど(ガブリエル・モレーノやマイレニージャの録音を聴いたことがあります)、それをですね、なんと十字架のキリストが歌うことにして両脇に聖週間の三角帽子を被った男たち、っていうのはもう、なんというか、色々、アンダルシアを誤解している、というか、『蝶々夫人』が頭にかんざしではなくお箸をさしている感じとでもいうか。スペインで、しかもアンダルシアでこれやっていい、って思ったのが不思議。なんというか、聖週間/信仰にもフラメンコにも敬意を払っていない感じが正直、不快でした。初演ではカンタオーラが、サルーとお案じ格好で磔られて歌ったらしい。(有料プログラム記載の演出家の言葉から)



最後のサルーが死ぬ場面は、ナイフを裏切った恋人パコに持たせて自分を刺させる、というものだったのは、『カルメン』からの発想なのかな。身勝手な男に罪の意識を持たせたかった、ってことはないかとは思うけど。


期待していた舞踊場面も典型に走る、というか特に見るべきところがなかったのは残念。


衣装を手掛けたのは先日のスペイン国立『エル・ロコ』の衣装も担当していたヘスス・ルイス。これは良かったですよ。コルドバの人でフラメンコも知ってるだけに。花嫁衣装とかそのまま使えそう。



オケの音で歌詞が聞き取れんなあ、と思ったら、プロセニアム、というか、舞台の額縁の上のところにスペイン語と英語で字幕出てるんですね。助かりましたわ。スペイン語だから聞き取れる、ってもんでもないなあ。


しかしこういう、男の裏切りに何で応えるか、っていうのも色々ですね。メデアの子殺しが一番すごいけど、蝶々夫人は自殺だしな、とか余計なこと考えつつ、家路を辿ったのでありました。1時間ちょっとと上演時間が短いのは現代にあっているね、話はアナクロだけど。




2023年3月18日土曜日

アルカンヘル『ベル・カンテ』

アルカンヘルのリサイタル、だけどギターがクラシックのホセ・マリア・ガジャルドだよ、っていう蔵の前知識だけで劇場へ。スマホでQRコード読み込んで出てくるプログラムを見てびっくり。
あら、クラシック歌うのね。サルスエラやオペラ…
いや、確か以前、古楽の楽団と共演してたりもしてたけど、ほおお、そうですか。
最初はトナ。


ホセ・マリアはセビージャ交響楽団メンバーによる五重奏楽団と共に以前のビエナルのテーマ曲を。いや、これをフルバージョンで聞いたのは初めてかも。




二人揃って始まる。
違和感はないような、あるような。
クラシックとは言っても、ポピュラーな、カンシオンぽいものをセレクトしているという感じで、クラシックを、というより、フラメンコではない歌を歌っているという感じ。


とにかく音程がいい。スペイン語以外のものはスペイン語訳して歌っている。
ところどころ苦しそうに聞こえる気がするんだけど、気のせいかな。


その昔、カフェ・カンタンテではテノールがフラメンコのレパートリーを歌っていたという記録もあり、その反対もあっていいわけですね。



クインテットの第1バイオリンは、昔、エバの作品で超絶バイオリン聴かせてくれてたウラジミール。この日も絶好調。




 

プログラムには載ってなかったけど、ファリャの恋は魔術師もちょっと歌ったり。

アンコールでは『カルメン』の闘牛士の歌をスペイン語で歌い、最後はファンダンゴ・デ・ウエルバを、セビジャーナス『ケ・タンビエン・エス・デ・セビージャ』を歌って締め。

セビージャの観客を知ってますなあ。これがきたらもう一曲とは言わんよね。

クラシックもフラメンコも音楽なのだけど、近くて遠い、遠くて近いなあ。