ちょっともう、メルセデス、あんたって天才だったの?
と叫びたくなるような作品でした。振付は一部、マヌエル・リニャンの協力があったようですが、演出家の手も借りず、こんなにも素敵な作品を作り出したメルセデスにはほんと脱帽。個人でこれだけのものが作れるって本当にすごい。それにはもちろん作品全体を支えた、公私にわたるパートナー、フアン・カンパージョの力が欠かせないわけだけど。
いやあ、「初演だし、まだ磨かなくちゃ」と、終演後、メルセデスは語っていたけど、いやいや、ほんとにすばらしい作品でありました。
舞台の中心に台があって両脇まで幕がしまっている。その台の上にメルセデス、そして下にいる四人の女性ダンサーや歌い手達が扇を振ったり、上着を脱いだり、なんども同じ動作を繰り返すオープニング。彼女が長年在籍していたエバ・ジェルバブエ舞踊団の作品をちょっと思い起こさせる。やがて台から飛び降りた彼女がサパテアードを始めます。幅広の黒いパンタロンに白いブラウス。その彼女が上手の花の絵の陰に引っ込むと同じ衣装の四人の女達が登場する、という演出もいい感じ。四人はメルセデスの分身なのだろうなあ、と思うのです。
前作『セール』では一人で踊った彼女ですが、今回舞踊団となったのは彼女にとって必要な事だったそう。一人で表現できるものよりも、より大きなものを見据えているという事なのでしょう。
人形振りみたいにしたり、喧嘩したり、のユーモアもたっぷりの振り。赤いバラを口にくわえて踊ったり。最後は詩の一節を一人ずつ読んでいきます。ミサのよう。特に最後の文を全員で唱えるように皆で言うのでそう思ったので去ります。そういえば、タイトルは直訳すれば「はい、愛してます/欲しいです」になりそうですが、結婚式の時に「はい、誓います」という意味。タイトルを聞いて「結婚するの?」と言われたと記者会見の時に話していましたが、彼女の舞踊に対する誓いの言葉ということのようです。そうすると、舞踊の世界に飛び込み、女友達たちとの楽しい時を経て、誓いを述べるミサ、なのかもしれません。
そして始まるのはメルセデスのソレア!
フアン・カンパージョが演奏する、トレモロにソレアのファルセータが絡んでいく導入部の美しさ。そしてエンリケ・エル・エストレメーニョの熱いソレアに応えるように歌を踊るメルセデスの素晴らしさ!
エバやマヌエラ・カラスコを思い出させる振りなどもあるのだけど、真似しているわけではなく、インスパイアされてのメルセデスのソレアになっている。いやあ、もうこの一曲だけでも2週間のヘレスの滞在の意味があったと思えるくらいだ。
ソレアに圧倒された後は、三人の女性が踊る、カスタネットのシギリージャ/ドローレス、バルガス“ラ・テレモート”、タラント/カルメン・モーラ、そしてペテネーラ/マヌエラ・バルガスという三人へのオマージュ。
続いて大きなテーブルが持ち込まれ、宴へ。四人の女性が歌いながらワイングラスやお皿を巧みに使い、リズムと遊ぶ。ちょっとミュージカルみたいでもあり、いや、これを発展させたらもう一つの作品できそう。最初、ウエイターのように両脇に控えていたパコ・ベガとオルーコ
が席に着き、テーブルにあるものでリズムを奏で、四人が踊りまくる楽しい場面。
テーブルを脇に寄せ、バタ・デ・コーラとマントンのメルセデスが登場。カンティーニャスで踊ると、女の子たちはテーブルクロスでマントンやバタの真似をしたりと絡んでくる。
そこからルンバ、ローラ・フローレスへのオマージュでルンバ。マイクの調子が悪くなってしまったのは残念だったけど、アクシデントはしょうがないよね。
©Javier Fergo Festival de Jerez |
最後にまたメルセデスが登場し、踊った後でマイクに向かい、「死ぬまで踊り続けます、ビバ・エル・アモール、ビバ・エル・アルテ・イ・フラメンコ!」と高らかに宣言。
賑やかなフィエスタで幕がおりました。
いやあ、良かった。本当に良かった。構成、演出、振り付け、照明、衣装、どれを取っても一級品。うまいなあ。全てが破綻なく流れるようにつながっていく。昔ながらのフラメンコだけでなくコンテンポラリー的な振り付けもあるのだけど、それも長すぎず重すぎず。軽快。
歌はエンリケの他に、ぺぺ・デ・プーラ、ヘスース・コルバチョという歌い手たちのバランスも良いし、いやあ、すごいなあ。フアンとコルバチョは二日連続出演だけど、二つの全く違う作品の構成とか全部覚えてるってのもすごいよね、当たり前に見てるけど、考えてれみればすごくない?
とにかく、メルセデスとフアンの才能に感服した夜でした。7月コルドバで再演されるということなので、また観に行こうかな、と考えています。
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