2025年11月10日月曜日

『デ・タル・パロ』

フラメンコは南スペイン、アンダルシアで、民衆の中から生まれた音楽舞踊。その誕生にはヒターノたちの存在が欠かせない。フラメンコは決してヒターノたちだけのものではないけれど、歴史を振り返ってみてもヒターノたちの存在は大きいし、その文化と密接であるのも確かだ。フラメンコの歴史に名を残すアルティスタたちには、親子代々のアルティスタというのも数多く、そういったファミリアは今もフラメンコの世界に多く存在する。

そんなファミリアのメンバーが6人集まったのが作品『デ・タル・パロ』

父がギタリスト、ペドロ・ペーニャ、叔父は歌い手レブリハーノ、祖母はペラータ、兄もギタリストという最年長ドランテスのピアノで、ヘレスの歌い手一族、ソルデーラ家のビセンテの娘レラ・ソトが歌う『ジェレン・ジェレン』で始まり、

©︎ Guillermo Mendo-Teatro de la Maestranza


ペドロのピアノでファルキートが踊るというオープニング。ファルキートは祖父ファルーコ、母ファルーカ、弟ファルー、息子モレーノが踊り手という舞踊一家。父は歌い手だったし、後に舞踊伴唱で登場したエセキエル・モントージャも親族。

©︎ Guillermo Mendo-Teatro de la Maestranza

続いてカルメン。アマジャのめいの娘カリメ・アマジャのソレア。最後は髪振り乱し花飛ばす激しさで観客を沸かせていた。ある意味わかりやすい情熱みたいに見える。お母さん、ウィニの踊りを思い出させる。実際にはそんなことはないんだろうけど、演出された土臭さみたいな感じもしてしまうのは私が捻くれているからだろう。

©︎ Guillermo Mendo-Teatro de la Maestranza
ホセ・デ・ラ・トマテはソロ2曲。ブレリアのイントロでマンサニータの『ペンセ・ケ・ノ・エクシスティア』を弾くからまた胸が熱くなる。90年代に何度も聴いたアルバム収録曲なので個人的な思いなんだけど、彼が生まれる前に流行ったセンチメンタルなこの曲をよく見つけてきたな、と。

©︎ Guillermo Mendo-Teatro de la Maestranza

最初にソロで聴いた時からぐんぐんと実力をつけてきてて素晴らしいギタリストに成長したな、と遠い親戚のおばさんのように目を細める。その彼が伴奏でのイスマエル・デ・ラ・ロサのソレアが絶品だった。声の色がめちゃフラメンコというだけでなく、メロディの正確さ、間合い、細部の彩りなど本当に素晴らしく、最高だった。イスマエルの父は今アメリカ在住の歌い手なんだけど、ファミリア・フェルナンデスのいとこかなんかだったはず。昔、サッカー選手だった時代にあったこともある。

©︎ Guillermo Mendo-Teatro de la Maestranza

その後はドランテスのソロが2曲、これがちょっとジャズっぽくて、せっかくのフラメンコの流れをぶった斬ってしまったのはちょっと残念。が、その後、レブリハーノの名曲『ガレーラス』を伴奏して、イスマエルが歌ったのは良かった。レブリハーノの真似をするのではなく、自分の裏にしていたところが良かったと思う。

そしてファルキートのアレグリアス。イスマエルとエセキエル、二人の実力派の伴唱も、サポート参加の大御所ペドロ・シエラも素晴らしく、最高のコルチョンの上を軽やかに飛び回るファルキートという感じ。細やかせ素早い足技が最高。ただコルテが多いのがちょっと気になる。拍手も振り付けのうち、みたいなホアキン・コルテスを思い出しちゃう。


©︎ Guillermo Mendo-Teatro de la Maestranza

©︎ Guillermo Mendo-Teatro de la Maestranza


そしてレラ・ソトのシギリージャ。これがまた素晴らしかった。
メロディの下げ方もいい際、最後、上げていく感じもかっこよかった。

最後は蓋たぶドランテスでオロブロイ。
その後全員のお辞儀があって、アンコールで再びオロブロイ。ここではみんながコーラスのとこ歌っていたのもよかったんだけど、最初からこっちのバージョンでやった方が盛り上がって終わったようにも思う。

全体としてドランテが主役ぽくて、特別ゲストとの公演みたいになっちゃってたけど、それがよかったのかどうか、って気はちょっとするかも。

でもとにかく若手のすごい才能をビンビンに感じることができて、フラメンコってすごい。私やっぱりフラメンコ好きだわ、って思わせてくれたのがよかった。若い人は見るたびにどんどん進化していきますね。




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