2020年1月26日日曜日
マイテ・マルティン『ケレンシアの20年』
マエストランサ劇場でのマイテ・マルティンのリサイタル。
ほぼ満員の盛況、最後はスタンディングオーベーション。
大成功でした。マイテらしさに溢れたコンサートで皆満足。
『ケレンシア』はマイテが20年前、2000年にリリースしたアルバムのタイトルで、辞書を引くと、帰巣本能、古巣などの意味だとあります。
過去のフラメンコに学び、彼女のアレンジを加えた曲たちは、20年の時を経ても、古臭い時代遅れにはならず、今、古典へとなろうとしている、と、この公演でも実感させてくれました。
マイテといえば、やはりあの、センティミエント、思いを込めた繊細な歌い回しでしょう。一音一音をおろそかにせず、音程は完璧、発音も明晰。全てにセンティードがあって、本当、なんで他の歌い手たちはこういう歌いかたしないんだろう、と昔思ったこともありました。
その彼女の世界、彼女の宇宙そのもののようなコンサート。
オープニングのカンパニジェーロス、続くペテネーラではゲストのパトリシア・ゲレーロが青のマントンを使って踊り華を添える。そしてビダリータ。
叙情的な曲は彼女が最も得意とするところ。ゆっくりゆっくり歌い継いでいきます。
伴奏は最近、彼女の伴奏をずっとしているアレハンドロ・ウルタード(1994年アリカンテ生まれで各地のコンクールで活躍、2017年ウニオンで優勝)とホセ・トマス(1988年シウダ・レアル生まれ。2014年ラ・ウニオンで優勝)。いずれもコルドバのコンセルバトリオ出身で、クラシックギター的とも思わせる、繊細な演奏が特徴的。
シギリージャ、ティエント。そしてソレアで再び、パトリシアが踊ります。
『トレス・モリージャス・デ・ハエン』『ロス・クアトロ・ムレーロス』と続き、
バイオリンのイントロで、アルバム『ケレンシア』のブレリア、『テン・クイダード』、デビューアルバム『ムイ・フラヒル』のアレグリアス、『ナベガ・ソラ』とベストヒットも歌い継ぎ、最後はまたパトリシアと。
挨拶して、アンコール?は2曲。ユパンキの曲とカンシオン。
再びスタンディングオーベーション!
でも個人的には実はちょっともやもやしてます。
彼女のスタイル、で、彼女は本当に素晴らしい歌い手で、彼女の叙情的な歌に会うギタリストを見つけ、彼女らしさに溢れる公演を構築したのですが、その反面、全部、同じような感じになってしまっているという感じもあるのです。
彼女の中には叙情的な部分ばかりでなく、強さやエネルギーなど、フラメンコの他の部分もあって、それがあまり出てきていないという感じだったのです。彼女が選んだわけで、お客さんも喜んでいるので、私が文句を言う筋合いはまったくないのだけれど、個人的には、もう少し、メリハリついてもいいかなあ、と思ったことでした。
フアン・ラモン・カロやチクエロ、サルバドール・グティエレスら過去の彼女の伴奏者が持っていた、フラメンコのパワー、そしてそれを支えるフラメンコ性トイった部分が、今回の伴奏者には感じられず、たぶん、途中のシギリージャなどでは以前の伴奏者を持って来ればアクセントになったのではないか、何て思ったり。
スタイルを確立するというのは大変なことで、素晴らしいことでもあるのですが、実際、彼女は素晴らしかったし、でも、だからと言って同じ調子が続くとうーん、になってしまう、のは本当、見る側のわがままだとは思うのだけど、あー、、難しいですね。
なお、おそらく5年以上ぶりのセビージャ公演。エバ・ジェルバエブナやアナ・モラーレスら、アルティスタもたくさん見に来ていました。
ところで公演後、ロビーでCD購入者へのサイン会があったのですが、スペインで見たの初めてかも。
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