2010年第16回ビエナル・デ・フラメンコ。
さまざまなコンサートをみてきた25日間。
今年も前回と同様、同じ時間に違う場所で違う公演が行われ、
全ての公演をみることはかなわなかった。
基本的に、ヘレスなどですでに観た作品ははずし、
舞踊公演を中心にみてきた私の印象に残った作品をあげてみよう。
まずはマリア・パヘスと現代舞踊のシディ・ラルビ・シャルカウイ「ドゥーナス」
作品としての完成度が最も高く、音楽も、照明も、振付けもすべてがこよなく美しい。
フラメンコ・フラメンコなものを求める人にはむかないが、
舞台芸術を愛する人すべてに観てもらいたい作品。
フラメンコ舞踊で印象に残ったのはみっつのファルーカ
ルベン・オルモが踊ったイスラエル・ガルバン振付けによる、
バグパイプ伴奏でのユーモアあふれるファルーカ。
ハビエル・バロンの、バイオリンとキューバの楽器トレス伴奏の
美しい音楽が印象的なファルーカ。
ラファエラ・カラスコのチェロ伴奏による、
古典的な振付けを取り入れながらも男性風にではなく女性的に踊ったファルーカ。
そしてラファエル・カンパージョの伝統的な男性ならではのファルーカ。
それぞれのファルーカはそれぞれに美しく心に残る。
ラファエル・カンパージョのマノロ・ソレールへのオマージュは、
ラファエルのマノロへの思慕にあふれ、また、
あくまでも男性的で、ムイ・フラメンコなバイレでわたしたちを魅了してくれた。
またイサベル・バジョンのタンゴやガロティンも伝統的かつ現代的で素晴らしかった。
各紙の評論家がそろって今年のビエナルのベスト作品のひとつに名をあげる
パストーラ・ガルバンの「パストーラ」は、仕事の関係で観ることができなかったが
初演をみているので、批評家諸氏の言う通り、すばらしい舞台だったに違いない。
こちらは最初から最後まで骨の髄までフラメンコ。
おきゃん、という言葉が似合いそうな、下町ちゃきちゃきフラメンカなパストーラが
フラメンコのエッセンスそのもののようなラモン・アマドールのギターと
ダビ・ラゴス、ホセ・バレンシア、実力派カンタオールのカンテと
ボボーテのコンパスで踊りまくる1時間半。観ることができなかったのが残念でならない。
そのほかにもオテル・トリアーナでの、
エストレマドゥーラの夜のエル・ペレグリーノという老バイラオールの粋さ、
レブリーハの「ネグロ・コモ・エンドリーナ」でのコンチャ・バルガス、
「エンサジョ・イ・タブラオ」でのマノロ・マリンやアンヘリータ・バルガスも素晴らしかった。
カンテやギターの舞台はあまり観ることができなかったが
ギターでは歌や踊りに頼ることなく真っ正面から勝負したフアン・カルロス・ロメーロ、
カンテではやはりエストレマドゥーラの夜での
ラ・カイタやアレハンドロ・ベガのベテラン陣によるクアドロ、
オテル・トリアーナでの「カディス・エテルナ」でのランカピーノ、
エストレージャ・モレンテのソレアといったところだろうか。
舞踊伴唱ではダビ・ラゴス、ミゲル・ラビらが印象に残る。
また「ヘレス、ラ・ウーバ・イ・カンテ」でのあのコンパス!
あんなに気持ちのいいコンパスがあれば誰でも踊りだしたくなるというものだ。
メタモルフォシス、ではないが、
踊り手が歌い弾き、歌い手が踊るといったシーンが多くみられたことも今年の特徴だろう。
ファルキートは歌をギター伴奏し、アンコールで歌い、
イサベル・バジョンやラファエラ・カラスコも歌ったし、
アルカンヘルはギターを弾き、
ミゲル・ポベーダやエストレージャ・モレンテ、アントニオ・カンポスは
フィン・デ・フィエスタではない場面で、少しとはいえ踊ってみせた。
これまでにもハビエル・バロンの「ディーメ」で
フアン・ホセ・アマドールらが踊ったりしたこともあるし、
なにも新しいことではないのだが、
こんなにもたくさんあったのははじめてでは?
また、現代舞踊や演劇とのコラボレーションもさらにすすみ、
先にあげた「ドゥーナス」のほか、
演出家による演出のあるロシオ・モリーナやハビエル・バロンの作品、
「アレハンドリア」「ラ・グロリア・デ・ミ・マドレ」のような
演劇的な作品もあった一方で、伝統への回帰とでもいうような、
エストレージャ・モレンテのマンドリン伴奏でのサンブラや
マヌエラ・バルガスへのオマージュのルベン・オルモ、
ピラール・ロペス風に踊ったラ・チョニ、
パストーラ・ガルバンのトリアーナ風タンゴなどもあった。
その反面、カオスとでもいうべき混乱に陥ってしまったものもある。
盛りだくさんすぎる内容で、
せっかくの素晴らしいカンテが二の次になってしまいがちだったミゲル・ポベーダの開幕公演。
作品、というものを意識しすぎたのか、彼自身の踊りが少なく不満が残ったファルキート…
いずれもアルティスタ自身にありあまる才能があるだけに残念だ。
それにしても長い公演がおおかった。
開幕ガラは3時間。
閉幕ガラのパコ・デ・ルシアは休憩をはさんでいるとはいえ、
8時半開演で終演は11時過ぎ。
ほかにもドランテス、ラ・モネータなど、2時間にわたる長い公演が多すぎだ。
あれも、これも、という気持ちはわからないではないが
観客の集中力も考えて1時間半くらいまでがよいのでは?
さて2年後は誰がどんな作品をみせてくれるのだろうか。
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