新宿「エル・フラメンコ」の水曜日。井口裕香里ソロ・リサイタル「プーロ」
今年、イタリアはトリノでのフラメンコ舞踊コンクールで優勝し、カディスのペーニャ、ペルラ・デ・カディスの“アレグリアス”コンクールでも決勝に残った注目の存在。
私はイタリアのコンクール優勝の副賞である、セビージャのタブラオ、アレナル出演を観に行くはずが風邪でダウンし行けなかったので、これが初めて観る彼女の舞台だ。
黒いベールをかぶってのバタ・デ・コーラでのソレア。エル・フラメンコ出演中の二人の歌い手によるマルティネーテ(ここでフアン・カンタローテがカバーレスを歌っていたのがよかった!ラウール・レヴィアはラファエル・デ・ウトレーラみたいな声ですね)をはさんでマントンでのシギリージャ。
しっかりと技術を身につけている人だと思うし、バタやマントンの扱いなども、きちんと基本をおさえているので安心してみていられるのだが、そうなるとやはり観ているこちらも欲がでてくる。というわけで、以下、少々辛口になります。
ソレアもシギリージャもシリアス系で3拍子系。この2曲を並べるからにはそれぞれの曲の違いを表現しわけることが必要になると思うのだが、それができていたかどうか疑問。
より深刻な印象のあるシギリージャよりもソレアの方が暗い感じだったように思う。
一人で何曲も踊る場合、曲の演じ分けというのがどうしても必要になってくると思う。
また日本人には珍しく表情をつくって踊っており、それは彼女の個性であり魅力でもあるとは思うのだが、曲の最初から表情が過ぎると観ている私はさめてしま
う。気持ちをつくって、それを顔にもだして、曲の中にはいっていくタイプなのかもしれないが、曲の構成、高揚とともに表情が出てくる方が、観客に取っては効果的なように思う。
10分の休憩をはさみ、タランタのギターソロ。マヌエル・カスティージャ、昔はくりんくりんの巻き毛だったよなあ、と感慨にふけながら聴く。ギターソロというとおしゃべりがはじまるのは残念。フラメンコ見慣れてない人には踊りがないときは休憩時間なのかしらん。
店の入り口でブレリアがはじまる。客席で踊る、という演出は楽しい。舞台に遠い人も近くでみることができるのはうれしいだろうし、街角での即興の一振りみたいで面白い。ただし、この店のかたちから、一カ所でやっているときはほかのところからみえないという点は残念だけど仕方ない。舞台に戻ってブレリア、タンゴ、そしてティエント。
首が前にでているのが気になる。アンドレス・マリンもそうだし、スペイン人でもいるんだけどね。たたずまいが美しい人なのでちょっと残念。
そして最後はチラシの写真でもつかっていた白(生成り)のバタ・デ・コーラでのアレグリアス。
コンクールでも踊り込んでいるということもあるのか、この日一番彼女の魅力がでていたように思う。明るい曲があうのかな?
ただし、マントンは、せっかく技術があるのだからもう少し、持ち重りのする、地も刺繍も厚い、フレコもきれいなものをつかった方がより美しくなると思う。タブラオだから小さめのものにした?
髪もきちんと整え、衣裳もきちんとした、いわゆるエスクエラ・デ・セビージャ、セビージャ派的な装いだから、もっと美しくなり、踊りにも重みがでてくるのではなかろうか。
もっているものも、積み重ねきたものも、方向性もいい彼女には、さらなる高みを目指してほしい。
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