その1、その2で作品内容をご紹介しましたが、ダンサーたちにあまりふれることができませんでした。
スペイン国立バレエ団といえば、ハビエル・ラトーレ、ハビエル・バロン、アントニオ・カナーレスやホアキン・コルテスら、現代フラメンコをリードする舞踊家たちを輩出してきた名門。
初来日のときはメルチェ・エスメラルダとホセ・アントニオが主役を踊り、その後、ローラ・グレコ、アントニオ・マルケス、アイーダ・ゴメス、アントニオ・ナハロら、自らの舞踊団を立ち上げたり、国立バレエの監督に就任するダンサーをも生み出してきました。
そのバレエ団に今、どんなダンサーがいるのでしょうか。
現在、プリンシパルで活躍しているのはフランシスコ・ベラスコとエステル・フラードの二人。いずれもセビージャのコンセルバトリオ(公立舞踊学校)出身です。フランは1991年入団で96年から第一舞踊手として活躍したベテラン。一時退団していたもののナハロ監督就任時に復帰しました。今回は「アレント」で素晴らしいパ・ド・ドゥを踊り、またフィナーレでも若手に負けない活躍をみせています。若い頃、たとえば初めて「メデア」のイアソンを踊ったときなど、線が細いイメージだったのですが、年をへて、風格がでてきました。ひとつひとつの動きが美しく、また余韻があって、素晴らしいダンサーです。
エステルは1998年入団。翌年にはソリスト、2003年には第一舞踊手に昇格。2010年まで在籍しましたが、その間もホアキン・グリロやラファエル・エステベスなどとも共演するなど外部出演もして経験を積んでいます。今回はマントンのソレアを熱演。テクニックも非常に難しいこの曲をしっかり踊っています。
第一舞踊手の中からはアローニャ・アロンソとエドゥアルド・マルティネスの二人が出演していました。「アレント」で美しいソロを踊ったアローニャはエステルと同期98年入団。一時バレエ団を離れていたこともありましたが、2005年に復帰。2012年の第一舞踊手に昇格しました。きゃしゃな身体でバレエ的な美しい表現を得意とする彼女は実は1歳半の子供がいるママでもあります。「アレント」「サグアン」の両方に出演しているエドゥアルドはマドリード出身で、2002年入団。05年にソリストに、10年に第一舞踊手に昇格しました。「アレント」では「アセチョ」でリーダーを踊るかたわら、「サグアン」ではカンティーニャ・デ・コルドバのパレハを踊るという活躍ぶり。また「アレント」ではフランとダブルキャストでパ・ド・ドゥも踊っている実力派。
と、カテゴリー順にご紹介しましたが、今回のマドリード公演で私が一番気になったダンサーは実はソリストのホセ・マヌエル・ベニテス。どちらかというと小柄できゃしゃなのですが、とにかく形が、動きが美しい。そしてフラメンコな味わいが、国立バレエ随一といっていいくらいにあるのであります。 これまでにもみているはずなのですが、こんなに気になったのは初めてかも。2005年入団の彼はマラガ出身でセビージャのアンダルシア舞踊団にも在籍していたというのでそっちの方でも必ずみているはずなのですが、これまでの印象は正直あまりありません。いい役をもらうようになったからか、彼が研鑽を積んで抜きん出た印象になったのか? わかりません。でもきっと日本でも人気が出るのではないかと思います。
もう一人の男性ソリストがセルヒオ・ベルナル。この人もすばらしい。抜きん出たダンサーです。背も高く、手足も長く、ハンサムで、主役を踊るために生まれてきたような人。華があって、アポロンみたいな感じ、といえばわかってもらえるでしょうか。ラファエル・アギラール版の「ボレロ」の主役を踊っている人なのですが、今回はダブルキャストで「アセチョ」のリーダーを踊っています。 彼も日本で人気がでること間違い無しです。身体能力も高く、また自分をはっきりもってインタビューにも的確にこたえていける、すごくしっかりした24歳。すごすぎます。
実際、ホアキン・コルテスを最初にうりだしたプロデューサーの肝いりで、外部出演でローラ・グレコと共演したりもしているようです。今後どんな展開を見せるか楽しみですね。
男性ダンサーではほかに、ポスターになっていたセビージャ出身のフアン・ペドロ・デルガドやマドリード出身のカルロス・サンチェスも印象に残ります。女性ではカンティーニャ・デ・コルドバを踊ったモニカ・フェルナンデス(ガデス舞踊団でカルメンを踊った人)とサラ・アレバロ(元アンダルシア舞踊団)なども気になる存在です。
ガデス舞踊団といえば、ガデス舞踊団日本公演で主役を踊ったアンヘル・ヒルとクリスティーナ・カルネーロも現在は国立で踊っています。主役級のダンサーが群舞にいる。これもバレエ団の強みなのかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿