ホアキン・グリロ「エル・エンサージョ」
エンサージョ、練習をそのまま舞台にのせて
これまでの作品の中で踊ってきた曲などを踊るという試み。
上手にステレオセットとシャツのかかったコート掛けと腰掛け。
下手に椅子が3つ。
そこにリュックを肩にしたホアキンがやってくる。
ズボンは幅広のジャージ。
上着を着替え、腰掛けで白い靴にはきかえる。
足ならし。見事な足技健在。
ステレオセットに近づきブレリアをかける。
モラオのブレリア。
2年前のビエナル。ロペ・デ・ベガ劇場。
幕前でモラオが弾いて、客席から現れたグリロが踊ったブレリア。
モラオのブレリアがグリロの足で演奏される。
グリロのサパテアードは音楽。
パコ・デ・ルシアとの長いツアーで
パコのファルセータをサパテアードで伴奏してたのにも似て。
ゆるぎない下半身。ときどきぐにゃりとする上半身。
ブレリアの、力がぬけるところで彼の上半身も力が抜ける。
肩をせばめる。グリロならではのスタイル。
下手で扉を叩く音。
ホセ・バレンシアがやってくる。小芝居。
マイクをつけているホセの言葉はきこえてもグリロの答えはきこえない。
パルマでサパテアード。
歌をいれてまたまた足。
コンパスを自在にあやつる楽器のようなサパテアード。
そこへギターのフアン・レケーナとカルメン・グリロもやってきて
ティエントスからタンゴスへ
シギリージャにカバーレス
ソレア・アポラー+カンシオン・ポル・ブレリアス
カルメンのカルタヘーナ
アレグリアスにいくとみせかけて再びブレリア
大方の観客はグリロの技に大喜び
だけど私はちょっとうかない気分。
長過ぎるフィン・デ・フィエスタのような、とでもいいましょうか。
楽屋落ちを延々みせられていたような感じ。
グリロの足はすごいし、その超絶コンパスについオレ!もでちゃうけど
練習風景という言い訳なのかもしれないけれど
すべての曲が同じ感じ。
サパテアードにぐにゃん。ブレリア。長い長いブレリア。
芝居仕立てにするならそれなりの準備をしてほしいし
足で遊ぶだけでなく全身のバランスも考えてきちんと踊ってほしい。
何をやってもすごい、彼みたいなフラメンコだから許されることなのかもだけど
終わる前におなかいっぱい。
パジャサーダ、ピエロみたいなおふざけとテアトリート、小芝居よりも
真摯なフラメンコがみてみたい。
いやユーモアもフラメンコの一部ですよ。それはよくわかってる。
お客さんも、練習を本当にみているみたいで楽しんだのかもしれない。
それはそれでいいんだけど。
もうこれは個人的なわがままかもだけど、彼ほど踊れるんだったら
きっちり、たとえばシギリージャならシギリージャの中に入って
曲そのものをきっちり踊ってほしい。
彼なら彼だけにしか踊れないクラシックなフラメンコがあるはず。
超絶スピードで繰り広げられるサパテアードをおううちに
グリロの白い靴にアディダスの三本線がみえてきた。
それが彼のスタイルで、これでお客さんがよろこんでいるなら
こっちがどうこういうことではないのかもしれないけど。
0 件のコメント:
コメントを投稿