志風恭子のフラメンコ 最前線
スペイン、セビージャ在住フラメンコ研究家による最新のフラメンコ情報
2025年10月31日金曜日
セビージャ ギター祭 マリア・エステル・グスマン/エドゥアルド・トラシエラ
2025年10月30日木曜日
セビージャ・ギター祭 ロレンツォ・ミケリ/ホセ・マヌエル・レオン
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| ©︎ Festival de la Guitarra de Sevilla |
セビージャ・ギター祭 マヌエル・バレンシア
セビージャ、ギター祭、先週はクラシックギターの公演が続いていたのですが、今週はフラメンコ公演が続きます。
28日は、セビージャの美術館でマヌエル・バレンシアのリサイタル。小雨模様でしたが、無料ということもあってか開演前には長い長い行列が。
会場は美術館の常設展示室。壁には宗教画が並部ところに椅子がずらっとならべられ、その奥にポツンと椅子が一脚。マイクも照明も、特別なものは何もありません。
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| ©︎ Festival de la Guitarra de Sevilla |
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| ©︎ Festival de la Guitarra de Sevilla |
最後はブレリア。これはもうお手のもの。
2025年10月21日火曜日
エドゥアルド・ゲレロ『デバホ・デ・ロス・ピエス』
10月19日はセビージャ、マエストランサ劇場でエドゥアルド・ゲレロ。
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| ©︎ Teatro de la Maestranza/Guillermo Mendo |
作品は4年前ヘレスのフェスティバルで初演。歌い手がイスマエル・デ・ロサからヘスス・コルバチョに、踊り手の一人はアルベルト・セジェスからフリア・アコスタに、と一部のキャストが変わっているけど基本は同じ。舞台上での白い衣装への着替えから始まり、白いゴムのリボンのようなものでできたカーテンが舞台3面に。
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| ©︎ Teatro de la Maestranza/Guillermo Mendo |
カーテンにビデオが映写されたりとか、今っぽい演出。フラメンコ曲の間にノイズが入ったり、もそうですね。
でももう、最初に映像を使い始めた頃のような新鮮さや驚きはなくて。正直、はいはい、そうですかって感じ。よっぽど上手い使い方しないと逆効果かも。
大きなシンバルを紐づけて踊ったり、カディスのカルナバルで使うピトーと呼ばれる楽器で会話したり歌いながら踊ったり。色々工夫しているのはわかる。
ビデオのレメディオス・アマジャが歌うタンゴを踊り、最後はパレスチナ解放のメッセージと共にソレア。最後はピエタのようなポーズの上に出演者たちが白い衣装を脱ぎ捨てておしまい。これはフラメンコも世界の一部で繋がっているという意味なのかしらん。タイトルは足の下、という意味だから足の下の大地、地球は全部繋がっている、ということ?
昨年の夏、昔ながらの、じゃないけれど、彼の歌を踊るフラメンコに大興奮したけど、だからかなあ、エドゥは本当にすごいダンサーだと思うのだけど、映像で気が散って、フラッシュライトに目を背けるってのは年ですかね。踊りそのものを、主役を、よりよくみせる演出なら大歓迎なんだけど、演出が目立ちすぎるのは好きじゃないっていうか。でもこれが彼が望んだものなわけで。エバのコンテぽいイントロにも通じるけど、いいアーティストには好きなことをする自由があって、こっちはそれを見るしかないんですね。はい。これもエドゥ。でもやっぱ私は去年の夏のエドゥが好き。そういうのがもっと観たいってのは間違い無く私のわがまま。わかってます。ごめんよ。
2025年10月20日月曜日
セビージャ、ギター祭 ホセ・アントニオ・ロドリゲス
今年もセビージャ、ギター祭が始まりました。
フラメンコ公演は今日が初日。エスパシオ・トゥリーナでホセ・アントニオ・ロドリゲスのリサイタル。
マイクなしの生音、ギター一本での真剣勝負。
コルドバ出身。ビセンテ・アミーゴより3つ年上で、ウニオンやコルドバなどコンクールでも先に優勝、ソロデビューも早かった。オーケストラとの共演曲も発表しているベテラン。
ソレアやコロンビアーナ、ファルーカなど次々に演奏。マリオ・マジャなどへの舞踊作品も多数作曲してるだけに、ブレがない。耳に心地よい、聴きやすい曲。
最後に演奏したマンハッタン・デ・ラ・フロンテーラはやはり名作。
フェスティバルのfbにビデオがあったのでリンク載せときますね。
来週はマヌエル・バレンシアやホセ・マヌエル・レオン、エドゥアルド・トラシエラ、5日には菅沼昌隆さんも登場します。
2025年10月18日土曜日
スペイン国立バレエ マドリード、テアトロ・レアル(王立劇場)公演『メデア』
日本にもファンの多いスペイン国立バレエ団の、マドリードのオペラハウスでの公演は、振付家ホセ・グラネーロへのオマージュとして、彼の作品『レジェンダ』、『クエントス・デ・グアダルキビル』『ボレロ』そして『メデア』という4作品とバレエ団メンバーによる男性ソロの新作小品というプログラム。
『ボレロ』や『メデア』は何度も日本で上演されているし、他の二つも初演時に見てるし、マドリーに行くまでもない、はずなのですが、今回出かけて行ったのは、エバ・ジェルバブエナがメデアを踊るということから。自分一人だけだったり、群舞がいたりと作品によって変わるもののの、98年にカンパニーを創立して以来、基本、自分の思うままに作品を作って踊ってきた彼女が、物語の要素のあるフラメンコ作品の古典とも言える、名振付家の作品の主役を踊るというのだ。これは行くしかないでしょう。
一部はアルベニスの曲にホセ・ルイス・グレコ(ホセ・グレコの息子、ローラ・グレコの兄)の曲を組み合わせ、男女のソリストと群舞で見せるスペイン舞踊作品。女性たちが奏でるカスタネットと男性の力強いサパテアード。男性衣装のたっぷりした袖が、動きをより美しく見せてくれるのに注目。
続くソロ作品、初日は監督補佐のミゲル・アンヘル・コルバチョの新作で、スルタン風?にも見える、長めのジャケットやベストやマントをスカートのようになびかせて、スカルラッティのピアノソナタの生演奏で踊るというもの。スカートを履かずともスカートのような効果を出す衣装、色々みんな工夫していますね。力強く美しい。なお偶数日はエドゥアルド・マルティネスが自身で振り付けた民族舞踊系の曲『アリエイロ』だったそうです。
『クエントス・デル・グアダルキビル』は、セビージャ出身の作曲家トゥリーナの曲に振り付けた男女のパドドゥ。南国風の雰囲気の中、久しぶりに帰ってきた恋人との逢瀬。94年の初演ではアントニオ・マルケスとローラ・グレコが踊ったパレハをカルロス・サンチェスとミリアム・メンデスが踊る(ダブルキャストで奇数日はデボラ・マルティネスとマティアス・ロペス)のだけど、ミリアムにローラが重なって見えてきて涙。マルケスもこういう、伊達男的な役柄を演じるのが本当に上手だったよなあ、など思い返すなど。
そしてボレロ。日本では必ずと言っていいほど上演されてきたグラネーロのボレロ。アールデコ風の装置と衣装。華やかでスペイン舞踊の魅力に溢れているいい作品、古典として次の世代へ伝えたい作品の一つだと思うのだけれど、スペインで上演されることはあまりなく、最後に上演されたのは90年代だったといいます。日本公演の時に、これは日本でしかやらないから装置が置いていこう、なんて冗談が飛び出るほどでありました。確かに振り付けは今の複雑で超テクニックが必要なものに比べると驚くほどシンプルかもしれないけど、サパテアード、回転、ポーズ、舞台の上のコンボジション、装置を使っての人の出入りなど本当によく考えられていて、最後の盛り上がりでスタンディングオーベーションとなったのも頷けます。
休憩を挟んでいよいよ『メデア』
なんの前知識がなくともストーリーがわかるという名作。これまでに見てきたメデア、アナ・ゴンサレスはひたむきで、ローラ・グレコは物狂い、マリベル・ガジャルドは母の愛、エステル・フラードは存在感、と言った具合に私にとってそれぞれのイメージがあるのですが、、エバのメデアは恨みのメデア。ぐじぐじ恨みつらみを募らせていく感じ。魔法のシーンの魔女っぽさもこの恨み晴らさじ、的な感じで、ローラの愛ゆえに狂ってブレーキ効かない感じとは別物のように見えました。
物語作品をあまり踊ってきていない、基本、自分の振り付けを踊る彼女に取ってはすごい勇気のいる挑戦だったと思うのです。マドリードの条例で暴力シーンがある作品に子役を出せず、子役を18歳の人が務めることとなり、ただでさえ小柄なエバにとってはマイナスな状況もあったのですが、演じ切った彼女に拍手。
イアソンのフランシスコ・ベラスコやクレオンテ(花嫁の父)のクリージョも重厚感がでて、よりリアル。花嫁のエステラ・アロンソも本当にかれんで適役。
若者たちにチンピラ感が出ないとか、不満がないわけじゃなかったけど、名作は名作。王立劇場公演は日曜までだけど、7月にはサルスエラ劇場でメデアは再演されるそう。24時間経った今でもマノロ・サンルーカルのドラマチックな音楽がずっと頭の中で響いているのでありました。
ギターもオケも生演奏。オケはボレロもちょっと重いな、と思うところもあったし、メデアでも間合いがあれれ、ってとこもあったけど(いつも録音のを聴き慣れているせいかも)、音の分厚さはさすが。ですね。
スペイン国立バレエ団はこういった古典的な作品から先日の『アファナドール』のような超現代的な作品まで幅広いレパートリーを持っているのが魅力でありますね。そう、パリのオペラ座バレエや英国ロイヤル・バレエ団などと同じように。
2025年10月8日水曜日
日本フラメンコ協会新人公演配信を観て2025 その4 3日目舞踊
新人公演感想続きです。
かなり辛口に思えるかもですが、こうすればもっと良くなるはずなのにと思ったことをついいいたくなってしまうのです。ごめんなさい。
3日目
9月26日(金)
B-39 「アレグリアス」
身体も表情も緊張でかたくなってるのかな。水色の細かいフリルの段々が可愛いドレス。上半身そるとか傾けるとか肩を動かしてみるとか、もう少し柔らかい雰囲気出るとよかったね。
B-40「シギリージャ」
無伴奏の歌サリーダからの足、回転で始まる。黒い衣装。歌をゆっくりゆっくりマルカール。自分なりのイメージ持っているような感じ。気持ちのいいポイントからちょい遅く入る感じがあったりする。ちょっと芝居がかった去っていくとこかっこいい。
B-41 「ソレア」
歌をゆっくり丸カールして始まる。黒い衣装に白刺繍のシージョ。自分なりのイメージがあって、踊っているような感じ。ソレアなんだけど、時々こぼれてしまう微笑みに踊ることを楽しんでいる感じがあっていい。
B-42 「ソレア」
赤い衣装。ポーズや動きを順番通りにやってるだけみたいに見えてしまうのは何故だろう。ソレアという曲がどういう曲なのか、一つ一つの振り、動きの意味、方向性を考えよう。気持ちと動きを繋げよう。とにかくいっぱいいろんな人のソレア見てイメージを作っていくといいのでは。
B-43 「ソレア」準奨励賞
紺の衣装に黒のシージョ。ゆっくりゆっくりマルカール。マヌエラやらエバやらイメージを持って踊っている感じ。踊る喜びで笑顔になってしまうのがB41と同じ。気持ちありすぎて先走らないように。
B-44 「シギリージャ」
黒い衣装にきん刺繍のシージョ。気持ちに技術が追いつかない感じの拙いところはあるが気持ちというか自分のシギリージャのイメージはあって踊っているような。首が前にでるというか下向きすぎな気もする。そういう人多いですね、暗い曲だからといって下ずっと見てるのも変。顎をあげていきましょう。ブラソあげていく時手首曲げて手が落ちて残ってしまうように見えるのとか、腕から手の動きも見直すといいかもです。
B-45 「バンベーラ」
紫のシンプルなお衣装。まず、なぜソレアでもソレアポルブレリアでもなくバンベーラなのか、ということを考えるべき。そしてどんなふうに踊りたいかをイメージ。歌を聞いて歌に反応して踊りたい。観客を意識しよう。稽古ではなく皆に見てもらうものなのです。せっかくの伸びやかな歌がBGMにしかなってない。もったいない。
B-46 「ティエント」
一人で踊っている感。自分の世界に浸ってしまっていて外の音は聞こえていないような。振り優先。意味わからずに動いているような感じがしてしまう。スカート上げすぎだったり、ひらひらさせ方がフラメンコぽくないのだけど多用。衣装のデザインのせいもあるのかな。
B-47 「タラント」
ファルセータをマルカール?して始まる。ベージュに黒レースのお衣装。袖はスケ生地水玉、花なし、櫛のみ。曲についてのイメージはありそう。下向き加減だと首がめり込んで見えてしまうので顎あげたほうが綺麗。タンゴで突き抜けていく感じとか構成的にはまちがってない。
B-48 「ソレア」
黒衣装、金刺繍シージョ。自分のイメージはあって踊っていそう。回転もできている。ただ首が落ちちゃう。首の線綺麗なので勿体無い。しっかり前見て。
B-49 「ロマンセ」
曲のイメージに合った、東欧ヒターナ風というか、ノマドなキャラバンヒターナ風衣装をちゃんと選んでいるし、この場合はこの三つ編みも正解。これは曲のイメージにあった衣装を選んだいいお手本。手は手、足は足というふうに部分部分が別々で全体のつながり、なめらかさというかこなれた自然な感じがない。動きに余韻、、間合いを考え、待ちを入れるといいのでは。
B-50 松本 美緒「ソレア」
黒のシンプルなワンピース。シギリージャみたいな雰囲気のソレア。多分、そんなソレアをイメージして踊っているのだろう。睨む目力。迫力。ムチョコラヘなソレア、ありだと思います。
B-51 「シギリージャ」
赤いワンピースにジャケット。どこか南米風にも見える衣装、袖口のふわふわの意味?_腰のフリンジの意味。シギリージャという、フラメンコの曲種の中で最も深刻で悲劇的な曲には相応しくない気がする。回転要練習。最後も狐につままれたような。
B-52 「グアヒーラ」
フリルに赤い縁取りのある黄色のツーピースにカスタネット。あわただしくあっちへこっちへと動くのは、ゆったりしたイメージのグアヒーラには遠いような。アストゥリアス入れたりは面白いけど、なぜ?
B-53 「アレグリアス」
意気込みよし。意欲はありそう、楽しんでいる感もいい。ただまだ色々余裕なさそうなので踊り込んでいくと良くなるかも。いっぱい見ていっぱい踊って前進あるのみ。
B-54 「タラント」
サリーダなしの歌から突然始まるのは時間制限に合わせてなのかな。ちょっとびっくり。黒い衣装に赤紫のフレコのシージョ、黒バックに黒衣装でほとんど見えない。顎引きすぎ上向こう。一瞬、顎上げた時、背筋もスッと伸びてムイフラメンカでかっこよかった。腕長くて綺麗なのでブラソの表現鍛えるといいんじゃないかと思ったり。








