2020年12月30日水曜日

カナーレスとサラ・バラスに芸術金章

今年度の芸術金賞の受章者が発表され、 総勢32人、映画監督や歌手、俳優とともにアントニオ・カナーレスとサラ・バラス の名も。

おめでとうございます。


La Bienal 2020 Claudia Ruzi





2020年12月20日日曜日

へスース・カルモナ『サルト』

 ビエナルで上演されるはずだったへスース・カルモナの新作『サルト』。直前に出演者の陽性が発覚し、延期になったものが12月19日、ようやく、上演されました。会場はロペ・デ・ベガ劇場。ビエナルの時はひとつおきだった座席が、1列おき、2席おきとなっているのは、アンダルシアでも感染が拡大していることを実感します。

へスース・カルモナは1985年バルセロナ生まれ。2020年、スペイン国家舞踊賞を受賞した実力派。地元バルセロナの舞踊学校に学び、2006年国立バレエに入団。国立では第一舞踊手にまで上り詰めるものの、自分の表現を求めて飛び出し、2012年に自身の作品を発表。以後、次々に作品を発表し、意欲的な活動を続けています。開店まもなかったガルロチで踊っていたのを覚えている人もいるかもしれません。

『サルト』はその彼の頭の中をのぞいているような、そんな作品でした。

面白いし、私は好きだけど、雑然としすぎという意見もあり、うん、確かに冗長なところはあるし、整理整頓したらもっと良くなるのは確かだけど、私的には、涙が滲むような感動的な瞬間が何度かあって、それだけでまる。初演だし、これからきっともっと良くなるはず、という希望的観測。

いやあ、さまざまなアイデアが飛び出し、超テクニックで表現していく作品で、へスースの他に、6人の男性ダンサーが出演しているのですが、いやあ、彼らもすごい。最先端のフラメンコ/スペイン舞踊のテクニック満載。こりゃやってる方も大変だけど楽しかっただろうなあ。

客席の照明が付いている状態で、舞台上では上半身裸のダンサーたちがイスラム神秘主義の旋回舞踊のように、スカートはいてくるくる回っている。場内が暗くなると、スカートをカパ、マントもしくはマントンのように振り回したり。

前半は、男性主義のイメージで進んでいく感じ。マヌエル・リニャンの『ビバ!』と対をなすような? そういえばあれもマヌエルと6人の男性ダンサーですな。

背広にサングラス。ヘルメットに拳闘のミットをつけたり、歌い手のホセ・バレンシアがビセンテ・エスクデーロの男性舞踊十戒の中の言葉を唱え、それで踊るへスース。

その男性性に縛られていたことを象徴するような場面、そしてそこから解放されるイメージも。かと思うと男性同志の恋愛をイメージさせるような曲があったり、自分の中にいるさまざまな自分と向き合い、葛藤するようなイメージもあって、カオスな感じも。

ファルーカやタンゴ、ブレリア、アレグリアス。フラメンコの要素も十分あるけれど、現代舞踊的なとこも、ボレーラも、アーバンダンスとでもいうのかな、今風のダンス的なとこもあって、いやあお腹いっぱいなくらいにダンス。ダンス。ダンス。

それもソロよりも群舞が多いかな。

これで終わりかと思うとまた続いていく感じ。いや、ほっといたら一日中でも踊ってますね、彼らは。

フアン・レケーナの音楽は美しく、ホセ・バレンシアはダンサーたちと共に踊り、演技もし、熱唱し、彼らのフラメンコと今風の音楽やクラシック風やアラブ風、さまざまな音楽も混ざり合い、激盛り。

後半はへスースの内的葛藤を表現しているような感じ。子供が生まれたのかな。的な場面もあり。

へスースは得意の回転で踊りまくります。なんだか昔のカニサーレスを思い出させます。みんな、早いことに注目して、早くなくてもいいのに、と思ったけど、それが彼の言葉、彼が彼の中にあるものを表現するために必要な速さだったんだよ、それと一緒で、へスースに言葉はあの回転で、それで自分の中にある、言葉にならない思いを表現している、そんな感じ。技術は言葉。自分の持ってる言葉で自分を語る、わけでございますな。

演出家がスタッフに入っているんだけどうーん、どうなんでしょう。色んなアイデアの交通整理をして、わかりやすくしてくれる人が必要な気がします。照明も特に前半、暗すぎて踊りが見えないし(私3列目に座ってたのに)。

それでもなんでも、へスースをはじめとするダンサーたちの踊りたいという気持ち、その形の美しさに感動したのも事実で。

戦うのではなく団結しすぎるのでもなく、一緒に楽しむのはいいね、的な感じもあって。

プロモーション写真ですが最後こんな感じ。


うん、整理整頓されたものをもう一度見たい。

二つの作品にしてもいいかもね。男性主義、男性的なものを告発する(というと思い出すのはロシオ・モリーナの『カイダ・デル・シエロ』もあるけど、男性側から、ということで全然違う感じだよ)ものと、内的葛藤を描くものと二つ。


あ、ラジオのサッカー中継のように舞踊を言葉で語るのをサッカー見ているようにダンサーたちが興奮して見守るという場面があって、これ、お気に入り。


Explorar el cerebro de un bailarín

Parece que estoy viendo dentro de cabeza de un bailarín, qué piensa y qué siente. Bailar, bailar, y bailar. Ser macho. La masculinidad que hace disfrutar pero también le ata. Lucha interminable. Solidaridad. Pelea de los pensamientos dentro de ti. Alegría de compartir momento de disfrutar. Rotura. Esperanza. Niñez o nacimiento. 

Hay tantas y tantas imágenes e informaciones,  debería ordenar un poquito más.  Tal vez puede hacer dos obras, uno sobre masculinidad y otra será su conflicto interior y sentimiento profundo. No se puede contar todos en una sola obra.

Llena de super técnicas, de danza variadas con bailarines talentosos. Girar, girar y girar. Técnica es lenguaje de bailarines. Locuacidad es un arma de dos filos, asombroso pero si pasa un límite es cansino.  

Fue un estreno. Me ha gustado, eso sí, pero creo que puede mejorar algunos aspectos, por ejemplo, luces demasiado oscuras en muchos momentos o ritmos de obra. Teniendo tantos talentos como Jesús y sus bailarines y músicos, seguro que lo conseguirá. 

ah, me encantó escuchar la danza, como locutor de radio retransmitiendo. Es irónica y divertida. 










2020年12月19日土曜日

スペイン舞踊とフラメンコの振付コンクール

 12月16日、第29回スペイン舞踊とフラメンコの振付コンクールの決勝が行われました。


入賞者は以下の通りです。

振付第1位同点で2名/アルベルト・セジェス『カルディナル』、サラ・カーノ『アリ、オリ、アル』

振付第2位/エンリケ・アリアス・ピンタドとヘスス・イノホサ『エランテ』

ソロ振付第1位/サラ・ヒメネス『バリアシオン・ア・ティエンポ』

ソロ振付第2位/フアン・フェルナンデス『デ・ロス・プエルトス』

舞踊のためのオリジナル音楽賞/ミゲル・ペレス『デ・ロス・プエルトス』

AISGE財団賞女性舞踊家/サラ・ヒメネス、男性舞踊家/ジョエル・バルガス

なお、そのほかの各賞(スペイン国立バレエ団の練習に参加できる、コンセルバトリオで振り付けるなど)の発表は12月21日、ウエブ上で行われるとのことです。



29º PALMARÉS
Certamen de Coreografía de Danza Española y Flamenco
Primer Premio de Coreografía EX AEQUO: ALBERTO SELLÉS, “CARDINAL” / SARA CANO, “HARRI, ORRI, AR!”
Segundo Premio de Coreografía: ENRIQUE ARIAS PINTADO Y JESÚS HINOJOSA, “ERRANTE”
Primer Premio a una Coreografía de Solo: SARA JIMÉNEZ, “VARIACIÓN A TEMPO”
Segundo Premio de Coreografía de Solo: JUAN FERNÁNDEZ, “DE LOS PUERTOS”
Premio a una Composición Musical Original para Danza: MIGUEL PÉREZ, “DE LOS PUERTOS”
Premio Fundación AISGE a una Bailarina Sobresaliente: SARA JIMÉNEZ
Premio Fundación AISGE a un Bailarín Sobresaliente: YOEL VARGAS


2020年12月13日日曜日

ヘレスのフェスティバルは5月に延期

毎年2月から3月にかけて行われているヘレスのフェスティバル。世界で唯一のフラメンコとスペイン舞踊に特化したフェスティバルとして、日本のフラメンコたちにも親しまれています。

二十五周年を迎える来年は、5月の開催となることが12月10日、フェスティバルからのプレスリリースで発表されました。

新しい日程は5月6日から22日まで。



今年のフェスティバルは、中国からの参加者がキャンセルになったり、イタリアでの感染増加でイタリアからのキャンセルも相次ぐなどする中、スタジオに消毒液を用意するなど対策をしながら行われました。フェスティバル終了間も無く急激に感染が増加し、外出禁止になるなどしました。

一流アルティスタによる短期クラス、クルシージョが魅力となって、他のフラメンコ祭に比べ、圧倒的にスペイン国外からの参加が多いということもあるのでしょう。

まだプログラムの発表はされていませんが、来年もきっと素晴らしい作品が並ぶことでしょう。

開催時期の変更によるクルシージョの変更などについても近日中に発表される予定とのことです。

5月のスペインはとてもいい季節。通常ならこの時期にヘレスのお祭り、フェリア・デ・カバジョ、馬祭りも開催されるのですが、来年はまだ未定とのことです。


ちなみにヘレスのフェスティバル、最初の頃は4月下旬の開催だったんですよね。それが1度、オートバイの世界選手権MOTOGPと重なって、ホテルが取れないなど問題が起きて、2月から3月かけての春の開催となったのであります。ちなみに来年のMOTOGPもヘレスでの開催がありますが、4月30日から5月2日なので、それもちゃんと考えられてます。


みんなで早くヘレスでシェリー酒三昧したいなあ







フアン・パリージャ逝く

ヘレスのギタリスト、フアン・パリージャが亡くなったそうです。

1943年生まれなので77歳。数日前にコロナで入院したそうですが、12日早朝に亡くなったとのこと。朝、Facebookで知りました。

本名フアン・フェルナンデス・モリーナ。父は踊りに定評があったギタリスト、ティオ・パリージャ(1904〜1980)。弟はギタリスト、パリージャ・デ・ヘレス (1945〜2007)、踊り手アナ・パリージャ(1953〜2004)。息子マヌエル(1967)はギタリスト、フアン(1968)はフルート奏者、ベルナルド(1969)はバイオリン奏者と、フラメンコ一家。
テレモートやボリーコ、セルニータらヘレスを代表する歌い手たちや、故マヌエル・モリーナも親戚という、フラメンコの中のフラメンコ。奥さんの兄弟たちも歌い手です。


フアン自身もアントニオ・マイレーナやテレモートら名手たちの伴奏を数多くやってきました。


1992年セビージャ万博アンダルシア館で



ヘレス初の?タブラオ、ラガー・デ・ティオ・パリージャを開き、多くの若手たちのキャリアを後押しをしたという功績も。
ラガーを開く前だったかな、サンティアゴ街で小さなバルをやっていたこともありました。あそこで初めて、まだ魚屋だったルイス・エル・サンボを聴いたなあ。

もう数年前から舞台に立つことはなかったけれど、ヘレスらしいギターを聴かせてくれる、古き良き時代を知る重鎮の、思いがけない別れに、ヘレスのアルティスタはもちろん、世界中のフラメンコたちが追悼の辞をソーシャルメディアに寄せています。
ご冥福を祈ります。

2020年12月11日金曜日

Covid 19の外出禁止も悪いことばかりではない/ロサリオ・トレド『メ・エンクエントロ』

*ネットで現在公開中です!期間限定の予定らしいのでお早めに。 https://vimeo.com/483976174 


短編映画『メ・エンクエントロ』の記者発表に行って参りました。




ドキュメンタリー的でもあり、舞踊作品でもあり、でもビデオ/映画ならではの表現が満載だから、やはりビデオダンサ、舞踊映像作品というのが一番、あっているかもしれません。

そう、これは例えば出来上がった作品が上演されるものを撮影し彼女の踊りそのままを見せるのではなく、彼女の踊りをバラして再構築し、音楽も後から付け加えるなどもしたもので、そこには監督の手が加わっているわけだけど、そうすることで、より生身のロサリオが見えてくるような、そんな作品なのであります。

近日中にVimeoで期間限定の一般公開がされるようなので、そうなったらここにもリンクを載せますが、いやあ、本当に、素晴らしい作品でありました。フラメンコ好きな人はもちろん、ダンス好きや映像好き、みんなに観てもらいたい。そんな作品。



映画より

最初のシーンでの、ロサリオのナチュラルさに微笑まされ、続くナンバーでも同じ文脈で、違うテイクが組み合わされて編集されているのだけど、リズムが、フラメンコの踊りとしてのリズムも、映像作品としてのリズムがキープされている、ところで、おお、これはすごいとなって、どんどん引き込まれていきました。

映画より

Covid19で外出禁止となった中、海外公演の補助金がもらえる予定だったロサリオが、そのお金を映像作品に使えるとなって作ったのがこの作品。外出禁止中にフラメンコ仲間達と話したことなども最初の曲で出てきます。閉鎖される中、「何かをしなくちゃ」「とにかく前進」、とロサリオは彼女の師匠であるチャロ・クルスのスタジオ、べヘール・デ・ラ・フロンテーラにあるエスパシオ・シルベストレにこもって踊ったりもしていて、ビデオは全編、このスタジオで撮影されています。音楽はドイツ人パーカッショニスト、ルベン・ルピックで、なんとこれはリモートで後から映像に合わせて録音したものだそうな。その映像も撮影は二日だけ。あとはリモート。すごいなあ。

撮影した映像を全部見て取捨選択し、その映像をアナ・ソリニス監督が構成していく。それはある意味振り付けでもあり、実際、ロサリオが踊ったそのままだけではなく、間にコンパスを入れ込んだりもしているそう。

ロサリオが踊り、監督が照明を考え、映像をつむぎ、そこに音楽が合わさられていく。カンテ(インマ・ラ・カルボネーラ。熱唱)すら後から、映像を見ながら録音したと聞いてびっくり。実際に音楽を聞いて踊っているもの、そうじゃないもの。両方あるそうです。


映画より

Covid19がなければ出来なかった作品、とロサリオも言ってたけど、Covid19の外出禁止/自粛でこんな素晴らしい作品が生まれるのであれば、あながち悪いことばかりではないということかもしれないということかもしれない、と思ったことでした。

いやね、もちろん、こんなことが起こらずに、世界各地でのフラメンコ公演が続いていて、私も生で舞台を観たいよ。でも、起こってしまったことは起こってしまったわけで。そこで何ができるか、を考えて動くのが正解なんだな、と。

映画より

予算があったという幸運も相まって、この状況でしか生まれえない、新しい作品が生まれた。めっちゃフラメンコで、めっちゃロサリオで、アーティストのクリエーションを追ったドキュメンタリー的な感じもあり、またしっかり一曲一曲を踊っていくのを見る舞台作品のような感じもあり、でも映像ならではの表現もあり。いやあ、堪能出来ます。

ロサリオの、明るく元気なフラメンカという顔だけではなく、深みや芝居心、探究心など、様々な面が見えてくるはず。監督もロサリオを見せることだけに心を砕いているという感じ。ロサリオも自分をよく見せようとかもしてないし、音楽も前へ出ようとしていないのに心に残る。なんだろう、エゴとかではなく、自然な三位一体。

ネット公開が始まったらもう一度絶対見たい作品です。日本でも公開になるといいなあ。