2022年5月30日月曜日

第3回全日本フラメンココンクール決勝結果

 5月22日、スペイン大使館オーディトリアムで、第3回全日本フラメンココンクールの決勝が行われました。11時すぎからカンテ、15時すぎからバイレ、と両部門の審査が行われました。

その結果は以下の通りです。

カンテ部門

優勝 遠藤郷子

準優勝 井上泉

審査員特別賞セージョ・プロピオ賞 齋藤克己

審査員特別賞アフィシオン賞 三枝雄輔

バイレ部門

優勝 石田久乃

準優勝 角谷のどか

小松原庸子賞 幸田愛子

スペイン大使と受賞者の記念写真




今回初めてだったカンテ部門はもちろん、バイレ部門も多くのプロの方が参加されるなど非常にレベルの高いパフォーマンスが多く、特にバイレ部門はどなたが優勝してもおかしくないくらい接戦でした。カンテ部門でもそれぞれの個性が感じられ、と、より豊かなフラメンコの未来へと繋がっていくことが確約されている、という気がします。

なお、いつも言うことですが、この結果はあくまでも、この時のパフォーマンスを見て、今回の審査員の印象による結果です。当日のコンディションなどもありますし、審査員との相性(それぞれの審査員が評価するポイントを得意とするかどうか)もあるでしょう。

 なお、審査員の門下生が出場した場合はその審査員は審査に参加せず、他の審査員の出した得点の平均点を出して、他の出場者と比べて結果を出します。

 また、上位の人が僅差の場合は審査員の話し合いで全員が納得するまで話し合って決めます。各審査員によって評価に差がある人も全くいないわけではないですが、満点評価を最低点で評価している人がいるということなどはおこっていません。また、全員が満点をつけた人もありませんでした。また、審査員は出場者の所属や出身地などの情報は知りません。知り合いがいないわけではありませんが、それが審査に影響してはいないと思います。

志風個人による出場者全員のパフォーマンスへの感想を以下に述べます。これはあくまでも志風個人の感想で他の出場者や主催者とは関係ありません。参加者関係者の方が読まれることもあるかと思いますが、一人に対するコメントだけ読まず、全部、できれば読んでください。そうすることで私個人がコンクールという場に限らず、カンテ、バイレのパフォーマンスに求めているものがわかっていただけるのではないかと思います。私の意見が絶対ということではありませんが、広く観客に受け入れられるためのヒントの一つにはなるのではないかと思います。

なお、今回、アドバイスシートというのを決勝参加者の方に主催者からお送りしますが、そちらの方は審査員全員の意見から抽出したものになります。

カンテ部門

1。川島桂子 ミラブラス/サリーダなしで直接レトラに。カンテの理解度が深い。歌詞の意味、センティードどういう方向性を持っているか、どこでどういうレトラを歌うのがいいのか、スタンダードな組み合わせ方、などいろいろ熟知している。パルマも上手。が、1番目というのもあってか、調子が出ないままに終わってしまった印象。曲のキャラクターからいって歌い上げるよりも、もう少し力抜いて軽妙さが出るとよかったかも。知識経験アフィシオン、何より実力がある人なので他の曲だったら予選と決勝の曲が逆だったらまた違う結果だったかも、などとも思う。

2。齋藤克己 アレグリアス 審査員特別セージョ・プロピオ賞/予選で歌ったタンギージョはグラシアで魅せたが、カディスつながりのアレグリアスは、最初、サリーダのティリティリからして違う。抑えめのテンポで、ギターを引っ張っていく。声もよく出ていたし、アンダルシアのおじさんのような響きもある。曲と歌い手のキャラクターがよく合っているということもあるのかも? 

3、土井康子 ソレア/声がいい。気持ちを込めて大切に歌っている感じもいい。力が入ると音程がずれてしまうのはスペイン人でもよくあるが、全体的に音程の揺れがある感じ。音程が全てではないが、あっているにこしたことはない。

4。遠藤郷子 マラゲーニャ 優勝/自分の声、キャラクターにあった曲種、その中に数あるスタイルの中からの選択も良い。声もよく出ている。真面目にきちんと歌っている。やるべきことをやっているという感じ。欲を言えば、というか、ここからの課題は深みや味わい。その人ならではの持ち味のようなものが 出てくることを目指したい。

5。岡村佳代子 ファンダンゴス/サリーダなしで歌い始める。サリーダは声の調子を整える意味があるのだが。声のコントロールは課題。同じ調子で歌い続けるとどうしても平版な感じになってしまう。語るようなところ、強く歌い上げるようなところ、と起承転結というか、全体の流れを考え、ニュアンスづけをしていくといいのでは。

6。佐藤真寿美 カラコーレス/緊張しているのか、前かがみになってしまっている。胸を開いたほうが声もちゃんと出てくるのではないだろうか。ゆっくり目のテンポ。歌詞の意味はわかっても方向性の理解が不足しているかも。叫ばずに歌ってほしい。

7。許有廷 マルティネーテ シギリージャ/マルティネーテならマルティネーテ、シギリージャならシギリージャで歌わないのはなぜだろう。カンテソロなのだからどちらか一つにした方がいいのではないだろうか。またすでにマルティネーテを歌っているのにシギリージャでまたサリーダを歌うのもよくわからない。歌と歌う人の間に距離があって一体感がないように思えるのはなぜだろう。上手なのだけどどこか冷めた感じ。そういう持ち味?

8。岡村めぐみ マラゲーニャ/音程が上がっていくところがカクカクした感じ。また歌い上げるのと叫ぶのは違う。彼女に限らず大声を出す人が多かったが、声を前に出すことは大声を出すことではない。声のコントロールができナチュラルに歌えるようになれるといい。

9。熊谷喜博 マルティネーテ・イ・シギリージャ/マルティネーテとシギリージャを一緒に歌う必要はない。発音にクセあり、よりよくできるはず。メロディも自分で作っている感じがするところも。ただ好きだ、という気持ちが伝わってくるし、元々あるものに敬意を持ってのクリエーションは、自分の表現になっているということでもあり、悪くない。声にいい響きがある。

10。井上泉 シギリージャ 準優勝/シギリージャを歌うという覚悟を感じさせるサリーダ。恵まれた声にアフィシオンが加わると強い。歌い回しの細部もよく研究している。声のコントロールもいい。

11。中里眞央 ペテネーラ/声量もあり、サリーダもいい。メロディを綺麗に歌える実力があるのだから声を張らずに叙情的な部分をもっと前面に押し出した方がいいのでは?Quisieraの所とか美しい歌いぶりだった。声を張ると不自然な感じ。

12。松林早苗 シギリージャ/サリーダ、少し鼻にかかった感じがちょっと気になるが、いいものも持っている。叫ばずに、音程も気をつけていけば磨かれていくのでは。

13。三枝雄輔 審査員特別賞アフィシオン賞/フラメンコへの深い愛と知識経験が結実している。アフィシオンとはフラメンコを愛し、愛するがゆえにもっと知りたいと探求模索することだと思う。自分のスタイルがある。うまく歌おうとかいうよりも、自分の好きなフラメンコと真摯に取り組んでいるという感じ。フラメンコとこう言う取り組み方をする人がいることは他の人にもいい影響となるに違いない。


バイレ部門

1。鈴木旗江 ソレア/カホンが入っているものの、基本に忠実、という感じ。きちんとしたソレア。気持ちが前にいって体が後から来る感じがちょっとある。

2。吉田芽生 ソレア/歌よりも振り付けが優先されているような感じ。形はきれいだし、勘もいいように思うので、歌やギターとの関係づくり、歌を聴く余裕、歌に応える余裕ができれば、もっと良くなる。歌を愛し、学ぶことも踊るためには必要だと思う。

3。渡辺なおみ シギリージャ/超スピードで始まる。上手だが、彼女がシギリージャという曲をどう捉えてどう表現したいのかが伝わってこない。テンペラメントで押していく感じで、足も強いが、回転は研究の余地があるようにも思う。

4。山下美希 タラント/髪型やメイクのせいかアゲダ・サアベドラを思い出させる。はじけるような感じもあって、きっとこれからもっと上手になっていくだろうという感じ。

5。関真知子 アレグリアス/マントンにバタ・デ・コーラの王道アレグリアス。マントンはもっと持ち重りのするものでも十分使えそう。ところどころ、意味をあまり考えないで踊っている部分もあるような感じ。一

6。伊藤千紘 シギリージャ/気持ちの持っていき方がいい。ただところどころ、振りに入る前にヨッコラっしょ、というような感じで力が入るようなのがちょっときになる。自然な流れで進めるともっといい。

7。石田久乃 ソレア 優勝/最初、調子が出ないようだったが、次第に取り戻していった感。ブレリアになってからの表情がいい。細かいところはもっと丁寧にできるようになるといい。マノが綺麗なのに、手が下になると袖で隠れてしまうのがもったいない。いいものを持っているので、いろんな先生に習って才能を花開かせて欲しい。

8。岩楯颯来 ソレア・ポル・ブレリア/パルマで始まる。レトラをマルカールしていくのはいい。教わった振りを順に追ってなぞっていくのではなく、フラメンコを踊る、ということを意識している印象。トラへコルトだが、多分、帯かスカーフをベルトにするなどしてウエストマークした方がいいのでは?また髪で顔が隠れるのもよくない。べったり固めなくてもいいから、顔にかからないように工夫してほしい。表情や目も踊りのうちなので見たい。

9。本多清見 ティエント/数ある曲種の中からティエントを選んだからには、その踊り手が考えるティエントらしさをみたいと思うのだが、それが見えてこなかった。おそるおそる始めるようなサパテアードの手探り感?また、一つ一つの動きをより丁寧にやることを心がけてほしい。

10。宇根由佳 アレグリアス/白地に緑の水玉の上等なバタにマントンのアレグリアス。赤い靴が可愛い。バタの形のせいか、思うようにしっぽが動いてないような感じもある。多分、この形のバタにあったテクニック、もしくは振り付けにするといいのかも。優雅さもほしい。

11。鬼頭雪穂 ソレア・ポル・ブレリア/ソレア・ポル・ブレリアらしいソレア・ポル・ブレリア。アピールが上手。客席を食いそうな勢いがある。モーニョ、まげはもっと素敵にできるはず。下にペチコートはいていても、ファルダ高く持ち上げすぎる下品に見えて損。似たような感じの振りもあるからもう少し整理するとより良いのでは。

12。角谷のどか シギリージャ 準優勝/ソレア・ポル・ブレリアみたいな始まり。踊り手がシギリージャをどういう曲と捉えて踊っているのかがよくわからない。シギリージャである必要があったのか、他の曲でもよかったのでは、といった振りも多い気がする。いろんな踊り手のものを見て聞いて、自分のイメージを固めていく作業がプラスになるのでは。

13。山本秀子 タラント/タッパもあり手足も長く舞台映えするので、忙しく動くのではなく、もっと抑えた、美しいポーズなどを生かした振りの方が合うような気がする。ドラマチックな表現とかも似合いそう。タラントといういう曲が持つ性格などの理解が進むとより良くなるのでは。

14。手下倭里亜 タラント/自分のフラメンコの世界、自分の表現が完成されているという感じ。ミュージシャンにも自分のしたいことをきちんと伝えられているように思うし、センティードがちゃんとしているのがさすが。

15。幸田愛子 アレグリアス/とても若いにもかかわらず上手。野生的なフラメンコを踊りたいようでで勘もいい。ある程度のレベルに達しているからこそ、回転やマノやブラソなどのテクニックはもっと上達してほしいし、動きと動きのつながりなども考えることが必要になってくるのではないか。丁寧に踊ることを心がけるだけでもプラスになるはず。

16。岸田瑠璃 マルティネーテ・イ・シギリージャ/バストンで大曲に挑む。上手。丁寧に踊っているのに好感が持てる。ペソ、重心の落とし方を意識していくともっと良くなるのでは。また是非見たい。









2022年5月25日水曜日

ビエナル、プログラム発表!

 今年の秋のビエナルのプログラムがセビージャのロペ・デ・ベガ劇場で発表されました!


9月8日から10月1日まで約一ヶ月に渡って65作品が上演されます。

公演時間が重なっているのでどれを見るか決めなくちゃ、なのですが、うーん、これが難しい。面白そうな作品がたくさんあります。

ギターソロ公演が、エスパシオ・トゥリーナでたくさんあるのもうれしいし、パトリシア・ゲレーロやアナ・モラーレス、トレメンディータといったところが自作をついにマエストランサ劇場披露というのにも注目したいです。マエストランサはオペラ劇場で、舞台も広く、客席数も多いので、そこらへんの工夫があるかな? アラメーダ劇場では古いファンにはフラメンコ?って言われるようなフュージョンというか、モデルナとというかの作品もあるし、セントラル劇場ではイスラエル・ガルバンやオルガ・ペリセ、エステベス&パーニョスから若手のパウラ・コミトレやダビ・コリア、ピニョーナなど、これからの舞踊の流れを作っていくだろう才能豊かな人たちによる意欲的な作品が上演されます。カンテは日曜午後のサン・ルイス・デ・ロス・フランセセス教会でのフアナ・ラ・デル・ピパ、ドローレス・アグヘータ、マカニータというのが目を引きますが、他にもホセ・バレンシア、アントニオ・レジェス、イスラエル・フェルナンデス、マリナ・エレディア、マイテ・マルティンなども。

総じて、若手中堅中心で、ベテラン勢が少ないかな?マヌエラ・カラスコくらい?あ、巻いてももうベテランになるのかもなあ、と時代の流れを感じるプログラムです。

カンテ好きからしたらパンセキートやホセ・デ、ラ・トマサ、カルメン・リナーレスら超ベテランやヘレスのルイス・サンボのよう歌い手たちがいないのはちょっと解せないだろうな、と思ったり。ヘレスはダビ・ラゴスがいるけれどね。

舞踊ではマリア・パヘス、サラ・バラスのようなビッグネームもいないけど、まあ、これだけの期間に全部詰め込むのは無理だし、なかなかいいプログラムではないかと私は思っています。これで時間が重なってなかったら良かったんだけどね。どれを見るべきか悩みます。

なお、前売りは今日、5月25日からです!

*今、12時前ですが、見たらまだですね。スペイン時間の朝10時、日本の17時くらいには買えるようになっているかな?

bienal公式ウエブ(www.labienal.com)、セビージャ市の文化機関ICAS (www.icas-sevilla.org) またロペ・デ・ベガ劇場 Teatro Lope de Vega (www.teatrolopedevega.org). から購入可能。





22回ビエナル・デ・フラメンコ

 

98(木)

国際ヒラルディージョ授賞式

99(金)

22回ビエナル・デ・フラメンコ開会宣言/ラウラ・ガルシア・ロルカ

910(土)13時『デ・ラ・マノ・デ…ダニ・デ・モロン

[場]セビージャ ファクトリア・クルトゥラル

910(土)20時『デスデ・ミス・オホス』

[出]〈b〉エバ・ジェルバブエナ、フアン・クルス(コンテンポラリー)

910(土)23時『ジェリ、ジェリ』

[出]アルバロ・ロメロ&ペドロ・ダルニャ

[場]セビージャ アラメーダ劇場

911(日)12時『グラティア・プレナ』

[出]〈c〉フアナ・ラ・デル・ピパ

[場]セビージャ サン・ルイス・デ・ロス・フランセセス教会

911(日)13時『アンティポダス』

[出]〈b〉フロレンシア・オス、〈チェロ〉イシドラ・オリャン

[場]セビージャ セントラル劇場サラB

911(日)20時『カンテス・デル・シレンシオ』

[出]〈c〉ダビ・ラゴス

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

911(日)22時『ラ・レオーナ』

[出]〈b〉オルガ・ペリセ

912(月)20時『エン・コンシエルト』

[出]〈g〉ビセンテ・アミーゴ

[場]セビージャ マエストランサ劇場

913(火)20時『ルーブリカ』

[出]〈c〉マリア・テレモート、ペドロ・リカルド・ミーニョ

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

913(火)21

[出]〈g〉ヘラルド・ヌニェス

[場]セビージャエスパシオ・トゥリーナ

914(水)20時『デリランサ』

[出]〈b〉パトリシア・ゲレーロ

[場]セビージャ マエストランサ劇場

914(水)21

[出]〈g〉アルバロ・マルティネーテ

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

914(水)22時『デ・ロ・ウーモ(プリメルワーク・イン・プログレス)

[出]〈b〉ダビ・コリア

[場]セビージャ セントラル劇場

914(水)23時『トリアーナ・ビーバ!』

[出]ゲスト〈b〉アントニオ・カナーレス、パストーラ・ガルバン、〈c〉マリア・テレモート、サマラ・アマドール、フアン・ホセ・アマドール、〈g〉ホセリート・アセド、フィティ・カリージョ、〈perc〉パコ・ベガ他

[場]セビージャ オテル・トリアーナ

915(木)20『フラメンコ、エスパシオ・クレアティーボ』

[出]〈b〉アルフォンソ・ロサ

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

915(木)21

[出]〈g〉カニート

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

915(木)『テリトリオ・ホーベン』

[場]セビージャ オテル・トリアーナ

916(金)20時『ペクリアル』

[出]〈bアナ・モラーレス

[場]セビージャ マエストランサ劇場

916(金)21

[出]〈g〉ヘスース・ゲレーロ

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

916(金)23時『ハレオ・イズ・ア・クライム』

[出]〈ビデオジョッキー〉ロス・ボルブレ

[場]セビージャ アラメーダ劇場

916(金)23時「ウエルバ、ラ・ルス・デル・フラメンコ」

[出]ゲスト〈c〉サンドラ・カラスコ、〈c〉ヘロモ・セグーラ、ヘスース・コルバチョ、マカレーナ・デ・ラ・トーレ、オリビア・モリーナ〈b〉マリア・カネア、〈g〉マヌエル・デ・ラ・ルス他

[場]セビージャ オテル・トリアーナ

917(土)13時『ラ・マノ・デ…パトリシア・ゲレーロ』

[場]セビージャ ファクトリア・クルトゥラル

917(土)20時『ウニベルソ・フラメンコ』

[出]〈c〉イスラエル・フェルナンデス

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

917(土)21

[出]〈g〉ホセ・アントニオ・ロドリゲス

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

917(土)22時『セイセス』

[出]〈b〉イスラエル・ガルバン

[場]セビージャ セントラル劇場

917(土)23

[出]〈c〉フアン.ホセ・アマドール、〈piano〉アレハンドロ・ロハス・マルコス。〈ラップ〉フアニナッカ

[場]セビージャ アラメーダ劇場

917(土)23時『タブラオ』

[出]〈cgb〉ラス・トレス・ミル・カンテーラス

[場]セビージャ オテル・トリアーナ

918(日)12

[出]〈c〉ドローレス・アグヘータス

[場]セビージャ サン・ルイス・デ・ロス・フランセセス教会

918(日)13時『ザ・ディスペアリング・アクト』

[出]〈b〉ジンカ・エシ・グラベス

[場]セビージャ セントラル劇場サラB

918(日)20時『オリヘン』

[出]〈c〉ラ・トレメンディータ

[場]セビージャ マエストランサ劇場

919(月)22時『アレゴリアス(ロス・リミテス・イ・スス・マパス)

[出]〈b〉パウラ・コミトレ

[場]セビージャ セントラル劇場

920(火)20

[出]〈c〉アントニオ・レジェス、〈g〉ダニ・デ・モロン

[場]セビージャロペ・デ・ベガ劇場

920(火)21

[出]〈g〉ホセリート・アセド

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

920(火)22時『ネブリセンシス』

[出]〈c〉ホセ・バレンシア

[場]セビージャ レアル・アルカサル

921(水)21

[出]〈g〉サルバドール・グティエレス

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

921(水)22時『インサシアブレ』

[出]〈b〉ラ・ピニョーナ

[場]セビージャ セントラル劇場

922(木)20時『シ、キエロ』

[出]〈b〉メルセデス・デ・コルドバ

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

922(木)21

[出]〈g〉アルフレド・ラゴス

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

922(木)22時『エジャス』

[出]〈fl〉セルヒオ・デ・ロペ

[場]セビージャ レアル・アルカサル

923(金)20時『メモリアル』

[出]〈c〉ニーニョ・デ・エルチェ

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

923(金)21

[出]〈g〉パコ・ハラーナ

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

923(金)22時『ラ・コンフルエンシア』

[出]〈b〉エステベス/パーニョス・イ・コンパニア

[場]セビージャ セントラル劇場

923(金)23時『ア・フエゴ』

[出]〈c〉ダニ・ジャマス

[場]セビージャ アラメーダ劇場

924(土)13時『デ・ラ・マノ・デ…アントニオ・レジェス』

[場]セビージャ ファクトリア・クルトゥラル

924(土)20時『ステータス・クオ』

[出]〈c〉マリナ・エレディア

[場]セビージャ マエストランサ劇場

924(土)21

[出]〈g〉ジェライ・コルテス

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

924(土)22時『エントレ・ドス・ムンドス』

[出]〈古楽器楽団〉アカデミア・デル、ピアチェーレ、ファミ・アルカイ、〈g〉ダニ・デ・モロン

924(土)23時『ラ・ベジャ・エポカ。シムラクロ・フラメンコ』

[出]〈c〉セグンド・ファルコン

[場]セビージャ アラメーダ劇場

925(日)12

[出]〈c〉ラ・マカニータ

[場]セビージャ サン・ルイス・デ・ロス・フランセセス教会

925(日)13時『デ・ビスセラス・イ・オトロス・カンテス』(ワーク・イン・プログレス)

[出]チャロ・マルティン

[場]セビージャ セントラル劇場サラB

925(日)22時『ソレア』

[出]〈b〉マリア・モレーノ

[場]セビージャセントラル劇場

926(月)20

『アルキテクトゥーラ・デル・スエニョ』

[出]〈b〉ラファエラ・カラスコ

[場]セビージャ マエストランサ劇場

927(火)20

[出]〈b〉パストーラ・ガルバン、〈cg〉マリア・マリン

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

927(火)21

[出]〈g〉ホセ・マヌエル・レオン

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

927(火)22時『オリヘン』

 

[出]〈b〉マルコ・バルガス&クロエ・ブルーレ

[場]セビージャ セントラル劇場

928(水)20時『マヌエラ』

[出]〈b〉マヌエラ・カラスコ

[場]セビージャ マエストランサ劇場

928(水)21

[出]〈g〉ボリータ

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

929(木)20時『フラメンコ・インティモ』

[出]〈c〉マイテ・マルティン

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

929(木)21

[出]〈g〉リカルド・モレーノ

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

929(木)22時『ジャリン』

[出]〈b〉アンドレス・マリン、〈コンテンポラリー〉ジョン・マジャ

[場]セビージャ セントラル劇場

930(金)20時『カルナシオン』

[出]〈b〉ロシオ・モリーナ

[場]セビージャ マエストランサ劇場

930(金)21

[出]〈g〉アントニオ・レイ

[場]セビージャ エスパシオ・トゥリーナ

930(金)23時『ティエント・マデラ』

[出]〈g〉ラウル・カンティサーノ、マルコ・セラト

[場]セビージャ アラメーダ劇場

101(土)19時『マリアーナ』

[出]〈コンテンポラリー〉ルス・アルカス、ラ・ファルマコ

[場]セビージャ セントラル劇場

101(土)2030分『エレンシア』

[出]〈g〉ラファエル・リケーニ

[場]セビージャ ロペ・デ・ベガ劇場

101(土)22時『閉会コンサート』

[場]セビージャ セビージャ港

[問]http://www.labienal.com


2022年5月23日月曜日

第3回全日本フラメンココンクール大阪予選/カンテ部門、バイレ部門

今週末、土曜日にスペイン大使館で開催される決勝を前に、5月22日土曜日には、全日本フラメンココンクール大阪予選が行われました。



こちらは来年、開店20周年となるというタブラオ、Mi Vidaで観客を迎えての開催でした。感染防止のため、観客席からのハレオ、掛け声は禁止されていましたが、東京では審査員からのみだった拍手に、観客席からの熱い拍手が加わり、ライブ感が出たように思います。来年は、東京でも、参加者の方々の渾身のパフォーマンス、皆さんに見ていただけるようになりますように。

さて、今回、大阪ではカンテとバイレの予選が同じ日の午前と午後に開催されました。

大阪生まれの東京育ちとしても、大阪は、東京は、と大雑把にまとめるのは良くないとは思うのですが、全体的に、大阪の参加者は自分をアピールする力が東京の方たちよりも長けているように思いました。また、踊りの参加者全員がパルマを入れていたのも印象的です。

結果はすでにこちらに発表されていますが、個々の参加者の方々のパフォーマンスに対する志風個人の感想を記していきます。東京予選のもの同様、この意見、感想はあくまでも志風個人のものであって、他の審査員や主催者とは関係ありません。

カンテ部門

1。佐藤真寿美 アレグリアス 決勝進出/声が前に出ている。ボカリサシオン、口をしっかり開け動かしての発音が必要? 発音(RとL  など)、リズム、音程、より完璧を目指したい。

2。松林由美 タランタ/非常に声量がある。メロディはちゃんと追えている。が、発声法ゆえなのか、ミュージカルかなにかのように聞こえてしまう。

3。浜地妙子 ファンダンゴス・デ・ウエルバ/叩きつけるような怒鳴るような。無理矢理感あり。歌詞の内容と表情表現もリンクしていない。

4。西浦知実 マラゲーニャ/メロディを追おうとしているがカクカクしている。リガール、繋げることを心がけては?またリブレの曲でもコンパスはあるので自由勝手にしていいということではない。

5。田村めぐみ ソレア 決勝進出/声は前に出ている。発音、コンパス、ともによりよくできるはず。

6。岡村佳代子 ティエントス・イ・タンゴス 決勝進出/声がよく出ている。熱唱型。熱く歌いすぎて、ティエント独特の粘りや下降感はあまり感じられない。

バイレ部門

1。幸田愛子 ソレア・ポル・ブレリア 決勝進出/かなり若い人だと思うが上手。野生的なフラメンコを志しているよう。上目遣いがちょっと気になる。いろんなスタイルのフラメンコをも学んで欲しい気もする。

2。田中幸真 ソレア/これも若い人だが彼も上手。真正面向きすぎだとか(正面に対してちょっと斜めに構えると奥行きが出て立体的に見える)、緊張しているのか表情がずっと堅いままだったりはしたものの、これからどんどんもっともっと上手になる人だと思う。将来に期待大。

3。岸田瑠璃 ソレア・ポル・ブレリア 決勝進出/攻撃的な感じ。靴音にムラがある。衣装の趣味がいい。

4。島村志野 タラント/タラントらしい装いで、タラントの世界を表現しようという意欲はある。

5。鬼頭雪穂 シギリージャ 決勝進出/黒いツーピースで、自分のシギリージャを探してる感じ。表現にいいところがある。ちょっとアグレッシブ?

6。北村亜紀子 アレグリアス/シレンシオも入れて真面目に取り組んだよう。

7。岡村怜美 アレグリアス/全体は笑顔、シレンシオではシリアスな表情と、平版にならないよう工夫している。

8。宇根由佳 ソレア・ポル・ブレリア 決勝進出/靴音がきちんと全部ちゃんと、音ムラなく聞こえる。全体的に安定している。

9。関口知世 アレグリアス/バタとマントン。非常に忙しい振り付けで、体操のように順番を必死に追っていて全体的に雑な感じで、アルテの領域までまだいってない。もう少し、シンプルな振りにして余裕を持って動けるようにするといいのかも。

10。浅倉和子 アレグリアス/ポーズの形はきれい。だが、バタにはまだ慣れていないようで、うまくさばけてないし、足も安定していない。

11。橋爪潤子 ソレア/衣装のあしらいがいい。後半、ロクーラ、狂気を思わせるような爆発。

12。大久保知穂 ソレア/一生懸命な感じだが、足もパルマもまだまだ。

13。石田久乃 アレグリアス 決勝進出/板付から始まる、赤いツーピースでのアレグリアス。表情も、体の使い方もよい。アレグリアスらしいパセオ、舞台上での歩くなどの動きもよく、こちらのオレを引き出す。


審査終了後、審査員たち(右からマイテ・プルポン、エンリケ・エレディア、志風、手前に市川恵子さん。吉川哲夫さんはお帰りになられた後でした。残念)と小松原庸子先生




2022年5月19日木曜日

第3回全日本フラメンココンクール東京予選/カンテ部門

 5月18日、全日本フラメンココンクールのカンテ部門の東京での予選が行われました。

これが日本で初めてのカンテコンクールです。



フラメンコ舞踊やギターのコンクールはこれまでにも様々な形で開催されてきました。現在も開催されているものにはマルワ財団のコンクールがありますね。が、カンテのコンクールはこれが最初です。(フラメンコ協会の新人公演は賞は出ますが、コンクールではない、とうたっています)

舞踊コンクールとしてはじまった全日本フラメンココンクールの主催者にカンテのコンクールを、と熱望する声が届き、それに応えたということですが、東京予選の参加者は舞踊部門と同じく21人。それだけまたれたコンクールなのでしょう。

舞踊予選の時も書きましたが、コンクールはフラメンコの道程における一つの通過点にすぎません。結果はあくまでもその時のその人のパフォーマンスをその時の審査員がどう評価したか、ということであって絶対的なものではありません。でも、コンクールに向けて努力したことや、コンクールで、今回は観客はいなかったものの、審査員の前で緊張の中、歌う、ということは、これからのその人のフラメンコ人生にとってきっとプラスになることと思います。

こういう風に言うと、失礼に聞こえるかもしれませんが、想像以上にレベルの高いものでした。とりあえずの形が整っている人が多く、細かい音程やコンパスは外す方もいらっしゃいましたが、それはスペインのペーニャなどでのコンクールでも往々起こりうることです。反対に、発音や歌の内容を把握しているかに疑問が残る方が多かったように思います。耳がいい方ならスペイン語が分からなくてもフラメンコが歌えるということはありうるとは思いますが、歌うためにはスペイン語を勉強するべきではないかと思います。

今回の予選参加者について思ったことなど、以下に記します。あくまでも志風個人の意見感想であり、他の審査員や主催者とはまったく関係がありません。   

1。近藤裕美子 シギリージャ/4分という時間制限のせいか、サリーダなしのシギリージャ。が十分に準備できてはなかったようだ。発声、イントネーションに難あり。鼻の前あたりに歌っているような感じ。モノマネしているような嘘っぽい感じがするのはなぜだろう。

2。松岡恭子 ティエント/緊張しているのか声が前に出てこない。スペイン語がカタカナぽく、r、p、二重子音、アンダルシア訛りのdの欠落なども、dは意識上にないと不自然に聞こえるのではないだろうか。

3。川島桂子 ソレア 決勝進出/歌の理解が深く、今自分が何を歌っているのか、どういう風に歌うべきか、などすべてわかった上での歌。真似ではなく自分の表現になっている。強弱をうまく使い、ダイナミックさも出している。

4。土井康子 ファンダンゴ 決勝進出/椅子に手をかけたって歌うパケーラ風。最初の歌い出しのメロディがはっきりせずご詠歌みたいになってしまったのは曲選びの問題か。時に音程外すところがあるものの声は前によく出ている。二つ目の歌から余裕、調子が出てきたようだ。最後、歌詞忘れて歌い直したのは残念。

5。中山えみ子 カンティーニャス/声量がない。音楽的な意味での音程、リズムはいいのかもだが、フラメンコのコンパスの躍動感がない。発音、特に rの巻き舌、発声に努力の余地あり。

6。磯部博子 ソレア/音程、発音ともに難あり。何を歌っているのか理解していないような感じ。両手を胸のあたりで忙しく動かしているのは自信のなさからだろうか。全体的に無理しているような感じ。

7。園田礼子 ソレア/カタカナで歌うフラメンコ。この人が考えるフラメンコを演じているのだろうが、カリカチュアにしか見えない。音程も発音もだが、古い録音をたくさん聴いて真似するなどするといいかもしれない。

8。斉藤江美 カディスのタンギージョ/低い声でゆっくり目に歌う。声が前に出ているのがいい。お祭りの曲だし、もう少し楽しそうでもいいように思う。声質から、ティエントなどの方が合うかも?などとも思わされた。

9。松橋早苗 カーニャ 決勝進出/カンテソロでのカーニャとは思えないスピード。よく分からない音を挟んだり、ラメントが階段みたいな感じだったり、カーニャの持つしっとりした感じとかが感じられなかった。歌い上げるのでなく、叫ぶみたいな感じにも抵抗がある。

10。熊谷善博 ソレア 決勝進出/サリーダからアフィシオンを感じさせる。声の調節でのニュアンスづけも良い。

11。井上泉 ミラブラー 決勝進出/声が前に出ているし、うまい方なのだが、いかんせん、平版。もっとマティサール、ニュアンスをつけて、ダイナミックに聞かせてほしい。

12。三枝雄輔 アレグリアス 決勝進出/サリーダなしで目一杯歌を詰め込んだのも時間制限のせいだろうか。リズムもいいし、曲も歌詞もよく理解して歌っているので、もう少し余白があったほうが、より聴かせる歌になったのではないだろうか。

13。許有廷 マラゲーニャ 決勝進出/声も出ているし、うまいのだが、こなしているという感じで、どこか表面的というか、これが好きでこう歌いたいと思っているみたいなものが見えてこない。

14。遠藤郷子 ソレア 決勝進出/声に力、説得力があり、曲全体も見えているという感じ。ダイナミックに歌っている。

15。中里眞央 シギリージャ 決勝進出/声が前に出ているのはいいのだが、ちょっと無理しているというか、吐くような発声と投げつけるような歌い方がちょっときになる。

16。川村麻利子 アレグリアス/パルマで始まる。カタカナぽくちょっとカクカクしている。1番目と2番目のレトラで声が違うのはなぜ?無理な発声なのかな?

17。金田多津子 シギリージャ/声がこもっている。それもあるのか、無理に力を入れて音程をはずす。力入れすぎているのでは?

18。上田真由美 アレグリアス/誰かの真似をしているのか、芝居掛かった感じ。音程はそれほど悪くないのだが、ベタベタしたパルマがちょっときになる。パルマが苦手なら、自分の太ももを叩句などして拍子をとったほうがいいかと。

19斉藤克己 タンギージョ 決勝進出/曲をよく理解しており、歌詞の意味も方向性もちゃんとわかって歌っているからよく伝わる。グラシアでみせた。

20。永積祐二郎 マラゲーニャ/丹念にメロディを追っていこうとしているのだが、発声に問題あり、またカタカナぽく聞こえる。どんな歌をどんな風に歌いたいのか、ということと同じように自分の声や歌い方はどんな曲に向いているのかを知ることも重要なのでは?と思わされた。

21。彦坂百合 アレグリアス/多分ギター伴奏をよく聞きすぎるのだろう、音が遅れる。声は出ているし、こう歌いたいという気持ちがあってその意図自体は悪くないので上達する可能性大。







2022年5月16日月曜日

AMI &渡部純子「Reencuentro再会」

 ホセとパストーラ親娘が出演中のガルロチで、ガルバン親娘のバックを務めているミュージシャンたち、ガジ、ミゲル・ラビ、パコ・イグレシアスと日本人ダンサーが共演する公演も3回行われ、その3回目が5月15日に開催された。

AMI蒲田厚子と渡部純子。80年代後半にスペインにわたり、セビージャでは同じ先生に習ったこともあるベテラン二人。90年代にはコルドバのコンクールで優勝したAMIとバルセロナのタブラオのレギュラーだった渡部。長いスペイン生活で、フラメンコの表現に欠かせない、スペイン人の感情の機微もつかんでいる彼女たちが二人でつとめた舞台は、ラビのカラコール風サンブラ、ガジのマルティネーテからの二人で踊るシギリージャによるプレセンタシオン、ガジのカンテソロ(タラント/タンゴ)、バルセロナが長かったせいか、カルメン・アマジャぽいブラソが所々に出てくる渡部のソロ、タラントと続いてからのAMIのグアヒーラ。これが超絶品。涙が出るほど素晴らしいものだった。

ガジが歌うカンシオン(後で聞いたら、スペインが誇るシンガーソングライター、ジョアン・マヌエル・セラットの曲だそうだ)で始まり、その間、舞台に足をかけ、扇子を開いたり閉じたり。グアヒーラの歌が始まると水を得た魚のように踊るAMI  。振り付けを踊っているのでなく、歌を、グアヒーラという曲そのものを踊っている。扇子を使って遊ぶような振りがあったり、表情や仕草も優雅さ、それもグアヒーラの世界ならではのコロニアルな、どこかのんびりして自由な雰囲気の中の優雅さやユーモアも見せながらの自由自在。芯がちゃんとしているからの自由さ。コルドバで賞を取ったのもこの曲だったけど、あの頃のグアヒーラも思い出させてくれながらもより自由で、余裕があって、品格がある。スペインでこの曲を得意とする踊り手たちにも見てもらいたい、そんな風に思うくらいすばらしかった。素晴らしすぎて涙が出てきた。

第2部はラビのカンテソロでマラゲーニャ、渡部の中折れ帽を使ったアレグリアス、AMIのソレアでフィナーレのブレリアへという構成。



渡部はタブラオにレギュラー出演していただけあって、観客とのコミニュケーションがすごい。ちょっとした仕草で観客をつかんでしまう。実は、35年前一緒にスペインに渡った彼女が、マノロ・マリンやホセ・ガルバンのクラスに通っていた時代を知っているせいか、80年代後半のホセっぽい感じがすごく感じられて感慨深かった。またAMIのシギリージャに彼女が習っていたアンドレス・マリンのブラソのくせみたいなのを感じたり、と、勝手にノスタルジーに浸っていた私だったのでありました。





2022年5月15日日曜日

第3回全日本フラメンココンクール東京予選/バイレ部門

 5月14日、東京、高円寺の小松原庸子スペイン舞踊団スタジオで、第3回全日本フラメンココンクール、バイレ部門の東京予選が行われました。

今回は無観客で行われましたが、2018年の第1回、2019年の第2回に引き続き、審査員を務めさせていただき、日本のフラメンコ熱を改めて感じさせていただきました。

年齢等一切の制限のない、このコンクール、若手からベテランまで21名の踊り手たちの全力投球での熱演、見てるこちらも力が入ります。

審査員全員での審査、話し合いの結果、約半数の方が5月28日土曜日にスペイン大使館のアウディトリオで開催される決勝に進まれる事になりました。進出者の方々、おめでとうございます。

スペインでもコルドバやラ・ウニオンを始め、多くのコンクールを見てきましたが、いつも思うことは一緒です。コンクールは最終結果ではなく、過程の一つでしかないこと。結果は、その日その時のパフォーマンスをその時の審査員がどう評価したか、ということでしかなく、絶対的な評価ではありません。

昨日の予選でも、緊張や体調などにより実力が発揮できなず、決勝に進めなかったいう人もいるかもしれません。でも、コンクール出場のために稽古を積んで努力してきたことがすべて無駄になるわけではありません。それまでの努力や緊張の中、慣れない場所で踊ったことはその人のこれからのフラメンコに必ずプラスになるはずです。

今回の出場者のパフォーマンスについての私個人の簡単な感想を記します。これはあくまでも個人的な印象で、他の審査員の方及び主催者とは全く関係がありませんん。

1。青木千鶴子 カーニャ/5分の時間制限ゆえなのだろうか、カーニャとは思えないスピードでまるでソレア・ポル・ブレリアのよう。カーニャらしい、しっとりした趣や優雅さの表現が欲しい。曲選びは難しい。

2。伊藤千紘 ソレア・ポル・ブレリア 決勝進出/ちゃんとした感じ。真正面向きがちの体を斜めにするなどでよりダイナミックさを作れそう。

3。松木晶乃 アレグリアス/楽しそうに踊ろうとしている気持ちは伝わる。基本をきちんと積み重ねていくことが大切。後半の方が良かった感じ。

4。後藤春美 ソレア/ソレアの“タメ”を上手に表現していたと思う。ただ、同じような仕草が続いたりするのは逆効果では?

5。本多清見 シギリージャ 決勝進出/強力なパルマに支えられているがシギリージャの何を表現したかったのか、曲への理解と表現はより深められるのではないか。

6。畑中美里 アレグリアス/緊張のせいか、気持ちが急いている感じ。花を落とすのはアクシデントだけど、昔セビージャのタブラオでは罰金だったともいうし、飛ばさない努力は必要。スカートももっと広がる方が踊りやすく魅力的では?

7。橋爪靖恵 ソロンゴ/オレンジ色のマントンが美しい。クラシックな振り付けはいいのだから、踊り手がもっと一つ一つの振りの意味を理解しひとつひとつ大切に踊っていけばもっと良くなるはず。

8。篠崎穂香 バンベーラ/真正面向きすぎな感じ。少し斜めに構えた方が奥行きが出てより美しく見えるはず。

9。鈴木旗江 シギリージャ 決勝進出/カホンで始まるシギリージャ。シギリージャという曲を理解し、自分のシギリージャを作り上げているという感じ。装いも表情も全て自分のシギリージャを表現するためにうまく使っている。

10。山下美希 アレグリアス 決勝進出/ちょっと忙しい? 演技するような感じもあるが、もう少し口角上げて笑顔でアレグリアスらしさを演出するともっと良くなるのでは。

11。平林夏々子 アレグリアス/赤いバタ・デ・コーラにマントン。フラメンコは力仕事ではなくアルテ。かと思うとくにゃくにゃしたりもして自分の表現が定まっていない感じがする。

12。手下倭里亜 アレグリアス 決勝進出/バタ・デ・コーラにマントン。基本に忠実で、しっかりアレグリアスらしさを表現しているのはさすが。

13。岩楯颯来 アレグリアス 決勝進出/レトラの時に足を入れないのがいい。顎を引いて踊っている時間が長いのが少し気になる。衣装はスーツの中のシャツを白にするだけでも多少、アレグリアスらしくなるのでは。将来有望。

14。角谷のどか アレグリアス 決勝進出/ブラセオが上手なのがいい。足ももう少し頑張ればすごくいいはず。

15。山本秀子 アレグリアス 決勝進出/表情をよく考えてパフォーマンスをしている感じ。振り付けの細かいところまでもっと丁寧にひとつずつ終えていけばもっといい。

16。木村麻樹 アレグリアス/サパテアード、回転、ブラセオ。基本をしっかり学び、曲についての知見を高めていく必要があるのではないかと思う。

17。藤川淳美 アレグリアス /バタ・デ・コーラにマントンの王道アレグリアス。表情もいいのだが、惜しむらくはマントン。もう少し厚手の、持ち重りする白いマントンの方が良いのではないか。薄手の軽いマントンだと軌跡も美しくない。

18。渡辺なおみ アレグリアス 決勝進出/自分のフラメンコはこれ、という自信があるような感じ。

19。吉田芽生 アレグリアス 決勝進出/板付、首の位置、もっと考えてもいいのではないか。バタ。自然な表現を

20。清水真由美 ティエント/サパテアードに強弱をつけてニュアンスが出ているのがいい。ただ、ティエントという曲で何が表現したかったのかがわかりにくい。

21。関 真知子 ソレア 決勝進出/緑色の美しいバタ。優雅なソレア。 

審査終了後、審査員の皆さん、左から志風、マイテ・プルポン、大沼由紀、鈴木敬子、南風野香各氏と小松原先生。







2022年5月12日木曜日

マドリード・フラメンコ、フェルナン・ゴメス劇場以外での公演

マドリード、フラメンコでは、フェルナン・ゴメス劇場以外でも公演があります。トロンボのは子供とその付き添いの大人向けのコンパスのクラス的なもの、フアン・パレデスのは素人もみんな一緒に踊ろう、というもののようです。

劇場だけではないフラメンコの楽しみを見つけてくださいね。


 ○ロス・モリーノス

514(土)13時と18時『エル・コンパス・フラメンコ、エル・コンパス・デ・コラソン』

[出]〈b〉トロンボ

[場]エスパシオ・アビエルト・キンタ・デ・ロス・モリーノス アウディトリオ            

○コンデドゥーケ

527(金)2030分『ソナ・アコルドナダ』

[出]〈g〉ラウル・カンティサノ、〈ビデオジョッキー〉ロス・ボルブレ

[場]マドリード コンデドゥーケ アウディトリオ

○カハ・デ・ムシカ

528(土)13

[出]〈c〉ホセ・バレンシア

529(日)13

[出]〈c〉サンドラ・カラスコ、〈g〉ダビ・デ・アラアル

[場]マドリード アウディトリオ・カハ・デ・ムシカ

○その他

515(日)12時『マスカラーダ』

[出]〈b〉サラ・カレーロ、〈c〉ヘマ・カバジェーロ

[場]マドリード・リオ プリンシパド・デ・アンドーラ橋

515(日)13

[出]〈c〉フアン・ホセ・アマドール、ガブリエル・デ・ラ・トマサ、ホセ・デル・カジ、サウル・キロス、フアニャリート、エル・ポラ

[場]マドリード・リオ パサレラ・デ・ラス・ボラス、パサレラ・デ・ラス・アグアス・デル・カナル・イサベルII

515(日)12時『エル・ルンボドロム』

[出]〈b〉ホセ・マヌエル・アルバレス

515(日)13時『フラメンコ、パラ・トドス』

[出]〈b〉フアン・パレデス

[場]マドリード エセナリオ・サン・イシドロ

515(日)1930

[出]〈b〉ルシア・アルバレス“ラ・ピニョーナ”

[場]マドリード パラシオ・デ・クリスタル・デ・ラ・アルガンスエラ

○タブラオ、カフェなど

514(土)13

[出]〈c〉ナイケ・ポンセ

[場]マドリード カフェ・シルヤブ

521(土)13

[出]〈c〉イスマエル・デ・ラ・ロサ

[場]マドリード コラル・デ・ラ・モレリア

529(日)13

[出]〈c〉マリア・メスクレ

[場]マドリード タブラオ・デ・ラ・ビジャ

[問]www.festivalflamencomadrid.com