2010年2月28日日曜日

ヘレス・フェスティバル2 マリア・ホセ・フランコ

ヘレス・フェスティバル二日目は
カディス出身のバイラオーラ、マリア・ホセ・フランコ。

アントニオ・エル・ピパ舞踊団などで活躍した彼女は
背が高くスタイルがいい美人。
これまでもヘレス・フェスティバル、サラ・コンパニアなどに出演してきたが
ビジャマルタ劇場での一人だち公演は初めて。

はじまりはソレア・ポル・ブレリア
黒い衣装の歌い手たちに囲まれやはり黒い衣装で踊りはじめる
続くグアヒーラは3人の群舞(というよりポーズ集)をへて
コリン(短いバタ・デ・コーラ)で踊る。
回転のときの体の使い方に無理がある。
まるで棒っくいのように固い。
初めての大舞台であがってたこともあるのだろうが。
グアヒーラでは最後にスカートを脱ぎ捨て裸足になるのだが
それで踊るわけでもなく意味不明。
カルメン・グリロ熱唱のティエントに続くタンゴ
タンゴらしいグラシアも色気も感じられず残念。
ソレアそして最後は白いバタ・デ・コーラにマントンのアレグリアス。
マントンは薄手のもので持ち重りがしないこともあってか
まるでただの布切れを振り回しているよう。
バタもかたちが踊り用の完成されたあのかたちではなく
ただ裾を長くしたようなものでうまくコントロールできていない。
と、なんともまあ、食い足りない公演だったが
本人的には満足だったのだろう、
1時間少しの舞台を終えて
アンコールで涙ぐんでいた。

バックをつとめた歌い手のルイス・モネオがいい味をだしていた。
声の深み、うたいっぷり、これこそフラメンコだねえ。

ヘレス・フェスティバル1 アンダルシア舞踊団

第14回ヘレス・フェスティバル初日


上演の前にヘレス・フェスティバル監督イサマイ・ベナベンテが
このフェスティバルを先日夭折したフェルナンド・テレモートに
と語り、劇場は拍手につつまれた。


初日の公演は
クリスティーナ・オヨス率いるアンダルシア舞踊団
「ポエマ・デ・カンテ・ホンド・エン・カフェ・デ・チニータス」

スペインを代表する詩人ガルシア・ロルカの
詩集「ポエマ・デ・カンテ・ホンド(カンテ・ホンドの詩)」と
彼が採集した
「カンシオネス・ポプラレス・アンティグアス」
をミックスして舞台に登場させたもの。



スペインでも有数の演出家ホセ・ルイス・プラサが脚本/演出
ステンドグラスを模した背景に移動する小さな舞台という豪華なセットに
華やかな衣装
16人の踊り手、3人の歌い手にギタリスト
シンプルな作品が主流である今
こんな大掛かりな作品はめずらしい。

ロルカを舞台に取り上げたフラメンコたちは多い。
アントニオ・ガデス、マリオ・マジャ、カルメン・リナーレス、
カルメン・コルテス、アントニオ・カナーレス…
最近ではホセ・アントニオ「カフェ・デ・チニータス」(スペイン国立バレエ団)
そしてラファエラ・カラスコ「バモス・アル・ティロテオ」
それぞれが皆、自分のロルカを探した。
が、ここにあるのはつかいふるされた典型的なイメージ。
パラーラ緑の長いコーラをひき
カフェ・デ・チニータスでは闘牛士の衣装をまとう、
と歌詞をそのまま形にしているだけ。
そこにクリエーションはない。
あるイメージをなぞるだけだ。

しょっぱなからコンパスを外し
肩が前にでているおかしな姿勢の踊り手たちに驚かされた。
それも中盤舞台に登場したクリスティーナ・オヨスをみて納得
年齢のせいだろうか、以前患った病気のせいだろうか
彼女の肩が前屈みのようになっていて
胸をひらいて腕を後ろにやることができないのだ。
それを手本とする若手の姿勢がおかしくなるのも当然だろう。
かつてガデスとの共演ですばらしい舞台の数々をみせてくれたオヨスだが
あのかつての素晴らしさは遠い昔の出来事になってしまったようだ。
瞬間にかつての残り香が感じられることはあったとしても。


2010年2月26日金曜日

フラメンコ・オイ賞!

2月23日、コルドバのグラン・テアトロにおいて
「フラメンコ・オイ」賞授賞式が行われた。
スペイン各地のフラメンコ記者/批評家たちの投票によるこの賞、
今年の受賞者は以下の通り。

プレス/パコ・サンチェス(写真家/カナルスール、フラメ ンコラジオ)
プロモーション/セルバンテス協会
書籍/ルイス・クレメンテ「キッチュ・フラメ ンコ」
DVD/エストレージャ・モレンテ 「カサクエバ」
新人CD/ダビ・ラゴス「エル・エスペホ・エン・ロ・ケ・ミロ」
CDギター伴奏/モライート「ムヘレス」
インストゥルメンタルCD/ニーニョ・ホセーレ
プロデュー サー/リカルド・パチョン「ソロ・ポル・エソ」(マカニータ)
男性舞踊家/マルコ・フローレス
女性舞踊家/ラ・モネータ
ギターソロCD/ビセンテ・アミーゴ「パセオ・デ・グラシア」
カンテCD/「ムヘレス」

行くことができなかったのは残念。

実はそのラファエルも候補にあがっていた。
私的にはラファエルにとってほしかったんだけど
マルコもどんどんよくなってきている若手。
モネータ同様若手の受賞はうれしいこと。
CDがでる前になぜか受賞したので
(誰かが候補にあげてそれが3人の最終候補に残り
誰もが聴かずに投票した。
それだけ識者に評価されてる才能、
ってことだけど、
CD聴かずに投票するのはいかがなものか、ですな)
2回目の新人賞!


2010年2月25日木曜日

ラファエル・カンパージョ「プエンテ・デ・トリアーナ」

毎年恒例アンダルシア州主催のフラメンコ公演シリーズ
(フラメンコは南からやってくる)
が今年もはじまった。

セビージャではこれから5月までほぼ毎週火曜日
旧万博会場内にあるセントラル劇場で9公演が行われる。
もともとは14年前この劇場ではじまったものだが
今はアンダルシア8県で開催。

セビージャの開幕を飾ったのはラファエル・カンパージョ。
セビージャ出身
ホセ・ガルバンやマノロ・マリンらに師事。
アンダルシア舞踊団で頭角をあらわし
96年のビエナルでイスラエル・ガルバンとともに脚光をあびた。

その踊りはとにかく粋。
めっちゃくちゃ男伊達。
最高にかっこいい。
テクニックがしっかりしているだけでなく
“見せ方”を憎いほど心得ている。

相当の実力者にもかかわらず
あまり知られていないとしたら
彼がこれまでに“作品”をつくってこなかったからだろう。
現在、フラメンコ舞踊は“作品”重視。
セビージャのビエナルやヘレスなど、各地の
フェスティバル等への出演も“作品”あってこそ的状態が続いている。
が、彼は他人のつくった作品に出演することはあっても
自らがつくりあげた作品というのはほとんどなかった。
なので、少し活躍の場が限られていたように思う。
これだけの実力をもちながら残念なことだ。

 それが去年、この作品
「プエンテ・デ・トリアーナ」をつくりあげ
フランスは、モン・デ・マルサンのフェスティバルで初演。
トリアーナゆかりのタンゴやソレア、マルティネーテなどをとりあげた
フラメンコのアンソロジー。
4人の若手実力派の群舞と妹アデラ・カンパージョが共演する。

群舞にはじまり
ラファエルのティエント/タンゴ
アデラのソレア
群舞のブレリアス
バタ・デ・コーラのアデラとのからんではじまるアレグリアス
カンテソロのマルティネーテ
そしてシギリージャ。
物語があるわけではなく
フラメンコ曲をきっちりとみせていくだけ。
最初と最後の足をきかせるところとか
照明とかいつもの公演より工夫している。

ラファエルはいつものようにかっこよく
切れのいい踊りを堪能させてくれた。
あの姿の良さ、かたちの美しさ。
フラメンコは動いてなんぼ、というだけじゃない。
止まったかたちの美しさも重要。
腕のちょっとした位置のちがい。
その腕の、重みをもった動かし方が
こちらの心をゆさぶるのだ。

アデラのソレアはちょっと長かったけど
ヒターナっぽい動きや古風なかたちなども入って
興味深いバイラオーラだ。
日本人でも習う人が多いのがよくわかる。
でも群舞の必要があったかというと疑問が残るし
どこかくいたらない部分もある。
観客たちも大熱狂とはならなかったようだ。
全体を考えるあまり、自分を最大限にいかすことを忘れた?
なんてことはないだろうが
ラファエルは根っからの踊り手だから
演出家の仕事は演出家に任せるのがいいのかも
などと思ったことでした。

2010年2月23日火曜日

エバ・ジェルバブエナの問題

エバ・ジェルバブエナ舞踊団「ジュビア」
セビージャのマエストランサ劇場公演を観てきた。
去年のヘレス・フェスティバルの初日に初演されたこの作品
私が観るのは1年ぶり。

ああ、こんなんだったよな
と、たった1年前のことなのに記憶があまりさだかでない。
オープニングの群衆や灰色の壁と扉
テーブルのシーン
ユーモアたっぷりのタンギージョなど
そういえば。。。うん、うん状態。
記憶力悪いな、年のせいかな、
とも思ったのだが、
それがなぜかは最後をみてわかった。

去年秋、東京でのエバ公演二日目最後にみせた
黒いバタ・デ・コーラでのソレア
あれがあんまりすごいので
ほかの記憶がぶっ飛んでしまっていたのだ。

ボディのサイドに光る素材が使われ
スカート部分は段々のフリルになった
漆黒のバタ・デ・コーラ

「なぜ黒い服を着る
誰かが死んだ訳でもないのに
……
家族もなく
吠える犬さえいない」
エンリケ・エストレメーニョの朗唱に
ゆっくりと動き出すエバ
暗い照明の中にうっすらとうかびあがるその動きの奥深さ


この作品をつくるずっと前から
ソレアを代表曲としてもっていたエバ。
あの、いつものソレアもすごくて
もうこのソレア一曲だけで
エバの存在はフラメンコの歴史に残る、
っていうくらいのものだったけど
それにあきたらず また新しいソレアを創造した彼女のすごさ。
バタ・デ・コーラをみせびらかすのではない。
エバのバタはあくまでも肉体の延長であり
表現の幅の広がりのために
確実な技術と彼女の深い思いをこめて動くのだ。
圧倒的な迫力。存在感。
このすばらしいソレアは
観ている者の心を引き込み、ともに舞わせるのだ。


が、実はそれが彼女の問題なのかもしれない。
こんなに圧倒的な力をもつソレアがあるせいで
作品全体の印象が散漫になってしまう。
作品を観たというよりも
エバを観た。彼女のソレアを観た。
という気分になってしまう。


「5ムヘーレス5」「ラ・ボス・デル・シレンシオ」
「ア・クアトロ・ボセス」「サント・イ・セーニャ」
意欲的な作品をつくり続けてきた彼女だが
結局観客はそのソレアを渇望し
そのソレアに酔いしれる。

悪いことでは決してない。
あれだけの力をもったソレアが踊れる、
それだけでもすごいことだ。
だが、あのソレアがぶっとぶくらい
すごい彼女の作品というのも
また観てみたい気がするのである。


2010年2月22日月曜日

ロハス&ロドリゲス マドリ公演

アンヘル・ロハス&カルロス・ロドリゲス
ヌエボ・バレエ・エスパニョールとして
2005年東京で開催されたフラメンコ・フェスティバルで
来日公演も行った。
スペイン国立バレエ団に振り付けも行った。
そんな実力派の二人が新作
「カンビオ・デ・テルシオ」を
マドリードのヌエボ・アポロ劇場で
2月18日から3月14日まで公演中
入場券はこちら
映像もあります

カンティーニャ、セビジャーナス、ファンダンゴス、
ルンバ、バンベーラ、ブレリア、
タンギージョ、シギリージャ
バタ・デ・コーラにアバニコ、マントン、コルドベス
華やかな舞台

クラシックなスペイン舞踊とフラメンコを
新しい感覚で練り直した
というのが彼らのスタイルで
とにもかくにもスタイリッシュ
おしゃれ系フラメンコとでももうしましょうか

2010年2月20日土曜日

コルドバ ギター祭


今年で30周年を迎えるコルドバギター・フェスティバル
そのクルシージョの内容が発表された。
下に記したのはフラメンコ関係のクラスだけだが
このほかに
クラシックギターは超豪華に
レオ・ブローウエル、ペペ・ロメロ、アサド兄弟、
デビッド・ラッセル、マヌエル・バルエコ、イグナシオ・ロブレスによる
アラブ音楽のジャマル・オウサニ
ジャズのシモ・テベル、シンガーソングライターのハビエル・ルイバル
などのクラス
フィト・パエス、ドミニク・ディピアッツア(エレクトリックベース)
ジョー/ボナマッサのマスタークラスも開講

いやあ、ギター好きは行くしかない!催しです。

ちなみにフェスティバルのプログラム発表はまだだけど
7月6日の幕開けはこのフェスティバルの生みの親
パコ・ペーニャの「ミサ・フラメンカ」
フラメンコではほかに
ハビエル・ラトーレ振り付け新作「ドゥエンデと時計」
エバ・ジェルバブエナ「ジュビア」
ホセ・アントニオ・ロドリゲスとアルカンヘルの「F2」
そしてパコ・デ・ルシア
ほかにも
ハビエル・ルイバルとコルドバ交響楽団の共演
レオ・ブローウエルがコルドバギター祭のために作曲した新作初演
ジョアン・マヌエル・セラット(シンガーソングライター)
ジョー・バナマッサ
ディープ・パープル
などなど盛りだくさんとのことです

7月はコルドバ!



●フラメンコギター
712(月)~20(火)10時~14時
[教]〈g〉マノロ・サンルーカル、ホセ・アントニオ・ロドリゲス、パコ/セラーノ、マノロ・フランコ
[レベル]初級/中級/上級/プロ
[定員]50名
[時間数]36
[料]315ユーロ(聴講は95ユーロ)
●バイレ
7/6(火)~9(金)10時~13時「バタ・デ・コーラとマントンのカーニャ」
[教]〈b〉インマクラーダ・アギラール
7/10(土)~13(火)10時~13時「バイレ・フラメンコにおける人格の表現」
[教]〈b〉ハビエル・ラトーレ
7/14(水)~17(土)10時~13時「トリアーナ・ポル・タンゴス」
[教]〈b〉マティルデ・コラル
7/19(月)~22(木)10時~13時「様々な曲種におけるキャラクターと表現およびシギリージャの振り付けの構成」
[教]〈b〉ロシオ・モリーナ
※バイレクラス共通
[レベル]中級/上級
[定員]15名
[時間数]12
[料]85ユーロ
●カンテ
7/12(月)~15(木)10時~13時
[レベル]初級/中級/上級
[定員]15名
[時間数]12
[料]175ユーロ
[問] http://www.guitarracordoba.com

2010年2月19日金曜日

カジェ・デ・アルカラ賞はエンリケ・メルチョール

マドリードの銀行が主催するフラメンコ・フェスティバル
カハ・マドリード・フラメンコ・フェスティバルが
ただいまマドリードのシルコ・プリセで開催中

毎年マドリードのフラメンコの功労者におくる
カジェ・デ・アルカラ賞
今年の受賞は
ベテラン・ギタリスト
エンリケ・デ・メルチョール

カジェ・デ・アルカラ名誉賞は
作家のカバジェール・ボナルド

エンリケはその昔
パコ・デ・ルシア、たしか初来日時のトリオや
タブラオ「エル・フラメンコ」の公演でも来日している
父メルチョール・デ・マルチェーナは
アントニオ・マイレーナやマノロ・カラコールの伴奏でしられる
職人気質の名ギタリスト
少ない音でより多くの、深いものを表現する
近年病を患い表舞台から遠ざかったこともあったが
回復してまた舞台で活躍しているのはうれしい限り

実力派なのに
華やかなスポットライトはあまりあたらなかったけど
この賞がおくられて
見るべき人は見ているんだな
うれしくなったことでした

2010年2月18日木曜日

ミゲル・ポベーダにプレミオ・デ・ムシカ

今年度のプレミオ・デ・ムシカをミゲル・ポベーダが受賞
たしかゴールドディスクも受賞した最新盤「コプラス・デ・ケレール」がその理由
タイトル通り、歌っているのはフラメンコではなくコプラ
スペイン歌謡ともよばれる演歌ちっくな歌である
でもミゲルの手にかかるとこれもけっこうフラメンコ
その昔、ちゃちな映画にでたカマロンが歌ったその主題歌
「セレ・セレ・セレニート」
なんてーのも入っている。
ミゲルは今が旬
その人気もこのアルバムでよりポピュラーとなり
各地のコンサートは満員御礼状態

ちなみにフラメンコ部門はエンリケ・モレンテが
「モレンテ・フラメンコ」で受賞
こちらのアルバムはめっちゃフラメンコなすてきなディスクです

2010年2月17日水曜日

セビージャ市テレビのフラメンコ番組

セビージャ市のテレビ局ヒラルダTVのフラメンコ番組
Com. Flamenco
コム・フラメンコ

毎週金曜夜22時半からフラメンコのニュースを中心に放映
土曜22時、日曜16時に再放送もあります。
放映はセビージャだけだけど
そのオフィシャルページでビデオを観ることも可能
公演の様子やアーティストのプロフィール、
ペーニャの話などいろいろ


フラメンコ番組というとほかにアンダルシアのテレビ局カナルスールの
フラメンコ
(日曜深夜23時35分からカナルスール2で放映中)
があるけれど、こっちは古いニュースがごったくたで
間違いもいろいろあったりすると
実はフラメンコ業界人には不評。

本当はニュースも、だけど
しっかりフラメンコ、そのものをみせてくれる
そんな番組がみたいんだけどね

ホセ・メルセにアンダルシア・メダル

2月28日はアンダルシアの日
ウエルバ、カディス、セビージャ、コルドバ、ハエン、グラナダ、マラガ、アルメリア
アンダルシア八県は祝日
この日に、毎年、アンダルシア州出身/在住の
各分野の功労者にメダルがおくられます

今年はヘレス出身の歌い手、ホセ・メルセが受賞!

1983年から毎年この日に
イーホ・プレディレクト
(お気に入りの息子、という意味で名誉市民的称号。但し市民にも授与)と
メダルがおくられてきました。
フラメンコ関係者も数多く受賞しています。

1983年 故アントニオ・マイレーナ(イーホ・プレディレクト)
1986年 故マリオ・マジャ(銀メダル)
1988年 パコ・デ・ルシア(銀メダル)
1990年 故ニーニャ・デ・ラ・プエブラ(イーホ・プレディレクト)
1991年 クリスティーナ・オヨス(金メダル)
1992年 故マヌエル・カーノ(銀メダル)
1993年 故カマロン・デ・ラ・イスラ(金メダル/死後受賞)
1994年 故フェルナンダ/故ベルナルダ・デ・ウトレーラ(銀メダル)
1995年 故ピラール・ロペス
1996年 故チャノ・ロバート(銀メダル)
1997年 トマティート(銀メダル)
1999年 アントニオ・カナーレス(銀メダル)
2000年 ビセンテ・アミーゴ(この年よりメダルの金銀が廃止)
2001年 マティルデ・コラル
2003年 故エル・チョコラーテ
2004年 サラ・バラス
2005年 エンリケ・モレンテ
2007年 エバ・ジェルバブエナ
2008年 マヌエラ・カラスコ

こうしてみてくるとベテラン、若手が混在し
なんかけっこういい加減におもいつきでだしているような
気もしないではないですが(苦笑)
フラメンコの受賞はいずれにしてもめでたいことでございます。



2010年2月16日火曜日

アンドレス・マリン「最後の日の暁」

先週、11日のフエベス・フラメンコはアンドレス・マリン。
作品は「エル・アルバ・デル・ウルティモ・ディア」
最後の日の暁。
2006年、ビエナルで初演された
アンドレスのカフェ・カンタンテへのオマージュ。

カフェ・カンタンテとは19世紀の終わりから20世紀の初めに
流行したフラメンコをみせる店で
今あるタブラオの原型といってもいいだろうもの。

もっとも演目はフラメンコだけでなく手品やクラシックの歌など
バラエティーショーだったそうだ。
セビージャやマラガなどアンダルシアはもちろん
マドリードやバルセロナ、ビルバオなどスペイン全国にできた。

その後流行は終わったが今もその店の名残はあちこちに残る。

カフェ・カンタンテのイメージで
ギターとピアノが伴奏する
ソレア、シギリージャ、 アバンドラオ、タンゴ…
歌うのはセグンド・ファルコンとホセ・バレンシア
実力派の二人の声が交差する。

アルティスタの息子として育ち
なによりもフラメンコを愛し
ガデスやファルーコ、カナーレスら先達を敬愛しつつも
一度は歯科技工士になるなど回り道してたどりついたフラメンコの世界。
古いカンテをこよなく愛すアンドレスならでは舞台だ。

その、伝統的なものと新しいものが混在するスタイルには
イスラエル・ガルバンと共通するものがある。
どちらが先だとか、そういう話もあるが
結局フラメンコを愛する者が今を踊るとああいうスタイルになるのかもしれない。
などと思う。
幸島のサル(百匹目のサル)、ではないが
同時代性ということかもしれない。

アンドレスの耳の良さ、音楽性には定評のあるところだ。
サパテアードをきいていて気持ちがいい。
コロカシオン(姿勢)は私には違和感があるが
あれも彼の個性かもしれない。



セビージャのエル・クルサル、
マラガのカフェ・デ・チニータス、グラナダのカフェ・スイソ
の現在の姿が映し出される幕開き。
今は婦人服ショップとなっているクルサル、
記念碑がみえるチニータス
ファーストフード店となったスイソ…
かつてのフラメンコの面影はなくとも
たしかにそこにあったのだ。
そこにあったフラメンコとは違っていても
時代は変わっても
フラメンコは姿を変えて生き続けていく

2010年2月14日日曜日

涙が止まらない フェルナンド・テレモート逝く!

病気療養中だったフェルナンド・テレモートが亡くなった。
40歳。
若すぎる。

父テレモート・デ・ヘレスゆずりの、深い響きをもった声。
こちらの心にまっすぐとびこんできて
奥底まで染み込んでいく、そんな声。歌いっぷり。
あたたかく、力強く、やさしく、まっすぐで、
ムイ・フラメンコ。
フェルナンドの声が今、私の中でこだましている。


最初、ギターを弾いていた彼を、叔母マリア・ソレアの伴奏でみたことがある。
巧みというよりも朴訥とした、でも太いしっかりとしたフラメンコの幹を感じさせた。
歌い手としてのデビュー公演は1989年、
ペーニャ・ドン・アントニオ・チャコンでだった。
あの広いペーニャが超満員。
その期待たがわず
親父譲りのうたいっぷりに、
テレモートが帰ってきた!と観客は大興奮。
一声ごとにオレ!の声。
あの場に居合わせたことは幸せだった。

その同じ年にペペ・デ・ルシアのプロデュースで初のソロアルバムをリリース。
96年にビエナルの若者コンクールで優勝。
舞踊部門のイスラエル、ギター部門のニーニョ・ホセーレと、
今のフラメンコをリードする才能を輩出した年だった。
98年にはコルドバのコンクールで3部門に優勝。
昼から夜まで毎日続くコンクール準決勝を見続けることに疲れ、
自分のフラメンコへの愛を疑いそうになるとき
彼が登場しただけでほっとしたものだ。
ひとつひとつのレトラが、コンパスがゆるぎない。
まっとうな、質のいいフラメンコなのだ。

近年はイスラエル・ガルバンとの「ラ・エダ・デ・オロ」が印象深い。
舞踊との競演でも、ソロででも、フェルナンドはあたりをフラメンコに染め上げる。
若いときから風格のある、歌い手だった。
ソレア、シギリージャ、そしてマラゲーニャ。
昨年秋、病を克服しての復活公演 できかせてくれたマラゲーニャはまさに絶品で
思い出すだけで鳥肌が立つ。
この春には新しいアルバムを出すよ、と語っていた彼がもういない。
神様は残酷。
あんなにもフラメンコを愛し
フラメンコを愛する人々を幸せにしてくれたフェルナンドを連れて行ってしまうなんて。

涙が止まらない。
彼の声が、微笑みが頭の中を満たしている。
いつまでも彼のことを忘れることはないだろう。
フラメンコを愛する人たちみんなが。

2010年2月11日木曜日

バルセロナのフラメンコ・フェスティバル デ・カホン!

バルセロナのフラメンコ・フェスティバル、デ・カホン
今年で5回目となるこのフェスティバル、
2月11日から開催されます。

開幕を飾るのはパリータ。
バルセロナのオペラハウス、リセウ劇場で、新譜発表を兼ねたコンサートを行います。
バレンシア生まれの彼は、いわゆるルンバ歌手ですが
彼の曲がきかれないヒターノの結婚式はない、というほどの存在。
パコ・デ・ルシアも一目おくほどの巧さとフラメンコ性。
今回はゲストにピティンゴやチケテテ、カマロンの遺児ルイスらを迎えるそうな。

このほかにも
2月25日にはロサリオ(ローラ・フローレスの次女のフラメンコ風味のポップ歌手)
at カタルーニャ音楽堂
3月4日にはマリア・トレド(その昔スペイン国立バレエ団と来日経験もある若手歌手)
at ルス・デ・ガス
3月8日はホセ・メルセの新譜「ルイード」発表記念コンサート
at リセウ劇場
3月13日はアントニオ・カナーレスとアマドール・ロハスと二人のバイラオールたち
at カタルーニャ音楽堂
3月19日はホセ・エル・フランセス(ポップなルンバ歌手)
at ルス・デ・ガス
3月26日はトマシート
at アポロ
4月15日はピティンゴ
at カタルーニャ音楽堂

と、多彩なコンサートが開催されます。
純フラメンコよりも、ポップな公演が多いのが特徴。
これもカタルーニャ好みなのかもしれません。

2010年2月9日火曜日

ヘレスのフェスティバル テレモート公演中止

ヘレスのフェスティバル、
2月27日に予定されていた
フェルナンド・テレモートの公演が
彼の病気のため中止になりました。

9月の復帰コンサートで元気な姿をみせてくれた彼だけど
また体調を崩しているようです。
残念。
なお払い戻しは劇場窓口で受付中とのこと。

2010年2月8日月曜日

セルバンテス文化センターのフラメンコ

2月27日、世界中のセルバンテス文化センターでフラメンコ公演が行われます。
日本、東京のセルバンテス文化センターには
セビージャの中堅バイラオーラ、ラ・チョニが来演。入場は無料ですが要予約とのこと。

このほかに、シドニーではギタリスト、ペドロ・シエラが
マラケシュではエル・フンコとスサナ・カサスが
パリではマリナ・エレディアが
シカゴではロサリオ・トレドが公演します。

スペイン語の振興、教育、スペイン語圏文化の普及のために設立されたこのセンター、
スペイン人教授によるスペイン語レッスンのほかさまざまなイベントが行われています。
フラメンコ関係の催しも時折あるので要チェック!
なお今回のフラメンコ公演はアンダルシア州の後援によるものです

2010年2月7日日曜日

第1回ペーニャ国際会議

2月5日から今日7日まで
コスタ・デル・ソルはマルベージャの
アンダルシア・プラサ・ホテルで
第1回ペーニャ国際会議が開催されています。

開会式には写真のように
ペーニャ・フラメンカ協会会長ディエゴ・ペレス
マルベージャ市文化局長カルメン・ディアス
詩人でフラメンコ研究家フェリクス・グランデ
マラガ県知事サルバドール・ペンドン
アンダルシア・フラメンコ振興公社長パコ・ペルーホらが参列。


セビージャのトーレ・マカレーナや
グラナダのプラテリアなどの重要なペーニャをはじめ
400人ものペーニャ関係者が参加。
期間中には
ビルヒニア・ガメス、ボネラ・イーホ、ソレーラ・チーカなど
マラガ県出身のアルティスタたちの公演や
フラメンコに関する展覧会
フェリクス・グランデの講演なども行われています。



2010年2月6日土曜日

エル・ペレ

2月4日木曜日、カハソル文化センターでのフエベス・フラメンコ公演はエル・ペレ。
マイクがいらないほどの豊かな声量。
敬愛するマノロ・カラコールをおもわせる“泣き”のはいる歌いっぷり。

2010年2月5日金曜日

フラメンコジャーナリストのブログ

日本でもアルティスタやアフィシオナード、またお店やスタジオなど
たくさんのフラメンコ関係者がブログをやってますが
スペインでも最近とみに増えてきたよーな。

いつもフラメンコ公演で顔をあわせる記者仲間のブログだと
コレオ・デ・アンダルシア紙のフラメンコ評論家、マノロ・ボルケスの「ラ・ガサペーラ」
マヌエル・バジェーホやニーニャ・デ・ロス・ペイネス、エル・カナリオなどの本を書いた、
いにしえのフラメンコに強い彼だけに、昔のアルティスタの話題から最新ニュースまで幅広くとりあげています。

ディアリオ・デ・セビージャ紙の評論家、フアン・ベルヒージョは自らが監督するフェスティバルの名前をとった「バイベネス・フラメンコス」
こちらは現代のニュース中心。CDや舞台評などもあります。

音楽を学びにいったウィーンでフラメンコに目覚め、ガデス舞踊団のギタリストとしても活躍し、現在はコルドバのコンセルバトリオのフラメンコ教授、
ファウスティーノ・ヌーニェス博士の「エル・アフィナドール・デ・ノティシアス」
カディスやマドリードの図書館で古い新聞を丹念にみてフラメンコ関係の記事を探す
“フラメンコ考古学者”の一人らしく、古い記事をひとつひとつとりあげて解説してくれる。

ちなみにすべてスペイン語のみ。
はい。フラメンコをつきつめていくとスペイン語勉強せねば、になるのです。

カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

ムルシアのラ・ウニオンで毎年8月開催されている
カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル
今年はなんと50周年、第50回を迎えます。

8月3日から14日まで、選りすぐりのアルティスタによるコンサートと
コンクール準決勝、決勝と開催されますが、
50周年をを記念して、フェスティバルの金メダルを
スペイン国王フアン・カルロスに贈呈するそうです。
この時期、国王は夏のバケーションを楽しんでいますが
ラ・ウニオンに来れないかと打診中のようです。

なおほかにも以下のような賞がおくられます。
組織特別賞 アンダルシア自治政府文化省
特別賞 コルドバ・フラメンコ・フェスティバル、セビージャ/ビエナル、ヘレスのフェスティバル、グラナダ国際音楽舞踊祭
舞台特別賞 スペイン国立バレエ団
映画特別賞 カルロス・サウラ
オーディオビジュアル特別賞 ヘスース・キンテーロ
デザイン特別賞 ビクトリオ・イ・ルキーノ
文学特別賞 ホセ・カバジェーロ・ボナル
美術特別賞 チジダ美術館

なお、コンクールの申し込みもはじまりました。
詳細はこちら。締め切りは3月31日。
5.6月にスペイン各地(昨年はラ・ウニオンのほかバジャドリード、グラナダなど)で
行われるの予選をへて
ラ・ウニオンでの準決勝にすすむことになります。

2010年2月3日水曜日

ビセンテ・アミーゴ セビージャ公演が延期

この週末、2月7日に予定されていたセビージャ、マエストランサ劇場での
ビセンテ・アミーゴのリサイタルが6月16日に延期になりました。
右手の第1指、2指の腱鞘炎、というコルドバのお医者さんの診断書が届いたとのこと。


入場券をすでに購入してしまった人で、6月でもいい、
という人は同じ、そのままの入場券で6月の公演に行くことができます。
6月に行けない人は6月15日まで、劇場窓口で払い戻しに応じるそうです。

なお、マエストランサ劇場では2月21、22日と
エバ・ジェルバブエナ「ジュビア」公演が予定されています。

「トラへ・デ・フラメンカ」

先週末はセビージャでフラメンコ衣装の見本市が開催されていました。
フラメンコ衣装、とひとくちにいってもここでの主流はフェリアでの衣装。
いつのまにかデザイナーの名前を冠した、
ブランドものとでもいうべき衣装が数えきれないほど登場するようになりました。
フラメンコ舞踊でつかわれるもの
フェリアで着用するもの
ロシオ巡礼で着るもの
それぞれに特徴があり厳密にいうと同じではないのですが
ひとくちにトラへ・フラメンカ、フラメンコ衣装とよばれています。

この衣装についての詳細な研究を本にまとめたのは
ロサ・マリア・マルティネス・モレーノ。
聾学校教諭のかたわら文化人類学を学び、この研究で博士号を取得した努力家です。
80年代からフラメンコや舞台衣装のデザインを手がけたことがこの研究のきっかけ。
それまでに民族衣装の研究はあっても、
その範囲におさまらないフラメンコ衣装の研究がなかったことも動機になったといいます。

そう。
フラメンコ衣装はアンダルシアの民族衣装でもありますが、
昔ながらの伝統を守り続ける通常の民族衣装とはちがい、
伝統はくみながらも毎年新しいデザインが生まれ、
独自の発展をとげてきました。
ん?
これって何かににてません?

はい。フラメンコに、ですね。
ついでにいえばセビジャーナスもそうですね。

ん?
アンダルシアってそういう才能があるのかな。

本は500ページ近い大冊なので読後にまた書き込みます。