2018年10月10日水曜日

プレミオナショナルはオルガ・ペリセとアントニオ・ルス

2018年のプレミオ・ナショナル・デ・ラ・ダンサは、クリエーター部門がアントニオ・ルス、演者部門がオルガ・ペリセに決定した。

アントニオ・ルスは1976年コルドバ生まれ。コルドバでフラメンコ、スペイン舞踊、クラシックバレエを学び、92年にマドリードに上京。ビクトル・ウジャテのバレエ団を経て、2001年からはジュネーヴやリヨンのバレエ団で活躍。06年にスペインに戻り、国立ダンスカンパニーに在籍した。
フラメンコ好きなら、「春の祭典」など、ラファエル・エステベス&ナニ・パーニョのカンパニーへの協力、客演などで知っているかもしれないが、コンテンポラリーのダンスカンパニーとの共演や、自らのカンパニーでの公演で活躍中の新進気鋭のダンサー/振付家なのである。
昨年初演したスペイン国立バレエ団の「エレクトラ」の振り付けでも知られる。

その「エレクトラ」のフラメンコパートで、アントニオをサポートしたオルガ・ペリセは1975年コルドバ生まれ。コルドバの専門舞踊学院でスペイン舞踊を学び、後、マドリードに出て、ラファエル・アマルゴやラファエラ・カラスコ、ヌエボ・バレエ・エスパニョールなどで活躍。またマヌエル・リニャンやマルコ・フローレス、ダニエル・ドーニャらと組んで、作品を作るなどした。
2010年には、ベレン・マジャと共演した「バイレス・アレグレス・パラ・ペルソナス・トゥリステス」でヘレスのフェスティバルの新人賞を受賞。翌年には初のソロ作品を発表しMAX賞にもノミネートされた。
Bienal Oscar Romero

コルドバのほぼ同級生、おめでとう!



2018年10月4日木曜日

マヌエル・リオス・ルイス逝く

10月3日、詩人でフラメンコ研究家のマヌエル・リオス・ルイスがマドリードの病院で亡くなった。

1934年ヘレス生まれ。
1972年に国家文学賞を受賞するなど、詩人として名高いが、アフィシオナードたちにとっては、フラメンコ百科事典の共著者としてや、ラジオ番組の司会、ABCやディアリオ・デ・セビージャでのコラムなどでおなじみだった。ヘレスのフラメンコ学会の創設メンバーでもある。

温厚で暖かい人柄で、個人的にも、最初に買ったフラメンコの本が、彼のカンテ入門という本だったということもあり、ヘレスのフェスティバルでもいつも、ニコニコ接してくれた。

ご冥福を祈ります。



ビエナル総括記者会見

「次回のビエナルは2020年9月4日から10月4日まで」

30日間!

記者会見の最後に、アントニオ・ソイド監督続投とともにその発表があった瞬間、ため息をついたのは私だけだろうか。
24日間にわたる公演で述べ42725人の観客を集め、85.26%の動員率。798450ユーロの売り上げを記録したというビエナル。

2年後はより良いフェスティバルでありますように。


2018年10月3日水曜日

ビエナル2018総括33の公演から

なんかちょっといつもと違うビエナルだった。
25日間、全61公演のうち、33公演を見ただけだけど、疲れました。

いいものも観ることができたし、楽しかった瞬間もいろいろ。
前半は割と平板で、
イスラエル・ガルバン、ファルキートと天才が続き、わ、という瞬間はあったものの、
Bienal Oscar Romero

彼らを何度も見ている者にとっては最高の夜ではなかったし、アルカサルの夜は残念至極。
パコ・ハラーナ、アルフレド・ラゴスのギターソロは良かったしいい企画だけど、

Bienal Oscar Romero

前半終わって一番良かったのがレブリーハのオテル・トリアーナでの公演って、個人的にも意外。
Bienal Oscar Romero

でもその後はロシオ・モリーナ、トマス・エル・ペラーテで盛り返す。


両方とも問題作で、ロシオの、自分の妊娠をテーマにした公演は賛否両論だったけど、私には女性全体へのオマージュのようにも見えて高評価。トマスも現代音楽のパーカッション奏者との共演に拒否反応を示す批評もあったけど、いや、よかったです。元の歌も、絡む方もしっかりしているからだな。これに限らず、フラメンコも現代アートだなあ、と思わせる公演。そういえば、サンプラーやパソコンも今やすっかりフラメンコの楽器の一つでございます。
もう一個の超問題作、ニーニョ・デ・エルチェも、



音域広いし、音程もコンパスもいいし、フラメンコにおふざけは許せない、という人以外は楽しめたのではないかと。いろんなフラメンコ、あっていいじゃん?
後半はラファエラ・カラスコ、
Bienal Oscar Romero

アナ・モラーレス、

Bienal Oscar Romero
エバ・ジェルバブエナ、
Bienal Oscar Romero
イサベル・バジョンといい公演が続いたのが嬉しい。

Bienal Oscar Romero

一曲あげるなら、ラフィの公演に出てたハビエル・バロンのソレア!コンセプトや物語も何もない、普通のフラメンコだけど、それをすごくよく踊っている。結局、これが一番かも。
他にも立ち上がって歌い踊るしかないトマシートの公演、ソロギターならではの凄みのある音を聞かせてくれたヘラルド・ヌニェス、
Bienal Oscar Romero

ソリストではないけど熱いギターを聞かせてくれたラファエル・ロドリゲス(ロシオ・モリーナとのグアヒーラの素晴らしかったこと!)とギターも充実。
Bienal Oscar Romero

歌では、イスラエル公演でのダビ・ラゴス、トマティート公演でのドゥケンデ、ランカピーノ・チーコらが印象に残る。


しかし疲れました。
年のせいももちろんあるだろうけど、うーん、まず開演時間設定に無理がある。
19時、20時半、23時。で会場から会場までが徒歩圏とはいえない。
なので、19時からのギターリサイタルを最後まで見ると、20時半からには間に合わない。
なので、グリロやグラナイーノはパス。
20時半のを見るときはアンコールも見ずに走ってタクシー確保。ふう。
28日は市民ナイトマラソンが開催されていたので劇場から劇場まで徒歩40分。ありえん。
ちなみにヘレスのフェスティバルだと19時、21時、24時で会場は徒歩圏。その気になれば3本はしごも可能です。

監督が、前回、前々回のクリストバルから、初代監督のホセ・ルイス・オルティス・ヌエボへと変わったかと思うとまた直前にアントニオ・ソイドに変わり、バタバタしたこともあったのか、プログラムに一貫性やポリシーは感じられない。とっちらかってる感じ。
次回は監督も変わるだろうから変わるかな?

どういう形にせよ、結果にせよ、フラメンコの故郷、セビージャで世界最大のフラメンコ祭が開催されるの意味がある。願わくば、量だけではなく質も最高となりますように。


2018年10月1日月曜日

ドランテス「ラ・ロダ・デル・ティエンポ」

ビエナル最終日はセビージャ港でのコンサート。
セビージャ港?

はい、セビージャにも港があるのです。町はずれに税関もある港が。
なんでトリアーナ地区のはずれにある地下鉄駅から特別運行されるバスに入場券見せて乗って、10分ほど。
Bienal Óscar Romero
コンテナやクレーンが並ぶ殺風景なところで、川も見えない。
クレーン使って作った舞台は面白いけどね。フラメンコと言う感じじゃないけど。
こんなところでなぜ?と思って聞いてみたら、マゼランの世界一周の出発が1519年セビージャからだったことで、その500周年記念を兼ねて、とのことだった。ふーん。
当時の港ここじゃなかったろうけどね。

で、ドランテス。
Bienal Óscar Romero
そのコンサートもテーマになるのはマゼランの航海で、航海の準備、大西洋横断、反乱、太平洋横断とマゼランの死、帰着という5つのパートからなる大曲で、オーケストラにコーラス、ドラムとパーカッション、という大編成。
ソロに始まり、パーカッション奏者によるコンテナ叩いての演奏やコーラスが入ってのタンギージョ、オーケストラとの共演、アレグリアス、シギリージャ、ブレリア…

Bienal Óscar Romero


 叔父レブリハーノの、大陸発見500周年記念アルバム「ティエラ」を思い出させる、フラメンコ叙事詩。
でもコーラスによる歌詞は言葉として一向に聞こえてこないのでもやもや。

Bienal Óscar Romero
と言いつつ、これでビエナルはおしまい。疲れました。









2018年9月30日日曜日

イサベル・バジョン「ジョ・ソイ」

23時からセントラル劇場ではイサベル・バジョン。
祖母、母、自分と3世代の女の人生を描く。
Bienal Óscar Romero

爆弾が落ちる音がして幕が開く。
子守唄、バストンを鉄砲のように使い暗い時代を表現したビデオ。
ファンダンゴ、アバンドラオ。
黒いバタでのペテネーラ。

ラジオのコンクールに出演が決まった、という話の後、サンドラ・カラスコが歌う「ドス・ガルデニアス」。昔風の衣装と髪型、上から降りてくるマイク。
サンドラが素晴らしい! 昨年の国立バレエの時も

セビジャーナス。タンギージョ風ラップ、ラップ風タンギージョ?を歌い踊るイサベル。
ソレア。マイレーナ?の録音でのブレリア。

Bienal Óscar Romero
「ピラールの肘、頭は位置にきちんとして、カンティーニャのブラソ、ソレアのブラソ、腰、腰」と、マティルデも教えを繰り返してからのタンゴ。

黄色い帽子がいくつも飛んで出て、ガロティン。
帽子つながりでマイケル・ジャクソンからのマンサニータやパコが出てくるルンバ、タンゴ。

とにかくセンスよく、ユーモアたっぷりにフラメンコづけにしてくれた。
ユーモアもフラメンコの大切な要素。しかめっつらだけがフラメンコじゃないんだよね。
踊りはどれもそつなく、バタのあしらいでもなんでも楽々としているから、そお凄さ見えないかも。でもやっぱりタンゴの色気が一番かも。
体は細いがエネルギーいっぱい。

演出家の助けをえて、シンプルにフラメンコをうまく生かした舞台を作ってくれた。
最高!
エバといい、イサベルといい、昨日のアナといい、今年のビエナルは後半がよかった、と言えるような。


説Bienal Óscar Romero


エバ・ジェルバブエナ「クエントス・デ・アスーカル」

エバが日本から奄美の島唄の歌い手、里アンナを招いて、作り上げた作品「クエントス・デ・アスーカル」、砂糖の物語。

なぜ?という疑問は瞬く間に消えていった。里の澄んだ、天から降りてくるような歌声は、心に直接響くのだ。心が動かされ、エバとアンナの物語が始まったのに違いない。

黒い衣装のエバが、黒子のように後ろに控えるフェルナンド・ヒメネスと二人羽織のようにして踊る幕あき。前作「アパリエンシアス」からの流れを感じる。

そこに黒留袖のように、裾に絵が入った黒いガウンを来た里が姿を見せ歌うのは奄美の子守唄。
奄美の言葉で歌っているので、ほとんど意味はわからないのだが、心にしみる。

エバのバタ・デ・コーラでのカーニャ。見事。
バタを開いたり閉じたり、なども面白い。

Bienal Oscar Romero
里の送り節。切ない感じ。踊るようにして袖に入っていく。

体操じみたブラソの印象的なカルタヘネーラは、フェルナンドとのデュオにつながり、
フェルナンドのソロに。そこをお魚の風船を持って歌いながら横切る里。
それまで並べられていた、円を縁取る銀色の飾りを蹴散らすフェルナンド。
Bienal Oscar Romero
やがて島唄はタンゴと交わりアレグリアスでのフィエスタに
Bienal Oscar Romero
最後はエバとアンナがお茶?お酒を酌み交わし終わる。
遠くて近い二つの世界が出会い、一つに溶け込んでいく。

テンポがいいので、最後まで息をつかせずに展開していく感じ。

この作品のため、エバは夫でギタリストのパコ・ハラーナと奄美まで行っていろいろ研究したというだけのことはある。
異文化への敬愛によって生まれた美しい作品。
日本でもぜひ見られますように。