2018年1月19日金曜日

ニームのフラメンコ祭 ダビ・カルピオ

ヘレスの歌い手ダビ・カルピオ「ソロス」はオデオン劇場で。
メイン会場よりぐっと小さい会場で、椅子もプラスチックだけど、満員御礼。
そしてその期待に応えるような素晴らしい公演だった。
ダビ・カルピオ、ギターのマヌエル・バレンシア、コントラバスのパブロ・マルティン、そして踊りのマヌエル・リニャンが特別協力で出演。
ダビのリーダー公演だけど、主役は彼一人であとは脇、というわけではなく、全員が主役。4人のそれぞれのソロあり、様々な組み合わせがあり、最初から最後まで一時として飽きさせることがない。

ダビが歌い始めたソレアを伴走するのはパブロ。そこに加わるマヌエル。そしてリニャンも。
このソレアが、痛みを感じるソレアなのだ。表面的ではないソレア。

ダビが歌うマラゲーニャはコントラバスの伴奏で始まり、ギター伴奏に引き継がれる。
リニャンが踊るタンゴも、最初は歌が伴奏なしで始まり、そこに踊りが、ギターが加わっていくという形。

マヌエルのギターソロは繊細で、人柄そのままに優しく、強く。
シギリージャの伴奏は素晴らしかった。モラオの伴奏を思い出させる。モラオ亡き今、もっとも素晴らしいシギリージャの伴奏を聴かせる存在だろう。

サパテアードのソロがあったり、トナーを歌うダビとリニャンの絡みがあったり。ここでは歌が踊りを伴奏するのではなく、踊りが歌を伴奏しているかのようだ。
コントラバスのソロにギターが加わり、ブレリアへ。カンテも加わり、最後は再びソレアに戻る。

普通のカンテリサイタルとは一味も二味も違う、カンテの公演。
初演は2015年3月のヘレスのフェスティバル。最後、リニャンはバタを身につけなかったものの、構成は同じ。
初演を見たときに私はこう書いた。念願叶って嬉しい限りだ。
いい歌といいギターといいコントラバスといい踊り。
上質な音楽と舞踊。シンプルな4人だけの舞台は今年のフェスティバルの作品の中でも出色の出来。もう一度ぜひ観たい。 
うん、これは何回でも見たい作品だぞ。

2018年1月18日木曜日

ニームのフラメンコ祭 講演「カマロン」

ニームのフェスティバルは公演だけでなく、講演も充実。

18日の12時30分からは劇場のバーで、アンダルシアの放送局カナルスールのフラメンコ担当者として、長年、ラジオとテレビでフラメンコの番組をやっているマヌエル・クラオによるカマロンについての講演。
もともと彼のラジオ番組で、昨年、カマロン没後25周年を記念して述べ10時間にわたって放送された番組を1時間に凝縮したもので、写真、ビデオ、そしてカマロンを直接知る人々の証言などがはさまれた充実した内容。

子供時代に始まり、歌い手としての始まり、パコとの出会い、録音、奥さんとの出会い、友達、ファミリー、アルバム「レジェンダ・デル・ティエンポ」について、フェスティバルについて、など、充実した内容。


ニームのフラメンコ祭ルイス・モネオ、アントニオ・レジェス

南フランス、ニームのフラメンコ祭に今年もやってまいりました。
先週の木曜にアンドレス・マリンの「ドン・キホーテ」で始まったこのフェスティバルも終盤でございます。

マルセイユ空港から劇場に直行して聴いたのは二人の歌い手によるカンテ・リサイタル。
第1部はルイス・モネオ。日本にもここ数年何度かやってきているヘレスの歌い手。
昨年末亡くなったマヌエル・モネオやトルタの弟で、もともとはギタリストだった。
トナーに始まり、アレグリアス/カンティーニャス、ソレア、シギリージャ、そしてブレリア。

© Jean-Louis Duzert


声質のせいか兄たちよりもフェルナンド・デ・ラ・モレーナを思い起こさせる歌いっぷり。アレグリアスの軽快なコンパス感が楽しい。シギリージャもいい。でも兄たちの暗い深みのようなものはあまり見えないようにも思う。
ギターは息子のフアン・マヌエル。まだ若いが、確実に上達しているし、ヘレスらしいひねりもあるので将来が楽しみだ。


第2部はアントニオ・レジェス。チクラナ出身のカマロンとマイレーナの影響を強く受けた歌い手で、ここ最近頭角を現してきた。
こちらはカラコール風サンブラに始まり、アレグリアス、タンゴス、ソレア、シギリージャ、ブレリア、そしてアンコールのファンダンゴ。

構成がそっくりというのは偶然だろうけど、うーん、なんとかできないのかなあ。
で、アントニオは声もいいし、音程もいいのだけど、後ろ髪を引っ張られるような歌い方とでも言うのだろうか、とにかく、後ろに引っ張ってゆっくりゆっくり歌うのだ。
ソレアやシギリージャならともかく、アレグリアスやタンゴにも軽快さのかけらもない。
ゆっくり歌う方が難しい、とも言うし、いい歌い手であることに間違いはないけれど、これじゃ全部同じに聞こえてしまう。タンゴやアレグリアス、ブレリアはもう少しスピードを上げて、変化をつけた方がいいのでは? うまい人だけに残念。
あれじゃ踊りなら倒れちゃうよ。

© Jean-Louis Duzert

ギターはディエゴ・アマジャ。トマティートのそっくりさんだが、演奏は遠く及ばない。

2018年1月17日水曜日

フラメンコ・ビエネ・デル・スール

アンダルシア州のフラメンコ公演シリーズ、フラメンコ・ビエネ・デル・スールのプログラムが発表された。今年で21回。実力派を中心とした充実のプログラムだ。



◇フラメンコ・ビエネ・デル・スール
セビージャ
2/6(火)「エン・ディレクト」
[出]〈c〉ドゥケンデ、〈g〉ダニ・デ・モロン
2/13(火)「ラ・ライス・エレクトリカ」
[出]〈g〉ラウル・ロドリゲス
2/20(火)「デリリウム・トレメンス」
[出]〈c〉ラ・トレメンディータ
3/6(火)「アシ・ケ・パセン・20アニョス」
[出]〈b〉アントニオ・エル・ピパ舞踊団
3/13(火)「ケ・パサリア・シ・パサラ」
[出]〈c〉ダビ・パロマール、〈g〉リキ・リベラ、〈b〉エル・フンコ、〈perc〉ロベルト・ハエン
3/20(火)「デハメ・ケ・テ・バイレ」
[出]〈b〉メルセデス・ルイス
4/10(火)「パコ・デ・ルシアのカンシオン・アンダルーサ」
[出]〈g〉ホセ・マリア・バンデーラ、エル・アミル、ゲスト〈c〉ラファエル・デ・ウトレーラ
4/24(火)「エル・エンクエントロ」
[出]〈b〉ダビ・コリア、ゲスト〈b〉アナ・モラーレス
5/8(火)
[出]〈b〉アドリアン・ドミンゲス、〈g〉ブラス・マルティネス、〈c〉レラ・ソト
5/15(火)
[出]〈c〉エセキエル・ベニテス、〈b〉アデラ・カンパージョ
[場]セビージャ セントラル劇場
[問]

グラナダ
2/12(月)「ボエミオ」
[出]〈c〉エル・ペレ、ゲスト〈g〉ニーニョ・セベ
2/19(月)
[出]〈c〉マリア・トレド
3/5(月)「ヒターノ」
[出]〈b〉ハイロ・バルール。ゲスト〈b〉ヘマ・モネオ
3/12(月)「カンタ・ア・ローレ・イ・マヌエル」
[出]〈c〉アルバ・モリーナ
3/19(月)「ロス・カミノス・デ・ラ・ギターラ」
[出]〈g〉アルフレド・ラゴス、ルイス・ガジョ
4/9(月)「 アマソナス」 
[出]〈b〉ロサリオ・トレド、〈c〉インマ・ラ・カルボネーラ
4/16(月)
[出]〈c〉マリア・テレモート、〈b〉ぺぺ・トーレス
4/23(月)「ラ・ウニオン優勝者ガラ」
[出]〈c〉アルフレド・テハーダ、〈b〉フェルナンド・ヒメネス、〈g〉アレハンドロ・ウルタード、〈fl〉セルヒオ・デ・ロペ
5/7(月)「アルヘシラス、デスプエス・デ・パコ」
[出]〈g〉ホセ・カルロス・ゴメス、ホセ・マヌエル・レオン
5/14(月)「ベルソス・オルビダドス」
[出]〈c〉アンヘリータ・モントージャ
[場]グラナダ アランブラ劇場
[問]

2018年1月9日火曜日

1月のペーニャ・トーレス・マカレーナ

セビージャの老舗ペーニャ、1月の予定が発表された。
今年も舞踊公演が続くようだ。
この公演は会員以外も入場料を払って観ることができる。
なお、開演は21時となっているが1時間近く遅れることも多いのでそのつもりで。





◇ペーニャ・トーレス・マカレーナ
1/10(水)21時
[出]〈b〉マリア・カルデナス、〈c〉ロサリオ・アマドール、ラウラ・マルチェーナ、〈g〉ルイス・アマドール
1/12(金)21時
[出]〈b〉アルベルト・セジェス、〈c〉マヌエル・ロメロ“コトッロ”、フアン・フランシスコ・カラスコ、〈g〉ミゲル・ペレス
1/17(水)21時
[出]〈b〉ホセ・マヌエル・ガルバン、〈c〉ロシオ・ロペス“ボテリータ”、ロシオ・マジョラル、〈g〉フアンマ・トーレス
1/19(金)21時
[出]〈b〉フアン・アマジャ“エル・ペロン”、〈c〉インマ・リベロ、ダビ“エル・ガジ”、〈g〉ラモン・アマドール
[場]セビージャ ペーニャ・トーレス・マカレーナ

[問]www.peñaflamencatorresmacarena.com  639936929

2017年12月23日土曜日

エバ・ジェルバブエナに芸術功労金章

2017年度の芸術功労金章をエバ・ジェルバブエナが受賞する。
12月22日に発表された24人の受賞者の一人として発表された。
これはスペイン、教育文化スポーツ省が1969年より、毎年、文化芸術の功労者におくっているもの。今年の受賞者には、シンガーソングライターの、ホセ・ルイス・ペラーレスやルイス・エドァルド・アウテらとともにアンディ・ガルシアの名も。

おめでとうエバ!

2017年12月22日金曜日

スペイン国立バレエ「エレクトラ」

スペイン国立バレエの新作「エレクトラ」
振り付けはコンテンポラリーのダンサーながら、フラメンコとの共演も多い、コルドバ出身のアントニオ・ルス。ということから、ちょっとどきどきしながら観に行ったのだが、これが想像以上に素晴らしかった。

バレエ団にとっても非常に重要な作品となるだろうことを確信させる。いや、スペイン舞踊の流れを変えることになりうるのかもしれない、そんな作品だ。
このバレエ団にとっては珍しい、一本もの、つまり一作品だけでの公演だが、この作品のクオリティがおそろしく高く、クラシックバレエの名作にも匹敵するほどでは、と思わせるのだ。


ギリシア神話の、「エレクトラ」の物語は日本ではあまり知られていないかもしれない。
簡単に言ってしまうと、愛人とはかって、父を殺した母を、今度は弟ともに彼女が殺す、という、なんとも殺伐とした話。が、その母はかつて娘/エレクトラの姉を戦に勝つために人身御供として殺されたことを恨みに思っていた、などということもあり、誰が悪いと簡単には言えない。憎しみと殺しの連鎖の虚しさ。
その物語の舞台をスペインのどこかにある、どこにでもある、村に移した。
スタイリッシュな装置と衣装。
サンドラ・カラスコが歌う歌詞が状況、ストーリーを説明しつつ、舞台は進む。サンドラは口跡が良く、歌詞が非常に聞き取りやすいが、スペイン語の問題などでもし歌詞を聞き取ることができなくとも、上記のざくっとしたストーリーさえ頭に入っていれば、問題はないだろう。わかりやすく、観る者を引き込んでいく。その求心力の強さ。

振り付けは、コンテンポラリーをも含め、フラメンコ/エスティリサーダ/民族舞踊、など、スペインの舞踊全般を網羅したような、いわば新しいスペイン舞踊の形をとっている。フラメンコではオルガ・ペリセの協力をえているが、それとそれ以外の部分も全く違和感がなく、シームレスにつながっている。音楽も同様。カンテとオーケストラ、コントラバスとボーダーレスでつながっている。
国立のダンサーは、幼い時から舞踊学校出身者が多く、スペイン舞踊だけでなく、バレエもみっちり叩きこまれてきており、今でも、公演中も毎日、バレエのレッスンを行っている。だからこそ、ボーダーレスなこんな作品が可能だったのだろう。スペイン国立のダンサーにしか踊れない作品だ。
伝統をなぞるだけではなく、そこに新しい要素を加え、新しいスペイン舞踊を生み出す。
要素というのは単なるパソではなくコンセプトや音楽の使い方、装置や衣装なども含めたすべてを言う。
最初と最後の結婚式のシーンが、アントニオ・ガデスの「血の婚礼」を思わすのは偶然ではないだろう。先達へのオマージュ、伝統への敬意を強く感じる。

主役を踊った第一舞踊手のインマクラーダ・サロモンをはじめ、母のエステル・フラード、姉サラ・アレバロ、父アントニオ・コレデーラ、弟セルヒオ・ベルナルらに加え、母の情夫役で芸術監督のアントニオ・ナハーロも出演している。監督就任後、振り付けはするものの舞台からは遠ざかっていたのだが、そのブランクを全く感じさせない存在感だ。また、父王の死後、エレクトラを娶った農夫役のエドゥアルド・マルティネスが素晴らしい。

世界中の劇場ででも上演されるべき名作が、スペイン舞踊の歴史の新しい1ページを開いていくことだろう。