志風恭子のフラメンコ 最前線
スペイン、セビージャ在住フラメンコ研究家による最新のフラメンコ情報
2025年7月17日木曜日
フラメンコ才能コンクール決勝
2025年7月15日火曜日
スペイン国立バレエ『アファナドール』
スペイン国立バレエ団のマドリード。サルスエラ劇場公演を観てきました。
その昔、写真集が出たり、ビエナルのポスターにもなった、コロンビア出身ニューヨーク在住のファッション写真家ルヴェン・アファナドール。そのイメージから作られたのがこの作品。
2008年のビエナルのポスターは論争を巻き起こした。黒塗りの裸のモデルはジョランダ・エレディア。前年にヘレスで撮影されたものだという。このほかにもエスペランサ・フェルナンデスやマティルデ・コラル、コンチャ・バルガス、ジェルバブエナなどもモデルになっているのだけど、本来の彼女たちを消し去ろうとするような黒塗りだったり、目と口を黒で強調したり。コントラストを効かせた白黒写真。
アート?ファッション?悪趣味?
ビザール? ゴシック? グロテスク? サロメの挿絵で有名なビアズリーの作品にも通じるような退廃。私は悪趣味に思えた。というのは神様のように思っているアーティストたちが汚されたようにも思えたからだ。なのでビエナルの翌年に出版された写真集、2009年の『ミル・ベソス』、2014年の『アンヘル・ヒターノス』。いずれも購入していない。
そんな写真にインスパイアされて、祖父が写真家で自らも写真を学んだことがあるという振付家、演出家のマルコス・モラウによる国立バレエのこの作品、2023年12月1日にセビージャで初演。その後、マドリードの王立劇場やバルセロナのリセウ劇場、そして今年は韓国でも上演されている。日本でも今年2月NHKのプレミアムシアターで放映されたので観た人もいるかも?
ルヴェン・アファナドールの写真にインスパイアされた白と黒の舞台、衣装、化粧。カメラマンのイメージからだろうフラッシュ、ダンサーが移動する照明。大掛かりな舞台装置と照明。どれをとってもコンテンポラリーダンスの舞台のようで、実際マスゲームのような群舞も多かったりするのだけど、スペイン国立バレエのダンサーにしかできない、スペイン舞踊やフラメンコの要素ももちろんたくさんあって、なんだろう、クリスタル・パイトの作品をビデオで観た時の衝撃に近い感じ。近未来のスペイン舞踊、というか。
ただこの美的感覚には好き嫌いがあるだろうし、昔ながらのスペイン舞踊を期待して観にきたら戸惑うのは確実だ。一大スペクタクルだし、すごいインパクトだし、個々の見せ場もあるとはいえ、群舞の力が圧倒的で、個々の魅力はその中に埋もれてしまうような。
アファナドールはフラメンコに、暗闇、暗黒や悪のイメージを掻き立てられたのかもしれない。写真そのままのようなイメージに合わせた音楽は国籍不明の宗教音楽のような、民族音楽のような。どこか儀式的であり、マルコスはフラメンコに儀式や宗教的なものを見ていたのかもしれない、いや、マルコスがみたアファナドールなのかもだけど。
とにかくすごいし、インパクト絶大だし、うわって思う瞬間はあるし、新しいものをみている、という感覚もある。面白い。踊っている面々も面白いはず。
でも完全には納得できてない自分もいるのは、きっと、まだまだ古典的なスペイン舞踊を見足りてないからという気がする。こういう作品もいい。いいんだけどもっと古典も見たいよ、という気持ちが正直なところ。
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©︎ Merche Burgos- Ballet Nacional de España |
2025年7月7日月曜日
ラス・カベサス・デ・サン・フアン、ジェルバブエナ祭
セビージャからヘレスに向かい、レブリーハの手前。今は無料になった高速道路の料金所があるところ、東側の丘の町、ラス・カベサス・デ・サン・フアンのジェルバブエナ祭。
日本のフラメンコファンはジェルバブエナというと踊り手エバ・ジェルバブエナを思い浮かべるだろうけど、スペイン料理に欠かせないミントのこと。アンダルシアには最古参ウトレーラのポタヘ(豆の煮込み)、モロンのガスパチョ、レブリーハのカラコラ(カタツムリ)など、食べ物の名前がついたものが多いけど、そう言うこともあるのかな。
フアン・デ・クレメンテという地元のギタリストが、じいさまばあさまから若手までフラメンコを歌う、踊る人たちを集めたグループがトップバッター。今風の、というか、カンシオン、歌謡曲をブレリアに乗せて歌う若い女性に、ああねえ、とか思ってたら出ました。
じいさま
ばあさま2025年7月2日水曜日
第9回フラメンコ才能コンクール決勝進出者発表
第9回フラメンコ才能コンクール決勝進出者が発表されました。
なんと7人!それだけ接戦だったということなのでしょう。
コルドバのラウル・アルバ
カディス県バルバーテのルス・マリア・ガラン
コルドバのナタリア・ガルシア
グラナダのロレナ・エレディア
グラナダのマリア・マシアス、
コルドバのロレナ・プリド
セビージャのハイロ・ベガ
これ、名字のアルファベット順ですね。
私の推してた二人も入ってくれて嬉しい。ま、当然か。
決勝も観に行くつもりです。
決勝は7月14日19時からYouTubeチャンネルで中継されるとのこと。前回のも残っていますし、おそらくアーカイブにも残るとおもいます。
2025年7月1日火曜日
ラス・カベサスのフラメンコ祭
いよいよ夏のフェスティバルも本番。
ラス・カベサス・デ・サン・フアンという、セビージャの南、レブリーハの隣にある街 でにも今週金曜日にフラメンコ祭が行われます。
その前哨戦として、6月29日にはヘスス・メンデスのリサイタルが行われ、7月1日はフアン・ピニージャの公演、2日はこのフェスティバルの生みの親の一人でもあるミゲル・アカルについての講演、3日にも地元アーティストの公演があるそうです。
◇第34回ラ・ジェルバブエナ・フラメンコ祭
7/4(金)21時30分
[出]〈c〉アウロラ・バルガス、ランカピーノ・チーコ、〈b〉コンチャ・バルガスほか
[場]セビージャ県ラス・カベサス・デ・サン・フアン サンティシモ・クリスト・デ・ラ・ベラ・クルス広場
[料]10ユーロ
[問] https://www.lascabezasdesanjuan.es/es/actualidad/eventos/XXXIV-Festival-Flamenco-de-La-Yerbabuena/
ヘレスのフィエスタ・デ・ラ・ブレリア2025
ヘレスは夏もフラメンコ。というわけで今年もビエルネス・フラメンコス、フィエスタ・デ・ラ・ブレリアが、7月から8月にかけて開催されます。
無料の催しも多いのは嬉しいですね。
フィエスタ・デ・ラ・ブレリアは早めに入場券購入がおすすめです。
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6月20日の発表記者会見、市長とアルティスタたちほか |
◇ビエルネス・フラメンコス
7/25(金)21時『ミサ・フラメンカ・デ・サンティアゴ』
[出]〈c〉フェリパ・デル・モレーノ、マヌエラ・デ・ペリキン、ヘマ・カラスコ、マヌエラ・フェルナンデス、ドローレス・デ・ペリ禁、マヌエル・デ・カンタローテ、〈g〉マヌエル・ヘロ、ルイス・デ・ペリキン、〈piano〉マヌエル・カサード〈perc〉フアン・ディエゴ・バレンシアjr
[場]ヘレス サンティアゴ広場
8/1(金)21時30分
[出]〈c〉マヌエル・マレーナ、ホセ・エル・ベレンヘーノ、タマラ・タニェ、〈g〉アントニオ・マレーナ・イホ、フアン・カンパージョ、〈b〉サライ・ガルシア、伴奏〈c〉カルメン・グリロ、エル・キニ、〈g〉フェルナンド・デル・モラオ
8/8(金)21時30分
[出]〈c〉フェリパ・デル・モレーノ、アブラアム・エル・サンボ、〈g〉ホセリート・ガルベス、〈palmas〉ハビ・ペーニャ、〈b〉フェルナンド・ヒメネス、伴奏〈c〉エンリケ・レマチェ、マヌエル・モネオ、〈g〉フェルナンド・デル・モラオ
『フィン・デ・フィエスタ・ポル・サンティアゴ』〈b〉ティア・ジョジャ、ティア・クリータ、メルシ・デ・チチャロ、ルイサ・ガリード
8/15(金)21時30分
[出]〈c〉ルイス・モネオ、〈g〉フアン・マヌエル・モネオ、〈palmas〉アリ・デ・トタ、ハビエル・ペーニャ、〈b〉ヘマ・モネオ、伴奏〈c〉フアン・デ・マリア、マヌエル・デ・ラ・ニナ、マヌエル・タニェ、〈g〉ヘスス・アガラード“エル・グアルディア”
[場]ヘレス サント・ドミンゴ修道院
[料]15ユーロ、当日は20ユーロ
[問] https://flamencodejerez.org/verano-flamenco-2025/
前売り https://www.tickentradas.com/fest/viernes-flamenco-2025
8/19(火)
20時無料ブレリアクラス、子供の遊びなど
21時[出]〈c〉エバ・デ・クリスト、〈g〉サンティアゴ・モレーノ、〈palmas〉ホセ、ペーニャ
21時30分ヘレスのブレリアのフィエスタ
[場]ヘレス ベレン広場
[料]無料
8/20(水)21時30分
[出]〈c〉ダビ・ラゴス、メルチョーラ・オルテガ、アグヘータス・チーコ、〈g〉アルフレド・ラゴス、ドミンゴ・ルビチ、〈palmas〉ハビエル・ペーニャ、フアン・ディエゴ・バレンシア
8/21(木)21時30分
[出]〈c〉フェルナンド・ソト、マラ・レイ、コラル・デ・ロス・レジェス、〈g〉ラウル・ベルナル
8/22(金)21時30分
[出]〈c〉エルー・デ・ヘレス、マヌエル・モネオ“バルージョ”、マヌエル・デ・ラ・フラグア
[場]ヘレス ベレン広場
[料]無料
8/23(土)21時30分
[出]〈c〉カプージョ・デ・ヘレス、伴奏〈g〉ラモン・トルヒージョ、〈palmas〉エル・トリパ、ホセ・ルビチ、ミゲル・フローレス、〈c〉ドローレス・アグヘータ、伴奏〈g〉ドミンゴ・ルビチ、〈c〉ディエゴ・カラスコ、グループ〈〈c〉〉マロコ・ソト、ホセレテ・デ・ムショヒタノ、カルメン・アマジャ、サマラ・アマジャ、ラ・フンケラ、ラファエル・ソルデラ、フェルナンド・デ・ラ・モレナ・イホ、〈perc〉アネ・カラスコ、グループ・ポル・ブレリアス〈c〉アントニオ・マレーナ、0フアン・デ・マリア、エル・キニ、サイラ・マレーナ、〈g〉アントニオ・マレーナ・イホ、フェルナンド・デル・モラオ、〈b〉ロシオ・マリン、ゲスト〈b〉マリア・デル・マル・モレノ
[場]ヘレス ボデガ・ゴンサレス・ビアス パティオ・デ・ラ・トネリア
[料]25、30ユーロ
[問]https://flamencodejerez.org/verano-flamenco-2025/
前売り https://www.tickentradas.com/eventos/fiesta-de-la-buleria-bodega-gonzalez-byass-jerez-2025
2025年6月30日月曜日
第22回コルドバ県青少年フラメンコ・コンクール
第22回コルドバ県青少年フラメンコ・コンクールの決勝がコルドバ県エンシーナ・レアル市役所のオーディトリオで行われました。
14歳から35歳までのコルドバ在住、在学している若手を対象としたこのコンクール、6月12、13日にはコルドバ市にある県庁のパティオの特設舞台で準決勝が行われ、そこでえらばれた各賞対象2名ずつが参加。賞は優勝者のみで2位には賞はないという厳しい戦い。
そのコンクールに審査員として行ってまいりました。他のメンバーは、スペイン国立バレエ監督のルベン・オルモ、コルドバを代表する歌い手エル・ペレ、アルカンヘル、ハエン音楽学校フラメンコギター科教授ラウラ・ゴンサレス。準決勝、決勝と同じメンバーです。
決勝はいずれの参加者も準決勝以上に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。
結果は以下のとおりです。
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©︎ Toni Blanco |
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©︎ Toni Blanco |
- Premio Blanca del Rey (14 a 18 años): 舞踊/ブランカ・デル・レイ賞(14〜18歳)
- Lucia Vinos González
- Raúl Alba Cruz ラウル・アルバ・クルス
©︎ Toni Blanco - Premio Olga Pericet (19 a 35 años): 舞踊/オルガ・ペリセ賞(19〜35歳)
- Inmaculada Concepción Carmona Jiménez
- Natalia García Castro ナタリア・ガルシア・カストロ
©︎ Toni Blanco