2020年11月30日月曜日

セビージャFest『フラメンコ・キッチン』

 セビージャの舞台芸術のフェスティバル、FEST。セビージャの私立劇場協会がセビージャ市と協力して主催しています。なので舞台となるのは、公立劇場じゃないところだけ。ビエナルなどでお馴染みのロペ・デ・ベガやアラメーダは市立、セントラルは州立なのでこのフェスティバルでは出番なし。

今年は11月18日から29日まで開催されました。中心となるのは演劇公演。ですが、最終日29日にはフラメンコ公演が行われるというので出かけて行きました。会場はTNT劇場。市の北部にある、アタラジャ劇団によって2008年に作られた劇場です。

会場にはロサリオ・トレドやラロ・テハーダ、エスペランサ・フェルナンデスらアルティスタたちや、ビエナル監督夫妻や各新聞の批評家など、たくさんのフラメンコ関係者が。もちろん満員です。

作品は『フラメンコ・キッチン』。



 昨年、2019年2月、ヘレスのフェスティバルで初演されたもので、フラメンコ・ノマダという、歌い手で踊り手のアナ・サラサールと歌い手インマ・ラ・カルボナーラ、元アントニオ・ガデス舞踊団の踊り手だった演出家、フアナ・カサードによるユニットによる公演。この作品ではアナとインマの他に、踊り手、イニエスタ・コルテス、アンヘレス・ガバルドン、マカレーナ・ラミレス、パーカッション奏者だけど歌って踊るロベルト・ハエン、ギタリスト、パコ・イグレシアスという7人が出演する、ちょっとドラマ仕立ての作品です。

登場人物はキッチンで働く5人の女性と男性1人。不法移民、金欠、DV被害者、アル中に不倫中の二人とそれぞれに問題を抱えています。その人間模様を、キッチン用具でコンパスを刻み、フラメンコ曲に乗せて描いていきます。

説明は台詞のような歌詞でされますが、メロディはフラメンコ好きなら聴き慣れたポピュラーなもので、歌詞の載せ方にも無理はなく聞き取りやすいです。テーブルクロスをマントンのように使ったり、書類をアバニコのように使ったり、という見立ても面白いし、それぞれにソロ、見せどころが用意されています。

貫禄のイニエスタが見せるちょっとしたブラソの素晴らしさ。彼女の中にオヨスのエッセンスが生きている、という感じ。アンヘレスはよりフェメニーナ、女性的で品がよく、アナはシャキッとした男前なフラメンコ。踊ったすぐ後で息を切らしているのにタラント熱唱するかっこよさ。インマも芝居心たっぷりだし、ソロも素晴らしかったです。女性陣の最年少マカレーナは、初演時のマリア・ホセ・レオンに代わっての出演なのですが、ベテランたちの存在感に負けている感じ。若くて可愛いし、よく動くんだけど、芝居心みたいなのもほぼ感じられないし、影が薄く残念。初演のマリア・ホセで見たかったなあ。

ロベルトは歌い、踊り、パーカッションをと、八面六臂の大活躍で、ビエナルででもそうだったけど、今や、フラメンコ作品に欠かせない芝居達者でエンタテイナー。今回はユーモアだけじゃなくちょっとシリアスな芝居もあったり。そして全体を支える、美しいパコ・イグレシアスのギター。日本にも何度も行っていて、日本の踊り手の伴奏も数え切れないほどやっている彼の、何があっても動じない、落ち着いたギターは影の功労者でしょう。

全員クビが宣告され、いつでも弱者が割りを食うと、社会の不正義を訴える、という、いささかプロリタリア演劇的な最後は、ちょっと古臭いし、プロパガンダ臭もあって個人的にはあまり好きではないけれど、今でもすぐそばにある現実ではあるのだろうとは思います。特にコロナでレストランやバルが次々に閉店に追い込まれる今はより身近な問題だとも言えるかもしれません。でも真っ向から言われるとちょっと抵抗があるなあ。個人的には間接的な表現の方がより、心の深いところに届くような気がするのだけど、どうなんでしょう。人それぞれなのかな。

もともと、アーノルド・ウエスカーの戯曲『調理場』に想を得たということですが、キッチンを題材にしたというときっと誰もが思い浮かべるだろう、韓国の『ナンタ』にも、ワゴンを使うところとか、台所用具でリズムを刻むところなどはちょっと似ているかもしれません。だからことさら新鮮な感じはしないけれど、よくまとまっていてわかりやすく、話の流れもスムーズで、佳作だと思います。

こんだけ芸達者が揃っているのだから、次回は辛い現実を忘れるような喜劇を見せてくれるとうれしいのですが、さて。


ヘレスの時のビデオがあったので貼っておきます。



Flamenco Kitchen, estrenada en Festival de Jerez del año pasado, es una buena obra teatral de flamenco. Narra bien historia través de letras en melodía popular de flamenco. Cada personaje tiene su problema, inmigrante sin papeles, una sin dinero, señora que tiene marido problemático y otra es enamorada a compañero casado. 

Magnifica braceo de Hiniesta Cortés, movimiento elegantísimo y gracia de Ángeles, "handsome"flamenco de  polifacética Ana, inmensa Inma y "entertainer" Roberto y bella guitarra por Paco sostiene todo esos momentos críticos.

Me hace recordar obra coreana Nanta, por ritmos hecho por utensilios de cocina y por carritos, y su final propagandística, como lo de teatro proletariado del siglo pasado, no es mi gusto, pero sigue siendo actual, en l época de pandemia más todavía.

A la próxima vez, me gustaría ver una obra que nos hace olvidar todas realidades tan crueles con estas cuadrillas de artistazos. ¿podría ser?




2020年11月11日水曜日

セビージャ映画祭『9 SEVILLAS』

感染増加のため、夜間外出禁止が22時から7時(これまでは23時から6時でした)になり、バルやレストランは18時閉店になったセビージャ です。今日以降、通常21時開始だった劇場公演も16時開始になったり、とあれこれ大変。

そんな中、6日から開催されているセビージャ映画祭。ヨーロッパ映画の映画祭であります。

過去にもここで公開されたフラメンコ関係の映画がいくつかあるのですが、今年は2本。

1本目、『9Sevillas』をロペ・デ ・ベガ劇場でのプレミアム上映で観てきました。



2018年、今年ではなくその前のビエナルのポスター、覚えている人いるでしょうか? 






とにかく字がいっぱいだし、有名なアルティスタはボボーテだけだし、なので読むのもパスしてた人も多いのでは? 
これはイスラエル・ガルバンのブレーンで、現代美術家ペドロ・G・ロメーロによるもの。
ビエナルのポスターは毎回、いろいろ批判されるのですが、その批判を聞いて、映画作りがスタートしたとのこと。監督はそのペドロとポスターで緑の鸚鵡を手にしたゴンサロ・ガルシア・ペラジョ。

映画の前にアルフレド・ラゴス伴奏で、イネス・バカンとトマス・デ・ペラーテのナナの生演奏があったのはうれしい驚きでありました。はい、二人も映画に出演しています。イネスはいつもの、という感じなのだけど、そこに合わせていくアルフレドすごいなあ。


ポスターに登場した9人とのお喋り、そしてイスラエル・ガルバンやロシオ・マルケス、イネス・バカン、ラウル・カンティサノ、レフレ、トマス・デ・ペラーテ、ニーニョ・デ ・エルチェ、ロサリア、ロシオ・モリーナとシルビア・クルス、レオノール・レアルなどビエナルのリハーサルや、セビージャの街などの映像から浮かび上がってくるのはフラメンコの真実。

真実は唯一無二のものではなく、それぞれにそれぞれの真実があるから、これだけが真実だとは私もいわないけれど、普段見逃しがちな、舞台の上にあるフラメンコではないフラメンコがいっぱい見えてくる。

ロンドン生まれの黒人バイラオーラ、ジンカ。チリ人バイラオーラ、ハビエラ。ハンガリー人街頭古本屋ルドルフ・ロスタスら外国人。ボボーテや女性闘牛士のバネサ・レリダ、セビージャの町外れの掘建て小屋地区の女性たちでの芝居『ベルナルダ・アルバの家』に出演したロシオ・モンテーロ、ヒターノや女性、移民の問題を扱う弁護士パストーリ、フィリグラーナらヒターノたち。そしてこの映画の監督ゴンサロ・ガルシア・ペラジョと詩人ダビ・ピエルフォルトという9人が、ビエナル初代監督で詩人、フラメンコ研究家のホセ・ルイス・オルティス・ヌエボやトリアーナ生まれのバイラオーラでペペ・アビチュエラ夫人のアンパーロ・デ ・ベンガラ、監督の兄ハビエルらと話しながら、自分を、フラメンコを語る。

外国人、ヒターノ、セビージャ。ビエナルをめぐるキーワード。いやフラメンコ、そのものを語る上で欠かせないキーワードなのかも。

そうして見えてくるものは、舞台のフラメンコを観ているだけでは見えてこないフラメンコの全体像。フラメンコのベースにいる、ヒターノたち、黒人や中南米の文化、そしてカトリックでアナーキーなセビージャの町というアトモスフィア。フラメンコのベース。根っこ。

イスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナ、ニーニョ・デ ・エルチェらの最先端フラメンコ。イネス・バカンやトマス・デ ・ペラーテの太古を思わせる声。それらはある日突然生まれたわけではなく、昔からの流れや今もそれを支える多くの人があってのものなのだよね、とか考えさせられる。

彼らは三角形の頂点にいるのかもしれない。でも彼らだけじゃないんだよ。

ガルシア・ペラジョ監督が1978年に監督した映画 『ビビル・エン・セビージャ』のシーンが出てきたり(若き日のファルーコ!)、過去ともつながっている。

とかなんとかごたくはともかく、いや、個人的にはとても面白かったのであります。2時間半もあっという間。ただ、おしゃべりが多いので、フラメンコのパフォーマンスだけを期待すると飽きるかも? また、字幕で出てくる人名などが、歴史を知らないと???になってしまったりするかも。そういう意味で、フラメンコと無縁な人には解説が必要なところがあるかなあ。

フラメンコには動物的なものがある、ということで、ポスターでも人々は動物と一緒なのだけど、そうなのかな、動物的かな?そこら辺はよくわからないけど、社会が大きく変わるときにフラメンコは必要とされる、という感じは確かにあるよね。日本もバブルでどんどん社会が変わるときにブーム起きたし、今中国で人気が高まっているのもそういうことじゃない? 機械的なものに対し、ひと息つけるような人間的なものを求める。それがここでいう動物的ってことなのかな。

おしゃべりとパフォーマンスの組み合わせ方なども面白いし、ドキュメンタリーのようでもあり、でも脚本があってのものだし、うーん、これは一体?
でもとにかくフラメンコが見えてくる映画には違いありません。

いやもう、ほんと、ジンカが歌いながら踊るサマータイムのフラメンカなこと! あれだけでもみんなに観てほしいなあ。



以上、映画の感想をスペイン語で簡単に要約。

La verdad no es única. Cada uno tiene su verdad. De dónde mira, la verdad cambia su forma, su imagen. Así tampoco digo yo, este es la única verdad de flamenco, pero hay muchas verdades de flamenco en esta película. 

Extranjeros, gitanos y Sevilla. Tres claves de la Bienal son tres claves de flamenco. Por su historia y por su actual situación.

Aquí nos hace ver todos lo que no lo veía, lo que no veía en el escenario. Los artistas flamencos de la primera linea, o  de vanguardia, (como quiere que llame) como Israel Galván o Niño de Elche son puntas de un triangulo, pero en su base, en la tierra, están los gitanos, libres y cautivados, los extranjeros que dan mucho a flamenco y cautivados, y Sevilla, la ciudad católica y anárquica,

Animalidad de flamenco, no estoy totalmente de acuerdo, pero, sé que cuando sociedad cambia bruscamente, la gente busca flamenco para respirar. 
















2020年11月7日土曜日

レブリーハ秋のフェスティバル オンラインで


セビージャ県とカディス県の県境に近い町レブリーハのフラメンコがオンラインで楽しめます。

スペイン時間の日曜日14時開始ということは日本時間の22時。

11月8日は日本でもお馴染みの歌い手、今が旬なホセ・バレンシア(伴奏フアン・レケーナ)と、新譜をリリースしたばかりのギタリスト、リカルド・モレーノ。15日はイネス・バカン(伴奏ペドロ・マリア・ペーニャ)、29日はコンチャ・バルガス(伴唱イスマエル・デ ・ラ・ロサ、ペチュギータ、伴奏クーロ・バルガス)、12月6日はアナベル・バレンシア(伴奏クーロ・バルガス)と、レブリーハのオールスター?的プログラム。

多分日本からも観ることができると思うのでお楽しみに。

中継は下記のリンクから。

http://www.lebrija.tv/directo/

2020年11月6日金曜日

ルイス・レオン逝く

 トリアーナ生まれのフラメンコ舞踊家、妻ルペとのパレハでルイルペとしても知られていたルイス・レオンが11月5日亡くなったそうです。


1987年新宿『エル・フラメンコ』にも出演していたベテラン。
セビージャではタブラオ、パティオ・セビジャーノに出演していたのを覚えています。

トリアーナの生まれで、兄で舞踊家のマヌエル・レオンの影響でアデリータ・ドミンゴの家に行き、そこで生涯のパートナー、ルペことグアダルーペ・オスーナと出会い、以後、アメリカや日本など各地で公演しました。
2013年、トリアーナの夏祭り、ベラで、名誉トリアーナ市民の称号を受賞しています。

ご冥福を祈ります。



2020年11月2日月曜日

訃報/ペドロ・イトゥラルデ、ペペ・エル・ポラコ

 11月1日は諸聖人の日。昔でいう万聖節ですね。有名無名すべての聖人の日、カトリックでは亡くなった人は全て聖人ということで、スペインでは皆がお墓参りに行く日であります。日本のお盆のような、と言ってもいいかもしれません。

そんな日に二つの訃報が届きました。

ペドロ・イトゥラルデ、スペインのジャズのドン的存在だったサックス奏者。フラメンコの人にはパコ・デ ・ルシアと共演したアルバムで知られているのではないでしょうか。1960年代の録音ですが、後に来るフュージョンの先取りでした。


もう一人はホセ・エル・ポラコ。本名ホセ・ルイス・デ ・ラ・ペーニャ。1933年トリアーナ生まれの、かつてガデス舞踊団で活躍した踊り手です。その奥さんが、1967年のガデスの映画『恋は魔術師』で相手役を務めた踊り手ラ・ポラカでしたが、彼女は2010年に亡くなっています。


安らかに。