2019年10月11日金曜日

今枝友加カンテソロライヴ

10月10日高円寺エスペランサで行われたパセオライヴ第116回は、今枝友加カンテソロライヴ。ギターはエンリケ坂井、バイレに井山直子。これは見逃せない。
それも、エンリケ坂井が編纂する、彼のコレクションのSPレコードのアンソロジー、グラン・クロニカに学んだ、新しいレパートリーを披露するのだという。
期待は高まる。そして、その期待をはるかに超える舞台となった。


歴史的な瞬間?。
いや、瞬間じゃないのだ。歴史は繋がっている。続いている。
そして、それがこうして、こんな幸せな瞬間を、あの時、あそこにいた全ての人にくれたのだ。


もう、日本人だとか、スペイン人だとか、そんなことは関係ない。
そこにあるのはフラメンコ。フラメンコそのもの。
いや、日本人であるから、言葉の問題はあるわけで、その分、余計大変だったということはあるだろう。人並みの努力では乗り越えられない問題ではある。
でも、フラメンコを愛する人が、フラメンコと長年、真摯に取り組んできた成果に、国籍は関係ない、のだ。そう思う。
スペインでこの公演をやったとしても、地元のアフィシオナードたちがオレ!の嵐で答えること、間違いない。


オープニングのデブラ、マルティネーテ、トナー。定番中の定番のレトラを真摯に歌い、マラゲーニャ。細やかな節回しを完璧になぞっていく。
歌心のあるギターがやさしく寄り添い、歌を支える。
ペテネーラ、井山がパルマで加わってのブレリアス。
ギターソロはタンギージョのポプリ。いろんなメロディーが現れる。
古き良きフラメンコを感じさせる。メルチョールとディエゴ・デル・ガストールと、ペリーコ・デル・ルナール。好きなギタリスト達が彼のギターの中に生きている。

カンパニジェーロスは、本家本元ニーニャ・デ・ラ・プエブラ風に立って歌う。
ファンダンゴは最後の一節がすごかった。渾身の一節。
締めのシギリージャも素晴らしい、の一言。
思わず、オレ!が出てしまう。

初めて歌うレトラや曲だったからか、少し気持ちが急いでしまうところがあったり、(それでも歌として走ってしまうところまでいかないのがさすがでございます)、どの曲も全身全霊込めて熱唱してしまうのも、多分、歌い慣れてくれば、曲の中でもっと強弱の使い分けが出てきたりして、曲の味わいがよりますのだろう。私の好みで言えば、例えばカンパニジェーロスは、もっと軽く歌ってもいいと思うし、それで全体の起承転結というか、バランスがもっともっと良くなって、ドラマチックになると思う。
もともと一曲を、ずっと同じ調子で歌うのではなく、ちゃんとマティサール、ニュアンスをつけて、様々な色彩で歌っていくことができる人だから、なんかこれからもっとどんどん良くなっていくことも見えるから、うん、本当に楽しみで、うれしい。
これはほんの始まり。どんどんすごいの、もっとすごいの、絶対見せてくれるのわかるから、ワクワク嬉しい。

最後は井山が踊るカンティーニャ。体型も全然違うのにコンチャ・バルガスが見えてくる。その井山が最後に踊り歌った声が可愛くて、きゅん。

いやあ、本当に、フラメンコはフラメンコを愛する人たちのためなんだ、と改めて感じさせてくれたのでありました。


エンリケさんのフラメンコへの愛と、今枝ちゃんのフラメンコへの愛が繋がって花開いた。日本のフラメンコってすごい。遠いところにいてもフラメンコはきっちり本物フラメンコだぞ。