2023年10月28日土曜日

Flamenco en Japón 森田志保


 森田志保のソロライブ。巨匠エンリケ・エル・エストレメーニョ、その息子ニョニョのギター、三枝雄輔のパルマというシンプルな舞台。これが最高の最高!至高のひとときだったのだ。

森田はフラメンコ の神様をおろす巫女なのだ。それぞれの曲の、そして歌い手がライブで歌っているカンテのセンティード、意味そして方向性を正確に理解し受け取り、表現していくのだ。意味というのはスペイン語の歌詞を日本語で理解しているという意味ではなく、もっと本質的な、なぜそこにそのフラメンコなのか的なところ。それをまるで動物の本能のように感じて表現していくのだ。それがすごい。

もともと好きな踊り手ではあるのだけど、今夜は神がかっていた。ロマンセのゆったりしたコンパスに物語がみえる。ニョニョのギターソロが雰囲気をより一層盛り上げ、タラントはドラマチックに抑制された中に悲劇性をも感じさせ、タンゴではじける。王道の流れなのだが、そのタンゴでもう涙が止まらない。

フラメンコ を観て涙することは時々ある。音楽や形の美しさに心が震えて、ということもあれば、表現の中に自分と通じる感情や考えを感じて、ということもある。そしてなんだかわからないけど涙、ということもある。泣くということは個人的なことなのでこういう場に書くのもなんか違うのかもしれないけど、とにかく今夜の舞台を観て身体の奥底から湧き上がってくる感情が止められず、号泣。

エンリケのカンテソロはアバンドラオ。ロンデーニャ、ハベーラと曲種を言って歌う親切さ。そして全力の熱唱で聴いていて幸せになる。 

 最後はアレグリアス。これがもう舞台に上がる前の足取りからしてアレグリアスなのだ。そう、これがフラメンコ 。私が好きなフラメンコ だ。うたを聴いて感じたままに踊る。歌も踊りも自由で自然。そのなかに人生や真理が詰まってる。

エンリケの歌、パルマ(雄輔くん、スペイン人に引けを取らない。エンリケとの弾丸パルマ最高でした。最後のパタイータも凄み増してるし)、ギター(ちょいモダンなタラントのイントロ都会ツボ。もっとスペインでも聴きたい)、踊り、客席の空気、観客の期待と感嘆、ハレオ、全てが一体となって大きな渦ができてすべてを巻き込んでいく。エンリケの本気を引き出し相乗効果でどんどん高みに上がっていく。というのか、その渦にフラメンコ の神様が降臨されるというか。

生きててよかった、まじでそう思える瞬間がありました。終わって感動を本人に伝えようとしてる時にまた出てくる涙。なんなんだろう。とにかく心揺さぶられたのであります。

ありがとうございました。






flamenco en Japón 変態会

 初めての浅草橋バリーカ。フラメンコ 公演は地下の会場。客席と段差がほとんどないけど大きめの舞台。上手上部にモニターがあるから後ろの席でも足が見たい人にも親切な配慮。

影山奈緒子、小林泰子、小谷野宏司、川島桂子、徳永健太郎。この5人での公演が変態会と言って続いているのだという。興味津々。変態というからにはひょっとするとあんなことやこんなことも?と考えた私がバカでした。実態は純粋正統本格フラメンコ を、変態的に愛し慈しむ人たちがボディアンドソウル、身も心もフラメンコ に捧げ委ねる様子を観客が愉しむという、変態は実は観ている私?的なものでした。

プレゼンテーションのタンゴで期待を煽り、影山がなぜかシリアスな表情のまま踊るアレグリアス、ちょっとした仕草がムイフラメンコな小谷野のソレア、表情がフォトジェニックな小林のドラマチックなタラント。休憩を挟んで小林のロマンセというかレブリーハ風のブレリアというかコリードというかにはじまり、小谷野のグラシアが生きるカンティーニャ、影山の重厚なソレア。それらを支えるスペインの空気をそのまま感じさせる徳永のギターと痒い所に手が届く川島の歌。どれをとってもフラメンコ 愛にあふれてた、と思う。彼らの愛が観客につたわり日本でのフラメンコ 愛がより一層膨らんで変態で溢れますように




 

2023年10月16日月曜日

セビージャ ギター祭

 セビージャ、ギター祭が開催中です。

スペインだと有名なのは毎年7月上旬に開催されるコルドバのギター祭。クラシック、フラメンコ、ジャズ、ロックと多彩なプログラム、そして第一線で活躍するアーティストたちによるマスタークラスで人気です。ほかにもアンダルシアではグラナダやロンダでも開催されていますし、マドリーでも今年、第5回のギター祭が開催されたそうです。

セビージャは今年で第14回。もともとクラシック専門だったのですが今はフラメンコ公演も毎年複数行われています。

3日、開幕を飾ったのは、2021年からセビージャに留学している横村福音(ねね)さんのリサイタル。16世紀の館で行われました。こちらは観にいくことができなかったのですが、メイン会場となるセビージャ市立の、エスパシオトゥリナのシルビオホールでの初日には、カニサレス小倉真理子夫妻のお誘いで出掛けていきました。演目はスペイン人作曲家ダビ・デル・プエルトがロルカの「ポエマ・デル・カンテ・ホンド」の詩に想を得て作曲した、ギター四重奏とソプラノのための曲「クエルダス・デル・ビエント」でこれが初演。これに先だって作曲家自身によるトークがあり、そこで解説を聞いたこともあってか、クラシックギター素人な私も楽しめました。またソプラノは予定されていた人の代役を急遽務めた方がシシリア在住の日本人の伊藤佐智馨さんでした。あとでお聞きしたら実質1日半しかなくて練習もままならなかったようで、緊張しました、ということでしたが、それを全く感じさせない、落ち着いた演唱で、素晴らしかったということもあるかもしれません。さまざまに色合いを変える声の力。4台のギターによる演奏も興味深く、詩から始まった作品だけに詩的というか、繊細さが際立って聞こえたのは、普段耳にしているフラメンコギターとの違いなのかもしれません。

翌日はクラシックとフラメンコのカップリング。前半はマルコ・タマジョというキューバ出身の方の『エテルナメンテ・バロッコ』。演奏し、曲間に曲名も言っているのだけど、このフェスティバルの特徴の一つでもあるマイクなし、なこともあって、全然聞こえない。プログラムもないし、全くわからない。それでも、超絶テクニックの素晴らしいギタリストだということはわかりました。ただ一人で1時間以上弾き続け、この後フラメンコなのに、とちょっとあせったのも事実。で後半、パコ・フェルナンデスの演奏、そしてケタマ調の弾き語りは、前半と対照的で、朴訥に、自分の言葉で語る感じ。あまりにも二人が違うので、うーん、このプログラムはこれで良かったのだろうか、とちょっと疑問に。休憩なしの2時間超でお尻痛いし。休憩入れると、途中で帰る人もいるだろうし、ってのもわかるし、クラシックファンにもフラメンコを聞いてもらいたいし、フラメンコファンにもクラシックを聴いてもらいたいということなのだろうけど。

翌日は行くことができなかったのですが、やはりクラシックとフラメンコで、フラメンコのギターはアレハンドロ・ウルタードという、フラメンコ・ギタリストの中ではクラシックぽい人なので、違和感なかったんじゃないかな、と思ったり。

14日は来日経験もあるペドロ・マリア・ペーニャが、歌い手ルイス・エル・サンボをゲストに。最初にギターソロで、ミネーラからのソレア、シギリージャ、ブレリアと演奏し、歌い手を招く。歌もソレア、シギリージャ、ブレリア、というのは偶然? 狙った? それでも久しぶりに聴くルイスは、味わい深く、心にすとんと落ちてくる。このところ聞いたアルヘンティーナやレジェス・カラスコのような、歌謡のようには聞こえない、フラメンコ。自然に出てくるメロディも歌詞も聴き慣れた伝統的なもので安心して聴くことができる。そして呼吸するかのような自然さ。ブレリアで同じようなメロディが繰り返されても文句はない。

いやあ、現代的なものが嫌いなわけじゃないですよ。最初よくわからなかったエンリケ・モレンテ、今や大好物です。エンリケが映画『フラメンコ』で歌っているシギリージャ、あれとか、もうゾクゾクするくらい大好きです。でも、なんだろう、ここんとこ聞かされたカンテソロがあんまりだったもんで、改めて自分がフラメンコに求めているものは何かということを考えるきっかけになっているようにも思います。ヒターノだからいい、年配だからいい、ってわけじゃなくて、たとえば、サンドラ・カラスコとかも良かったし。うん、いいものはやっぱりいいなあ、ってことなんじゃないかと。そ、好みの問題、なのかもしれません。





2023年10月12日木曜日

ヘレスのフラメンコ学会のプレミオ・ナショナル

ヘレスのフラメンコ学会がおくるプレミオ・ナショナルの受賞者が以下の通り、発表されました。



カンテ;ビセンテ・ソト

バイレ;エバ・ジェルバブエナ

ギター;ラファエル・リケーニ

マエストリア;カルメン・リナーレス

普及;シルクロ・フラメンコ・デ・マドリード

研究;ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボ

名誉賞;ロメリート・デ・ヘレス

コパ・ヘレス(ヘレスのアーティストが対象の賞)

カンテ;ルイス・エル・サンボ

ギター;アルフレド・ラゴス

バイレ;ヘマ・モネオ


授賞式は11月4日とのことです。



 

2023年10月9日月曜日

ドランテス& ルノー・ガルシア・フォンス『パセオ・ア・ドス』


 ドランテスと5弦コントラバスのルノー・ガルシア・フォンス。2014年のビエナルで初共演。翌年アルバムをリリース。世界各地で共演を重ねてきた。
当時ブログにこう書いた。

 ドランテスのピアノと
ルノー・ガルシア・フォンスのコントラバス。
ただそれだけ。
二人だけの舞台なのだが今までのどのコンサートよりも濃密な
音楽空間がつくりだされていた。

ティエントやブレリアなどフラメンコが顔をだしたかと思うと
自由に地平をかけめぐり大空の彼方にきえていく。
そんな感じ。
フラメンコの規則にしばられるでなく自由な展開をみせていくのだ 。
ジャズのインプロのような感じでもあるし
映画音楽のようなメロディアスな感じもある。

スペイン系フランス人ルノーは
コントラバスをアラブのウードのようにきかせるかとおもえば
ギターのようにかきならし、打楽器のようにうちならし
さまざまな顔をみせながら心地のよい音楽で劇場をいっぱいにする。

美しく質の高い音楽にすっかり魅了された夜でありました。
20年後も基本は変わりません。フラメンコベースにしながらもフラメンコにとらわれすぎることなく自由に羽ばたいていく。世界はもっと広いよ、と示すかのように。

ロンデーニャ、と言ってはいたけど、どっちかというとパコ・デ・ルシアの『シルヤブ』みたいな感じの曲に始まり、ブレリア、ソレア、などと合間に曲種を言うのだけど、よく聞き知ったメロディやはっきりしたリズムが来たかと思うと、そこからどんどん飛び出していく。いつものフラメンコからは離れるけれど音楽としての美しさ、心地よさで、違和感はない。

イスラエル・ガルバンやロシオ・モリーナの舞台にもちょっと似ている。フラメンコをベースに、でもそれにとらわれず、より自由に、自らの方法で表現していく。

日本だと、フラメンコを表現することが目的になりがちなところもあるように思うのだけど、フラメンコを自分のものにしているアーティストたちはフラメンコを言葉というか、道具のように使って、フラメンコで表現する。フラメンコが彼らと一体化してるから、かな。そしてフラメンコの枠のそのずっと先をも見せてくれるというか。

フラメンコ自体、すごく自由なアートではあるけれど、曲種ごとのリズムやメロディなど決まりもたくさんある。見えない決まりもある。その枠をとってもフラメンコなスピリットというかエッセンスみたいなものは生きている、ってこともあって、それがまた帰ってきてフラメンコを豊かにしていく、なんてことを考えさせてくれました。
ああ、楽しかった。

2023年10月8日日曜日

シルクロ・フラメンコ・デ・マドリード23/24

 マドリードのフラメンコ愛好会、シルクロ・フラメンコ・デ・マドリードの今年度のプログラムが発表されました。以下に公演のデータのみアップしましたが、他にも講演や本の出版記念会、アーティストとのお話など開催予定です。いつもながらに通好み、充実のプログラムですね。



◇シルクロ・フラメンコ・マドリード

1026(土)2230

[出]〈c〉イスラエル・フェルナンデス、〈g〉ディエゴ・デル・モラオ

1123(土)2230

[出]〈c〉ルイス・エル・サンボ、〈g〉ドミンゴ・ルビチ

1221(土)2230

[出]〈g〉ニーニョ・ホセーレ

118(土)2230

[出]〈c〉パコ・デル・ポソ、〈g〉マノロ・フランコ

2/15(土)2230

[出]〈c〉バルージョ、〈g〉マヌエル・パリージャ

229(土)2230

[出]〈g〉ラファエル・ロドリゲス、ゲスト〈c〉カンカニージャ

314(土)2230

[出]〈c〉カプージョ・デ・ヘレス、〈g〉ラモン・トルヒージョ

44(土)2230

[出]〈c〉フェリペ・スカパチニ、〈g〉ノノ・レジェス

418(土)2230

[出]〈g〉ミゲル・バルガス、〈c〉ラ・カイタ

516(土)2230

[出]〈b〉パストーラ・ガルバン、〈c〉ミゲル・ラビ、ダビ・エル・ガジ、〈g〉フアン・レケーナ

620(土)2230

[出]〈c〉アウロラ・バルガス、〈g〉ミゲル・サラド

[場]マドリード マドリード・フラメンコ劇場

[問]https://www.circuloflamencodemadrid.com

入場券 https://cfm.teatroflamencomadrid.com

2023年10月6日金曜日

アゲダ・サアベドラ『ベネロ』


 2022年ヘレスのフェスティバルで、アンダルシア舞踊団とメルセデス・デ・コルドバの群舞でありながら新人賞を受賞したアゲダ・サアベドラの初めてのソロ作品。今年のヘレスで初演したが未見だったのでセントラル劇場へ。

よくまとまった作品だと思う。照明も、フアン・カンパージョのギターも美しい。メルセデス・デ・コルドバの演出ということもあり、ジェルバブエナ系というか、メルセデスぽさが、構成にも振り付けにも色濃く出ている。

ベネロとは泉の意ということで、ポトン、ポトンという水音の中、舞台中央奥に置かれたフライトケースの後ろからゆっくり手を出していくオープニングはコンテンポラリー風だけど、ギターの音に彩られ、カンテが注がれ、フラメンコ色に染まっていく。アレグリアス、ブレリア…リズム遊び。

黒いバタ・デ・コーラでの、カスタネットのシギリージャが一番の見どころだったのではないかと思うし、バタを歌い手にふまれ身動きできず終わって倒れた彼女が脱いだバタがかけられ手を出すところで終わってもよかったように思うのだけど、その後も続き、ソレアで盛り上げ、また水音に戻って終わるという構成。

アゲダ、舞踊団作品じゃないところで踊っているのをみたのは多分初めてだったのだけど、イタリア風美女(ソフィア・ローレンとかモニカ・ベルッチとか系)なんだけど、首を前に突き出し顎を引いて踊るせいで、顔が大きく見えてしまうのが勿体無い。正面から見て首が見えない。コロカシオンフェチな私は、そこが気になって気になって。

あと、ミュージシャンたちも含めメルセデス色が強すぎて、アゲダという人が見えてこない。まあこれは最初の一歩だから、次作に期待、でしょうか。まあ、誰もがクリエーターというわけではないし、色々難しいですね。


2023年10月4日水曜日

フエベス・フラメンコス2023

 銀行の財団が主催するフラメンコ公演シリーズ、フエベス・フラメンコス。

かつてはエンカルナシオン広場に近い劇場が会場でしたが、その劇場が市役所のものとなり、今はセビージャの市役所のすぐ近くにあるカハソル劇場で行われています。

入場券も12ユーロからと手軽。また複数の公演を割安で見ることができる定期券もあります。発売は明日10月4日から。



11月23日の公演は踊り手が歌うのだそう。面白そうですね。 四人のバイラオール全員がカディス圏出身というのも興味深いです。


◇フエベス・フラメンコス

1019(木)2030分『8ブラソス・パラ・ロルカ』

[出]〈g〉フアン・アビチュエラ・ニエト

11/9(木)2030分『クエルポ・ノンブラド』

[出]〈b〉パウラ・コミトレ

1123(木)2030分『ダンド・エル・カンテ』

[出]〈b,c〉エル・フンコ、ミゲル・アンヘル・エレディア、アルベルト・セジェス、トマス・デ・ラ・モリア

1130(木)2030

[出]〈c〉ペドロ・エル・グラナイーノ

127(木)2030分『デスデ・ミ・コラソン』

[出]〈c〉アウロラ・バルガス

[場]セビージャ カハソル劇場

[問]https://www.bacantix.com/Entradas/WebForms/Forms/Evento.aspx?id=Cajasol&Recinto=000012&Sala=034&Espectaculo=2023/2024JFO&TituloEspectaculo=ABONO%20JUEVES%20FLAMENCOS%20OTOÑO%202023&ActivePage=0

2023年10月2日月曜日

エストレージャ・モレンテen Teatro Central

アントニオ・カルボネルやアンヘル・ガバーレらが舞台中央で輪になってトナを歌い始める。やがて下手奥からエストレージャが登場し、そこに加わり、気がつくと民謡クアトロ・ムレーロを歌うオープニング。

エストレージャ・モレンテはフラメンコのアーティストの中でもちょっと変わった存在。
父は20世紀後半のフラメンコを代表する存在の一人、エンリケ・モレンテ。母はマドリードのフラメンコ・ファミリーで、この日も共演したギタリスト、モントジータ、歌い手アントニオ・カルボネルは母の弟、アンヘル・ガバーレは母の妹の旦那、とほぼ常にファミリーで舞台に立っている。結婚相手はマラガの闘牛士で、美男美女のカップルとしてメディアにも大きく取り上げられたこともあって、一般の知名度も高い。フラメンコの歌い手だけど、歌謡曲的なものも得意とし、この日もフラメンコの中にいくつかカンシオン・ポル・ブレリアスもありました。

途中、音響トラブルがあって、一旦、歌うのをやめたかと思うと、前に出てマイクなしで歌って盛り上げる。トラブって袖に入ったパーカッションの男の子とは対照的。こういうことが自然にできるっていうのが本当のアーティスト。スターだなあ、と思う。

彼女の歌の中には、メロディやちょっとした歌いまわし、声の感じなど、あちこちに父エンリケがいて、ちょっときゅんとする。

カーニャ、タンゴ、カンテ・デ・レバンテ、マラゲーニャ、シギリージャ…曲ごとに表情も変わる。そういうところもいい。でもフラメンコだけに収まらないというか、フラメンコの奥までどんどん進むよりも間口を広くとっているというか、フラメンコに徹しきってない感じがあるような感じ。
そういうところを嫌うアフィシオナードもいるだろうなあ、とも思うけど。












 

2023年10月1日日曜日

アントニオ・カナーレス『ラ・ギターラ・カンタ』en Teatro Central

 


お久しぶりで、アントニオ・カナーレスの舞台。フラメンコにおけるギターの重要性がテーマということで、確かに普段、踊りの舞台というと奥で照明もぼんやりとしかあたらないことが多いギタリストが、舞台のかなり前の方、上手寄りに陣取り、ソロから始まる。

弾くはダビ・デ・アラアル。そ聴くたびに確かな成長を感じさせてくれるダビの美しいトーケがアバンドラオへと変わり、カナーレスが踊る。六十代となった彼は若き日の勢いこそないものお、こちらの記憶に残る凄さを今もまだ感じさせてくれる。身体は三十代のようには動かなくても、あの絶妙な間合いは健在で、きめるべきところできめてくれるので気持ちがいい。

歌はカナーレスにもう20年以上は歌っている(と思う)ガジと、若手で今をときめくマヌエル・デ・トマサ。パーカッションにはトリアーナ出身パコ・ベガ。

カナーレスの昔ながらのソレアのイントロが聞こえてきた時には思わず涙。90年、ケタマ来日公演にダンサーとして参加した時知り合って30年以上。いろんなことがあったなあ。昔の振りも思い浮かぶ。全く同じではないけれど、あ、これ!っていうのもあったりで。

昔のカナーレスのソレアの音楽をちょっとアレンジして弾いたダビも良かった。ソロで聴かせたシギリージャも、カンテソロの伴奏も。子供の頃をちょっと知っているので、いつの間にか逞しく成長していた、という感じ。マヌエルのカンテソロがファンダンゴ・デ・ウエルバだったのはちょっと解せないけど(もっと他にいい曲があったんじゃないかと。ガジのソレア・ポル・ブレリアからのファンダンゴ・デ・グロリアってのもよくわからん)。

今年アンダルシア局のテレビの青少年コンクール番組で優勝したマティアス・カンポが、マリオ・マジャのカンティーニャを踊ったのだけど、顔もマリオとイスラエルを足して割ったような感じで、よく似合っていた。ゆっくりとしたところで、あれ、っていうくらい足外したりもするんだけど、いつの間にか戻っている。ちょっと面白い。聞けば今年まだ14歳とか。ひええ。

90年代のはじめとか、伝統的なフラメンコではないとか、なんとか、色々叩かれたりもしていたカナーレスだけど、いつの間にか、若手をサポートするようになったんだね。時代は変わっていくんだなあ。

この人がフラメンコ舞踊の歴史に大きな足跡を残しているのは間違いないところだと思う。あの頃のソレア、もう一度見たいなあ。