2021年11月28日日曜日

ニームのフラメンコ・フェスティバル

フランスはニームのフラメンコ・フェスティバルのプログラムについての記者会見が、セビージャのビエナルの事務所があるトリアーナの陶器博物館で行われました。



 現在、ビエナル監督を務めるチェマ・ブランコが就任前、アーティステックディレクターを務めていた関係もあるのでしょう。

プログラムは伝統系はペドロ・エル・グラナイーノとイネス・バカンだけで、それ以外は前衛、とか、モダンとか、その場にいた記者にも言われていたけど、うーん、21世紀でもまだそういうふうに見るんだ〜、と思ったことでした。

いやね、確かにコンテンポラリー系優位かもだけど、フラメンコじゃん? フラメンコをベースにそれぞれの表現を追求しているだけで、フラメンコは歴史を振り返ってみても、そうすることで進化発展してきたんじゃないのかな、とか思ってしまうのだよ。

ロシオのフラメンコ性を疑う人っている?
©︎Oscar Romero


ジャマイカとガーナの血を引くロンドン生まれのジンカ、めちゃフラメンカだよ。

カナダ出身のクロエはトリアーナ出身で日本でもお馴染みのマルコと組んで長年素晴らしい作品を発表してくれている。

  • ©︎Francisco Reina

チリ出身でアンダルシア舞踊団で活躍したフロレンシアは今年ヘレスで美しい作品見せてくれたし

©︎Javier Fergo

そう、フラメンコってスペイン人の専売特許じゃないんだよ。それって昔からなんだけどね。フラメンコはそれを愛するみんなのもの。

昔ながらのヒターノのフラメンコ、って言ったって、昔のフラメンコとは色々変わってきているわけで。

好みは色々。で、イネスしか愛せない、人がいたってもちろんいい。でもさ、個人的にはストライクゾーン広げると楽しいことも増えるよ、って思うわけですよ。食わず嫌いはやめて、一回は見ようよ、それで嫌ならもう行かなくていいからさ。

なお今回気になるのはジンカの作品と、アナ・モラーレスの制作途中の作品、そして最終日のダニ・デ・モロンの一人っきりでのリサイタル。楽しみ。行けるかな?

©︎José Ángel Vidal

◇ニーム・フラメンコ・フェスティバル

113

113(木)、14(金)20時『アル・フォンド・リエラ(ロ・オトロ・デル・ウノ)』

[出]〈b〉ロシオ・モリーナ、〈g〉エドゥアルド・トラシエラ、ジェライ・コルテス

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]1132ユーロ

115(土)18

[出]〈b〉ジンカ・エシ・グラベス、〈g〉ラウル・カンティサノ、〈c〉ロサリオ・アマドール、〈drums〉レミ・グラベス

[場]フランス ニーム オデオン・ホール

[料]816ユーロ

115(土)21時『グラナイーノ・ホンド』

[出]〈c〉ペドロ・エル・グラナイーノ、〈g〉アントニオ・デ・パトロシニオ・イーホ

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]922ユーロ

116(日)16時『フニオ』

[出]〈cg〉マリア・マリン

[場]フランス ニーム ロマニテ博物館オーディトリウム

[料]816ユーロ

116(日)18時『モレ(ノ)モレ』

[出]〈b〉マリア・モレーノ、〈g〉オスカル・ラゴ、フアン・レケーナ、〈c〉ペペ・デ・プーラ、イスマエル・デ・ラ・ロサ、〈perc〉ロベルト・ハエン

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]922ユーロ

118(火)20時『蝶の呪い』

[出]〈b〉アンダルシア舞踊団

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]1132ユーロ

119(水)20時『ロス・クエルポス・セレステス』

[出]〈b〉マルコ・バルガス、クロエ・ブルーレ、じんか・エシ・グラベス、ヘロ・ドミンゲス

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]922ユーロ

120(木)18時『アンティポダス』

[出]〈b〉フロレンシア・オス、〈チェロ〉イシドラ・オリアン

[場]フランス ニーム オデオン・ホール

[料]816ユーロ

120(木)21時『オリへネス』

[出]〈c〉イネス・バカン、〈g〉ドミンゴ・ルビチ

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]1132ユーロ

121(金)19時『エン・タジェーレス』

[出]〈b〉レオノール・レアル、〈perc〉アントニオ・モレーノ

[場]フランス ニーム オデオン・ホール

[料]922ユーロ

121(金)21時『ビスト・エン・エル・フエベス』

[出]〈c〉ロシオ・マルケス、〈g〉カニート

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]922ユーロ

121(金)21時『マニフィエスト』

[出]〈c〉アルバロ・ロメーロ、〈電子音楽〉トニ・マルティン

[場]フランス ニーム オデオン・ホール

[料]922ユーロ

122(土)18

[出]〈b〉アナ・モラーレス、エル・チョロ、〈音楽〉ミゲル・マリン

[場]フランス ニーム オデオン・ホール

[料]816ユーロ

21時『カルタ・ブランカ』

[出]〈g〉ダニ・デ・モロン

[場]フランス ニーム ベルナデット・ラフォン・ホール

[料]1132ユーロ

theatredenimes.com

 

2021年11月10日水曜日

アンダルシア舞踊団『エル・マレフィシオ・デ・ラ・マリポサ 蝶の呪い』

 11月7日マエストランサ劇場でアンダルシア舞踊団。

プログラムには90分と書いてあったのだけど、実際には2時間10分。休憩なし。ありえん。

元々長い作品なのに、アントニオ生誕百周年ということで、アントニオのカーニャを最初に、幕前でみせる。いや、ま、これなくても長いですけど。

ロルカの最初の戯曲、『蝶の呪い』のタイトルを借りてはいるけど、その物語をなぞるわけではなく、ロルカの時代の舞踊家たち、実際に親しく交流したアルヘンティニータをはじめ、アルヘンティーナやマカローナ、マレーナ、ピラール・ロペス、カルメン・アマジャらフラメンコとスペイン舞踊はもちろん、ロイ・フラー、マーサ・グラアムらモダンダンスの黎明期を支えた、ロルカの時代を生きた女性舞踊家たちの作品をモチーフにインスパイアされた場面から成り立っていて、その発想はすごく面白いと思うのだけど、背骨がない。つまり、全体を通しての流れ、全体に一本通った筋のようなもの、物語でなくても作品としてのまとまりになるようなものがほぼないのが残念。さまざまな写真を集めたアルバムのような感じ。それも場面場面が長いので作品としてのリズムがない。説明と言えるのはプログラム(QRコードでweb上のを見る形)でのモチーフとなった作品やアーティストの名前だけ、しかもその演者が書かれていないし、で、うーん、色々わからないことだらけ。

個人的にはアルヘンティーナのパリでの死の直前の講演の内容通り語りつつ、踊ったシーンが語りの内容共々とても素敵だったのと、最後、ウルスラ・ロペス監督が踊った、マーサ・グラアムの『ディープ・ソング』(カンテ・ホンドの英訳ですね、スペイン内戦時に作られています)の振りから始まり、バタ・デ・コーラでのフラメンコへと続くシーンが、衣装もオリジナルをアレンジしていて、面白かったです。

そのほかの場面も、色々工夫されています。ロイ・フラーのサーペンタインダンスという、布を翻して踊るものから、

『蝶の呪い』の死につながっていったり、とか。

アルヘンティーナやカルメン・アマジャの衣装やロルカやダリのデザインにインスパイアされた衣装とか。

一つ一つの振り付け/場面を作っていくためには研究調査も必要だったろうし、ボレーラもモダンダンスもフラメンコもという、内容からして、稽古量も半端なかったことでしょう。しかも1っヶ月以内に二つの作品を初演しています。でも、だからこそ、最後に大ナタをふるって取捨選択をして、全体のリズムを考えて欲しかったかなあ。なんかもったいない。

若いクリエーターはあれもこれもと全てを一つの作品に盛り込んでしまいがちだけど、そこからマイナスしていく勇気が必要。これって一曲の踊りでもそうだと思う。あれもこれも、じゃなくて、この作品ではこれを伝えたい、と絞っていかないととっ散らかった結果になりかねない。ってことではないかと思います。



2021年11月9日火曜日

『アントニオ、舞踊の100年』会議

 11月4日から6日までセビージャで開催された『アントニオ、舞踊の100年』会議。セビージャ大学、アンダルシア州、セビージャ市主催で、セビージャ大学フラメンコ学会を主宰する数学者、ラファエル・インファンテがセビージャのフラメンコ/舞踊ジャーナリスト、マルタ・カラスコ、ロサリア・ゴメス、マヌエル・クラオらとオーガナイズしたもの。アントニオ生誕100年を記念するイベントの一つです。

これが充実の内容で、無料なのが申し訳ないくらいでありました。

まずはアントニオに関する展覧会の開会式。セビージャのセタと呼ばれる大きな建物のそばにあるサンタ・イネス修道院。

アンダルシア舞踊団メンバーによる踊りも華を添えたのですが、


当初の予定より時間が早まり最後まで見てると開会宣言に間に合わん、と旧タバコ工場の大学へ走り、元アンダルシア文化長官、元アンダルシア国際大学総長のホセ・マヌエル・スアレス・ハポン氏の講演を拝聴。


午後は、アンダルシアの舞台芸術アーカイブセンターの人によるアントニオ資料の話、マドリにある資料の話を経て、アントニオのカンパニーで活躍したダンサーたちのお話。

左からカディス高等舞踊学院のエミリオ・マルティ、カルメン・ロハス、マリア・ロサ、カルメン・ロチェ、アリシア・ディアス、テレサ・マイサル、ラファエル・モレーノ。
ダンサーたちは80代なはずだけど、記憶も言葉もしっかりしていてほれぼれします。


最後にアンダルシア舞踊団フェデリコ・ヌニェスがアントニオのカーニャを踊る。

2日目は国立バレエにおけるアントニオ(2代目監督です)についての講演の後、

監督時代のアントニオを知るダンサーたちが登場。
日本でもお馴染み、アントニオ・カナーレス、ハビエル・ラトーレ、ハビエル・バロン、アントニオ・マルケス。

彼らが語る、国立バレエ稽古場(当時は今のソフィア王妃芸術センターが稽古場でした)などでのアントニオ。それはもう生き生きとして、私はビデオでしか知らないアントニオですが、彼らの話を通して人間アントニオに触れた気分。

 コーヒータイムを挟んで、作曲家による、アントニオが使用したクラシック曲についての話


続いて、アントニオとフラメンコ。
これも伝説的歌い手のアントニオ・マイレーナの専門家のペドロ、アントニオ・レイナ、アリシア・ディアス、マヌエル・モラオ、マヌエル・クラオ。


そしてへーレン財団学校の女性が踊る。


午後は映画『ハネムーン』の分析、
かつてスペインの映画館で上映されていたニュース映像NODOにおけるアントニオの分析

そして写真や映画におけるアントニオについての話


1日の締めはアントニオ・マルケスが踊る三角帽子のファルーカ



3日目はアメリカにおけるアントニオの足跡

アントニオ舞踊団にも在籍した、ヌレエフのプライベート・バレエ教授の話



ピカソと舞踊
そして、振付家としてのアントニオについて、ウルスラ・ロペス、ホセ・アントニオ、マノロ・マリン、バレリアーノ・パーニョ、ラファエル・エステベス


午後は会場をカハソルに変え、ホセ・アントニオへのオマージュ。




フェルナンド・ロメロがミゲル・オルテガの歌とギターでホセ・アントニオの振り付けを踊り閉幕。

展覧会については後日また改めて書きますが、とにかくアントニオは素晴らしく、とにかくすごい人なのであります。フラメンコのヌレエフ、フラメンコのベラスケス的存在。

スペイン舞踊、フラメンコ、全てをこなし、とんでもないスター性があった人。

ぜひYouTubeででも彼のアルテをほんの少しでも知ってください。