スペイン国立バレエ団のマドリード。サルスエラ劇場公演を観てきました。
その昔、写真集が出たり、ビエナルのポスターにもなった、コロンビア出身ニューヨーク在住のファッション写真家ルヴェン・アファナドール。そのイメージから作られたのがこの作品。
2008年のビエナルのポスターは論争を巻き起こした。黒塗りの裸のモデルはジョランダ・エレディア。前年にヘレスで撮影されたものだという。このほかにもエスペランサ・フェルナンデスやマティルデ・コラル、コンチャ・バルガス、ジェルバブエナなどもモデルになっているのだけど、本来の彼女たちを消し去ろうとするような黒塗りだったり、目と口を黒で強調したり。コントラストを効かせた白黒写真。
アート?ファッション?悪趣味?
ビザール? ゴシック? グロテスク? サロメの挿絵で有名なビアズリーの作品にも通じるような退廃。私は悪趣味に思えた。というのは神様のように思っているアーティストたちが汚されたようにも思えたからだ。なのでビエナルの翌年に出版された写真集、2009年の『ミル・ベソス』、2014年の『アンヘル・ヒターノス』。いずれも購入していない。
そんな写真にインスパイアされて、祖父が写真家で自らも写真を学んだことがあるという振付家、演出家のマルコス・モラウによる国立バレエのこの作品、2023年12月1日にセビージャで初演。その後、マドリードの王立劇場やバルセロナのリセウ劇場、そして今年は韓国でも上演されている。日本でも今年2月NHKのプレミアムシアターで放映されたので観た人もいるかも?
ルヴェン・アファナドールの写真にインスパイアされた白と黒の舞台、衣装、化粧。カメラマンのイメージからだろうフラッシュ、ダンサーが移動する照明。大掛かりな舞台装置と照明。どれをとってもコンテンポラリーダンスの舞台のようで、実際マスゲームのような群舞も多かったりするのだけど、スペイン国立バレエのダンサーにしかできない、スペイン舞踊やフラメンコの要素ももちろんたくさんあって、なんだろう、クリスタル・パイトの作品をビデオで観た時の衝撃に近い感じ。近未来のスペイン舞踊、というか。
ただこの美的感覚には好き嫌いがあるだろうし、昔ながらのスペイン舞踊を期待して観にきたら戸惑うのは確実だ。一大スペクタクルだし、すごいインパクトだし、個々の見せ場もあるとはいえ、群舞の力が圧倒的で、個々の魅力はその中に埋もれてしまうような。
アファナドールはフラメンコに、暗闇、暗黒や悪のイメージを掻き立てられたのかもしれない。写真そのままのようなイメージに合わせた音楽は国籍不明の宗教音楽のような、民族音楽のような。どこか儀式的であり、マルコスはフラメンコに儀式や宗教的なものを見ていたのかもしれない、いや、マルコスがみたアファナドールなのかもだけど。
とにかくすごいし、インパクト絶大だし、うわって思う瞬間はあるし、新しいものをみている、という感覚もある。面白い。踊っている面々も面白いはず。
でも完全には納得できてない自分もいるのは、きっと、まだまだ古典的なスペイン舞踊を見足りてないからという気がする。こういう作品もいい。いいんだけどもっと古典も見たいよ、という気持ちが正直なところ。
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©︎ Merche Burgos- Ballet Nacional de España |
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