2019年2月25日月曜日

へレスのフェスティバル三日目 エバ・ジェルバブエナ『砂糖の物語』

なにがなんだかわからないのに涙が出てくる。
初めてなのに懐かしい。

忘れていた遠い記憶が、なにものかに誘われ、急に表出する。
人間の中には、その奥底、深い深いところには、曽祖父のそのまた曽祖父の曽祖母の…先祖たちがかつて、その時感じた痛みや苦しみ、喜び、そして言葉にならない微妙な感情、そう言ったものが蓄積しているのだろう。

フラメンコにはそんな力がある。そしてその力があるのはフラメンコだけではない。

エバ・ジェルバブエナの『砂糖の物語』を観ていてそう思った。
砂糖の島、奄美の歌とフラメンコ。一見、何のつながりもない、共通点などなにもないようなものが、実は奥深いところでつながっている。そう思わせるのだ。
前作『アパリエンシアス』でのテーマにもつながっていく。
表面的なものにとらわれている私たちだけど、実は目に見えているものだけが真実じゃない。


暗闇の中に浮かぶエバの顔。動く4本の手。
ミステリアスなオープニング。
パコ・ハラーナのギターが生み出す宇宙。

里アンナの声が響く。その声はひたすら美しく、この世のものとは思えないほど。
そして彼女の声が私の中の奥底に沈んだ遠い記憶を呼び起こす。涙が出てくる。
なんだなんだ、なんなんだ?

水に囲まれた円は島。閉ざされた世界。もしくは結界。銀色の飾りに縁取られたこの円の中でエバは踊る。
© Javier Fergo / Festival de Jerez

エバのバタ・デ・コーラでのカーニャ。横でなく前に抱える感じなど、バタの使い方が独特で面白い。

© Javier Fergo / Festival de Jerez
里の歌の力。
奄美の言葉なので日本語ではあるのだけど意味がわかるわけではない。でも何かが伝わってくる。インテンシオン。センティード。言葉に込めた気持ち、方向性。
これってスペイン語の歌詞を聞き取らずにフラメンコを見ている時と一緒ではないか!

© Javier Fergo / Festival de Jerez
カンテス・デ・レバンテからのマントン技。
フェルナンド・ヒメネスとの絡みからのフェルナンドのソロ。
抜群の身体能力で、結界を壊すフェルナンド。
© Javier Fergo / Festival de Jerez
そして超絶品のアレグリアスがやってきた!
里の歌と絡みつつ、見せるこのアレグリアスの素晴らしさ!
© Javier Fergo / Festival de Jerez
宴に国境はない。
© Javier Fergo / Festival de Jerez

異文化への深い敬意と愛。エバのそんな気持ちは、私たちのフラメンコへの気持ちと対をなしているのだ。

ビデオはこちら

それにしても、エバにしても里にしても、実際に会うと小柄なのに、舞台ではすごく大きく見えるのだ。これがアルテでなくてなんであろう。


来月は日本公演。

ビエナルで観た時のルポはこちら

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