2015年3月4日水曜日

ヘレスのフェスティバル12日目コンチャ・ハレーニョ「エル・バウル・デ・ロス・フラメンコス」

フラメンコにはさまざまな種類の小物が使われる。カスタネット、帽子、扇、杖、タンバリン、マントン…。それら小物に焦点をあわせたのがこの作品。意味はフラメンコたちのつづら、ということ。マドリードの実力派コンチャが、長年の友達でもあるラファエル・エステベスの協力でつくりあげたのがこの作品。曲も衣装も振付けも舞台上の動きも、バラエティにとんでいるから何も知らなくても楽しめるけれど、フラメンコの歴史に詳しい、オタクな人には、あ、これはあの絵のポーズだ、あの写真だ、元ネタは誰だ、とまた違った風にも楽しめるという作品なのであります。試験に使えるかもしれない。

フラメンコ前史とでもいうべき、エスクエラ・ボレーラ的なカスタネットをつかった曲からスタート。まだフラメンコという名前もなく、バイレ・デル・パイス国の踊り、などとよばれていた時代でしょうか。スカートはふくらんで短め。男性、マラガ出身のアドリアン・サンタナも半ズボンであります。ブラソの形もボレーラ的、バレエ的な感じ。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
それが少しずつ今あるようなフラメンコへと変わって行くのであります。ある形をそのまま踊るのではなく、それを壊して行く事から始まった、もしくは形にあわせるのではなく自分の中を表現するようになったとでもいうべきでしょうか。真ん中の黒い衣装、黒子をつとめているのはアナ・サラサール。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
スカートは長くなり(真ん中であげていたものをおろして舞台上で同じ衣装が長くなる!)、ゆったりとした動きのフラメンコに。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
コルドベスを手にカディスのタンゴを踊ります。この元ネタはパストーラ・インペリオ。マティルデ・コラルが観て学んだという、オリジナルのビデオはこちら。よくあるタンギージョのコルドベスとはまったくちがいます。このビデオは晩年のものですがカディス生まれの歌って踊るラ・メホラーナの娘で古い香りのフラメンコをよく伝えていると思われます。その帽子を受け取った男はカルセレーラ。これはグラン・アントニオを思い起こさせます。ハリウッド映画にも出演、世界中を公演してまわった大スター、グラン・アントニオの写真集にあるような形ですね。それがトリージャへとかわります。そのとき鈴をならしていたパーカッションのバンドレーロの頭には白い帽子。田舎の牛飼いの帽子のイメージかな。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 この帽子がアドリアンに渡り今度はグアヒーラ。キューバ男にはやがわり。キューバの農園風?色あいの衣装のコンチャと。後ろのすそを少しひいているのは当時流行のバッスルスタイルからきているのでありますね。アバニコを使っての美しいナンバー。

© Festival de Jerez/Javier Fergo 
そこからマルティネーテ、トナ/グランデが朗々と歌われます。そこからホティージャ、タラント、ベルディアーレスへとつながっていく組曲。マルティネーテではバストン、ホティージャではタンバリンが、


タラントではチンチン(アラブ舞踊でももちいれられる金属製のカスタネットみたいなもの)でざんばら髪で。カルメン・アマジャとともにタラントの踊りの先駆者といわれるフェルナンダ・ロメーロのイメージでありますね。ベルディアーレスはリボンのついたカスタネットで。伝統的な振付けのアレンジが素晴らしい。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
プレゴンはアナ・サラサール。彼女らしい芝居仕立てで、洋服をアドリアンに売りつける。「フランスの貴族様みたいだよ」とおだてて彼の前でメホラーナらのカンティーニャスを歌い踊る。ビバカディス!

© Festival de Jerez/Javier Fergo
カラコーレスはバタ・デ・コーラで。ちょっとごてごてした衣装でありますが、バタさばきにも定評のあるコンチャ。お見事。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
闘牛をモチーフにしたコミカルなシーン。カポーテとカパ(マント)さばきをみせたかと思うと歌い手マヌエル・ガーゴが闘牛士に変身し牛になったアドリアンにとどめを。最後はオーケストラでのカーニャをカルメン・アマジャのイメージで。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
最後はソレア・ペテネラ、ペテネラ。マントンを使ってはなやかに。ブランカ・デル・レイのようなマントン技をあますことなくみせてます。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
いやあ1時間半ちょい、楽しませてくれました。ミュージシャンたちも伴奏だけでなく、舞台の上で動き踊りとしっかりとつくられています。照明もきれいだし、うん、ぜひまた観たい。


この公演のビデオはこちら 写真にない闘牛のシーンもはいってます。

こちらはプロモーションビデオ。 15分と長めです。一昨年末に初演されたときのもの。その後、出産がありひさびざの再演となりました。



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