2014年9月19日金曜日

メルチェ・エスメラルダ「ウルティマ・パラーダ」

23時からのセントラル劇場公演。
満員の客席を埋めた大方はメルチェ目当ての人だろう。
私が彼女を初めてみたのは国立バレエ団時代で
そのずっと前、セビージャやマドリードのタブラオで活躍していた頃、
美貌のバイラオーラとして伝説的な存在でございました。
カルロス・サウラ監督の映画「フラメンコ」で踊ったグアヒーラでもわかるように
優雅で女性的な踊り手。
ぐっと胸をそらせたカンブレの美しさ。
見て美しい姿勢はやる方には苦しいものも多いはずだが
きちんとした美しいかたちの大切さを大事にするバイラオーラ。
最近は舞台でみることがすくなくなっただけに期待は大きかった。


幕があくと舞台の両側には土嚢がつまれている。
戦争の町。
ボケロンが歌うサンブラのあと
舞台奥の壁があがり奥から旅行鞄をさげた女がやってくる。
くたびれた衣服。
つかれた女。
その女が踊りだす。

Foto;Bienal. Antonio Acedo
あの華やかで優雅なメルチェはいない。
  ソレア、シギリージャ、タンゴ、グアヒーラ。
フラメンコの断片がちりばめられ
そこで一瞬、ほんの一瞬の輝きを美しいポーズでみせたりはするが。

ベテラン・カンタオール、ボケロンも熱演。
 ギターのヘスース・ゲレーロも美しく作品を彩る。

Foto;Bienal. Antonio Acedo
 戦争で愛する人たちに別れを告げられなかった人たちへのオマージュ、
なのだろう。
繰り返し伝えられる戦争の悲劇。

ただこの1時間の作品はメルチェのための作品には思えない。
演出のフアナ・カサードはアントニオ・ガデス舞踊団出身らしいが
メルチェをいかすことよりも
自分の主張の方に重きをおいた作品造りを行ったように思う。

黒いストッキングで老婆のように踊る彼女をみたかった人はいるのだろうか。

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