2012年3月4日日曜日

ヘレス・フェスティバル2012 9日目 ビバ・ヘレス

2008年のヘレス・フェスティバルの開幕を飾った作品が、
出演者や曲目を多少変えての再登場。
舞台芸術のテクニックをつかって
ヘレスのフラメンコを“みせる”作品。


一列に並んだ椅子に座った面々がちょうどみえるくらいに
幕を低めにあけて
マカニータのナナ。
昔の普段着風の衣装で
時代がさかのぼられる。

その昔、
といってもそんなに遠くない昔、
ヘレスのヒターノたちが働いていたという
農場のイメージ。
朗々と歌い上げるヘスース・メンデスのトリージャは
牛馬につける鈴の音が伴奏。

机に一人むかって
黒い衣装のマカニータがソレアを歌い始め、
やがてカンペーロ
すなわち馬に乗って野原に出るような格好の
アントニオ・エル・ピパが登場し踊る。
歌に敬意を払ってか、
ひたすらマルカール、マルカール。
ポーズ、ポーズ。
踊るというよりは歌を彩った感じ。

下手に
ワイン瓶とコップが並ぶテーブル
そこに座る人々。
ロンドロがミロンガを歌う。
ヘレスのベテラン舞踊教師フアン・パッラが踊るティエント。
Foto;Javier Fergo


いかにも昔風のアカデミアの先生という、
シンプルでまっすぐな踊り。
タンゴをこれもベテラン、
日本人もずいぶんお世話になったアナ・マリア・ロペスがタンゴを一振り。
ペスかディージャの歌うタンギージョで
ハビエル・ラトーレ!がひと踊り。

ヘレスによくある、こわれかけた古い家を描いた中幕の前で
ヘスース・メンデスのマラゲーニャ。
声量たっぷり歌い上げる。

Foto;Javier Fergo

鏡の前でのファルーカはフアン・パッラ。
これまだ古風というかお教室風というか。
ベテランに敬意は払うがこの作品の中で2曲踊るべきだったのだろうか。
マカニータは
パケーラのヒット曲「マルディーゴ・デ・トゥス・オホス・ベルデス」を。
髪型も若き日のパケーラ風。
Foto;Javier Fergo
伴奏はパリージャ・デ・ヘレスの甥マヌエル・パリージャ。

マカレーナ・ラミレスは黒いバタ・デ・コーラでシギリージャ。
まだ十代というがカスタネットを使ってのソロで健闘。

ジャンパー姿で
スーツケースをさげて登場し
アナウンスが東京行きの便を告げる空港の情景
アレグリアスを踊るアントニオ・エル・ピパ

Foto;Javier Fergo
中幕前でヘスースが
ロマンセとプレゴン。

幕があくと1966年の闘牛のポスターの前で
繰り広げられるブレリアの宴
ロンドロの歌でマカレーナ、
フアン・パッラ。
ペスカイージャが歌い踊り
アナ・マリア・ロペスがウナ・パタイータ、
ピパはマカニータとヘスースを従えて
Foto;Javier Fergo
バスティアナ、ジョジャのおばあさまコンビも
一振り踊ったあと
「ビバ!ジョ!」
私万歳。

Foto;Javier Fergo

ヘレスのフラメンコの歴史を、
家、農場から居酒屋、海外へ、
とたどり、
ヘレスのフラメンコのレパートリーをなぞり、
同時に今のヘレスのアルティスタをピックアップする、
という意欲作で2時間の大作。

マカニータとヘスースの熱唱。
舞踊を支えたロンドロもいつもに増して安定感がある。
ギターのマヌエル・パリージャ、マヌエル・バレンシアも
ヘレスらしいトーケをきかせてくれた。
ピパはいつもながらの彼のスタイル。
舞踊が物足りないといえば物足りないが
それがヘレスの現実をそのままうつしているのかもしれない。


ヘレス・フェスティバル2012 9日目昼


記者会見は
19時からサラ・ラ・コンパニアのカレーテ
21時、ビジャマルタ劇場のロシオ・モリーナ

二人のマラガ出身者。

ヘレスで踊るのは初めてというカレーテ。
着実にキャリアを積んできている若手ロシオ。

それをもじって
「若きカレーテ。経験豊富なロシオ」
と言った人がいたとか。




2012年3月3日土曜日

へレス・フェスティバル2012 8日目夜 ヘレス・アル・カンテ

名盤「カンタ・ヘレス」の現代版を、
との思いから生まれたCD「ヘレス・アル・カンテ」
そのプレゼンテーションをかねての舞台。
CD同様、北スペイン、バスク地方の銀行がスポンサーとなっている。

オープニングはロンダ・デ・トナー。
4人の歌い手が舞台に並び立ち、
一人ずつ歌っていく。

ルイス・エル・サンボのあったかみのある声。
トルタのどこか哀しみをたたえた声。
マヌエル・モネオの渋い声。
アグヘータの太古の響き。
それぞれの個性が際立ち
それぞれに素晴らしい。
Foto; Javier Fergo
トルタは座骨神経痛とかで
杖をつき椅子につかまりの熱唱だった。


下手にテーブル。
テーブルの上には瓶とコップ。
“ヘレスもの”でおなじみの情景だ。
酒とフラメンコ。

椅子に座って歌い始める、
ルイス・エル・サンボ、
カプージョ、
そしてモネオ。
無伴奏のブレリア・パラ・エスクチャール。
ギターなしで、居酒屋で歌う日常の再現。


上手でフェルナンド・デ・ラ・モレーナがシギリージャを
マヌエル・バレンシアの伴奏で。

下手でルイス・エル・サンボがフェルナンド・モレーノの伴奏で
マラゲーニャ。
フェルナンド・モレーノは体調が悪いのか
いつもの彼のギターではない。

上手でモネオがバルジートの伴奏でソレア。

下手のテーブルで
トルタとカプージョ。
マヌエル・バレンシアの伴奏で
トルタのアレグリアスはカディスの軽妙さよりもヘレスの深み。
ソニケーテがすごい、ニーニョ・ヘロの伴奏で
カプージョのティエント/タンゴはぴかいち。
Foto;Javier Fergo

       ファンダンゴからブレリアへとつながり、
ブレリア。
トルタのブレリアの力強さ。
それに誘われ踊り出すカプージョ。
この人はやっぱエンターテイナー。

上手にアグヘータ。
マヌエル・バレンシアの伴奏で
ソレア、シギリージャ。
ぜんぜん枯れていない。
シギリージャの伴奏にけちつけたり、
ギタリストからかったり。
オレ様ぶりも昔通り。
ファンダンゴ
調子にのってまたファンダンゴとシギリージャ。
すでにフィン・デ・フィエスタのためにスタンバイしている
ほかのギタリストたちや歌い手のことなど
つゆとも気にせぬ。
また、それが彼の売りなわけで。

ようやくたどりついたフィン・デ・フィエスタ。
カプージョが歌い踊り、
フェルナンド・デ・ラ・モレーナのグラシアに
パルメーロのボーが踊る。
Foto;Javier Fergo
アグヘータのブレリアはゆっくりで
パルメーロも一休み。

Foto;Javier Fergo

これだけの顔ぶれがそろうのはめったにない。
が、
フィン・デ・フィエスタでは水のボトルがとびかい、
モネオのファミリーだとかいうおじさんが飛び入りで登場したものの
歌が踊り向きではなかったためとまりそうになったり、
田舎のフェスティバルのよう。
それがいい、という人もいるだろうけど、
舞台という意味ではどうなんだろうね。
最後にフェルナンド・テレモートと
モライートの写真が舞台奥に映し出されて
アグヘータ以外の出演者と観客が拍手。


幕開きのトナーでは
おおっ!
と思わせたものの緊張感は最後まで続かなかった。
劇場公演での作品というのは難しいね。




2012年3月2日金曜日

ヘレス・フェスティバル2012 8日目昼

13時からの記者会見は
「ビバ・へレス」

2008年のフェスティバル開幕を飾った作品の再登場。
作品の構成は変わらないそうだが
出演者が大幅に変わっている。
記者会見に登場したのは
左から
ヘスース・メンデス
パコ・ロペス(監督)
アントニオ・エル・ピパ
マカニータ
ハビエル・ラトーレ(振り付けコーディネート)


と
19時からサラ・ラ・コンパニアで好演する
マヌエラ・カルピオと
ギタリスト、フアン・ディエゴ。


ビバ・ヘレスの初演では
マリア・デル/モレーノ、メルセデス・ルイス、
テレモート、
アンヘリータ・ゴメス、ミゲル・テジェスらが出演してた。

さて新しいバージョン、どうなりますか。

シェリーを飲んで
第2部はフラメンコ写真のウエブの紹介。
地元、ディアリオ・デ・ヘレス紙の写真家、
ミゲル・アンヘル・ゴンサレスの

これまでのヘレス・フェスティバルの写真を
ずっと撮り続けて来た彼。
フラメンコ好きなら思わずうなるような
美しい舞台写真、
ヘレスの人ならではのフィエスタのスナップなど
たくさんの写真があります。
ぜひ!



ヘレス・フェスティバル2012 7日目夜 パストーラ

初日アンダルシア舞踊団で好演したパストーラ・ガルバンが
「パストーラ」でビジャマルタ劇場にかえってきた。

2009年のヘレス・フェスティバルで初演された作品、
初演はサラ・ラ・コンパニアだったが
それから2010年のビエナルのため修正を加えたのが
今回のバージョン。
出演者や衣装も初演のときとは違っている。

オープニングはタンゴ

Foto;Javier Fergo

上手よりのテーブルに歌い手、ギタリスト、そしてボボーテ。
パストーラは水玉の短い衣装にフリルのついたエプロン。
衣装の裾からペチコートがのぞく。
気分は下町トリアーナの長屋の中庭。
トリアーナのじいさんばあさんのグループ
トリアーナ・プーラがみせた、
お尻をつきだしたユーモラスなタンゴの振りが
天性の踊り手の手によって新しく花開く。
ちなみにこの振りの起源は黒人の踊りだそうな。
トリアーナ・プーラご本家の踊りはこのビデオの中にたっぷりはいってます。
彼らの踊りをみたことがある人ならすぐに
彼女の踊りがそれをなぞっているのがわかるはず。

机を叩いてのコンパス。
ブレリア。
パストーラはテーブルにこしかけて。
早いブレリアをきいている。
ゆっくりとしたリズムにかわるとパストーラがおどりはじめる。
くつを右左にけっとばし
(見事な放物線を描いて袖にとびこんでいった!)
古き良きトリアーナと
兄イスラエル(この作品の構成、振り付けをしている)のスタイルが
交差する。
Foto; Javier Fergo
ひいてあった絨毯をもって袖にひっこむその姿まで
 ムイ・フラメンカだ

クリスティアン・ゲレーロの歌うマリアーナ
クリスティアンはパストーラの旦那様。
ちょっとミゲル・ポベーダみたいな感じ。
きれいに歌ってくれます。
トリアーナのソレアはホセ・バレンシア。

赤いペチコートがのぞく黒い衣装。

Foto; Javier Fergo

シギリージャ
ファンダンゴ
シギリージャ
ここでもクラシックなかたちと
アヴァンギャルドが同居する。

クリスティアンの歌うマラゲーニャ/ベルディアーレス

上手より椅子を持って登場したパストーラは鮮やかな赤のバタ・デ・コーラ
椅子にのぼりポーズ
椅子にマントンをかけ
また椅子に上る。

Tócame  Ramón!
の声ではじまるカンティーニャス
ここでもいにしえの香りに今が花咲く。
Foto; Javier Fergo

Foto; Javier Fergo
シレンシオでは
ボボーテが闘牛士のようにパストーラと絡む。
そのフラメンコさに思わずオレ!

セビジャーナス
ラモンが弾いて歌うタランタ!
この人の、古風な香りのギターは昔から大好きだが、
歌も味がある。
さすがアマドール家!

そして再びタンゴ
水玉の衣装に赤のシージョ
ボボーテが歌い踊り
パストーラとパレハで踊り
トリアーナが再び香る。

全員が舞台前面にでてアルボレア

暗転をうまくつかって
フラメンコの小さな情景、スケッチを次々にみせる。
机を叩き歌うパストーラ。
櫛をずーっとみて投げ捨てたり。
酔っぱらい風の動きから踊り出したり。


いや〜堪能させてくれました。
これぞ21世紀のフラメンコ!
昔と今が共にある。
パストーラは何を踊ってもパストーラ。

おきゃんな、
という言葉がぴったりなパストーラ。
そう、活発で、おてんばで、いたずらで、
おしゃれで、はなやかで、ちょっとどじなとこもあって
つい人の目を集める感じ、というのかな。
バタ・デ・コーラやマントンも、
いわゆる“エスクエラ・セビジャーナ”風の、
おっとりした優雅さとはひと味ちがい、
もっと勢いがあって生きのいい、粋な感じ。
トリアーナのタンゴも
トリアーナの振りをなぞってはいても
踊り手ならではの美しいブエルタやかたちによって
再創造されている。
いやあ本当に誰よりもフラメンコらしさと、
セビージャらしさにあふれる
得難いバイラオーラでございます。

イスラエルお兄ちゃんもさすがによく彼女をわかってて
彼女の良さを存分にひきだしている。
ところどころにみえるイスラエルの刻印も
パストーラ風になってるのもすごいよね。

去年9月に長女パストーラちゃんを出産し
さらにパワーアップした感じ。
これからも長く長くみつづけたい踊り手だ。







2012年3月1日木曜日

ヘレス・フェスティバル2012 7日目昼


記者会見は
エドゥアルド・ゲレーロと
「ヘレス・アル・カンテ」

カディス出身のエドゥアルド・ゲレーロ(写真左はし)は
エバ・ジェルバブエナ舞踊団のバイラオール。
ヘレスでのソロ舞台はこれが初めて。
昨年カディスで初演した
亡くなった祖母に捧げる作品を
19時からサラ・ラ・コンパニアで。

ビジャマルタ劇場では
超大作
「ヘレス・アル・カンテ」
記者会見にのぞんだのは
左から
ホセ・マリア・カスターニョ、
アルフレド・ベニテス、
フェルナンド・デ・ラ・モレーナ、
ルイス・サンボ、
カプージョ、
ニーニョ・ヘロ。

ヘレス・フェスティバル2012 6日目 メルセデス・ルイス

最近発表された労働法に反対する人たちのデモで
交通がマヒしたヘレスの町を横断し
サラ・コンパニアでメルセデス・ルイス。

入場券はだいぶ前から売り切れ
自由席のため
劇場前には良い席を求める人たちの長い列。

イスラエル・ガルバンが
このサラ・コンパニアで
「エダ・デ・オロ」を初演してはじめた、
踊り、歌、ギター
3人だけの舞台に
メルセデスもトライ

ギターでブレリアがはじまり
舞台奥真ん中からメルセデスが登場
指をならしてマルカール。
ギターの音がやみ
一人で踊る。
サパテアードが音楽のよう。
フラメンコ舞踊はパーカッション

Foto;Javier Fergo

ヘレス出身ソングライター、マヌエル・アレハンドロの
「プロクロ・オルビダルテ」
(あなたを忘れようとする)
をブレリアのリズムにのせてダビ・ラゴスが歌う
ブラソの動きでマルカールしていくメルセデス。
そこにギターが加わり三人で。
やがてヘレスのブレリアとかわり
ギターなしのカンテソロに

ギターソロがはじまり
そこにカスタネットでからむメルセデス。
白いバタ・デ・コーラで
ペテネーラ。
長いフレコが目立つマントン。
Foto;Javier Fergo
 バタ・デ・コーラはデザインの問題だと思うのだが、
地をはうばかりで高く舞わない。

カンテソロはトナー。
そこにギターが加わりカバーレス
黒いバタ・デ・コーラのメルセデスが加わり
シギリージャ。

カスタネットもつかうが
伝統的なたたき方とはちょっと違う感じ。
またバタはペテネーラ同様
地をはうばかり。
せっかくのバタ・デ・コーラが
もったいない。

カンテソロのプレゴンからブレリア、
そしてカラコーレスは男装で。
Foto;Javier Fergo
ここで3人がフラッシュのような暗転で
位置をかえてのポーズがあったので
ここでおしまいと思いきや
ギターソロ、
メディア・グラナイーナのカンテを
マルカールしていく


メルセデスはすでに自分のスタイルをもつ踊り手だから
よけいな事だとは思うが
どうしても気になるのは衣装。
腰下までぴったりした衣装はここ数年の流行だが
踊りでこれをつかう場合、動きが制限され、美しくなくなることも多々ある。
サパテアードの前などでスカートをつかむ場合、
メルセデスはいつもかがむ。
これもたっぷりとした衣装なら
そのまま手でとってあげる、
もしくは膝でちょっと蹴ってですむことだ。
そういったことまで考えて衣装を選ぶべきでは?
またカラコーレスになぜ男装で暗い色の衣装?
伝統を破るのが悪いとはいえないが
それが意味のないものというなら問題だ。
セビージャのちゃんとした衣装屋の衣装で踊る彼女がみてみたい、
と思うのはぜいたくだろうか。