2022年2月20日日曜日

ヘレスのフェスティバル3日目ルシア・アルバレス“ピニョーナ”『アブリル』

語りたいなにかがある。音楽や歌詞の力を借りてあふれる思いを踊りに昇華する。 
ピニョーナの『アブリル』はそんな作品。 
ローレ・イ・マヌエルの歌った曲の歌詞の作者として知られるフアン・マヌエル・フローレスのオマージュでもあるのだけど、それは彼へ、だけではなく、彼が生きた一つの時代を映し出す鏡のようなもので、スペインの70年代、ヒッピーの時代への思慕のように思われる。。
言葉にはならないおもいがあふれている。彼女が伝えたい何かがしっかりじっくりこちらへと伝わってくるのだ。
  
セビージャ、ビエナルでの初演も観ているのだけれど、ヘレスでのこの日が最高。あとで聞いたら初演から舞台美術も構成も整理して、衣装も変更し、精製されたということらしい。なんの先入観も知識もなく見たセビージャでも彼女の意気込みといいバイブレーションは伝わってきたし、その後、作品に関わるあれこれを聞いたりもして2回目に見たということもあったのかなあ。でも、終演後に話した誰もが感動していたので、やっぱり公演がすごかったということなのだろう。

 アルフレドのギターをはじめとする音楽が作り出す空気と一体化したピニョーナの素晴らしさ。姿形の美しさは特筆もの。すっと伸びた姿勢、背中の美しさ。伸ばす手の先に世界が広がっていく。バタ・デ・コーラの扱いもまるでお手本のように上手だし、サパテアードも精確で力強い。文句の付け所がない。一つ一つの動きを丁寧に完璧にしていく。一つ一つの動きに意味がある。センティードがしっかりしている。

アルフレドは昔、カルメン・コルテスの舞台で演奏していたヘラルドを思い出させる。音楽だけで聞いてももちろん素晴らしいとは思うのだが、踊りの作品のためということで目的/意味を持って作られており、それが踊り手の最高を引き出す鍵となっているのだ。フラメンコとロックが自然と溶け合い、クラシック的歌唱の女性三人による合唱隊やキーボード、ドラムス、そしてぺぺ・デ・プーラの歌が作る宇宙を自由に羽ばたくピニョーナ。

いやあ、もうほんと、やられちゃいました。ぞっこんでございます。
最初の曲でなんだかわからないまま胸が熱くなり涙が出てきて、その熱い何かがずっと終演まで続いていく感じ。

©Javier Fergo Festival de Jerez

とても幸せな気分で帰途に着いたのでございます。

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