2020年2月29日土曜日

へレスのフェスティバル8日目マヌエル・リニャン『ビバ』


出演者は全員男性。ダンサーは全員女装で踊る『ビバ!』
トロカデロバレエのフラメンコ版?
記者会見のあとでそう尋ねたら、「もっと真面目」、って言ってたけど、
トロカデロにも通じるユーモアも交えながら、トロカデロも元々トウシューズで踊りたい、ってとこから始まったのではなかったかなあ。そう意味ではちょっと似てるかも。
自分たちが装いたいように装い、踊る楽しみを謳歌した作品でありました。

マヌエル・リニャンのソロで始まり、

© Festival de Jerez/Javier Fergo”
日本でもおなじみのミゲル・アンヘル・エレディアが、ベンチを踊り手たちが運びつなげて橋のようにして舞台にして、ローラ・フローレスのように歌い踊るかと思えば、スペイン国立バレエ出身でタブラオ、ビジャロサの芸術監督ジョナタン・ミロはソレア、
© Festival de Jerez/Javier Fergo”
 ラ・ウニオンとコルドバで優勝したウーゴ・ペレスはペテネーラのインスピレーション。
ベンチに逆さにサパテアードするというコミックな場面も。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”
 マヌエル・ベタンソはトリアーナの爺婆風タンゴをたっぷり見せて
小島作品にも出演していた元国立バレエのビクトルとダニエルはボレーラでアバンドラオ。いやあ、すごいな、バレエダンサーのようだよ、ぴったりズボンでも、スカートでも超絶技は同じ。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”
 ミゲルのブレリア、リニャンのタラント(すごっ)に続いて、全員でバタとマントンのアレグリアス。昔の国立のカラコーレスみたいで華やかに。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”
 最後は衣装を脱ぎ、カツラも、化粧も取っていく。
衣装を脱いだ、下着姿はちょっとショッキングだけど、
男の体で女装することの大変さとともに、女性の大変さをも表現しているようでもあり。
© Festival de Jerez/Javier Fergo”

女性が男装で踊るのはカルメン・アマジャやフェルナンダ・ロメーロに限らず、今ではとっても普通なことなのに、男性のスカートはまだまだ敷居が高い。
アントニオ・ガデスやカナーレスが女性役を演じてスカートをつけたり、
ホアキン・コルテスの歩くだけバタ・デ・コーラなんていうのもあったけど、
男性が女性役でなくスカートで踊っている先駆者は小島章司だろうけど、
ラファエラ・カラスコの作品で男性舞踊手たちが上半身は男性舞踊の動きで、バタで踊ったセビジャーナス以降、リニャンはよくバタで踊っていて、それに違和感もなくなった。
ヘーレン財団のバタクラスでも男性いたし。前日のサラ・バラスの作品でも男性がスカートをはいていた場面があった。だんだん普通になってきているのかな。

とはいえ、男性が女性の格好をするのは仮装のように思われ、笑われることも多く、彼らも子供の時は隠れてお母さんのスカートをはいたりしていたという話も、リニャンは記者会見で語っていた。
だからこれはようやく自由に自分のしたいことがしたいようにできるという自由謳歌の讃歌なのであります。

みんな素晴らしい踊り手だけど、女装だから女性らしく優雅に色っぽく踊っているウーゴもいれば、リニャンのタラントやベタンソのタンゴはスカートを持ったり、スカートが広がったりというテクニックや効果はあっても、基本、何を着ていても振りは同じだろうな、と思ったり。
つまり、着ているものは重要だけど、重要じゃないのだ。
踊っているのは踊り手その人。何を着ても同じ踊りだったりするのだから、重要ではないとも言えるけど、それを着る自由がなかった、着ることで変わるものもあるという意味では重要。

個人的には女装の時は女らしく踊ってもらった方が好きかも。
まあ、これは好みの問題ですが。

楽しかったけど上演時間1時間半を超えるのはちょっと長いかな。
またユーモアに行くならもっと徹底してもいいと思うし、そうすることで、彼らが言う真面目、シリアスな動機ももっと胸に迫ってくるのではないかしらん。

でも観客は総立ち、大喜び。売り出しとともに売り切れ、去年のマドリードでの初演以来、イタリアなど外国も含め、あちこちで上演が続く、人気演目なのもうなずけます。





0 件のコメント:

コメントを投稿