2019年3月1日金曜日

へレスのフェスティバル7日目 レオノール・レアル『ノクトゥルノ』

レオノール・レアル『ノクトゥルノ』。昨年のビエナルで初演され好評だったのだが、未見だったので行ってみた。
レオノールはへレス出身で、フェスティバルがきっかけでフラメンコを始めた、と、昔、記者会見で言っていた。2011年にはフェスティバルの新人賞をもらっていて、いわばフェスティバル出身。そのせいかな、いわゆるへレスっぽさは皆無。どこか外人ぽい。
へレスっぽさは、ヒターノ、非ヒターノ関係なく、小さい頃からフラメンコに親しんできている土壌からくるもので、彼女はそうでないからなのではないかな。
トレードマークのショートカットのせいもあるだろう。本人も自覚した上でわざとそう振る舞っているのかもしれない。

開演5分前くらいから舞台に現れ、椅子に腰掛け何かをメモしたりしている。
こういう演出、今また流行かね。昔、エバ・ジェルバブエナが『5ムヘーレス5』でやった時は新鮮だったけど。
足で床を擦って音を出しているうちにアルフレド・ラゴスのギターが始まる。
バロックのような、クラシックぽい音楽を静かにマルカールしていく。

© Javier Fergo / Festival de Jerez”
フラメンコ舞踊はカンテを踊るのが基本だけど、今回はカンテなしにこだわった。制作途中に、やっぱり入れるべきでは、とも思ったりしたけれど、と記者会見で話していたレオノール。
25年前の日本の、日本人のフラメンコ公演は基本、カンテなしだったよなあ。

音楽は素晴らしい。日本でもおなじみのアルフレドは脂がのっている、というか、トーケが上手いだけでなく、風格も出てきた、という感じ。
そしてもう一人、イスラエル・ガルバン公演で来日したこともあるパーカッション奏者のアントニオ・モレーノ。ウトレーラ出身でパーカッションの先生でもある彼は、イスラエルの影響もあるのか、最近は靴で床を鳴らすこともパーカッション技術に加えて、洗濯板や瓶、たらいなど、なんでも叩いて楽器にしてしまう。面白い。

© Javier Fergo / Festival de Jerez”
 サパテアードのソロにパーカッションが絡む。パーカッションとしてのサパテアードの追求?いやいや、そんなことではなさそうだ。
早いシギリージャのリズム。
© Javier Fergo / Festival de Jerez”
 ファルーカからのガロティン、ガロティンからのファルーカ。
ファルガロティン?
© Javier Fergo / Festival de Jerez”
スイングぽいギターからのルンバ。ジャケット裏返して金ジャケットに。
フラメンコの女性舞踊は男性に比べて、小物や衣装で曲のイメージを作りやすい、というのがあるのだけど、それをあえて排して、曲をどう表現するかという試みでもしてるのか、とも思ったのだけど、それも違うようだ。
© Javier Fergo / Festival de Jerez”
ソレア。
この人、なんでも一応こなしているように見えるのだけど、実はちゃんとやりきってない、のかもしれない。オレ!の瞬間が皆無。

昨日改めて気がついたのが、私はオレ!が自然に出てくる瞬間を探してるということ。
技術的に上手でもオレ!が出ない、感心しても感動しないものじゃなくて、ほんの一瞬でも唸らされれば、満足だということ。

レオノールは、表面的にフラメンコをなぞっているだけ、という印象。それだってすごいのかもしれないけれど、でも、例えば、もうちょっと胸を開いて、首の角度を変えれば、もっとずっとフラメンカな印象になるはずだよなあ、とか、サパテアードも流している感じで、一個一個の音がいまひとつきれいではないよなあ、とか、いろいろ注文つけたくなるのだ。やりきっていない感。

結論。イスラエルの伴奏陣持ってきたからって、イスラエルになれるわけじゃない。
当たり前だけど。

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