2018年3月5日月曜日

ヘレスのフェスティバル モリネロ・エン・コンパニア「ADM」

何度も繰り返すが、ヘレスのフェスティバルはフラメンコのフェスティバルではなく、フラメンコとスペイン舞踊のフェスティバル。
なので、他ではなかなか見ることができない、スペイン舞踊の公演が多く行われるのも魅力。
この「ADM」もその一つ。
アレハンドロ・モリネロはマドリードの王立舞踊学院卒業。国立バレエに在籍し、小島章司/ハビエル・ラトーレによる「ファトゥム」などにも出演していた。
2010年にはマドリードの振り付けコンクールで優勝。
2015年にはすでに、このヘレスのフェスティバルに「5ロランテス」で参加している。
若手振付家としては順調な滑り出しだ。

二人の女性舞踊家とギタリスト、ボーカル、パーカッションとコンパクトなカンパニーで、三つのパートに分かれる。
最初のパートでは、生演奏されるスペインの民族音楽をバレエシューズでエスクエラ・ボレーラのテクニックで踊る。クアトロ・ムレーロス、4人のラバ飼いやウエルバのファンダンゴなども歌われ、美しく、楽しい。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 形の美しさ。特に女性の首から肩にかけてのラインの美しさ。そしてカスタネットの妙技。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 アレハンドロもしっかりと技術で見せる。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 回転や跳躍、バレエのようなテクニックでみせる。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
 次のパートは現代音楽でのダンサ・エスティリサーダ、いわゆるクラシコ・エスパニョール。クラシック音楽が現代音楽に変わっただけで、技術は高いし、美しい。
コンテンポラリー風の動きも多用される。
© Festival de Jerez/Javier Fergo

© Festival de Jerez/Javier Fergo

© Festival de Jerez/Javier Fergo
だが、最後のフラメンコはちょっと残念。
タンゴのカンテソロに始まるのだが、そこからして、素人くさい。
そしてアレハンドロのソレア。
これもさっきまでのように素直に楽しめない。
ポーズ、ポーズで、クラシコのように踊っている感じなのだ。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
フラメンコも、スペイン舞踊も、同じ舞踊ではあるのだが、音楽との関係に違いがあるような気がする。スペイン舞踊では流れる音楽で踊り、フラメンコはその音楽を一度体の中に入れてから踊る、とでもいったらいいだろうか。
彼の踊りにも、女性二人にも、重みがない。ためがない。

数年前、やはりヘレスのフェスティバルで、マドリードの舞踊学院の生徒/卒業生の公演を見たときも、ボレーラなどスペイン舞踊のパートはいいのだが、フラメンコが良くなかった。学院生などに聞いても、フラメンコは、学院の勉強だけではダメで、外の先生のクラスを受けに行くなどしないと、という意見だった。アカデミックな勉強だけではどうにもならないのだろう。

フラメンコの点で不満は残るものの、一生懸命作ったという感じで、好感が持てる公演だった。


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