2月19日、マドリードから電車で20分、
進行邸宅街といったおもむきのポスエロ・デ・アラルコンの
ミラ劇場で行われた、アントニオ・ナハッロ新作初演。
闘牛士姿のアントニオのポスターが飾られた、
モダンな劇場だが、先週はミゲル・ポベーダが歌い、
来週はホセ・メルセ公演があるなどフラメンコづいている。
雨模様の天気にも関わらず客席は満員。
そして公演はその観客総立ちのオーベーションで終了した。
セビージャ組曲はラファエル・リケーニと
クラシックギタリストのホセ・マリア・ガジャルドの作品で
1993年に発表されたもの。現在は廃盤となっているが、
このアルバムの曲を取り上げた作品ということで
録音を使うのかと思っていたのだがなんと演奏は生!
ギターはミゲル・リベラ。アレンジはフルート奏者のオマール・アコスタ。
だが、このアレンジ/演奏があまり魅力的ではなかったのは残念。
自己主張しすぎのパーカッション。歌い手は音程を外しつづける熱唱で
ギターも前面にでてこない。
これならいっそのこと、録音の方がよかったのでは?などと考えてしまう。
はじまりは「フェリア」。カスタネットでの群舞。
幕を1mばかりだけあけてみせる、というのは流行なのかな?
続く「地獄の道」という曲はボレーラのソロ。
ちなみに地獄の道は、フェリア会場の遊園地への道のことであります。
「アルファルファ」は聖週間の輿をかつぐ格好をした男たちと
黒いレースのマンティージャの女たちの群舞。
男たちはときにキリスト像へ、女たちは聖母像へと姿をかえる。
闘牛士の上着がよくにあうアントニオと闘牛のデュオは
スパニッシュコンテンポラリーとでもいえる曲。
赤のシャツに黒いズボンの男性舞踊手たちによる「バイラオール」
短めのバタ・デ・コーラの女性舞踊手たちによる「トリアーナの港」
音楽ソロをはさんだ月のもとでの男女のデュオは美しい。
再び群舞で「フェリアのフラメンコ」そしてアントニオの「エスプランテ」
音楽ソロをはさんでフィナーレ。
このフィナーレの、ホタ的なものなど民族舞踊の香りがする振り付けが
斬新でよかった。タイトルの「フビロ」歓喜にふさわしい盛り上がりだ。
舞台はこれまで、ジャズやアルゼンチンタンゴをスタイリッシュにみせてきた
アントニオが、スペイン的なものに真っ向から取り組んで
フェリア、セマナ・サンタ(聖週間)、闘牛、と
お土産物屋さんの店先的なモチーフを取り上げてはいるのだが
それも彼ならではのスタイリッシュな感覚によって、
単なる“典型”におちいることをまぬがれている。
カスタネットを多用し、いわゆるクラシコ・エスパニョール的な、
靴はフラメンコ靴でもリフトやジャンプ、回転なども多用した
振り付けが中心で フラメンコというよりもスペイン舞踊的。
華やかな衣装。
舞台中央の白い大きな円が
あるときは闘牛場になり、あるときは月になり、という
映写による美術はたいへん効果的。
せっかくセビージャといっているのだから、
もう少しセビージャ的なものをいれてもよかったようにも思うが
これは好みだろう。
群舞を多用し、13曲中、ソロは3曲のみ。
シルビア・ピニャールのエスクエラ・ボレーラと
アントニオとエステバリス・バロソの闘牛士と闘牛のデュエット、
アントニオのソレアがそれだ。
アントニオ自身が舞台に登場するのも、上の2曲と
最後、フィナーレの群舞だけというのはちょっとさびしいようにも思うが
彼のスター性でおしていくのではなく、群舞の美しさ/迫力を
アピールしていくタイプのカンパニーなのかもしれない。
フラメンコのコアなファンに、というよりも
一般の観客にアピールする要素を多くもっている作品、舞踊団だと思う。
アントニオ・マルケス舞踊団やヌエボ・バレエ・エスパニョール、
古くはラファエル・アギラールの系列にならびつつも、
独自の方向性を見いだしていく、そんな感じである。
詳細リポありがとうございます!
返信削除ほ〜〜満席にスタンディングオーベーションでしたかっ
素晴らしいですねっ
あの踊りはフラメンコではなくスペイン舞踊になるのですね。
確かに一般の人に理解しやすい踊りだと思います。
でもそこからトラディショナルなフラメンコに興味を持つ人もたくさんいるんでしょうね。
アントニオ・マルケス舞踊団、ヌエボ・バレエ・エスパニョール、ラファエル・アギラールといろいろ情報ありがとうございます。
早速調べて観てみます。