2022年2月28日月曜日

ヘレスのフェスティバル11日目ラファエル・カンパージョ『プーロ』

これぞフラメンコ! これぞソレア!

ラファエル・カンパージョがサラ・コンパニアで見せてくれたのはそう叫びたくなるほどの、素晴らしい、素晴らしい公演でした。

©Javier Fergo Festival de Jerez


舞台中央の椅子に座ったギタリストのソロで始まり、同じくギターで終わるという、シンプルながら、作品としての構成をきちんと心得た感じ。

マルティネーテ/シギリージャ、フアン・ホセ・アマドールが弾き語るグラナイーナ、そしてタラント。緑色のシャツに同色のぴったりとしたパンタロンで休まず踊り続ける。その形の美しさ! エスコビージャもすごいけど、ブラソが美しい。エレガントで男らしく、リズミカル。これぞセビージャ!

三人の歌い手によるファンダンゴに続いてのソレアが圧巻だった。白いスーツに着替えたラファは歌詞のところでは決して足を入れない。マルカールしてレマーテを入れる。そういう昔ながらの正統派ソレア。ブレリアではリズムと遊ぶように足を入れていく。

伝統に敬意を払い、みずからのフラメンコを表現し、楽しむ。

プーロ、純粋とは、フラメンコへの敬意と愛であることを改めて確信させてくれました。オフィシャルの写真にもビデオにも、このソレアがないのが残念ですが、あそこにいた観客は皆、この日のラファエルを忘れないことでしょう。



ぺぺ・トーレス、アルフォンソ・ロサ、ラファエル・カンパージョ。今年のヘレスのフェスティバルでは、男性舞踊の精髄を見せてもらっている気がします。




Rafael Campallo from Festival de Jerez Televisión on Vimeo.

2022年2月27日日曜日

ヘレスのフェスティバル10日目ファルキート『ファルキート』

 プレス用資料やプログラムに新作とありしかも先日のマヌエラ・カルピオの公演で最高だったぺぺ・トーレスが出演とあったので期待したファルキート公演。

祖父ファルーコのシンボルとも言える帽子をかぶって登場して舞台の下手、上手、中央でと位置を変えてちょっと踊って、中央では息子と踊るオープニングからのブレリア

©Javier Fergo Festival de Jerez


そしてぺぺのシギリージャ!
©Javier Fergo Festival de Jerez

前回同様、シンプルでムイ・フラメンコで、オレが止まらない。

ぺぺとファルキートの杖を使って絡みや、ファルキートが踊り継いだシギリージャまでは良かった。ファルーコとラファエル・エル・ネグロ、マティルデ・コラルのロス・ボレーコスへのオマージュという感じで、カリメ・アマジャがバタ・デ・コーラで登場して、それを確信したところで、雰囲気が一変。

ファルキートが作ったのかな、という感じのカンシオン風フラメンコ中心で、昔ホアキン・コルテスの音楽監督だったフアン・パリージャのフルートやエレキベースも入っての、いかにもコマーシャルなフラメンコショーという感じに変わってしまったのだ。

本人的には、伝統的なフラメンコとより新しいフラメンコを組み合わせたのかもしれないが、後半は個人的にはほとんど楽しめなかった。息子モレーノのソロやら、以前の作品で見せたようなテーブルの上での踊りとかもあったのだけど、その時、ぺぺがパルメーロになっているのも正直抵抗があった。昔、ホアキン・コルテスがやってたような、客席に手拍子を要求したり、拍手を待つようなところもあり、そうか、コルテスも彼の道標の一つ、というか影響を与えているのだな、と思ったことでした。

個人的には前半部分をもう少し充実させて、一つの作品にしてもらいたいと思うけど、かなわ無い夢なのでしょうか。

ビデオはこちら

ちなみに爆音で、耳にティッシュの耳栓で防御したのですが、終演後しばらく耳がおかしかったです。アンヘル・ロハスの公演でもしっとり歌ってたマリア・メスクレも、マリ・ビサラガに負けじとがなってたので別人のよう。もう一人の歌い手はエセキエル・モントージャ、ギターはヘレスのマヌエル・バレンシアでした。





ヘレスのフェスティバル10日目アンヘル・ロハス『セール・バイレ』

アンヘル・ロハスは1974年マドリード生まれの踊り手で、カルロス・ロドリゲスとのヌエボ・バレエ・エスパニョールで活躍し愛知万博の時に来日。また、近年はマドリードのフラメンコ・フェスティバルの監督、アントニオ・カナーレスやルピ、メルセデス・ルイスらの作品の演出などでも知られます。 ここ数年は舞台で踊っていなかったという彼が久しぶりの舞台ということでサラ・コンパニアへ。

©Javier Fergo Festival de Jerez

これがなかなか良い作品でありました。

ギタリスト、ジョニ・ヒメネスとパーカッションのバンドレーロによる音楽がいい。歌詞を自作というマリア・メスクレの歌も、しっとりと、歌詞もよく聞き取れるのもいい。四人だけのシンプルな舞台ながら素晴らしい照明で、小さな劇場の良さをも生かしているという感じ。

アンヘルのソロでの舞台を観たのは初めてだと思うけれど、その昔(92年だから30年前だ!)、カナーレス舞踊団で、『トレロ』の牛役が本当にすごかったのを覚えている。そのせいか、オープニングの息する音が、『トレロ』の場面と重なってしまう。実際、彼の踊りの中にはカナーレスが詰まっていて、それも90年台前半の全盛期のカナーレスを思い出させる。

カナーレスの振りをそのまま踊っているわけではもちろんないのだが、振りの部分とか、振り自体は違っても構成とか、アクセントのつけ方とか、首や腕の使い方とか、あちこちにカナーレスが現れてくる。今のアントニオよりもカナーレスかも?と思えるほど。最後に踊ったシギリージャにしても、後ろの中央から現れて、パンと手を打って始まるところとか、カナーレスのソレアじゃん、って感じ。タンゴも然り。

もちろん、ギタリストの横で、ギタリストの動きを真似るかのような振りをしたり、パーカッションのソロからバンドレーロが踊り手の肩を叩いてパーカッションにする、みたいな、個性的なところもあります。

衣装だけはなぜ?って感じで理解不能だったけど、上質な作品でございます。

舞踊三部作の一作目ということなので今後も楽しい。

ビデオはこちら。でもビデオだと照明の美しさ、あまり見えないんだよな〜




2022年2月26日土曜日

ヘレスのフェスティバル9日目ロシオ・モリーナ『ブエルタ・ア・ウノ』

©Javier Fergo Festival de Jerez

一昨年のビエナルで初演したギター三部作の三作目。ラファエル・リケーニとの繊細な『イニシオ』、エドゥアルド・トラシエラとジェライ・コルテスとの黒が基調の『アル・フォンド・リエラ』そして今回の『ブエルタ・ア・ウノ』となるわけだが、今回は爆発、活気、開花などのキーワード通り、ユーモアに満ちた楽しい作品でありました。

袖幕やバックのホリゾントなどを全部取り去った裸の舞台に照明が客席向きに配され、赤い低い台が並ぶ。赤い照明。舞台の真ん中で正面向いて座っているギタリスト、ジェライ・コルテスのところに来てロシオは「これはなんでもいいものじゃないの」と繰り返し、サパテアードを打ち舞台奥に行き、またやってきて同じ言葉を繰り返し、サパテアード。それを何度か繰り返したり、「右足だけでやる、タコンなしで…」などと話しながら一人で踊ったり。パチパチを口に含み、その音を吊るされたマイクで聞かせたり、砂糖か粉かをこぼして歩いたり、ガムを噛んだり、飴をなめたり。むちゃくちゃなんだけど憎めない感じ。これって子どもじゃん? 4年前のビエナルで大きなお腹で舞台に登場したロシオの娘ももう3歳。子どものめちゃくちゃをフラメンコに組み合わせてるのだな、これはきっと。

タンゴもタランタも、ソレア、シギリージャも既にあるものを一度壊して再構築していくということをしているような感じで、先日のアナの舞台にも通じる感覚が、この世代の共通感覚なのかも、と思ったり。でもロシオは積み木を壊してまた積んでと遊ぶ子どものような感覚で演じているのだと思ったり。扇2本持ちで音を聞かせて踊るのはリケーニとの時もやってたけれど、今回は扇を投げ捨てたり、口にくわえたりして、はじけまくるフィナーレまで、天才ロシオと、音も感覚もいいジェライの二人の会話が止まらない感じ。

ロシオが息を切らしながらファンダンゴを歌った後で「せっかく歌があるのに」とか実際に喋って色々文句を言うところとかも、なんだろう、芝居なんだろうけど、二人の間のすごくいい空気が感じられて楽しいのであります。

おもちゃ箱をひっくり返したような、でももちろんんただのおふざけではなく、色々感じ、考えさせられるこの作品、ビエナルでも見ることができるといいなあ。







Rocío Molina from Festival de Jerez Televisión on Vimeo.

2022年2月25日金曜日

ヘレスのフェスティバル8日目アルフォンソ・ロサ『フラメンコ。エスパシオ・クレアティボ』

©Javier Fergo Festival de Jerez

暗い、椅子以外何もない舞台に一人 現れ、踊り始める。ソレア、タンゴ、ロマンセ、シギリージャ、ブレリア、アレグリアス、ファンダンゴ、アバンドラオ、そして最後のソレアまで途切れることなく滑らかに流れるように続く。

マドリードの踊り手アルフォンソ・ロサというとパワフルな熱血高速サパテアードを思い出す人が多いと思うのだが、今回は、ラファエル・エステベスとバレリアーノ・パーニョの知識と経験を借りて、非常にメリハリのついた、彼の持つ実力と魅力を十二分に発揮できる素晴らしい作品を作り上げた。

その形の、動きの美しさ。回転の素晴らしさ。バランスの良さ。たくさんのオレ!を引く出す細部、例えば回転の時の首の処理とか、目線の使い方とか、もう本当に素晴らしすぎるのだ。アントニオ・ガデスやエル・グイト、マノレーテと言った上の世代の要素が詰まっている上に、熱い思いをぶつけるような高速パワフルサパテアードも繰り出したり、いやあ、もう文句のつけようがない。古くて新しいフラメンコでいっぱいだ。

低音から高音まで正確な音程と美しい声で歌い上げるゲストの歌い手サンドラ・カラスコと、イスマエル・デ・ロサ“ボラ”の歌やフランシスコ・ビヌエサのギターも素晴らしく、ゲストの踊り手コンチャ・ハレーニョと5人だけで、純粋に踊りを楽しめる最高の作品を作り上げたのだ。

赤いプリーツのバタ・デ・コーラのコンチャとアルフォンソのパレハで踊るシギリージャ、黒い衣装でのリズミカルなやはりパレハでのファンダンゴ。このバランスも素晴らしく掛け合いあり、ソロでの見せ場もあり、ともちろん主役はアルフォンソなのだが、全員が主役のような印象。

コンチャはシギリージャでは情感にあふれ、ファンダンゴではリズミカルかつキリッとした面も見せるなど最高。踊るということは身体を動かすだけでなくinterpretar演じる/解釈するという面もありそれを体現している。

とにかくフラメンコ舞踊の粋をたっぷり堪能できるのでひとりでも多くの人にみてもらいたい。そして私もまたすぐにでももう一度観たい。

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2022年2月24日木曜日

ヘレスのフェスティバル7日目マヌエラ・カルピオ『ラ・フエンテ・デ・ミ・インスピラシオン』

 地元ヘレスのアルティスタが豪華ゲストと、いうことで満員。 

場内が暗くなるとタイトルや出演者を詩のようにして語るアナウンスが流れる。

舞台には三つの額ががあり下手にはヘマ・モネオとぺぺ・トーレス、上手にはファルーカとアントニオ・カナーレス、一段上がった真ん中の額にはマヌエラとホアキン・グリロがポーズしているというオープニング。額を使うのはビエナルのベテラン公演でもあったけど悪くないアイデア。

最初はヘマとぺぺのブレリア。このぺぺが素晴らしかった!文句なくこの夜の最高峰!

©Javier Fergo Festival de Jerez

余計な動きが一切ない、シンプルで上質なフラメンコ。超複雑な足をこれまでかと入れてくるような若手と違い、余裕を持って最高の間合いで決めてくれる。余白が多い、とでも言えばわかってもらえるだろうか。優雅で男性的で、唯一無比。ラファエル・ネグロにも通じるエレガンス。彼に歌うフアン・ホセ・アマドールがこれまた素晴らしく、歌と踊りの相乗効果で、どんどんこちらも気持ちよくなる。

ヘマは鉄火系フラメンカだと思っているのだけど、数年前に見た時に感じた火花のようなものがなくなってしまったようにも思える。

続く、ファルーカはソレア、カナーレスはタンゴ。ファルーカに父ファルーコの面影や味わいを感じ、カナーレスの間合いの良さにもオレ。エンリケ・エストレメーニョやっぱいいなあ。

©Javier Fergo Festival de Jerez

そしてまヌエラは赤いバタ・デ・コーラでグリロと前に出てくるのだが、早々にバタはグリロが剥ぎ取り、マントンのように回して後ろにぶん投げるという、マティルデ先生が見たら卒倒しそうな構成で始まるアレグリアス。グリロがくるくる回り、彼女は最後だけ決める感じ。踊りもいろいろだなあ。


©Javier Fergo Festival de Jerez

ゲストを最初に登場させると、彼女のいとこ、亡くなったフアニジョロへのオマージュ。彼がマヌエラに歌った録音が流れ、ソレアが始まる。金色の衣装というのも謎。歌い手がいいからか、客席にお尻を向けてる時間も長すぎるし。


最後は下手に置かれたテーブルについてのフィエスタ。エンリケ・パントーハが語り歌い踊り、トロンボやフアニジョロの兄弟のイスラエル、ディエゴ・デ・マルガラらも踊り、やっと最初に出てきたぺぺたちが出てきた、と思っていたらぺぺやヘマは歌うだけという肩透かし。ぺぺのブレリア、見たかったなあ。あ、マヌエラも歌いました。

ギターのフアン・ディエゴ・マテオスとフアン・レケーナは力仕事ご苦労様でした。

前日のアナの記者会見での話じゃないけれど、秩序とカオスで言えば、一応の秩序があった第一部、カオスなフィエスタ、って感じでしょうか。休憩なしの2時間。正直疲れました。

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アナ・モラーレスのある意味実験的とも言える、先鋭的な作品もあれば、昔ながらをイメージしたこういう作品も、ぜーんぶフラメンコというのが、フラメンコの懐の深さですよね。



ヘレスのフェスティバル7日目サルバドール・グティエレス『11ボルドネス』

 舞踊のフェスティバルではあるけれど、カンテやギターの公演もあるのがヘレスのフェスティバル。そのためもあってかフラメンコのフェスティバルとも思われるけど、あくまでも主役は舞踊。ということもあってか、このギターリサイタルはサラ・コンパニア、18時半から。

風格のあるタランタのソロに始まり、ソレア、アレグリアス、ティエント、シギリージャ…

舞踊伴奏でキャリアを築いてきたギタリストたちは実力派が多い。どんな曲でも演奏できて、踊り手の要望に合わせて曲を作る作曲能力もあり、懐が自然と深くなるのだろう。アルフレド・ラゴス、ヘスス・トーレスなどもそうだったけれど、エバ・ジェルバブエナやアンドレス・マリンの舞踊伴奏、カルメン・リナーレスらの歌伴奏、またラファエル・リケーニの伴奏などで活躍しているサルバドールも然り、である。演奏に破綻がない。パコ・デ・ルシアが大好きなのだろう、パコのファルセータをそのまま演奏することはないけれど、パコの曲の構成やパコが演奏していたフレーズを展開させていくようなところとかがあり、パコの文法で曲を作っているという感じ。またコンパスの回し方が絶品なのはやはり舞踊伴奏で鍛えたものだろう。

アレグリアスでアベル・ハラーナ、ブレリアでオルーコと、パルマで参加してた踊り手二人もたっぷり踊ったけれど、エバの舞踊団で長く共演していたエンリケ・ソトがソレア・ポル・ブレリアを歌い、アンドレス・マリンはファルーカを踊る。ゲストにたっぷり時間を割いたせいもあって1時間半にもなってしまったけれど(18時半からのコンサートは次の公演が控えているので原則1時間ということになっている)、充実した公演でありました。

©Javier Fergo Festival de Jerez

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