2024年3月6日水曜日

ヘレスのフェスティバル12日目フランシスコ・イダルゴ『モスカ・イ・ディアマンテ』

コンテンポラリーダンスとフラメンコ。

伝統的なフラメンコにない動きをするとコンテンポラリーと言われる。

コンテンポラリーダンスを、形にとらわれない自由な表現の舞踊とするなら、そうなのかもだけれど、元々コンテンポラリーという言葉は現代の、という意味なのだから、今を生きるアーティストたちによるフラメンコもある意味コンテンポラリーなわけで。

アーティストたちが自分の表現を探していく上で、従来の伝統的なフラメンコだけでは表現できない場合、他の方法、文法、作法、技術を使うのは自然なことなのだろう。こだわりを捨ててより自由に。

そしてそれがフラメンコそのものをよりよくしていく、よりよく見せていくということもたくさんあるのだな、と。

そんなふうに思った公演でした。はい、端的に言ってすごく良かった。

音楽も、舞踊も、コンテンポラリーダンス的なアプローチも、彼が踊るフラメンコを際だて、かつ補完していた。そんな作品。


作品の詳細を順に追うとこんな感じ。

開演の15分前からそれは始まっていた。

ジャケットを着込んだフランシスコが、会場であるアタラジャ博物館のパティオに現れる。

どこも何も誰も見ていない、狂人のような目。ゆっくりと会場へと歩いていく。


©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

舞台へと向かう通路で床に倒れこみ、たくさん着込んでいたジャケットを一枚一枚脱いでいく。

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez
やがてフェスティバルのジングル、開演アナウンスが流れると、舞台に上がった。

舞台の上にはプラスチックパイプで作られた木。

黒いタンクトップ、腰には作業用ベルトのようなものをつけている。裸足。アントニア・ヒメネスのギターがつまびかれると、舞台奥にある椅子にかけたコートへと向かい、椅子ごとコートを着てアントニアの前へ。椅子に座って靴を履き踊る、タランタ。

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

歌い手ミゲル・オルテガが登場。椅子の上に上がり歌うのはタラント。ここまでコンテンポラリーというか、フラメンコ・フラメンコではない自由なアプローチが多かったのだけど、踊っているのはフラメンコ・フラメンコ。男らしい(とか今のご時世では言ったらダメなのかしらん?)力強く、大地と繋がっているようなタラント。


©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez
下手に登場した四角いフレームドラムを叩くイバン・メジェンとサパテアードの掛け合いも面白い。
再び登場したアントニアが手にしているのはエレキベース。タンゴ・デ・マラガ。ベースとフレームドラム、歌で踊る。

ドラム用ブラシを両手に登場たイバンがフランシスコを楽器に叩きまくる。中身の詰まったいい音がする。そのリズムで踊っている。打楽器奏者も踊りの一部?面白い。

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

木の周りをぐるぐる周り、フランシスコ自身が歌うベルディアーレス。うまい。髭に白い花。

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

マラゲーニャのギターソロ(アントニアが素晴らしい!)から
©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

ロンデーニャやファンダンゴ・デ・ルセーナなど踊り、フィナ・エスタンパというスペイン語圏では有名な曲を歌う。

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

©︎Tamara Pastora/Festival de Jerez

 最後は木を解体して終わる。
それだけでなく、上着を脱ぐことや椅子を背負うこと、体を叩かれること、きっとさまざまなことに意味があるのだろう。それを想像するのも楽しい。わかるわからないではなく、彼のフラメンコ、フランシスコという人の中にあるものが伝わってきて、気持ちよく夜道を帰ることができた。いやあ、良き夜だ。

Francisco Hidalgo Cía. Flamenca from Festival de Jerez Televisión on Vimeo.

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