前回「ファトゥム」はコルドバ初演、前々回「セレスティーナ」は日本初演だったが、今回の「ア・エステ・チノ・ノ・レ・カント」はここヘレスが初演。
というわけで3週間前にヘレスに入り、稽古を重ねて来た。
その制作の仕事をして、公演も客席からではなく袖からみることになったので、今回は公演評ではなく、公演についてのインフォメーションであります。
メルセデス・ルイスの作品などをてがけるパコ・ロペス脚本の作品は小島の人生を振り返る内容。
ミゲル・ポベーダが歌う「鳥の歌」にはじまる。
小島の作品での共演とイメージが重なる。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
太平洋に面した海辺の町で伯母の養子として過ごした少年時代の母への思慕はミゲルが歌い、エバ・ジェルバブエナが踊るカンシオン・デ・クーナで。
この曲はもともとエバが映画「フラメンコ・フラメンコ」でミゲルの歌で踊ったもので、エバの作品「アイ」にもはいっており、その歌詞は亡くなったピナ/バウシュを追慕するものではなかったかと思うが、それがここへは母への思いへかわっている。
黒いマントンが、母の思い出をくるむように、ここでも象徴的につかわれる。
小島の外の世界に飛びたい気持ち、夢見る心は、群舞が鳥の翼に見立てたマントンのはばたきでのタンゴで表現する。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
小島とフラメンコの本格的な出会い、ピラール・ロペス舞踊団公演は、「セレスティーナ」のデュオでのファルーカで。
クリスティアン・ロサーノとタマラ・ロペス夫妻のロマンチックなパレハである。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
スペインに到着した60年代をタブラオ風に表現。まんなかで踊るのはアルバロ・パーニョス。左からスペイン人精鋭にまざって大健闘した前田可奈子、ハビエルの長女アナ・ラトーレ、チキことイレネ・ロサーノ、ムルシア出身カルメン・マンサネーラ。
ボレロに象徴されるスペイン舞踊の全盛時代でもある。踊るのはマラガ出身のビクトル・マルティンとアルカラ・デ・エナーレス出身のダニエル・ラモス。まだ20代前半の最若手である。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
ソレアを踊ろうとする小島に「この東洋人には歌わない」と歌い手がいい、クアドロは大混乱。
これは実話でその後の一ヶ月間、歌なしで踊ったそうだ。
観客は爆笑する中、その哀しみに思いをよせ心の中で涙した人も多かったという。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
「時に人生は夢に思える/そして予期せぬときに一番ほしかったものをくれる/それをあとでもっていかれようとも」
「でも失望しないで/そんなものなのだ/人生のこと/人生はそういうもの/アンブロシアの花束/苦しみの畑に」
「私たちが知っている人生は/私たちがこんなにも愛する人生は/優しい時間と/苦い結末」
ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボの歌詞が心にささる。
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小島の代表作「カディスの女」(1980年)をほうふつとさせるペテネーラ。
死への予感を表現する。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
永遠の瞬間、生と、瞬間のない永遠、死。
その孤独をエバは「ジュビア」で踊ったソレアで熱演。
観客を圧倒した。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
合唱隊による、「蝶々夫人」のハミングで踊るハビエル・ラトーレと小島。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
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Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
そしてブレリアでの大団円。
Foto Javier Fergo para Festival de Jerez |
小島の渡西50周年記念ともいえるこの作品は昔なじみの今やトップとなったアルティスタたちから今、キャリアをスタートさせたばかりの若手まで網羅して、フラメンコの奥深さと限りない可能性を伝えているのではないだろうか。
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