2020年10月9日金曜日

ビエナル総括

まずはとにかくめでたい。こうして無事、1ヶ月半のフェスティバルを行うことができたのは、本当、奇跡のようにも思います。

主催者、出演者、そして観客、みんなに、おめでとうございます!、と言いたいです。

へスース・カルモナ新作初演が、出演者の感染により中止となってしまったことがあったものの、劇場で集団感染が起こることもなく、セビージャの町がロックダウンすることもなく、終わって本当によかったです。あ、ハビエル・パティノ公演も雨で中止になりましたが。

8月のサン・ヘロニモ修道院庭園での公演の時から感染対策は徹底していました。会場に入れるの定員の半分。会場に入る時にはもちろんマスク着用で手指消毒が義務。時々、上演中にマスクを取る人がいたようですが、そんな時は係の人が飛んでいって注意していました。

夜バルも12時で閉まる(12時以降には入れない。入っていた人も1時前に退店して1時には完全閉店)のでアフターショーはほぼなし。唯一、セントラル劇場の終演後は劇場のバルで友達と飲んだくらいでしょうか。いつものビエナルでは朝方まで飲むのが恒例だったので、なんか変な感じ。

さて、今年のビエナル。圧倒的に舞踊が強い印象を残しました。

ロシオ・モリーナの2作品。

Bienal Claudia Ruiz Caro
Bienal Claudia Ruiz Caro

フェルナンド・ロメーロとラファエル・カンパージョのボレロ。

Bienal Claudia Ruiz Caro

ファルキート。

Bienal Claudia Ruiz Caro

ヴィオラ・ダ・ガンバで踊ったパトリシア・ゲレーロ。


Bienal Claudia Ruiz Caro

ラ・ピニョーナ、

Bienal Claudia Ruiz Caro

ダビ・コリア、

Bienal Claudia Ruiz Caro


レオノール・レアル、

Bienal Claudia Ruiz Caro

アナ・モラーレス、

Bienal Claudia Ruiz Caro
イスラエル・ガルバン。
Bienal Claudia Ruiz Caro

それぞれによかったけど、ロシオとパトリ、ダビ・コリアが凄かった。いや、イスラエルの公演のイスラとパストーラの個人技も凄かったけどね。そして、今年を語るなら、ピニョーナとレオノールも入れなきゃね。ちなみに、評判の良かったマリア・モレーノ、メルセデス・デ・コルドバは他の公演と重なって観ること叶わず。でもきっとよかったに違いない。


作品としてなら圧倒的にダビ・コリアとダビ・ラゴスの『ファンダンゴ』。

Bienal Claudia Ruiz Caro


舞台作りのダイナミックさ。質の高さ。主役二人はもちろん、三人の女性舞踊手とギタリスト(アルフレド・ラゴス)全員が主役という感じで見せ所もあり、見事でした。どんなに格の高い劇場に出しても恥ずかしくない素晴らしい作品です、コリアの回転! そのほかのメンバーもすごかった。特にパウラ・コミトレ!

Bienal Claudia Ruiz Caro

彼女は8月にアルトマティコ公演でもエバやアナ、ラファエラ・カラスコなどの影響は感じられるけれど、それを自分のものとして消化していく感じで、よかったです。


今年は、ロシオもパトリシアもアナも歌なしで踊り、フェルナンドもクラシック曲だったので歌はなく、イスラエルも歌ったのはギタリストだったし、歌なしのフラメンコというのが潮流なのかな。面白い。

踊り自体ではロシオもいつも以上にキレッキレですごかったけれど、パトリシアの思いを伝える表現に感動。いつの間にか持っていかれる感じ。アナもロシオと同じく、従来のフラメンコ舞踊の表現だけにこだわらず自分の表現で語ってきます。

イスラエルとエバ・ジェルバブエナの影響も大きいんだと思うけど、フラメンコの伝統的な曲/歌に縛られないというのはアントニオ・ガデスもそうだし、マリオ・マジャの舞踊表現の影響も絶対あるよね。自由な表現は今、急に始まったわけではないのだけど、テクニックと意識の向上が、今の、多彩な才能の百花繚乱状態につながっているのでしょう。


それに対して、カンテはうーん、ちょっといきづまってる感じ? ホセ・バレンシア、マリア・テレモート、ランカピーノ・チーコという若手実力派の面々は演出過多で肝心のカンテがかすんでしまい残念。カンテは人の声、そのもの自体にすごいパワーがあるのだから、それを正面からガツンと見せる/聴かせる構成、演出だけでいいのに、と思います。その点、ベテラン、エル・ペレはいつもの相棒、ニーニョ・セベだけでなく、ディエゴ・デル・モラオ、ダニ・デ ・モロンと三人の伴奏で、じっくり聴かせたのがよかったです。複数のギタリストに、というのはカルメン・リナーレスが録音でやってその公演でもやってましたが、一人の歌い手の違う面が見えてくるし、変化がつくので聴いてても楽しいです。今回は特にディエゴ・デル・モラオによるシギリージャの伴奏が最高でした。

若手でも、ラ・トレメンディータは凄かった。一見ロックコンサートですか、の舞台だけど、ドラムス、エレキベース、キーボード。よく考えられたアレンジで聴かせるのは正真正銘ほんまもんのフラメンコ。別にびっくりさせようとしてるわけではなく、自分の言葉で自分の愛する音楽を自然にやっているだけだからいいのだと思います。

Bienal Claudia Ruiz Caro



ギターはトマティート、ヘラルド・ヌニェス、カニサーレス、ビセンテ・アミーゴといった今のスペインを代表するギタリストたちが登場することはなかったのは残念でした。ギターが主役の公演は8つ。その中ではダニ・デ ・モロンが頭ひとつ抜きん出ていた印象(ホセ・アセド、アントニオ・レイは他の公演に行っていたので聴けていません)。個人的には、トマス・デ ・ペラーテのリサイタル、ダビ・コリア、ピニョーナの舞踊公演の伴奏をしていたアルフレド・ラゴスが一番よかったかも。それとディエゴ・デ ・モラオね。

Bienal Claudia Ruiz Caro


ギター以外の楽器だと、管楽器のディエゴ・ビジェーガス、ピアノのドランテスがよかったですね。お祭りのようなディエゴ、一人でしっとり聴かせたドランテス。あと、ビデオdj?のロス・ブルブレも面白かったな、と。フラメンコは伝統的なやり方以外にも表現が広がっています。

フラメンコがこれからどこに向かうのか、わからないけど、フラメンコの核はずっと大事にされていくんだろうな、と思ったことでした。


なお、来週、ビエナル総括記者会見あるそうです。どんな話が聞けるかな?








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