2018年12月15日土曜日

スペイン国立バレエ団創立40周年記念公演


スペイン舞踊は華やかで、豊かで、楽しく、美しく、観る人の心を躍らせる。

と、改めて感じた夜でした。
マドリードの国立サルスエラ劇場での公演。一人でも多くの人に見てもらいたいけれど残念ながらすでに千秋楽まで完売。昔はそんなことなかったよね。
ナハロ監督就任以来、国立は着実にファンを増やしてきたということでしょう。
結果を出した、その彼の監督任期は来年8月で終了。なのでこれが最後のマドリー公演かも?

歴代監督の写真と声で構成されたビデオで始まる。
アントニオ・ガデス、グラン・アントニオ、マリア・デ・アビラ、ホセ・アントニオ、ナナ・ロルカ/アウロラ・ポンス/ビクトリア・エウヘニア、アイーダ・ゴメス、エルビラ・アンドレス、ホセ・アントニオ、そしてアントニオ・ナハーロ。
彼らが先頭だって築いてきた国立の歴史を彩った作品の衣装をまとったダンサーたちが客席の通路や舞台をファッションショーのように歩く。
鮮やかな色彩はピカソデザインの『三角帽子』、白のボツボツが着いたのはラトーレ振り付けの『ロコ』、膨らんだスカートは『エリターニャ』、薄紫のバタは『アレント』…
思い出せる衣装もいろいろ。バックに流れるのはボッケリーニのファンダンゴ?『ダンサ・イ・トロニオ』で聴いた曲。

最後は全員で舞台の上でポーズ。
Ballet Nacional de España

国立の40年の歴史へのインビテーションとして最高のプレゼンテーション。

最初は先日の日本公演でも上演された『エリターニャ』、グラン・アントニオの振付。
エスクエラ・ボレーラの素晴らしい作品。本拠地ではオーケストラの生演奏で。
私が見た日はカルロス・サンチェスとミリアム・メンドーサが踊っていた(ダブルキャストでセルヒオ・ベルナルとデボラ・マルティネス)のだが、日本で踊ったセルヒオ・ベルナルに負けず劣らず素晴らしかった。
そして群舞がまたすごい!。よく揃っているし、形の美しさはもちろん、とにかく超絶テクニック! クラシックバレエ的な足づかいとスペイン的な

『アランフェス協奏曲』の第2楽章は、その昔パコ・デ・ルシアのアランフェスの指揮者として来日したこともあるホセ・マリア・ガジャルドが生演奏。豪華!
ピラール・ロペス振り付けのこの作品、動きがゆっくりだったり、群舞が全員同じ振り付けだったりと、全体の印象はどうしても古臭い感じがしてしまう。伝統を感じても決して古臭くは見えない、グラン・アントニオの振り付けは古典だなあ、とつくづく思うわされる。
と言っても、ピラールの振り付けは細部がいい。形の美しさ、動きの優雅さなど、やはり、伝統だ。歴史を感じさせる。
私が見た日に踊ったインマクラーダ・サロモンの才能もあるだろう。

続く『プエルタ・ティエラ』がこの日の白眉!。エスクエラ・ボレーラの最高峰的作品で、これもグラン・アントニオの振り付け。何度か、国立バレエでも踊られていて、私はキャスト違いで以前に2回観ているが、それにもまして今回は素晴らしかった。完璧なテクニック。跳躍、回転、カスタネット。以前、見た時は、いいんだけど、どうしても以前のパレハを思い出して比べてしまったが、今回はそんなことはなく、ただただ感嘆!
セルヒオ・ベルナルとデボラ・マルティネス(ダブルキャストはエドゥアルド・マルティネスとミリアム・メンデス)は、テクニックだけでなく、表現もいい。

アントニオ・ガデスの遺作『フエンテオベフーナ』は、洗濯場のシーンを。
女性たちが後姿で腰を動かす振りとか、懐かしくて涙が出そうになる。
続く主役ふたりのパドドゥ、代官の横恋慕など、台詞がなくとも、元のあらすじを知らなくても、すぐにわかる、この明解さ。群衆の動きのコントロール、陰影のある照明。
どれを取っても素晴らしい。この日は主役をエドゥアルド・マルティネスとクリスティーナ・カルネーロの二人が踊ったが、クリスティーナはガデス舞踊団でこの役を踊っていただけにさすがの出来。なおダブルキャストで主役を踊るアルバロ・マドリードもガデス舞踊団出身で、彼とインマクラーダ・サロモンが踊る役替わりもみたかった!

『レジェンダ』のソレアは、古典的衣装の男性三人によるもので、ホセ・アントニオの振り付け。カルメン・アマジャへのオマージュだった『レジェンダ』というと、長い長いバタ・デ・コーラや男装の女性舞踊手のイメージばかり残っていたが、この男性三人のフラメンコの振り付けはめちゃくちゃかっこよくて最高!
これを発掘してくれたアントニオに感謝!この曲、日本でもぜひ観てもらいたいものです。歌にラファエル・デ・ウトレーラというのにもこだわりを感じる。

そして日本でもやった『サラサーテのサパテアード』この日一番の拍手を受けていた。
一部の最後は、民族舞踊の作品『ロマンセ』。96年、今は亡きフアンホ・リナーレスの振り付け。
スペイン民族音楽の第一人者、エリセオ・パッラの弾き語り踊り語りで始まり、一組のパレハを中心に迫力のある群舞が展開される。華やかで賑やかで楽しい!の一言。
見ているだけで気持ちが上がる。ハイになる。
民族舞踊は祭りと密接な関係を持っているものが多いからかも。ホタもそうだね。
ここでも、今のバレエ団メンバーの高いテクニックがやはり要。

と、この1部だけでも1時間半。ここで終わっても満足なところ、休憩を挟んでの第2部も。
オープニングは『リトモス』。84年初演というから35年前の作品なのに古さを感じさせない。ホセ・ニエトのオリジナルの音楽も、アルベルト・ロルカの振り付けもおしゃれで素晴らしい。日本でもかなり昔に上演されたことはあるが、これまた再演希望!
ベティ先生ことビクトリア・エウヘニア振り付けの『ダンサIX』はいわゆるクラシコエスパニョール。私にはやはりローラ・グレコのイメージが強すぎる。

『イカロ』はドランテスのピアノで踊るセルヒオ・ベルナルのソロ。今回唯一の新作。バレエダンサー顔負けの新たり能力のセルヒオはすごいんだけど、でも衣装がなんだか残念な感じ。特に上体の動きの妙を見せてくれていないというか。
最後は華やかに展開される『ソロージャ』のバイレ。熱く!

曲ごとに挨拶する国立バレエの習慣から離れ、挨拶はこの最後だけ。
拍手が鳴り止まない。




40年のうち、30年は見続けていて、いろんな思い出がある私も、これが最初の国立バレエ鑑賞という人も、絶対楽しめる舞台。
退任までのラストスパートとなったアントニオ。次の監督は色々大変だなあ。
次の監督は来年初めに公募されるそうです。





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