2017年6月29日木曜日

映画「ラ・チャナ」


アンダルシア州のフラメンコ機関、インスティトゥート・アンダルース・デ・フラメンコ主催による、フラメンコ映画上映会シリーズ、シクロ・デ・シネ・イ・フラメンコ。
今年で11回目というこの催し、当初は短編が多かったように思うのだが、最近は長編が多い。

6月28日は「ラ・チャナ」
サグレブ出身のルツィア・ストエビッチ監督による、バルセロナ出身のバイラオーラのドキュメンタリーだ。

本名アントニア・サンティアゴ・アマドール、1946年バルセロナ生まれ。若くして踊り始め、タブラオなどで活躍。ピーター・セラーズに見出され、1967年、映画「無責任恋愛作戦」に出演。
1985年、イベリアの招きで来日し、そのビデオが長く販売されていたので、日本でも、昔からのフラメンコ・ファンは彼女の名前を覚えていることだろう。
下のビデオの後ろの写真がプロモーションで使われていたので、懐かしく思う人もいるかもしれない。
超絶サパテアードが特徴的で、エキセントリックな魅力のあるダンサーだった。
その彼女が踊り始めた時のこと、結婚、出産、タブラオでの公演、海外公演、夫からの虐待、舞台からの引退、別離、復帰、そして新しい夫との出会い、舞台への再びの復帰…

彼女の人生が、彼女の言葉と、スペイン国営放送などのビデオ映像や数多くの写真で綴られていく。
現代バルセロナを象徴するような踊り手、カリメ・アマジャや、クンブレ・フラメンカ舞踊団で共演したアントニオ・カナーレスらとの交流。

フラメンコの師匠、ベアトリス・デル・ポソに彼女の師として紹介され、4年間。クラウドファンディングと国営放送などから資金を集め、制作にあたった。
チャナと監督の確かな信頼関係で、話しにくいような話をも含め、語られていく。
時代、そしてヒターノの文化、習慣もあって、踊りにだけ自由を、解放を感じていた彼女。でも誰を恨むでもなく、悲しみながらも受け入れ、前進。
そして今、足を悪くし、座ったままで踊り、舞台にも復帰。
舞台に復帰するとは、撮影開始時には思いもよらなかったことらしい。

上映終了後は監督と質疑応答。
「この映画で忘れ去られようとしていた彼女にまた注目が集まっていることが嬉しい」
と言う。
現在、オランダで上映中。スペインでは11月から、そして日本でも来年には公開される予定とのこと。


フラメンコの歴史は、彼女のような、たくさんのアルティスタによって作られているのだ、と改めて感じたことでした。
夫からの抑圧、虐待等もスキャンダラスにではなく、抑えた語り口で語り、それゆえに、彼女の悲しみ、自由への渇望、フラメンコへの思い、などが身に迫ってくる。

いやあ、いい映画です。

1 件のコメント:

  1. 大変興味深いです。故障を抱えながらも理解ある先生の元でフラメンコを習っていますが、今後もっと悪化したり歳を取ってきたら、生きがいの踊りから何に移行すればいいのかと、若い先生にはわからない悩みを秘かに抱えています。アーティストと比べるのはおこがましいけれど、そんな視点でも観てみたい。 日本での公開が楽しみです。素敵な映画をご紹介くださりありがとうございます。今後もブログ楽しみにしております。

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