2011年9月17日土曜日

ラファエル・リケーニ「マリア・ルイサ公園」

夏休みあけの教室みたいに
あちこちでベシート、
ほおにキスのあいさつが繰り返される劇場。
ようやくセビージャの劇場にフラメンコが帰ってきた。
暑い夏の間は
郊外での野外フラメンコ祭はあっても
劇場公演はお休み。
 客席には批評家や研究家、マネージャー、
ビエナル監督、プロデューサー、
そしてアルティスタたち。
エスペランサ・フェルナンデス、
ハビエル・バロン、イサベル・バジョン、
パコ・コルテス、ミゲル・アンヘル・コルテス、
アルフレド・ラゴス、ヘスース・トーレス、
サルバドール・グティエレス、ヘスース・ゲレーロ…
ギタリストが多いのはやはりギターのリサイタルならでは

セビージャはトリアーナ出身の
ラファエル・リケーニ。
1962年生まれというから今年で49歳。
かつて
ヘラルド・ヌーニェス、トマティート、
ビセンテ・アミーゴらと並び称されたフラメンコギターの雄。
「フエゴ・デ・ニーニョ」
「ミ・ティエンポ」
ドイツで発売された「フラメンコ」
「アルカサル・デ・クリスタル」
ホセ・マリア・ガジャルドと演奏した「セビージャ組曲」
サビーカスなど先駆者たちの名曲を弾いた「マエストロス」
そのソロ・アルバムはどれも名作。
が、人生いろんなことがあって
ギターを弾かない時期があったり
舞台から遠ざかっていた時期があったり。

去年、エンリケ・モレンテの伴奏で久しぶりにあった彼。
正直、全盛期のように指は動かないんだけど、
ときどきおおっと思わせる輝きがあって
ああ、やっぱ天才は天才なんだと思ったことだった。

セビージャでの演奏は数年前,エル・モンテでの
それはそれは美しいリサイタル以来のことではないだろうか。
ロペ・デ・ベガ劇場でのソロ・リサイタルは
90年(わ、20年前だ!)のビエナル以来じゃないかな。
(デュオでガジャルドとは弾いてるし、ほかの公演でも出てたような気がする)

そしてそのリサイタル。
彼についてのドキュメンタリーを撮影中ということで
招待券のみ,入場無料。
招待券もなくなり満員の客席。

タイルの文様を模したポスターがおしゃれ


第1部はマリア・ルイサ公園。
このロペ・デ・ベガ劇場のすぐ前に広がるこの大きな公園の中の
池やロータリーの名前や
この公園にまつわる思い出をタイトルとした小曲集。
曲はフラメンコの規則にしばられない自由な表現。
シンプルで美しいメロディ。
フラメンコのテクニックをつかっているのに
バロック音楽のような趣がある。
この音の深みはなんだろう。
トレモロの繊細さ。
クラシックギターのまじめで硬質な感じではなく
もっとゆったりとした感じ。
最後はビルバオ出身の25歳というヤゴ・サントスとデュオで聴かせた。

休憩をはさんでの第2部はチェロのソロでの子守唄にはじまり
マイテ・マルティンとのグラナイーナ、ソレア。
そしてデビューアルバムのファンダンゴ・デ・ウエルバ
「ニーニョ・ミゲルに捧ぐ」や
2枚目のタイトルとなった「ミ・ティエンポ」
など懐かしいフラメンコ曲を
ピアノ、パーカッション、チェロ、コントラバス、第2ギターの伴奏で。
昔の曲をきくと過去の記憶がまたたくまによみがえる。

パタ・ネグラのラファエル・アマドールとリケーニとが
今はなきペーニャ・エル・ボージョにて
おもちゃのようなギターを交代に手にとって
弾き続けたことがあったっけ。
休み時間も店を閉めず、弾き続けてた二人
最後にはそのおもちゃのような安ギターがものすごい音をたてだしたのだ。
ギターをならすのはアルティスタなのだ。


休憩をいれて2時間半ほどはさすがに長く
最後の全員のスタンディングオーベーションが
すぐに終わってしまいそこにアンコール曲ひきにでてくるなど
ちょっとおまぬけにもなってしまったけど
リケーニ健在。

ほかの誰にもない自分の世界と音をもった
やっぱりすごいギタリストなのだ



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