2025年12月25日木曜日

聖夜の奇跡 大塚友美、松彩果、今枝友加、JITAN、鈴木映留捺、SUI、徳永康次郎、朱雀はるなほか『マッチに灯すフラメンコの夢』


今、改めてタイトルを見て、ああ、本当にあれは奇跡の夜だったのかも、と思っているところ。
舞台も客席も全員でフラメンコを楽しんだ夜だったと思う。そう、フラメンコって楽しい。生きる元気をくれる。楽しむことができるようになるまでに覚えなくちゃなこともたくさんあるし、大変なこともいっぱいあるけど、結果みんなで楽しめる。楽しくなれる。幸せになれる。フラメンコっていいなあ。

今枝の歌うビジャンシーコもあったし、ブレリアにクリスマスのレトラ入れたりもしてたけど、クリスマス色はビジャンシーコよりも子供達が演じるマッチ売りの少女によりあったかも? いやそれよりも、ファミリー的な雰囲気に、かな。
新人公演で準奨励賞受賞の鈴木映留捺はフレッシュな魅力でアレグリアス。歌は大塚友美。鈴木は華がある。これからどんどん上手になりそうな予感。
今年、セビージャペーニャ、トーレスマカレーナで最高のフラメンコを見せてくれたJITANはここでも行きのいい、ドライブ感のある踊りを見せそこに母大塚由美が絡むところはファルーカとファルキートを思い出させる。いやかっこいい。その大塚がSUIと交代で歌い踊るタンゴではピラール、ラ・ファラオナを思い出させるのが面白い。SUIは大人顔負けの歌いっぷり、踊りっぷり。スペインのSNSでバズったのもうなづける。松のタラントは黒地に白の刺繍の豪華なマントンと。タラントのソブリオ、地味なイメージとは合わないのだけど、炭鉱主夫人が、事故に巻き込まれた息子を思って踊っているのかな、などと勝手に想像を膨らませる。そうすると、途中、頭の花を飛ばすほどのロクーラ、狂ったように踊るところも筋が通るな、とか思ったり。タンゴの後でカルタヘネーラへという構成は珍しい。そのタラントを歌った今枝が松とタッチ交代、松が歌って今枝が踊るソレア。このソレアが良かった。松が歌うとは知らなかったけれど、いやいやどうして、上手いタイプではないけれど嘘のないソレアで、それを丁寧にマルカールしてアクセントを効かせて踊る今枝。フラメンコへの愛そのものを見ているような気分。今枝、歌がすごいから見逃されがちだけど踊りも本当にすごい。とにかくいい。歌うことでフラメンコの理解が踊るだけの人とは違うステージに行っているのではないかとも思うけど、とにかくいい踊り手です。

休憩を挟んでマッチ売りの少女の小芝居あってからの新人公演で見せた子供達のブレリア。あの時より二人少ないし、舞台の大きさも違うけど、しっかり振りをアレンジして、きちんとこなしているのもすごい。それにとにかくムイ・フラメンコなのですよ、彼女たち。子供でもこんなにフラメンカで、フラメンコを楽しんでいる感じが伝わってくる。
お教室でいろんな振りを長い時間かけて学んでいくのもいいし、それがあってこそ、自由に踊れるようになるのだろうとは思うけど、結局、みんな自由に踊れるようになりたいからやっているのかもしれないな。ブレリアでリズムをレトラを感じて自由に踊りたいよね、遊びたいよね。もちろん、しっかり構成された振り付けをきちんと踊って、そこに自分の色もくわて、というのもいいけれど、フラメンコをやるからにゃ、ブレリアやタンゴで会話するように踊ることはきっとみんなやりたいんじゃないかと。それを聖夜にガルロチでみんなでやっているんだよ。ブレリアでは小さい子からお孫さんもいらっしゃるようなお年頃のセニョーラまで登場。生き生きと踊る。フリが決まっているのかもだけど、それでもそこに出てくるその人の個性。楽しいね。見てるこちらも楽しくなる。

昭和の時代を、ということで、大塚、アフロのカツラを被った松、金髪カツラを被った今枝の3人が、金井克子『他人の関係』イントロ風に、ポーズするかと思えば、SUIと映留捺が歌うルンバ『カラメロ』があったり、抱腹絶倒の隠し芸大会的フラメンコ。いやー笑った笑った。おちゃらけも真面目にやるのが素晴らしい。最後は大塚の地元、浜松の祭のラッパ隊が登場。そこにフラメンコが絡む。てかラッパ隊のお姉さんたち大塚の生徒なの? ウナパタイータ決まってる! お祭りだね、楽しいね。お祭りの楽しさは世界共通。沖縄でみんながすぐ踊り出すカチャーシーとか、阿波踊りとか、ああいうのと、フラメンコ、同じところもあるんだよね、全部が同じじゃないけれど。人生いろいろあるから辛い悲しい大変なこともあるけれど、歌って踊って笑って忘れて元気になろう、っていうか、そういう働きがああいう踊りにはあって、それはフラメンコも同じだと思うんだよね。フラメンコの起源はきっとそういうところなのだろうと思う。太鼓の昔から古老によって歌い継がれてきたトナから始まったとかじゃなくてとりあえず苦しい現実忘れる楽しい宴の方じゃないかと。これ、ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボの説だったと思うけど絶対こっちを支持。トナはトナであったのかもだけどフラメンコがフラメンコになるためには宴が必要だったはず。

それにしても、みんなファミリーじゃないですか、ギタリストの鈴木尚/踊り手の大塚友美家の息子JITAN、パーカッション奏者で踊り手の朱雀はるなと歌っておどるSUI母娘、松彩果の息子もカホンを叩いて舞台に上がっていたし、ギターの徳永康次郎の父もギタリスト、母は踊り手、と日本フラメンコ界にもスペイン並みに代々アーティストというファミリーが増えている。そして年配のおねえさまから小学生など、年代に関係なくフラメンコを愛し、楽しむ人たちがたくさんいる。みんな全身でフラメンコを楽しんでいる。フラメンコの瞬間を生きている。最高じゃありませんか。1万5千キロ離れていても心は一つでございますね。みんなファミリー。フラメンコのファミリー。
フラメンコ最強、最高じゃないですか。    




 

2025年12月14日日曜日

ロルカ・フェスティバル2025 ロルカの詩を踊る


野村眞里子さんプロデュースのロルカ・フェスティバル。

詩とダンスのミュージアムで行われた、講演と公演を観てきました。

講演は南山大学の小坂先生による、ロルカの詩における舞踊についての講演では、ロルカの詩には、フラメンコ舞踊、ヒターノたち、ニューヨークの黒人たち、キューバ、そして緑、月などと、様々な踊りが登場するというお話でした。

ロルカはフラメンコやヒターノたちに興味を持ち、多くの作品のテーマにしていることもあってフラメンコファンにとってロルカは非常に身近な存在です。フラメンコの歌詞にその詩や戯曲などが取り入れられているだけでなく、人間ロルカをモチーフにした作品も作られるなどしていて、知ったような気になっていますが、個人的にはきちんとまとめて読んだことはないのを反省。スペイン語でも日本語でもちゃんと読んで勉強すべきですね、はい。反省。

講演の中にはフラメンコ・ファンなら誰もが知っている『ベルデ』(無有病者のロマンセ)や、カマロンが歌った『月のロマンセ』なども登場したり、モレンテ『オメガ』収録の『ペケーニョ・バルス・ビエネス』(レオナード・コーエンの『テイク・ディス・ワルツ』)なども取り上げられたりして、休憩を挟んで、杏梨と徳永康次郎によるトランスフォルマシオンと伊藤笑苗による公演でも、『月のロマンセ』や『ベルデ』が登場。詩を踊る、というタイトルだけど、朗読者も歌い手もいないのにどうするのだろうと思ったら、月のロマンセは朗読を録音で流し、丸いレフ板を月に見立て、それを使って影絵遊びをするなど工夫を凝らして楽しませてくれました。後で聞いたら朗読も伊藤本人が直前に録音したというのでびっくり。踊りも、指先まで気を配って、形の美しさも今まで以上に意識しているという感じのパフォーマンスで、これまで使っていなかった筋肉を使っている感もあり、マドリードのコンセルバトリオ、舞踊学院で学ぶことがプラスになっているのだろうと感じられました。ピアノでのカフェ・デ・チニータス、そして最後は帽子を使ってのベルデ変奏曲。どこかにあるものを借りてきたものではなく、ロルカ編のスペイン民謡(古謡とも)をモチーフに展開していったオリジナルの音楽もよく、舞踊も音楽のようになめらかで、良きライブになったと思います。


いやいや若い才能にこれからもどんどん活躍していってほしいものです。


 

2025年12月11日木曜日

マヌエル・リニャンen ガルロチ

 今年いっぱいで、エル・フラメンコ時代から引き継いできた半世紀以上にわたるその歴史に終止符を打つガルロチ。日本のみならず、フラメンコ全体の歴史にも一ページを刻んだこの店に出演する最後のスペイン人グループとしてやってきたのはマヌエル・リニャン。昨年に引き続き2回目の出演となる。

 今回は女装で踊るバイラオーラの日、男装でのバイラオールの日と二つのプログラム。初日の公演はバイラオーラの日とのことで、フアン・デ・マリア、ホセ・マヌエル・フェルナンデス、カンテ二人によるトナで始まり、最初は赤い衣装にアバニコでのグアヒーラ、フランシスコ・ビヌエサのギターソロ(グラナイーナやらフアニート・バルデラマの『エミグランテ』やらのポプリでございました。そういえばこないだのセビージャでのペーニャ公演でもオホス・ベルデス的なのも弾いていた気がする)、黒地に白水玉、赤のエナグアという王道、ザ・フラメンコなお衣装でのロマンセ、そして最後は黄緑のバタ・デ・コーラにマントンのアレグリアス。

男性でありながら、女性衣装のバタ・デ・コーラやマントンの技術も極め、女装の男性ダンサーたちによる作品『ビバ!』という大ヒットも生み出した彼ならではの技とアルテのオンパレード。ギターも歌も素晴らしく、客席のあちこちからオレ!の声がかかっていたのも頷ける出来でありました。個人的には去年よりも好きかも。

グアヒーラの扇の使い方も王道だけでなく工夫しているし、マントンにしても男性の体力あってこそではないかと思う怒涛の技術。あの振り、女性がそのまま踊ったら倒れるんじゃ?とか思いつつ観ておりました。ただ、大劇場で踊ることが多い彼ゆえの表情の豊かさが、タブラオのような小さい空間ではちょっとデマシアード、大袈裟に見えてしまわないでもないかもしれない、とは思いましたが、そんなのは小さいことで、とにかく、女性男性問わず、フラメンコを熟知した彼ならではの舞台は一見の価値ありでございます。

ここ数年、群舞などでは、アンダルシア舞踊団『ピネーダ』、『オリヘン』などをみてもジェンダーレス化が進んでいるように思うのですが、そこであえての女性舞踊、男性舞踊というのも気が利いているように思います。きっと彼の最新作 bailaor@にも通じているのかな、と。


で、フィン・デ・フィエスタはこんなふうに弾けて。

フラメンコの最前線。さすがのリニャン、ぜひお見逃しなく。



2025年12月1日月曜日

レラ・ソトenトーレス・マカレーナ

 先日のマエストランサ劇場の公演でシギリージャがメチャクチャ良かったので、レラ・ソトのペーニャ公演へ。


 


レラ・ソト、父はビセンテ・ソト、母は踊り手でエル・フラメンコにも出演したことがあるルイサ・エレディア。つまり父方はヘレスのソルデーラ家で父方の祖父はマヌエル・ソト“ソルデーラ”、母方はマドリードの踊り手ホセーレというアーティスト一家。さらに言えばホセーレの娘たちは長女がエンリケ・パントーハ、次女ホセーラがエンリケ・デ・メルチョール、三女ルイサ“カチート”がビセンテ・ソトと結婚、四女マルタは現役のアーティストで、末っ子が早逝したライ・エレディアというからすごい。

前半は、パストーラにちなんでバンベーラからはじめ、グラナイーナ、ソレア・ポル・ブレリア、ティエント/タンゴ。タンゴの最後では叔父ホセ・ソト”ソルデリータ”が歌っていたのがなんか嬉しい。


休憩を挟んだ後半はミロンガ、シギリージャ、ブレリア。アンコールでファンダンゴ。が、後半は私的にはうーん、だったかも。期待しすぎたのかもです。



シギリージャは先日のマエストランサ劇場とは同じ人とは思えなかったのは、ギターの違いか、前日もバルセロナで公演ということで疲れてたのか…。若いのでまだまだひとバケして欲しい人なのですが、もうそこそこ歌えるし、自分が楽な位置で安住しちゃうのかな。いや、それも一つの道ではあるのですが。